5月27日(日) 2012 J2リーグ戦 第16節
熊本 2 - 1 山形 (16:03/熊本/3,248人)
得点者:12' 萬代宏樹(山形)、13' 武富孝介(熊本)、45'+1 武富孝介(熊本)


発表された先発陣は、前日の熊日の予想フォーメーションと同じものでした。確かにここ最近は途中出場で前線に投入されていたものの、本来DF登録の高橋の先発FW起用。シャドーには武富に加え、これもMFが本職の西森。いかにも急造感の漂う3トップ。「うーん、ここまできたか」。それはチーム事情もあれば、悩める指揮官の迷いにも感じられ、「さあ戦おう」というようなものとはちょっと遠い気持ちでゲームを待ちました。

山形戦

「山形は大人のチーム」(スカパー!)「例えば斜めのランニングとかクロスという部分で、いいボールを配給されて、いい攻撃のシーンを作られてしまう」(J's goal)と高木監督がスカウティングしていた通り、左サイドを攻め上がった石川が、中央で潰れ役になった中島、山崎を越えてファーにクロスを送ると、走りこんだ萬代にフリーで打たれる。いとも簡単に、シンプルに失点してしまいます。立ち上がりのこの脱力感さえ感じる失点シーン。時間にして12分。スタジアム全体に靄がかかったような、ドロンとした空気。相手は首位の山形。これまたスタジアムの誰もが、前節・千葉戦の悪夢を思い出していたに違いないでしょう。

しかし、そんな空気を一掃させたのは、わずか1分後の武富でした。右サイドから前を向いた高橋の素早いスルーパスに、ニアに飛び込んでわずかなGKとゴールポストの隙間を流し込む。

「正直、入りもあんまり良くなかったし、ちぐはぐな感じで失点してしまったんですけど、今日はタケ(武富)がすぐ取り返してくれたのがデカかった」というのはゲームキャプテンの廣井。0-1のビハインドの状態が続いていれば、選手も、ファンもその空気の重さに押しつぶされていたかもしれない。記念すべきこのホーム100点目のゴールは、おそらくシーズンを振り返ってのベストゴールのひとつ。そして、チームを救ったゴールに数えられることは間違いないでしょう。それほどの価値を感じました。

この同点劇で、落ち着きを取り戻した熊本。しっかりセットして前からの守備が機能し始める。バイタルエリアもきっちり埋めて山形に使わせない。前線でのチェイスから、中盤まで降りてボールに触る回数の多い西森。上下に激しく動いている。山形の要注意選手、ボランチの宮阪のまわりで、彼を自由にさせない。なるほど、どちらかと言うと前目の守備的な意味が、西森に課せられた役割だったのかも知れません。

互いに五分五分かと思われる展開。同点のままで前半も終了かと思われたアディショナルタイム。右サイドで西森とのワンツーで抜け出した高橋が深くえぐりクロスを入れる。そこにたった1枚で走りこんでいたのは、またしても武富。DFとGKに挟まれそうになりながらも、一瞬早く触って、ゴールに押し込みました。

その瞬間、総立ちのスタジアム。タオルマフラーを持っている人は皆、グルグルと回して歓喜を表現する。「武富オーレ!武富オーレ!」のチャントと共に。「先週取れなかった分を取り返そうという気持ちでいっぱいだった」と本人が言うまでもなく、これまでの鬱憤を晴らすかのようにスタンド中のファンがマフラーをいつまでも回し続けました。

コンコースですれ違う皆が、「よし!」という喜びの表情。しかし、もうすでに後半の45分に思いをいたし、その長い時間を“守れるか”、いや“守りきるぞ”と意思を固めたに違いない。それほど、勝利も、得点からさえも遠ざかっていたわがチームでしたから。

本当は、いえ当然後半も、攻めに出てくる相手を堅く守りながら追加点で突き放すという戦略だったでしょう。大事な開始15分をなんとか凌いだ熊本。しかし、この日から急激に暑さを増した天候のせいか、運動量が落ちてきた。カウンターへのサポートが遅れる。跳ね返してブロックをセットしなおすのがやっとという状況に陥ります。

西森から大迫、片山から市村、高橋からクンシクという交代カードは、どれもこれも高木監督の“攻め”の意思表示と見えました。しかし山形の猛攻の前に、押し戻せない。ほとんど熊本陣内での攻防で時間が進む。苦しい。1点差を守りきることが、こんなに苦しかったのか。勝ち点3を奪うということは、こんなに苦しいことだったのか。AT4分という時間は、これほど長いものだったのかと。

「後半はホントに守備練習みたいになってしまいましたけど、そういう状況でも皆が集中してくれて、皆が頑張ってくれたと思います」と言う岩丸。一方的な展開になった後半45分を守りぬいた。その頑張り。少なくとも2点は止めた。

殊勲は武富ですが、この日忘れてはならないもう一人のヒーローは、アシスト2つを記録した高橋だというのは誰しも異論のないところでしょう。試合後は痛々しいような消耗ぶりだった。タテにもワイドにも非常に幅広い動きをしていた。そして、空中戦にも。そのヘディングの強さ。ほぼ制圧していました。

FWとしての初先発。練習はしているといっても、かかる重圧は相当なものだったではないでしょうか。高橋が単に、トップ、ターゲットとしての機能だけでなく動いたこと。前の3人が流動的だったこと。そしてセレッソや神戸時代にSBも経験していたことが、あの絶妙なラストパスを生んだのだと思います。

