4月27日(金) 2012 J2リーグ戦 第10節
熊本 0 - 0 岡山 (19:03/熊本/3,198人)

翌日の熊日朝刊は「価値あるドロー」と評価する見出しをとり、「マイナス」から「ゼロ地点にまで回復してきた」と表現。高木監督は「あくまでも結果に満足しているわけではない」という条件つきで「これまで課題だった部分を照らし合わせると、いいゲームをしてくれた」と振り返る。しかし、GK南は「いい内容の試合ができても、こういう試合で勝ちきれるようにならないといけない。こういう試合で勝ちきれるともっと上を狙えると思うので、そういうもどかしさはあります」と言う。見ているほうも、やっているほうも評価の分かれる難しいゲームでした。

前節から4人も変更した熊本の先発システムは、シャドーにFWの白谷と斉藤を置く布陣。3バックの中心には再び吉井。右には筑城を持ってきました。一方の岡山は5試合負けなし。得点源の川又をベンチに置いて、中野のワントップでスタートしてきた。システムは3-4-3と全く同じ。目の前の選手とマッチアップします。

熊 本
 9チェ クンシク 
20白谷17斉藤
7片山38藏川
8原田10養父
4廣井24筑城
 22吉井 
 18南 
後半22分 白谷 建人 → 市村 篤司
後半29分 原田 拓 → 大迫 希


岡 山
 19中野 
28岡崎7金
25田所2澤口
8千明14仙石
5植田3後藤
 14竹田 
 1中林 
ハーフタイム 岡崎 和也 → 関戸 健二
後半15分 中野 裕太 → 川又 堅碁
後半37分 田所 諒 → 石原 崇兆


前半のシュート数9(熊本)対3(岡山)という数字が物語るように、立ち上がりから熊本のペースでした。右CKからのこぼれ球をクンシクがシュート。これはバーに嫌われる。斉藤が左の白谷にはたいて、白谷のクロスに入っていくが惜しくもゴール左に外れる。CKから岡山の強烈ヘッドを南の反応でクリアするスーパープレイもありましたが、セカンドもうまく手中にしていたし、守っても筑城が「前と中盤の選手がよく動いて限定してくれたので、プレスもはっきり行けた」と言うように、明らかにポゼッションは熊本にありました。あとは、アタッキングサードでの最後の崩し、ゴール前に行く人数という”勇気”…。

この試合何と言っても特筆すべきは吉井の活躍でしたね。くさびのパスはコースを読んで、必ず飛び込んで潰す。サイドに侵入してきた敵に対しても追い込んでいるのは吉井。スイーパーの役割も吉井。得意の運動量と読みで、岡山に仕事をさせません。前節の勝ち点1は南がもたらしたものと書きましたが、今節は吉井の働きのおかげかも知れません。

しかし、徐々に岡山も今季の好調さ示し始めます。後半開始から岡崎に代えて関戸を入れ、修正を図ってくると、俄然ボールは岡山側へ。藏川が「慌てすぎてるというか、もうちょっと落ち着いてもいいのかなという部分はあります」と振り返るとおり、攻め急ぎともとれるボール回し。さらに岡山が中野に代えて川又を入れると、前線に迫力が加わった。仙石(岡山)が、「勝てた試合だった」と言うような、岡山の時間帯に突入しました。

岡山にはかつての”新参チーム”によく見られるような、試合中の浮き足立ち方が微塵も見られなくなりましたね。逆に、次第しだいに自分たちの時間帯に持っていく自信のようなものを手に入れている。なんだか知らない間に、愛媛のようなチームに近づいているような気がしました。

熊本が、そんな悪い流れを断ち切ったのは、DF市村のシャドーでの起用という”奇策”でした。ゴールに近いところでクロスを上げる。エリア内、アーリークロスをぴたりと止めた斉藤が右に走りこんだ市村にはたくと、市村がえぐりなおしてクロスを上げる。好機を演出します。

