6月24日(日) 2012 J2リーグ戦 第21節
富山 0 - 2 熊本 (18:06/富山/3,750人)
得点者:2' 齊藤和樹(熊本)、37' 武富孝介(熊本)


水戸戦の高橋の先制点も開始2分。前節の齋藤の得点は3分。そしてこの試合も、記録上は2分になっていますが、実際の時計は1分そこそこではなかったでしょうか。このところ続く開始早々の得点。それは、試合の入り方の問題。様子見をせず、自分たちのサッカーで序盤から押していく。そんな姿勢の表れでしょうか。

富山戦

養父の右CK。低くて早いニアへのボールに、一瞬フリーで脚を振ることができた齊藤。相手のマークのミスといえばミス。「事前の分析で『CKの守りに対し富山の守りがゴール正面に集中すると思ったので、その横のスペースを狙った』。」(熊日)と、当の齋藤は冷静に振り返りますが、養父のボールも狙っていたポイントに入っている。齊藤もダイレクトでしっかりボールを捕えている。かなり難しいシュートでした。

2試合連続でスタメンの座を射止めた齊藤。前節のエントリーで厳しい注文をつけましたが、連続得点で結果を出した。これまでの空回りするような動きが、徐々に、安定した出場機会を得るようになって、次のプレーにつながる動き、回りをうまく使う動きが多くなってきた。今は使うほどにうまくなっていくのではと、そう思わせます。

熊本の守備システムをなかなか破れないでいた富山でしたが、それでも高木監督に「非常に強さ、速さを感じた」と言わせたプレッシングに熊本は手こずります。なかなか前線の選手に収まらない。サイドにも繋がらず、攻撃の厚みが作れない。そんな嫌な流れを払拭したのは武富の2点目でした。

37分。アタッキングサードで拾って拾って波状攻撃の熊本。相手を押し込んだ結果の明らかなクリアミス。そのボールはPA内で高く上がって武富のところに落ちてくる。落ち着き払ってダイレクトボレーで打ち抜く武富。ゴールに突き刺しました。

「味方からのパスを要求する声も聞こえた」という武富。おそらく”以前”の彼ならそうしていたかも知れません。しかし、「自分が一番ゴールに近かったから」と言う彼は、迷わず右足を振った。それは何より”ゴールを狙う”ということに一心だったから。あのPKの失敗から明らかに彼は変わった。一皮向けたとでも言うべきか。それがこの6試合で5ゴール、チーム得点王として8得点という結果に繋がっているとすれば、あのPK失敗も小さな代償でしかなかったと言えなくもないかも知れません。

相手GK・守田の感覚としては、「1失点目はマークを確認し切れなかった。前に入られてブラインドからシュートがきた。2失点目もDFに簡単にクリアさせて流れを切る選択をさせる声を出すべき。ピンチらしいピンチはその2つだけ」。確かにその通りとも言えますが、富山は他にも多くの目に見えないミスを、守備面でも攻撃面でも繰り返している。せっかく掴みかけたモメンタムを自ら手放しているような。黒部も苔口も、さらには朝日も欠く満身創痍な状態の富山。そんな苦しい台所事情もあったのかも知れません。(逆に、熊本がそこにさらにつけ込めなかったということは反省点でもあるのですが。)しかし、曲者の大西をサイドの奥に封じ込め、ソ・ヨンドクにも仕事らしい仕事をさせなかった。

先制点もあって、これまでになく安心して見ていられたということはあります。主導権ということで注目すべきは、とくに後半。富山側から見てみれば、試合を終わらせてしまう3点目を奪われたくない、ということが最も大きかったのかもしれない。そのあたりの”心理的な攻防”というところも含めて、リーグ戦前半を戦ってきて、積み重ねたものが見えたのがこの後半だったと思います。ピンチらしいピンチはほとんんどなく(試合を通じても与えたCKは1本だけ)。繋ぐ、蹴るのプレーの判断がはっきりしている。吉井を中心にした3バックの読みベースの守備は、さらに的確さを増している。裏に抜けようとする相手FWの動きを完全に封じていました。試合自体(得点)は動きませんでしたが、非常に見ごたえのある後半45分だったといえましょう。したたかな零封勝利。

18位の順位は変わりませんが、これで21位富山との勝ち点差は9に広がり、直下の岐阜とは2試合差になりました。それにしても前半戦最後の試合にして、ようやくの敵地での初勝利。関東圏のサポーターに、やっとゴールシーンと勝利を届けることができたのも、今季の”苦しさ”を表しています。