敵将・奥野監督は「熊本さんがこの1週間、またはこれまでトレーニングを積まれてきた形が表現されていたんじゃないかなと。ですから的確にボールの出どころの芽を摘むのと同時に、コンパクトな守備をされていたんだという印象を持っています」と言う。振り返れば、あまりにあっさりと先制してしまった、という感じが山形に”災い”したのかも知れないなと。逆に、比較的自由にボールを持たせてくれた。これは何なんだろうというくらいにプレッシャーがなかった。後半、なりふり構わないブロック守備を徹底した熊本。この暑さのなか、結果的に最後までなんとか動けたのも、そのおかげがあったかも知れないと感じました。

非常に厳しいと予想していた上位3チームとの対戦で勝ち点4。今節に限って言えば10戦負けなしで首位を走っていた山形にストップをかけた。これまで一方的に分が悪かった山形に初勝利をもぎ取ったのですから、これは金星と表現しても過言ではないのではないかと。

ただ、前節、相当悲観的なことを書きましたが、まだその心境はあまり変わっていません。「今日勝ったことは素直に喜んで、次の横浜FC戦に向けてもしっかりやらないと同じ過ちを繰り返してしまう可能性もあるし、次にしっかり勝ってこそ今日のゲームになると思います」。そう言う吉井の言葉どおり。

折りしも、北嶋秀朗選手の柏からの移籍というビッグニュースが発表され、主将・藤本や南の回復も期待される。もちろん、それはとても待ち遠しい、明るい材料であることに違いありません。ただ一方でわれわれは、今、出場機会を得ているメンバーが、それまでに勝ち点を積み上げてくれることを何より望んでいます。今日のこの布陣が、単なるフロックではないと証明してくれることを。決して先発の座は渡さないぞという覚悟で。そうやって切磋琢磨し、刺激しあってこそ、層の厚いチームになると思うからです。

5月20日(日) 2012 J2リーグ戦 第15節
千葉 4 - 0 熊本 (16:03/フクアリ/10,584人)
得点者:10' 藤田祥史(千葉)、19' 伊藤大介(千葉)、21' 田中佑昌(千葉)、48' 田中佑昌(千葉)


3年前の8月。当時木山氏が監督をしていた対水戸の敗戦のエントリーで書いていた『「ポゼッション」と「カウンター」は対立図式ではない』という彼の持論。新たに今季から指揮をとり始めた千葉というチームで、そのさらなる具現化をまざまざと見せつけられたような気がします。しかも3-4-3システムの高木・熊本サッカーを崩すのはこういう方法で、という“お手本”のようなゴールシーン。2点目、3点目はまさしくそのように映りました。

コイントスでいつものようにエンドチェンジを要求した熊本でしたが、テレビ画面越しに見ても超アウェイの千葉側ゴール裏を背にして、本当に大丈夫だろうかという心配になりました。精神面を別にしても、実際問題としてGK岩丸の指示が、あの騒然とした敵側サポーターの声のなかで、しっかりDFラインに届くのかなと。

「後半戦を自チームのDFラインを目の前にして指揮したい」というのが、高木監督のモットーですが、それは前半を0-0で折り返す、あるいはあわよくば先制点を取るというゲームプランのうえでのことだろうし、その意味ではあの“敵側”のエンドで果たして0に抑えきれるのだろうかと。

千葉戦

試合序盤は、それは杞憂だったかなと感じさせる入り方でした。熊本は、解説の永井良和氏が予想していたように引いて守りを固めるではなく、アグレッシブに攻めに出る。その意外性にしばらく千葉はたじろいだものの、その流れを一気に逆転させたのは藤田の先制点でした。熊本右サイドの密集地から武田が低く上げたクロス。ニアで一瞬にして福王と入れ替わった藤田が左足で角度を変える。全くもって藤田らしい得意のプレー。ナイフのように切れ味のするどいそのゴールに、うろたえたのは熊本の方でした。

そして指揮官が試合後に言ったように「完全に後手を踏んだような前半」。われわれから見ても“ビビって”いたような前半。のまれてしまった前半。これはもうサッカー以前の問題もあったのかなと。

「相手の(サポーターの)ブーイングがある時にボールをすぐに蹴ってしまう。リスタートで相手のサポーターがブーイングした時にすぐ蹴ってしまう。そういうのはたぶんやっぱり経験値(の問題で)、これから経験してそういう状況でも冷静に『ブーイングするんだったらブーイングしてくれよ』ぐらいのものを持っていかないと(いけない)」。指揮官が率直にそういうふうに言ってしまうのも、それはそれで情けないことなんですが。

そして冒頭表現したように崩しの“お手本”のような追加点。熊本の前からのチェイシングをうまく剥ぐと、ぽっかりと空いたバイタルエリアを自由自在に使ってボランチの伊藤がミドルで決めた2点目。その視野の広さを一番警戒していた選手、兵働に左サイドに振られ、3バックのスライドが追いつかなかった3点目。気持ちを切り替えて1点ずつ返していこうとしていた後半の矢先に、ミスから高い位置でうばわれて反転された4点目。