次は原田に代えて大迫。畳み掛けるような交代カード。しかし、何度かチャンスはあったものの、終盤、球際の強さが失われ、前線へも人数を掛けて上がれなくなった熊本は、どうしてもゴールを奪えず引き分けに甘んじることとなってしまいました。カードを一枚残し、明らかに疲れの見えるクンシクを使い続けた。ベンチにはクンシクに代わって前線を張れるのは、DF兼務の高橋しか残っていませんでした。

結果だけを知る人にとっては、勝てはしなかったという事実しか残らないものの、試合の評価としては、GWの連戦の緒戦。互いに”勝ち”にこだわるなかで「集中力」の途切れない、密度の濃い試合を観せてくれたのではないかと。熊日によれば「選手は誰も満足していなかった」し、殊勲の吉井は「これが最低限のゲーム」とも表現している。「ゼロ地点」まで回復してきていると信じて、この連戦の先を見守っていきたいと思います。決して選手層の厚いとはいえないわがチームでもありますから。

最後に。うちの試合の笛を吹くのは初めてだったでしょうか、プロフェッショナル・レフリーの吉田氏。選手の落ち着かせ方、アドバンテージの取り方、ファールの流し方、判断の確かさ…。選手も、ファンのわれわれも試合にしっかり集中できたのは、実はこの卓越したジャッジによるところも大きかったのではないかと。改めて審判の存在の大きさを思った試合でした。

4月22日(日) 2012 J2リーグ戦 第9節
愛媛 0 - 0 熊本 (13:04/ニンスタ/1,950人)


GKが得点を決めることはなかなかできませんが、勝ち点なら奪うことはできる。愛媛の7回の決定機を、南ひとりが防いだわけではもちろんありませんが、この試合で得た貴重な貴重な勝ち点1は、間違いなく彼が愛媛から奪い取ったものでした。

前節の不甲斐ない戦いぶりから、どう修正してくるのか。もし前節の延長のようなゲームになれば、チーム自体が大きな局面を迎えかねない。いつになくドキドキした心持ちで試合開始の笛を待ちました。当然のことでしょうが、われわれファンの側がそう思ってしまうということは、選手はその何倍も意識しているわけだろうし。この試合の“メンタル”に関しては、そういった“対前節”というところがとても重要だったのではないかと思います。

もちろん、試合後のコメントに“前節”という言葉はなかったにせよ、それは監督も同じではなかったかと。3バックはそのままにしても、大きくメンバーを入れ替えてきた。最終ラインにはケガから復帰した市村、福王を。ボランチには吉井を上げる。前線には出場停止明けのチェ・クンシク。なにより、クンシクと武富の2トップに、養父、大迫の2シャドーという3-3-2-2というシステム変更には驚かされました。

前節の試合後、選手たち一人ひとりと向かい合って話をしたという高木監督。そして徹底した愛媛のスカウティング。最後に、システムをいじってきた。1週間のなかで密度の濃い仕事をしてきたなと思います。

愛 媛
17大山 9有田
7前野16赤井
3トミッチ26村上
8内田13関根
2浦田22園田
 37秋元 
後半21分 赤井 秀一 → 東 浩史
後半33分 大山 俊輔 → 小笠原 侑生
後半44分 内田 健太 → 石井 謙伍


熊 本
9チェ クンシク14武富
13大迫10養父
7片山38藏川
 22吉井 
4廣井15市村
 4福王 
 18南 
後半14分 大迫 希 → 高橋 祐太郎
後半29分 チェ クンシク → 齊藤 和樹
後半36分 吉井 孝輔 → 原田 拓


序盤は、幾分熊本の方が優勢でした。強風ともいえる風上を利用して積極的に攻める。ゴールが見えたらシュートを打つ。大迫や養父が、それこそ2列目から。養父のキープから左に上がってきた廣井へ。廣井がスルーパス。大迫がDFラインを抜け出す。ドリブルでエリアを横切ると右から上がってきた藏川へ。藏川が動き出したクンシクへのシュート性のクロス。惜しくも合わず。しかしそれは、前節にはなかった”点の匂い”のする一連の攻撃でした。そして、球際で身体を張った激しい攻防。前節、ホームのサポーターから浴びせられた厳しいブーイングを振り払うように、”闘う気持ち”を前面に出しています。