次節は、5月の対戦で0-4の完敗を喫した千葉。あのフクアリのアウェーの雰囲気に呑まれた選手も多かった。しかし振り返ってみれば、あの大敗以来、実は6試合で3勝2分1敗と着実に勝ち点を積んできている熊本。前半最終戦で、きっちりとアウェー勝利のケジメをつけた熊本。後半戦のスタートにあたり、強豪相手にどんな試合ができるか。どれほど調子を上げたと言えるか。それは”もうひとつの開幕戦”ともいえるリ・スタートの大事な一戦。

今週の木曜日。NHK夜8時からの「仕事ハッケン伝」ではロアッソ熊本が特集されます。スピードワゴン小沢一敬の奮闘と涙を前に、スタジアムに足を運ぼうという機運もきっと高まるのではないでしょうか。フクアリにはまだまだ及ばないかも知れない。しかし、最高のホームの雰囲気で選手たちを後押ししたい。勝ちたい。勝たせたい。番組もとても楽しみですが、試合はもっと楽しみです。


6月17日(日) 2012 J2リーグ戦 第20節
熊本 2 - 2 北九州 (19:03/熊本/4,572人)
得点者:3' 齊藤和樹(熊本)、23' 端戸仁(北九州)、29' 端戸仁(北九州)、79' 武富孝介(熊本)


「逆転された状況の中でも、自分たちを見失わずにやるべきことをしっかりやっていった。今までだと少し焦っていいものが出ない傾向にあったんですけど、今日の場合は追いつかなきゃいけない状況のなかでもメンタル的に落ち着いてプレーできたのが非常に良かったなと思います。」

指揮官・高木監督の、試合終了後のコメント。今日の試合は、この言葉に集約されるでしょう。

あれだけシュートを打って。本来なら勝てた試合。残念。という言い方もあるかもしれませんが、リーグ戦半ばで到達した”レベル”を実感したという意味では、これは価値あるドローだと・・・。

北九州戦

バトルオブ九州という以前に、北九州は14位に位置する”上位”のチーム。指揮官は「モビリティのあるチーム」と警戒するものの、この試合に向けて「内容より結果」と言いきり、選手には「この一戦に懸けろ!」と発破を掛けていました。5千人を切る観客数ながら、ゴール裏がうまく煽って、スタジアム全体のボルテージも高い。

開始早々の3分、中盤の養父から右の五領へはたく。切り替えして持ち直した五領が左足で柔らかいクロス。ファーに飛び込んだ斉藤。高い打点のヘッドで自身のJリーグ初ゴールを押し込む。湧き上がるスタジアム。「よし!今日はワンサイドゲームになるかも知れないぞ」そう思わせる立ち上がりでした。

しかし、北九州も攻撃のパターンを持っている。人数を掛けて襲ってくる。要警戒のFW池元が、バイタルから狙ってくる。枠内ぎりぎりのところを南が横っ飛びでクリア。その続くCKからでした。木村の弧を描くキックに、南のクリアが小さい。エリア内で端戸が拾う。そこを後ろから武富が引っ掛けてしまいます。

PKを自ら蹴る端戸。守る南が、方向は完全によんでいたものの、ボールはその手をかすめてゴールに吸い込まれてしまって同点。

これで北九州に勢いがついたのか、それとも熊本が守りに下がりすぎたのか、あるいはシステムのミスマッチがそうさせたのか。セカンドが取れずに、ボールを支配される熊本。押し込まれ、前線も守備に翻弄される。斉藤が池元を高い位置で倒してFKを与えると、木村のキックはニアに低く早く。そこにいち早く飛び込まれ、再び端戸にゴールを割られます。逆転。

その後もかなり押された感が残った前半。それを払拭し、後半の猛攻とも呼べる反撃を実現させた要因には、もちろん”焦らず”、”メンタル的に落ち着いてプレーできた”選手たちの奮闘もありますが、藤本主税がブログで「面白いくらいハマってたね」と言うとおり、高木監督が繰り出した後半の交代カードの妙があったと思います。

後半15分までに点が動かないと見るや、五領の位置に市村。これについては、「後半はボールをつなぐよりも、できるだけ前に早く攻めようという指示を出しました。後半に入ってからそういうプレーが続いていたので、そこにもう1枚、元気なイチを入れることによって勢いが大きくなるかなと。そこはよく理解してくれて彼の良さが出たし、彼の良さがチームの良さにもつながっていったと思います」と。確かに、久々に見る市村がアグレッシブに縦に動き、それまでライン際で停滞していた前線に喝を入れ、ボールを引き出し、敵DFの裏を取り始める。

さらに原田に代えて根占。筑城には矢野。藏川を下げて4バックぎみになったDFラインに、根占が中盤の底を支える格好。パワープレーのように矢野が前線に張る。

「大輔に関しては、コーナーキックが非常にあったので高さを使いたいということ。早い時間で使うのは難しかったのであの時間帯になってしまいましたけど、後ろに置くよりも前に置いて、足元も上手い選手なので、それが2点目につながったのもあるし、その辺を期待しました」と言うのは指揮官。