どれもこれも唸るしかない失点シーンだったのですが、それよりなにより千葉の切り替えの速さには驚かされた。選手個々の力量は昨年も一昨年もあったのですが、木山監督が更に新たに植え付けたのがそれなのだとハッキリとわかりました。

相手のことばかり褒めてしまっていますが、それくらい打ちのめされたのですから“力負け”と言っていいでしょう。唯一の救いは、大量失点のなか“切れず”に果敢に向かい合ったこと、スタイルを変えずビルドアップして後半シュートシーンを量産できたことか。しかしそれでも、ゴールが割れなかったという事実には変わりはないのですが…。後半から前線に投入された高橋が言うように「(後半に攻め込んだ場面は)千葉はスコアが4-0になって心理的に隙ができたから、ああいう展開になったと思います」という選手自身にも冷静な見方がある。

甲府、千葉、山形と続くこの3試合は、今の熊本にとって相当に厳しい戦いになることは覚悟していました。そして、その2試合目となる今日のゲームは、その通りの厳しい結果を突きつけられたということですね。

さて、このブログを長く読んでいただいている人からすれば、わがチームがJに上がってこのかた、シーズン中にわれわれが順位を気にし、それに一喜一憂することはあまりなかったことをよくご存知だと思います。昇格年度は、どれだけ通用するのかしか眼中になかったし、それ以降も積み上げたものを確認できればよかった。しかし、今季は違う。

まだまだ短いJリーグの歴史ではあるけれど、今年は転換点になるシーズンと言えます。それはご承知のとおり降格制度が加わったこと。もちろんJFLの1位、2位がJへの参入条件を満たすチームかどうかによって状況は異なりますが、22位の自動降格、21位の入れ替え戦が今季のレギュレーションだということ。

やはり勝ち点を積み上げないと…。1つでも積み上げなければ…。気が早い話かもしれませんが42試合のリーグ戦も、第15節。ちょうど中盤に差し掛かるというところです。各チーム、これから先は戦い方も違ったものに変わってくるのではないかとも想像できる。このリーグで生き残るというひとつのことのために・・・。

J1からJ2への降格とはわけが違う。あるいはJFLから降格したあの年の思いを二度と思い出したくない。それはチームの存続にも直結しかねない一大事。そんなリアリティをしっかりと心に刻みながら、われわれも腹を据えて闘わねばならない。それほど大事なホームチーム。そんな思いがあります。

5月13日(日) 2012 J2リーグ戦 第14節
熊本 0 - 0 甲府 (16:04/熊本/4,182人)


試合終了後、ゴール裏に行く甲府の選手達に対して、サポーターから強烈なブーイングが、これでもかと言うくらいに浴びせられました。甲府サポーターの不満の声が、このゲームを物語っている。滅多にこんな言い方はしないんですが、熊本にとって今日は”勝てた試合だった”。甲府に決定機を作らせなかった。そして多くの決定機を作った。1分7敗という一方的に分が悪い対戦成績。染みついた苦手意識。その苦い思いを払しょくする絶好の機会だった。だからこそ余計に。残念です。

長くCBの中心を務めていた吉井を累積警告で欠く。その代わりには本職ともいえる福王。前節は藏川が務めた左WBには片山が復帰して、その藏川は原田とともにボランチに入りました。おやっと思ったのは、敢えてよく古巣対決という起用のしかたで選手を鼓舞する高木監督が、養父をベンチスタートさせたこと。特に前日の熊日が予想した養父のシャドー起用という“奇策”にワクワクしていただけに。ただ、それは後半に準備されていたカードであったことがあとでわかるのですが、またある意味“幻”のフォーメーションに終わってしまうのです。

甲府戦450

とても慎重に試合に入ったという緊張感は、観ているわれわれにも伝わってきました。「前半のプランニングとしては、基本的に失点してはいけないということで…」と高木監督。熊本はいつもよりリトリートして、しっかりブロックを作る。終始、バランスを崩さず、サイドもバイタルもガッチリと固める。ポゼッションは与えるが、崩されない。そのまま我慢。じっと我慢。奪ってはシンプルに長いボールで相手DFの裏をつく。これを斉藤や五領が粘ってCKをもぎ取る。

「サイドの選手があまり速くアプローチに行ってしまうと、我々がギャップを作ってしまうことがあったので、意図的に開けない形を選択しました。前の3人の追い方に関しては、人につきすぎて1トップで両サイドを下げられる状況になったので、そこは途中で指示も出したんですが、なかなかうまくいかなかった。そこがうまくいけば、もっとサイドも高い位置に出れたと思いますが、相手のボランチのところに効果的なアプローチがかけられなかった分、後ろを割られることは前半に関しては無かったと思う」(J's goal)と手の内を明かす高木監督。いつになく饒舌に感じるのは、今日のこの采配に手ごたえを感じたからなのでしょう。

15分の右CK。競ってこぼれたところに福王がグラウンダーで撃つものの、DFに当たりポストに跳ね返される。再び撃つがGK。

甲府は序盤こそシステムのミスマッチを生かしてポゼッションを持ったものの、徐々に停滞してくる。目立つパスミス。精度のないクロス。あの甲府が…。

片桐(甲府)が言います。「チームになっていなくて、個人で行っている感じが強い。何が悪いのかはっきりしない状況。決定的なチャンスを作れない。言いたいことを全部言わないけれど、何が問題なのか分からない不安もある」。