しかし愛媛は強かった。3年目のバルバリッチは、このチームを”仕上げかかっている”。そんな感じさえしました。

オーソドックスな4-4-2のブロックから、サイドにも中央にもワンタッチで素早く展開する。左SBに抜擢した内田が、トミッチからのスルーパスに追いついてエリアをえぐる。右サイド奥からのマイナスパスには3人目が必ずニアに飛び込む。走る走る。久しぶりに感じる攻撃のオートマティズム。果たしてそれは”考えず”に走っているのか、それとも…。

前半も中盤を過ぎたあたりから、強風の影響を避けるように、バルバリッチいわく「ボールを地面に置いて」つなぎ始める。その猛攻は、途絶えることなく後半も続きました。その間、熊本は冒頭のように南のスーパーともいえるセーブの連発、福王の”福王らしい”最後の最後に身体を投げ出してのクリア、そして色んな”幸運”に恵まれて、なんとかゴールを死守している。

ここまで持ちこたえられれば、いつぞやの厚別での札幌戦のように、最後に1点を決めて勝利もありうる。そんな予感もあり、確かにアディショナルタイムでは、2度そんなチャンスもあったのですが、結果決めきれず。両者スコアレスで、痛みわけに終わったのでした。

それは。指揮官が言うように「なんとなく勝っていない分、持ちすぎるところがあるし、もっと積極的にボールに関わる中で人数や距離感の問題もあった」。そして「判断と勇気、こういうところは足りない」というところは、われわれにも見てとれました。スカパー!解説の大西氏も言うように、前節の戦いぶりから失点を恐れるあまり、守りに入った気持が透けて見えたとも。なにより攻撃に転じた際の反転、押し上げのスピード、エリアに入っていく人数。熊本はまだまだだった。高木監督の「ディフェンスで頑張って、運もあって勝点1を取ることができた」という総括が全てでした。

それにしてもトミッチ。彼への対応策として「今日は形を変えたつもりだが…」と高木監督は暴露しましたが、結果的には、「J2の中でもトップクラスの選手で、どうしても力の差が局面で出ていた。手も足も出せないのではなく、手も足も出していたが上手くいかなかった」と言わざるを得なかった。昨年一年はペドロヴィッチ率いる広島でプレーし、今季は愛媛のバルバリッチ・サッカーの欠かせない中心選手となっている。この”オシムの教え子たち”ともいえる脈流が、熊本の前に立ちはだかる。

バルバリッチ監督にしてみれば「突破はしていたが、そのあとは攻撃性や積極性が足りなかった」「最後の部分で攻撃性や執着心がなく、運もなく得点に至らなかった」「攻撃には強さや精度が不足していた」と、しつこいくらいに繰り返し詰めの甘さを指摘しています…。ここまでのサッカーを確立していても、実際のゲームでは勝ち点1にとどまることの不条理。ましてやこのチームが、この順位にとどまっていることの不思議。サッカーとは本当に、ままならない。

「風の影響もあったし、前節よりシュートのことは意識した。それでも相手の方が状態がいいように感じたので、失点しなかったことは良かったと思うし、少しずつ良くなっていけばと思う」と養父は言う。どん底のような状況のなかで、天候という大きな”変数”も敵にまわし、それでもなんとか最低の結果は手に入れた。ギリギリで踏み止まった。わがチームにはまだ運がある。今はこれが精一杯の熊本の姿なのかも知れないけれど、何より次につながる勝ち点1だったのだと。そう思わないわけにはいけません。

4月15日(日) 2012 J2リーグ戦 第8節
熊本 0 - 3 松本 (13:04/水前寺/5,472人)
得点者:39' 塩沢勝吾(松本)、72' 鐡戸裕史(松本)、76' 多々良敦斗(松本)