34分、五領が左サイドでひとり交わしてクロスを入れる。ゴール前には合わないものの、スタンドが沸く。今日の五領もいい。ミスもある。ボールを獲られることもあるけれど、前に行く意思、向かっていく闘志ははっきりと伝わります。相手の嫌がる動きをしている。もう少し。もう少しだという感じ。

後半に入っても47分、左CKから福王のフリーのヘッドは味方に当たってしまう。前節から引き続きミドルの意識も高い。大きくはずすこともあるが、際どいシュートも2本、3本。54分のバイタルエリアからの藏川のミドル、64分の原田のシュートもGK荻に阻まれる。ゴール前からのこぼれ、セカンドを意識したポジションどりで、シュートまで持っていく形ができていました。

そして斉藤から武富への交代。長い故障から癒えたばかりの武富がピッチに登場すると、待ちわびていたファンの盛大な拍手。何となく一回り体が大きくなったような。さらには五領から養父。このタイミングで熊日予想どおりの養父のシャドー。彼の実力を知っている甲府相手だからこそ、一番効果的な時間帯で一番嫌な選手の”攻撃的な”投入。よーし、さぁこれからだ。そう勢いづいたところだったのですが…。

原田が高崎を残り足で払ったという判定で、この日2枚目のイエローで退場。一気にプランの修正を余儀なくされる。スタンドで見守っていたであろう主将・藤本は、自身のブログで「あえて拓に苦言を言うならば、あの場面は我慢しなければいけなかった。カードを1枚もらっている中で、どうしようもない場面ではなかった」と指摘します。それも、その試合展開だけを悔やむのではなく、「チーム状況も苦しい中、大事な選手が出られなくなるのは、この試合だけではなく、次の試合にも影響する。よくよく理解して、プレーの選択をして欲しい」と。全くそのとおりでした。

それでも指揮官が「10人になってからも、1.5人とは言わないまでも、1人分を上回るようなプレーを見せてくれた」と言うように、ボールは確かに持たれてしまうが、熊本のバランスは変わらないし、チャンスを作るのは熊本。85分には養父のFK。クンシクに代わって入った高橋に惜しくも合わず。アディッショナルタイムに入っても、スローインから養父が、走りこんでくる市村にマイナスパス。決定機でしたがシュートはゴール左にそれていきました。

終盤、審判の判定をめぐって、やや集中を欠くようなゲームになりましたが、後半45分以降、4枚のイエローをもらう甲府。(それまでの90分は熊本だけが4枚のイエローと1枚のレッドだったわけで)。いかに甲府側にも焦りがあったかがわかります。

J1からの降格チームの甲府。新たに就任した城福監督の甲府は「ムービーング・フットボール」を標榜するとおり、かつての大木さんが培った”クローズ”戦術とは違い、ピッチを大きく使ってくる、いわばオーソドックスなものでした。しかし、何か動きに約束事があるのか、オートマティズムも無ければ、個の打開もない。これが現在リーグ得点王のダヴィや、守りの要の山本を欠いた試合だったからだけなのか。だとしても(だとしたら)、今日は甲府を下す絶好の機会でした。

南の怪我で、前節途中からゴールを守るGK岩丸。今日はスタートから安定したセービングでチーム全体を落ち着かせました。「皆頑張ってくれているし、GKが僕に替わって、皆がシュートを打たせないようにしてくれてるのかなと思う」というコメントは、謙虚な上になかなか深い。

「スタジアムの雰囲気も、何かしら僕の中では(今までと)少し違うなという雰囲気があって、立ち上がりから選手たちにパワーを与えてくれたなというのを感じてます」と高木監督が言うのは、確かにわれわれも感じたことでした。それは今節から試合前の選手紹介で、DJコバとの掛け合いに選手別のオリジナル・コールを交えるという”演出”の効果もあったに違いありません。一体感が増した。バックスタンドへの呼びかけもしかり。ただ、それだけではなく何だろう、ゴール裏の声も低く、声量も大きく感じるようになった。それは文字通り”腹の据わった感じ”というべきか。

さあ、千葉、山形と続く対戦。下を見ると怖いので見ないようにしているけれど。確かに勝ちからはずいぶん遠ざかっているけれど。勝ち点1の意味は重い。積み重ねること。それしかない。ここが踏ん張りどころだと信じて。

ああ、それにしても惜しかった。

5月6日(日) 2012 J2リーグ戦 第13節
徳島 1 - 1 熊本 (13:04/鳴門大塚/4,027人)
得点者:54' 市村篤司(熊本)、80' 津田知宏(徳島)


ようやく。ようやく得点シーンを見ることができました。長く続いた無得点の時間。やっと、ほっとした。しかし、試合自体は同点に追いつかれ、結果は痛み分けに終わりました。

”鳴門の風”は曲者でした。今日もピッチボード看板が立てられないほどの強風、その風下でスタートした前半の熊本。しかし、ある意味でその風をうまく利用して主導権を握ったのだといえます。裏へ、サイドへ、深いスペースをついて逆風へ向け大きなボールを入れる。それが徳島のDFラインを見誤らせる。

徳 島
22ジオゴ 19キム ジョンミン
18宮崎10鈴木
4エリゼウ27花井
6西嶋3橋内
2三木33福元
 21オ スンフン 
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後半15分 キム ジョンミン → 津田 知宏
後半24分 三木 隆司 → 濱田 武
後半37分 ジオゴ → 徳重 隆明