昔むかしのエントリーで、試合途中に退席する人に対して「野球観戦じゃないんだから・・・」と揶揄した覚えがあります。しかし、今日ばかりは、3失点目を見届けた後、席を立つ人たちを責める気持ちにはなれませんでした。

「惨敗、連敗、見せ場ない」(熊日朝刊)。翌日の熊日も、これでもかといった見出しを重ねましたが、点差うんぬんというよりも、これほど情けない気持ちになることは、確かにこれまであまり記憶にありません。

「技術的にはひょっとしたら、50-50ぐらいの感じだと思うんですけど、メンタル面を測ることはできないので」と高木監督は言い、スタンドで観戦していた藤本主税もブログで「メンタルの要素が90%を占めてた」と指摘しています。藤本いわく、そのメンタルとは「頑張りの空回り、意思が噛み合わない、人任せのプレー、ゴールへの意欲、1対1の局面、セカンドボールへの意識、繋ぐ勇気、急がば回れの勇気、いろいろある」と。

高木監督からして「やりたいこと、選手たちにやってほしいこととか、相手に対しての対応や対策の部分が全く機能しない、非常に難しいゲームだった」と述べたように、90分間、押されっぱなし、修正も反攻の気配も見いだせない、そんなゲームでした。

しかし。確かに選手たち個々のメンタルの問題はあったかもしれない。ただ、試合を左右したのはそれだけではなかろうとも思うのです。前々節の岐阜戦を思い出していただきたい。あの日の熊本も試合の入り方はいつものように悪く、その後の内容も決して流れをつかめているとは言えませんでした。しかし、我慢強く粘り続けることによって、少ないチャンスに加点して、結果的に3点の大量得点で勝利した。今日の試合。全くその逆の展開。その分岐点になったものは何だったのだろうかと思うのです。

熊 本
 20白谷 
14武富19五領
7片山38藏川
8原田10養父
4廣井5矢野
 22吉井 
 18南 
後半7分 五領 淳樹 → 仲間 隼斗
後半14分 白谷 建人 → ファビオ
後半35分 原田 拓 → 西森 正明


松 本
 19塩沢 
8弦巻32船山
16鐡戸14玉林
20須藤38喜山
23多々良4飯田
 28飯尾 
 21野澤 
ハーフタイム 須藤 右介 → 小松 憲太
後半37分 玉林 睦実 → 久木田 紳吾
後半43分 弦巻 健人 → 木島 徹也


試合を見ていて、はっきりと感じたのは二つ。
前線の白谷が(あるいは前線の3人自体が)チーム全体の“フタ”になっていたのではないか?
90分のなかで修正が効かなかったのはなぜか?

最初の点については、まずCFの白谷の競い合いの弱さや淡白さはいわずもがな、あのポジショニングは指示だったのだろうかと。サイドに流れていてPAに入っていかない。トップで身体を張らない。そうなると武富と五領の2シャドーは、シャドーではなく前線で”むき出し”になってしまう。

前にボールが収まり切らないので、守勢が続く。DFラインも急造なので、競り合いに負ける。焦って跳ね返したロングボールのセカンドは拾えない。攻撃に転じるスウィッチの共有ができない。行くのか、行かないのか。ひとつの歯車の狂いが連鎖して、チーム全体が”動き”を失っているような悪循環。

養父が、「つなぐ部分ではストレスは感じなかったんですけど、最後の部分では、もっと積極的にシュートを打っていいと思います。」「…ちょっと打たなすぎかなと。前へ出て行くのは状況を見ながらなんですけど、最後のところの判断が悪いかなと思います」「シュートで終われば流れも良くなるので、最初はもっと打っていいのかなと思います」と。決して白谷ひとりを言っているのではないでしょうが、これだけ言葉を重ねて、しかもコメントの全てがこの点を指摘しているという珍しいものです。

格下と見下した”上から目線”がなかったか。綺麗に決めようと思っているのか、それとも「いつでも決められる」という驕りがあったのか。エリア内の密集で“脚を振れない”という意気地のなさ。危険を冒さない、危険地帯に入っていかない。アタッキングサードでボールは回しつつ、勝負をしない熊本。「シュートで終われば流れも良くなる…」という養父の言葉と裏腹に、前半はシュート1本、後半に至っては、途中まで1本のシュートすら打てない(打たない)という状況に、ファンが落胆するのも当然でした。

後の点については、少なくともファビオを入れれば空中戦での勝負が見込める、ターゲットができる。ということは言えるわけです。しかし、カードを切ったのは後半14分。指揮官の躊躇が見える時間帯です。それ以前に後半7分の時点で、五領→仲間を先に動かしています。ここで、仲間にセンターの“役割”を担わせたのかどうか。指揮官の迷いも感じます。交代のファーストチョイスが仲間だったことはファビオのプレースタイルに対する評価と、裏表ということではないでしょうか。

決して白谷個人のパフォーマンスをあげつらっているのではありません。白谷のプレースタイルと、今のチームのシステム、チームの要求する戦術のミスマッチではなかろうかと。後半は足が止まるといわれた松本をスカウティングしながら、”先行逃げ切り”というゲームプランを選んだはずの指揮官。しかし、そこでやはり後半投入のジョーカーとしてファビオをベンチに温存し、白谷を先発させたことは、戦術の”迷い”ではなかったのか。

それにしても…。では試合中での采配、90分間を通して「相手に対しての対応や対策の部分が全く機能しない」と言えるほどのカードのタイミングや采配だったろうかと。ハーフタイムでは、これまでにないほど激しい口調で選手を叱咤したと伝えられる。しかし、そもそも選手を最高のメンタルで試合に送り出すのもモチベーターとしての監督の最大の仕事のはず。まずそれに失敗しているという事実。まぁ、しかしそれに関しては「プレーの意識も含めて、それをうまく修正、コントロールできなかった自分に対しても、反省というか責任を感じている、そういうゲームです」という反省の弁があるのですが…。

初出場のベテラン藏川が「お互いにもっと要求し合っていいと思うし、思ったことは言わないと、チームは良くなっていかないと思う」というのは、相当に控えめな発言。そして、そこには確かに加入したばかりの、しかしベテランならではが感じる”メンタル”の部分、おとなしい選手が多いという熊本の特徴が表れているのを感じます。その”証言”は重い。

ただ。福王も怪我から復帰し、高橋もいるのだから、DFラインは”本職”に戻したらどうだろう。藏川も加入し、市村も復帰が伝えられる。ならば4バックに戻すこともあっていい。この際”原点”に帰ってみてはどうか。システムはしょせんシステム。選手の顔触れ、チームの熟成度、相手チームの対応…、色々な変数があって選択するもの。残念ながら、今の熊本、誰が出ても同じ戦いができる、というような層の厚いチームではなかろうと。長いシーズン、彼我の変数の潮目に応じて戦術を変化させてよいのではないかと。何度も何度も、その都度その日のメンタルのせいにして終わっていても、なかなか次への進歩は見えないような気がするのです。

4月8日(日) 2012 J2リーグ戦 第7節
栃木 2 - 0 熊本 (13:03/栃木グ/2,999人)
得点者:15' 棗佑喜(栃木)、83' 當間建文(栃木)


試合後の記者会見で、「今日は後味の悪い試合だったのか」という質問も出たようですが、まあ判定については色々とあるにせよ、わがチームの戦いぶりはと言うところでは、むしろ清々しさ(と言ったら誤解されるかもしれませんが)さえ感じるものでした。高木監督自身も「ネガティブな面ばかりがあったわけではなくポジティブな面もあったことを、僕はそこを重要視したいと思う」と述べたように…。