熊 本
 9チェ クンシク 
17斉藤19五領
38藏川15市村
8原田10養父
4廣井24筑城
 22吉井 
 18南 
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前半12分 南 雄太 → 岩丸 史也
後半32分 養父 雄仁 → 西森 正明
後半35分 五領 淳樹 → 大迫 希

熊本のシステムは変わらず3-4-3。出場停止の片山のところにはユーティリティ溢れる藏川が入る。ダブルボランチの一角に原田が復帰。

この数試合と同じように熊本の入り方がいい。9分、右CKがファーに抜けたところを原田が拾って再び低いボールで入れる。エリア内でスクランブル。こぼれたボールに廣井が反応。左に広げて打とうとするがDFが2人入る。徳島の素早い反応に阻まれる。32分には、五領が左サイドえぐってクロスを入れると、斉藤が中央で頭に当てるがボールは高く上がって右に流れる。ファーに入り込んだ市村が、そんな難しいボールをダイレクトボレー。GKがたまらずはじくが、こぼれたところに詰める選手がいない。惜しい。

一方の徳島、これまでのような”怖さ”が全く感じられない。攻撃が散発と言うべきか、人の厚みがないというべきか。小林監督が「あまりにも質が低すぎた」という点がここにあるのか、昨年の徳島とは様変わり。とにかくミスをしてくれる。ミスとは見えない精度の低いパスも。今日も出足のよい熊本の前線から始まる組織的なプレスの成果もあるにせよ、中盤から上、前線には全く収まらない。これが前節松本戦の勝利まで10試合勝ちがなかったという、徳島らしからぬ今季の低迷の原因なのかどうか。

そんな徳島の状況の悪さに大いに助けられはしたものの、今日の熊本、むやみにいかない。前に縦に、シンプルに攻める。少ないタッチ数でスピーディに運び、思いっきりミドルを打つ。打つ。ゴールを狙う姿勢はいつも以上でした。

後半に入って若干、徳島の修正が奏功する。小林監督が”鳴門の風”の特徴を熟知したのか、定説とは違って「組み立てるには風下の方がいい」(スカパー!)と言ったように、前半の熊本のように風下になった徳島がゲームを支配するようになります。

バイタルで拾って、徳島がパス回しを続ける。熊本が何とか奪っても、また奪い返される。スルーパスにジオゴが抜けて、ゴール左45度から完璧なシュート。しかし、ボールはポストに当たり事なきを得る。

その一瞬の反転攻勢でした。GK岩丸から左の原田に素早くフィード。原田が大きなサイドチェンジでゴール前に送ると、駆け上がっていた市村はすでにPA内。DF一人を左に切り交わすと、左足で冷静にカーブを掛けた。ボールはゴール左ポストに当たりネットに吸い込まれる。実に、実に7試合ぶりのゴール。市村にとっても今季初ゴール。雄叫びを上げる市村。それに集まるチームメイトの誰もが、長い苦境を打開したこの”一発”の重要性を知って、手荒い祝福を市村に容赦なく浴びせました。

しかし、熊本が不運だったのは、GK岩丸が「あの時間帯、疲れてきている状況で津田選手が入ってきたことはDF陣にとってはすごく嫌な交代でした」と正直に証言するとおり、9節以降怪我で戦列を離れていたFW津田が、この試合から復帰。そして、この大事な時間帯で投入されたことでした。足が止まりかけていた熊本に対して津田の投入は、確かにきつかった。前線に収まり始める徳島の攻撃に、熊本の守備が、ある意味いつものように後手に回り始める。

養父に代えて西森。藏川をボランチに回して、西森は左WBに。なんとか活性化を図ろうとする熊本でしたが、勢いは徳島に。波状攻撃のなか、ボランチの花井が拾うと縦に入れる。津田がみごとに反応して裏に。岩丸が飛び込みますが、それを交わした津田。身体のどこかに当ててでも、というような体勢でゴールに流し込みます。

熊本は五領に代えて大迫を投入。前半早々に痛んだGK南の交代というアクシデントで交代カードを一枚消費していた熊本にとっては、これが最後の切り札でした。それに対して、徳島はジオゴに代えて、どうも熊本には相性のよくない徳重の投入。

不思議なもので、先制点を取ったあとの熊本も勢いがありましたが、同点にしたあとの徳島も足が止まらない。熊本は徳島の攻勢を跳ね返すのがやっとという印象で、なんとか勝ち点1を持ち帰ったのでした。

「勝ち切れなかったことが非常に残念なゲーム」と、高木監督は試合後語りました。そして、勝ちきれなかった原因は徳島の交代カードによって、試合の流れを持っていかれてしまったことだと。具体的には「濱田選手が入って花井選手と組んだのですが、彼ら二人は非常にスキルが高いものがある」「最後も1本花井選手が本来の持ち味を出しましたが、それも多分津田選手が入ってきたからだ」と言う。

南のアクシデントで、熊本の交代カードが2枚しかなかったことはもちろんですが、リードしていた状況での西森は、当然ながら流れを守りにいったもの。同点にされてからのカードは1枚しか残っていない。そして大迫の投入。よくやったが、及ばなかった。結局は「そこをどうしても閉めなければいけないということになった」が「切るカードが2枚しかない中では、守備的にやるか攻撃的にやるかというのではなくて、現状に合わせてやるしかありませんでした」というのが実際なのでしょう。