栃 木
22棗 8廣瀬
28菊岡10高木
14菅25小野寺
24ユ デヒョン17山形
29チャ ヨンファン6當間
 21武田 
後半22分 廣瀬 浩二 → サビア
後半29分 小野寺 達也 → パウリーニョ

熊 本
 9チェ クンシク 
14武富19五領
7片山13大迫
8原田10養父
4廣井5矢野
 22吉井 
 18南 
ハーフタイム 大迫 希 → 高橋 祐太郎
後半24分 五領 淳樹 → 白谷 建人
後半40分 武富 孝介 → 筑城 和人


互いに持ち味を出し合う序盤。互角の展開といえましたが、先に失点したのは熊本。菊岡に前を向かせると左サイドに走るユ・デヒョンに出される。大迫が追ったもののサイド奥から折り返されると、棗がニアで合わせてゴールイン。吉井も廣井も詰めていたのですが・・・。

さらに25分には、右サイドでの攻防。クンシクが當間への危険行為で一発レッドカードが示されて退場。

前半のあの時間帯、1点ビハインドで退場者を出してのアウェーの戦い。やれることも限られて、前半の残り時間は、とにかく失点を凌ぐので精いっぱい。時間が長く感じる試合になる。誰もがそう思ったはずです。

しかし後半に入ると。確かに序盤は一方的に栃木に攻め込まれますが。DF高橋をFWに入れた熊本。前線のターゲッを得ると、セカンドボールを支配し始めて、徐々に攻撃を形づくる。数的不利をまったく感じさせないばかりか、ポゼッションでも圧倒し、押し込み、決定機をつくる。DF高橋をピッチ上に送りこんだ意味は、守りぬくことではなく、攻撃に転じることでした。

「相手がひとり多いのにブロックを作り、こっちに余裕を持ってボールを持たせたのでチャンスを作れたところもある」(熊本・原田)という見方もありましたが、「後半は相手が蹴り始めて、それを跳ね返してセカンドボールを拾えたけど、そこからのパスが適当になってしまった。ミスが多く、そこから2次攻撃を受けてしまった」(栃木・菊岡)。そう相手は感じていました。確かに栃木は早く2点目を取って熊本の息の根を止めようと、攻め急ぐあまり、かえって”稚攻”に陥った。栃木の弱点があらわになりました。

思えば、前半クンシクの退場からのピッチサイド。戦術ボードを見つめて考え込む高木監督が映し出された。そのときピッチレポーターの佐藤悠介氏は言う。「熊本の戦い方はハッキリしたといえる」と。それはもちろん「守ってカウンター」しかないという意味でした。確かにポゼッションは栃木に分がある。しかし指揮官をはじめ熊本は、たじろいではいなかった。むしろ何も変わらないと。ひとりの少なさを感じさせずにポゼッションを目指しました。それが今年目指す熊本のサッカーでしたから。

高橋の前線起用も奇策を感じさせない落ち着きがありました。十分にターゲットになっていたし、相手DFに対してもとても粘り強かった。周囲との連携もよく機能していた。中盤陣は出足よくセカンドを拾うと、アタッキングサードでは人数をかけてパスを回し、ゴールに迫っていきました。

スカパー!の栃木側の中継はいつも楽しませてもらえます。解説の水沼氏と佐藤氏の二人が調子よく栃木を褒め称えているかと思えば、(それがフラグのように)一転、熊本が攻勢を強めると、手のひらを返したように苦言を呈し始める。今日もそんな苦笑する場面が見られました。同点に追いつくのも時間の問題に感じられた。

しかし、そこで敵将・松田監督が打った一手に熊本は完全に封じ込まれます。中盤の支配力の弱さ、特にボランチのところの活性化に、怪我から復帰したばかりのパウリーニョを起用した。昨夏、パウリーニョを欠いてから大失速した栃木。その存在は誰もが知るところでした。長い長いリハビリ期間からの生還。キャプテンマークを巻かれて走りだすパウリーニョ。迎える選手たち。万来の拍手・・・。パフォーマンスはまだ完全ではないかも知れない。しかし、栃木のイレブンを落ち着かせ、鼓舞させるには、それで十分でした。「してやられた」。テレビの前で地団駄を踏みました(笑)。一転して流れが変わりました。

「勝てた試合だったのに・・・」。

翌日、憤慨が収まらない同僚の言葉がありました。それは10人で戦うことを余儀なくされた不可解なジャッジに向けられたものではなく、その前の失点の場面、あるいは自分たちでつかんだはずの時間帯で、しかし詰めの甘さ、選手の勇気のなさを嘆いていました。いろいろな見方がある試合になりましたが、敗戦という事実だけを突きつけられました。アウェーではまだ勝ち星がない。その事実を。

監督は「ひとつ反省しないといけないのはセットプレーから失点したこと。そこは反省すべきだと思う」と言う。しかし、「苦いコーヒーだけを飲み続けたわけではない。甘いカプチーノもあった」とも。
それはきっと、佐藤悠介氏が定石どおりだったらと予言した”戦い方”ではないことができた、あのピッチサイドで首を傾げながら考え抜いた”攻撃的奇策”に、一時とはいえ選手たちが順応した手ごたえを意味しているのではないでしょうか。

借金を返済する機会を棒に振って、まだ負け越しの状態が続きます。さらにFWはひとり出場停止となり、先発陣の危機的状況も伝わってくる。しかし、そんな厳しいなかでも、今シーズン、なぜか次の試合を観たい、早く週末にならないかな、という気持ちが一層沸く…。わがホームチームだからというこれまでの気持ちともちょっと違う。今はまだそれをうまく説明できませんが。

4月1日(日) 2012 J2リーグ戦 第6節
熊本 3 - 0 岐阜 (13:03/水前寺/3,930人)
得点者:33' チェ クンシク(熊本)、47' 五領淳樹(熊本)、53' 五領淳樹(熊本)


3-0という“会心”のスコア。いつの間に3点取れるチームになってしまったのでしょう(笑)。しかし「決して内容は素晴らしくいいものではなかったと思います」と高木監督が振り返るように、3-0の内容ではなかったというのが、素直な感想でしょう。シュート数も同じ9本同士。どちらが先制するかでゲームの行方は変わっていただろうという部分もあったし、後半早々の追加点が何より相手にダメージを与えました。

しかし、だからと言ってラッキーだけではなかった要素もいくつか確実にありましたね。流れが悪いなかでも、少ないチャンスで“加点”していけたこと。過去には、強いチームにはそういう“強さ”があると、負けを認めたくないような内容の試合がありましたが、今日はそんな勝者がわれわれでした。

ここ数試合、プレスと言うより、さらに本質的な“ボディコンタクト”の在りようについて、注意して見ているわけですが。この試合も、当たり前のように激しいぶつかりあいで挑んでいく。フィフティフィフティのボールに対し躊躇せずにトップスピードで取りに行っているように見える。選手としてはケガの危険も非常に大きいし、勇気もいるし。「勝っていないからこそ恐い相手」(スカパー!)と戦前、岐阜を評していた高木監督。相手の出足も速く厳しいものがありました。

熊 本
 9チェ クンシク 
14武富19五領
7片山13大迫
8原田10養父
4廣井3高橋
 22吉井 
 18南 
後半16分 片山 奨典 → 筑城 和人
後半30分 チェ クンシク → 仲間 隼斗
後半37分 五領 淳樹 → 白谷 建人


岐 阜
14井上 10樋口
7地主園29廣田
6服部33キム ジョンヒョン
24村上7野田
16キム ドンゴン3池田
 22多田 
後半10分 廣田 隆治 → 染矢 一樹
後半18分 キム ジョンヒョン → 橋本 卓
後半42分 キム ドンゴン → 田中 秀人


オーソドックスな4-4-2システムの岐阜は、定石どおりサイドを使ってくる。熊本の両SHがDFラインに押し込まれて、前線をフォローする枚数が足りない。セカンドボールが岐阜側に渡る回数が多い。加えて、この日の小川主審のいかにも彼らしいゲームの流れを寸断するような笛の多さが、リズムに乗れない遠因にもなりました。