徳島・小林監督は出来の悪かった前半を評して、「どうしても勝たなくてはいけないという想いがあり個人でのプレーになってしまう。やり過ぎている選手もいるし、時にはうまくいくけどそれはチームとしてどうなのかということもありました」と言う。しかし、後半打開したのも津田の突破力、そこへの花井のホットラインといった個の力ではなかったかと。チームとしてのミスを嘆きつつも、結果的には”個人”の技量でなんとか同点にした試合だったように思えます。チームとしては、全く機能していなかった徳島。しかし、数少ない決定機を担える。そんな個人がベンチにいるというのも徳島というチームの今なのでしょう。

対して熊本。チームとしての攻撃の内容は良くなっているといえます。しかし逆に、ここぞという”個”の力は、相変わらず頼りない。チームの力での1点。個人の力での1点。果たしてどちらがいいことなのだと思うべきなのか…。同点劇というゲームの中で見えた両チームの課題が、両監督のコメントに滲み出ているように感じます。

高木監督は、もはや常套句のように聞こえるコメントを繰り返す。「勝ち切れないゲームや勝てないゲームが続きますが、内容的には決して悲観するようなものでもないし、続けることが一番重要かなと思っています」と。確かにそう思います。現有戦力という現実のなかで、確かに成長している。そう信じるしかないと思います。

5月3日(木) 2012 J2リーグ戦 第12節
熊本 0 - 2 東京V (13:04/熊本/5,775人)
得点者:56' 飯尾一慶(東京V)、90'+4 小林祐希(東京V)


黄金週間・中二日の連戦。熊本のゲームプランは相変わらず入りから飛ばして先制点を奪うというものだったのでしょうが…。どこかで疲労が限界にくるのではないかと思っていましたが、それは突然、今日の後半にやってきました。失点自体は中盤でのミスが起因してのものでしたが、明らかに後半に入ってすぐから熊本の選手の足は重く、切り返しやボールへの出足も前半より、そして相手より一歩遅れていました。

熊本のスタメン。前節から変わったのは、ボランチの位置に原田に代えて体調不良から復帰した養父を使ってきたこと。

熊 本
 9チェ クンシク 
17齊藤19五領
7片山15市村
10養父38藏川
4廣井24筑城
 22吉井 
 18南 
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後半12分 五領 淳樹 → 山崎 侑輝
後半21分 齊藤 和樹 → 白谷 建人
後半35分 養父 雄仁 → 高橋 祐太郎


東京ヴェルディ
41杉本 9阿部
10飯尾11西
22和田23梶川
7中谷19森
3深津17土屋
 26柴崎 
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後半40分  飯尾 一慶 → 小林 祐希
後半45分 西 紀寛 → 小池 純輝
後半45分+3 阿部 拓馬 → 南 秀仁


試合開始から全開で行った熊本。受けた形のヴェルディ。熊本が完全にゲームを支配して進む。五領が市村に預けるとエリアに走りこむ。中央で流して左から駆け込んだ片山。惜しくも間に合わず。

クンシクから斉藤。エリアまでドリブルで持ち込むがシュートは枠を大きく外れる。養父がDFの裏にふわりとループを上げる。しかし前線の五領は足元でもらうイメージだったのか合わない。筑城がインターセプトして藏川に預けると前に入っていく。しかしクロスは合わない。運動量と人数を掛けてゴールを狙っている折角の時間帯なのに…。
NHK中継の解説者・福西氏も「この”流れ”のある中で点を取るのが重要」と言っている。

ヴェルディの両ボランチに対して、熊本は前線と中盤の選手が交互にチェックしたりサンドしたり、自由を奪っている。再三、主に右サイドから崩してクロスを上げる。しかし、どうしても読みと1対1に優れる土屋の壁を越えられない。

いつにも増して熊本のゲームだという前半の印象でしたが、逆にこんな試合のハーフタイムの監督の指示は難しいのではないか。自分たちの時間帯で点が決めきれず…という嫌な結果をこれまで重ねてきただけに。などと思いながらコンコースに出ると、すれ違う人々の表情も一様に硬い。決して白い歯がこぼれてはいない。集中力が後半も持続できるかどうかという、いつも通りの試合展開になってきたということをファンもよくわかっているからです。

「残り45分、こちら側のペースに乗せられるように、したたかに粘り強くやっていく事」。広報からもたらされるハーフタイムの監督コメントは、常にもちろん細かい部分は伏された抽象的なもの、あるいはメンタルを鼓舞するような内容になりがちですが、皮肉なことに後半”したたかに粘り強く”やれたのは、相手のヴェルディの方でした。

燃料が切れた車のアクセルを踏み込むように、熊本の動きは目立って遅くなってくる。さらに川勝監督が指示した「タテだけではなく横にも速くボールを動か」すことで、熊本の疲労感は増したように思います。

56分に先制点を奪われる前後に、五領に代えて山崎が準備され、1点を追いかけるために斉藤に代えて白谷。最後は養父を引っ込めて高橋を前線に投入。一時は4-4-2のシステムに変更する手も見せましたが、片山が2枚目のカードで退場になると、前がかりななか、数的不利も手伝ってアディショナルタイムに追加点を奪われ万事休しました。