ただ、大きなサイドチェンジが片山に収まり始めたころから、若干芽生えた熊本のペース。33分、養父の右CKをニアで高橋が落とすと、クンシクが左足アウトで払うようにゴールマウスに押し込みました。

「練習していた形で決めるだけでした」(J’s goal)と、移籍後の初得点を振り返るクンシク。「最初のCKのときにGKが前に出てきたので、その後はゴールから逃げるようなボールを蹴った」(熊日)という養父の冷静な分析も生きました。

水前寺競技場はコンパクトながら設備面では不便です。ハーフタイムの小用から帰ってくると後半のホイッスルはもう吹かれていました。小走りに自席に急ぐ。しかし逆に、そのおかげで2点目のシーンを選手と同じピッチレベルで、目の前で見ることができました。やはり右CKからの養父のボール。今度はクンシクが中央で競って、ゴール前の五領がバックヘッドで反らした。なす術もないGK。沸きあがる歓声。おもわず通路ですれ違う見知らぬ人とハイタッチを交わします。

勝利を確信させた3点目は、それからわずか6分後。DFラインの吉井からクリアぎみに高いボールが中盤に送られる。クンシクがそれを相手の裏に出すと、下がりながらのDFのクリアが小さい。詰めていた五領が、それを見逃さずダイレクトで叩く。強烈なシュートがゴールネットに突き刺さりました。

今日目撃したのは、高木監督が「時間が経つごとにチームが変化して、そして粘りながら、いい守備の体系を整えながら、ボールを奪って前に出る、そういうシーンが少しずつ出てくるなかで、後半、もしくはセットプレーで点が取れるように意識が変わっていったというか、そういう流れを作っていったのは、粘りの部分が出てきたものじゃないかなと思ってます」と言うところ。この“粘り”という言葉は、実はプレーの質というところでの、激しさ、厳しさを意味しているようにも感じられます。

2得点のニューヒーロー。ルーキー五領のプレーぶりも、ギリギリでコントロールできるところに収める技術ももちろん高いものがあるが、印象に残るのは、やはり、“止められるものなら止めてみろ”と言わんばかりの突進、仕掛け。何かこう、攻撃しているのに激しいプレスをかけているような。ディフェンダーを避けるでもなく、向かっていって突破する。

翌日の熊日紙面はまさに五領デー。強烈な印象とブレークの期待はもちろんです。しかし、今日もまたゲームの内容を物語っていたのは、実は養父のプレーではなかったでしょうか。

直接に得点に結びついたセットプレーもそうですが、ピッチ上で今わがチームを支配しているのは間違いなく養父ではなかろうかと。われわれも感じているのは、これまでの4シーズンとはまた違うはじまり方、入り方だなと思うこと。試合ごとに、少しずつですが、明らかに良くなってきている。何だろうと考えるまでもなく、別に難しい話でも何でもなく、養父と周囲の連携、養父との呼吸がひとつひとつ修正され、マッチしはじめていることではないかと。ゲームが止まると、養父を呼び寄せ指揮官がボードを見せながら修正指示する姿が見られる。熊本の新しい10番に寄せる期待がそこにある。まだまだ合わない場面も多い。それはもっともっと良くなっていくだろうという糊しろの大きさでもあろうかと。

怪我人も出てきたし、主将・藤本は長期離脱も予想されます。押しこまれる時間帯も多かった。しかし吉井が入った守備ラインは、前節よりだいぶ分厚く守っていた。必ずカバーが入っていました。

新しいタレント(才能)をうまく融合させながら、連携を深めながら、今シーズンのスタイルがさらに明確になってくるように。時には今日のような試合巧者ぶりを発揮して…。まずは勝ち星が先行するように持っていければ。そしてコツコツと勝ち点を積み重ねる。そうすれば必ず上が見えてくる。そう思います。