五領は確かに飛ばしていて、どちらかというと”空回り感”もありました。懸命なのは伝わってきますが、ここぞというところで預けてしまう。交代で入ったのは山崎。どうして同ポジションに入れたのか。その後、斉藤に代えて白谷を入れた際に、ボランチに下げるくらいなら大迫は何故ベンチを温め続けたのか。藏川が連戦の疲れから、養父は病み上がりという事情もあって、もはや中盤を押し上げられない状態だったにもかかわらず、そこに手を打つのが遅すぎはしなかったのか。

「今日の動きを見ていると、齋藤、五領は難しいなと見ていて、自分たちのリズムがダウンしてしまう前に山崎を入れて、前でプレッシャーをかけたり、前に出て行くとか、流れが悪くなる前に変えたかった」と高木監督。山崎の投入は失点前から考えていたことだと言う。

しかし、疲労感のあるチームを”したたかに粘り強く”戦わせるためには、もっと違ったベンチワークはなかったのか。交代カードが何も奏功しなかった、何の変化も生まなかったというのがわれわれの印象です。

もうひとつ。試合後、いつものように色々なメディアをザッピングして思ったのは、どうもわれわれが試合中に感じていたこの日のゲームの流れ、実際に高木監督が描いていたゲームプランは微妙に違っていたのではないかということ。NHKの中継を見返したとき、試合前に指揮官はこの試合に関して「0-0でいいくらい守備から入りたい」と言っている。ハーフタイムでのインタビューには「思った以上に身体が動いている」と。これは、前半ここまでアグレッシブに攻めに行くことを想定していなかったということではないか。そうプランさせるほど、戦前のわがチームのコンディションは悲観すべき状況だったのかも知れません。

試合後のインタビューでは「前半をゼロに抑えたこと、後半は相手のペースになってしまいましたけど、できるだけ耐えた中でチャンスもあったので、ゲーム全体ではプラン通りに働いた」と言っている。自身が常に言う「1失点はアクシデントもある」という言葉を接ぎながら、「覚悟したんですけど、その前にやっぱり点が欲しかった」とも。

しかし、”1失点はアクシデントもある”というのが自身のサッカー哲学ならば、その際の次善の策はなかったのか。白谷の投入や4-4-2というオプションは、リトリートしてカウンターで同点を狙うという意図が隠されていたのか。どうなのか。どうも釈然としないのです。

「全体を通しては我々がやりたいことというのが、ある程度できたんじゃないかなと思います」という彼らしい“前向き”な総括。それは、5戦勝ちなしのなか、勝利を信じて声を枯らしたファンの心理とのギャップはいかんともしがたく。この試合後の後味の悪さを一層引き立ててしまいます。

また中二日で迎えるのは、あまり相性がいいとも言えない徳島戦。これが連戦の最後の試合にもなりますが、この連戦を迎える当初、指揮官は、「疲労を考えると選手を代えていかなければならないが、使い続けなければならない選手も出てくる」とコメントしていたと思います。その言葉と、どうも首を傾げたくなる今日のこの試合と。色々な不安を抱えたまま、徳島戦を迎えます。

4月30日(月) 2012 J2リーグ戦 第11節
大分 0 - 0 熊本 (13:06/大銀ド/12,595人)


終了の笛を聞くのといっしょに、ふーっと大きく息をつく。ダービーマッチ。 バトルオブ九州。90分間、息もつかせない攻防でした。

前節、京都に2-1と競り勝っている大分は現在5位。前々節は3-2で富山を下し、FW高松の復帰とともに”得点力”を増していることがなにより脅威でした。またしても3-4-3という同システムのチーム。ミラーゲームが予想される試合。しかし、熊本がサイドでの狭い攻防に持っていこうとするのに対して、大分はピッチ全体を広く使おうとする意図。両者マッチアップというより、ちょっと違ったサッカーになりました。

バトルオブ九州と銘打ったダービーマッチ。今季は福岡戦に次ぐ第2戦。隣県ともあって、熊本からもバス6台のファンが大分入りして…。レベスタでの福岡戦でも実感するのですが、ゴール裏に集結した”赤い群集”の色は、青との対比もあって実に美しい。さらにこの日の雨天のせいで、屋根が閉められた大銀ドーム。両チームサポーターのチャントがドーム全体にこだまして、九州対決という「負けられない」独特の雰囲気を盛り上げる。試合の前からドキドキさせます。

大 分
 13高松 
20森島24木島
18イ ドンミョン9三平
32宮沢28為田
17石神4作田
 3阪田 
 1清水 
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後半20分 高松 大樹 → 村井 慎二
後半33分 木島 悠 → 西 弘則
後半40分 為田 大貴 → 小手川 宏基


熊 本
 9チェ クンシク 
17齊藤19五領
7片山15市村
8原田38藏川
4廣井24筑城
 22吉井 
 18南 
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後半28分 チェ クンシク → 白谷 建人
後半41分 齊藤 和樹 → 高橋 祐太郎
後半44分 五領 淳樹 → 山崎 侑輝


今日もうまく試合に入った熊本。高い位置でのプレス。球際の厳しさ。大分を圧倒してペースを握らせない。前節途中からトップ下シャドーに入った市村は、今日はWBに先発で入り、ボランチは原田と藏川。3試合ぶりの先発となった五領も気合がみなぎっているのがわかる。このあたりは、選手層が薄いなかでも高木監督、うまく配置してきたなと感心させる。それにしてもなんとも言えない不安は、この試合、体調不良で養父を欠く事態に。

「明らかに試合の立ち上がりから熊本の方がアグレッシブに走り、良かった。いい意味に捉えるなら、そこで失点しなかったのが唯一良かった点」。大分・田坂監督がそう捕らえるとおり、前半は大分にほとんどと言っていいほど仕事をさせませんでした。唯一、37分の左遠目からのFK。三平のヘッドがゴール左角を狙う。これを南が横っ飛びのビッグプレーでクリア。その後も、石神から三平へのセットプレーのホットラインは要注意ではありました。

大分は前述のとおり、ピッチを広く使いたかったのではないでしょうか。選手間が妙に遠い。ひょっとして熊本のサイドへの追い込みが、大分の選手間の距離を遠ざけたのかも知れませんが。

戦前、両チームスタメンを見た印象では、大分の森島と高松という高さに対して、廣井はともかく、吉井や筑城をよく当ててきたなと思ったのですが、前節から続くこの3バックで、完全にこの2人を封じ込めていました。それは、原田と藏川という、その前の2人のポジショニング、働きにも寄るところが大きかったと思われます。

後半に入っても熊本の絶好機は続きました。52分、大分・作田から奪った五領が前線にパス。片山がスペースに走りこんでキーパーと1対1。しかし、このシュートをGK清水が片手一本ではじく。63分には、五領が縦に入れると斉藤から右を追い越してきた藏川へ。すかさずクロスを入れる。中央に飛び込んできたクンシクが合わせたものの、惜しくもゴール左にそれていきます。

最初はその気合いが“空回り”している感もあった五領でしたが、時間が経つほどに、ボールを触るほどに、思い切りやアイデアが加わって良くなってきました。攻撃の起点にはまず五領。「もっと行けー!」。そう叫んでしまいそうです。

大分は高松を下げて、村井をボランチに、為田を一列上げたあたりからペースを掴み始めました。村井のキープ力。2人、3人に囲まれても交わす。バイタルでワンツー。もらいなおしてシュートを打つ。「ボールを持つと仕掛けられ、シュートも打たれた」(高木監督)。後半20分という時間帯もあって、流れを大きく変える働きでした。

熊本・高木監督は、クンシクに代えて白谷。斉藤に代えて高橋を前線で投入。そして最後には山崎を投入します。先日強化指定選手と発表があったばかりの鹿屋体育大学在籍の選手の大胆な起用。連戦の最中、総力戦のなかでは、面白い起用。何かを変えようという意図があったのでしょう。山崎は、けっして物怖じせず、試合にスムーズに入っていきました。

しかしながら、またしてもスコアレスドロー。2連敗のあと、3連続引き分け。その間、5試合連続で無得点が続く。

高松が復帰し、レンタル延長となった三平は現在チームのトップスコアラー。石神、村井の獲得。そして為田といったユース上がりの逸材。なんだかんだ言っても、大分はずいぶん着実な補強をしている。5位という現在の順位にいるのも頷ける。その大分に、しかも連勝で登り調子だったその攻撃陣に、まったくと言っていいほど仕事をさせなかったことには自信を持っていい。この3-4-3システムでの組織的守備は形になってきていると思います。

高木監督は、「いま我々に必要なことは点を取ることも大事だが、このようなゲームを続けていくこと。今日のような試合を続けていけば得点は取れると思うし、確信している」と言います。多くは語っていませんが・・・。

開始早々の15分で点を取れれば言うことがなかったのですが。しかし、その後も自分たちの”時間帯”を作れるようにはなった。その時間帯を長く保てるようにはなってきている。ただ足りないのは、自分たちの時間帯での決定力。それは、今が点の取り時なのだというチーム全体の統一感ではないでしょうか。

藏川が「攻撃のとき守備に力を注いでいる分、迫力が足りなかった」と言うように。それは、局面的に言えば、クロスを上げるまでは行くけれど、中に人数が足りない。あるいは、アタッキングサードまでは迫るけれど、最後の崩しがない。ということになるのですが、要するに攻撃に厚み、いや”凄み”がない。

スカパー!解説者の増田氏も言う。「バイタルから先で、もっと崩すイメージ。アイデア、あるいはイマジネーションが出てくると・・・」と。彼が在籍した、かつての鹿島がそうだったように。ここぞという時には必ず点を決めきれる力があった。「今が点を取る時」という時間帯でのチーム全体の意思の統一は、ある程度リスクを掛けても全体の緊張感から守備に綻びはきたさない。それがチーム攻撃の”凄み”ではないかと思うのです。

「前からいい守備ができているので、成果が出てきていると思う」「前を向いていい戦いができているので、粘り強くやっていくしかない」。そう言う廣井をはじめとして、各選手も手ごたえを感じているコメントを残している。

それはそれとしても、しかし、偶然を待つサッカーでは勝機はない。いくつかの好機のなかで”偶然”ではなく、”必然”的に点を決められるチームに。また中二日の過密日程の最中ですが、わがチームのそんな成長を見たい。それが今のファンの心理ではないかと・・・。それがまた次の試合への楽しみなのだと思います。