それが実を結んだのが79分。根占から矢野に縦パス。矢野からのパスを市村がスルーでDF陣を引き付ける。受けた武富の素早く鋭いシュートは、GKとゴール右ポストの狭いところを通って同点弾になります。

なんでしょう。この起用法の妙は。ベンチには大迫、西森、そして崔根植もいたわけで。そんな”当たり前”の交代カードには目もくれず、この意外性のあるベンチワーク。そしてそれに応えた選手たちのパフォーマンス。

プレーのシンプルさ? 前向きの姿勢? 身体の強さ? 高橋のFW起用といい、自身の与えられた役割を全うする姿勢は。矢野は「終盤に(交代で)入る時は真ん中で身体を張るのが求められているので、まずはできることをしっかりやろうということは、ベンチにいる間も思ってました」(J's Goal)と言い、市村は「自分が複数のポジションをこなせば、監督の選択肢は増える」(熊日)と言い切る。故障相次ぐチーム事情のなかにあって、前線を支えているのが、古参のDFの選手たちなのです。

一時は圧倒していた北九州の攻勢を押し返した。しかも、時間が経過するにつれて逆にパワーアップしていった。吉井、廣井を中心に、最後まで守備の集中が切れず、システムとして機能していた。まったく運動量もスピードも落ちなかった。横浜FC戦で悔やまれた、最後の失点場面のような、前がかりでの失点をしなかった。

終了の笛が鳴ったあとの、倒れこむ選手たち。何より、倒れ込んだまましばらく動かなかった(動けなかった?)相手GKの佐藤。あれだけギリギリのセーブを繰り返していると、集中力は有限。精も根も尽きた感がありました。

大卒2年目にして初ゴールを飾った斉藤にとっては、きっと忘れられない試合になったのではないでしょうか。それは鮮やかな”初ゴール”の印象だけでなく、その後も幾度と訪れた決定機を外し続けた後悔も含めて…。2点目の失点の要因となった、自らの空回りなファールに関しても。

武富もまた、1点目のPKを与えたミスを、自らのゴールで取り返したものの。プラス、マイナス、ゼロではなく、とりあえず勝ち点1を得たゴールだった…。

「今日21本のシュートを打ってなかなか決められなかったという反省はあるので、いっぺんには問題解消はできないですけど、こういうゲームをやっていけば間違いなく点は取れると思いますし、そのあたりの自信を深めてやっていって欲しいと思います」という指揮官のコメントは全くその通り。もう少し付け加えれば、21本のシュートを打ったなかでも、かなりの部分が枠内にとぶ、際どいものであったと。そしてこの「自信を深めてやっていって欲しい」という部分が、やはり強さの原点かなと。

そういう意味では、「また使ってもらえた時に結果を残したいと思います」(J's Goal)という斉藤のコメントには、全く不満です。”また使ってもらえたとき”というメンタリティーでは先発は奪えない。言葉尻を捕らえているだけかも知れませんが…。地道に練習からやっていることも知っている。しかし、自らがチームの”エース”になる気概があってこそなのではないか。自分を追い詰めるためには、ときにはビッグマウスも必要なのではないか。謙虚さなど捨てる必要があるのではないか。選手全員が、そんな競争心溢れるチームになってほしいと思っているからこそ。熊本を支えるFWの軸になってほしいと思っているからこそ。あえて苦言を呈したい。期待しているが故に、そう思います。

6月13日(水) 2012 J2リーグ戦 第19節
草津 0 - 0 熊本 (19:04/正田スタ/1,333人)


4勝2分4敗。全く五分の対戦成績。そして現在、17位と18位に”思いがけずも”低迷する両チームの戦い。それは、強行日程という意味では互いに”重く”、相手のいいところを消すという意味では非常に”堅い”試合だった。そんな印象のスコアレス・ゲームで、また対戦成績に優劣が着きませんでした。

試合の局面をなぞっていってもあまり意味のないと思われるこんな試合は、逆に水面下でどんな思惑や心理的な”駆け引き”が行われていたのかを知りたいところですが、いつも頼りにしているJ's goalも、熊日の記事もアウェイということもあってか、十分な情報を与えてくれません。こんなときブログを綴るキーボードを打つ手が固まります・・・。

草津戦

開始2分。草津はロングボール。右サイドで切り替えしてクロス。ゴールのニアサイドでなんとかDFがクリア。高木監督が試合後、草津に関して、「前半は出足が鋭く、プレッシングにもスピードがありスカウティングの映像よりも迫力を感じた」と述懐する所以でした。

しかし熊本も、左サイドでボールを回して片山がえぐる。上げたクロスから高橋のヘッドは左にそれますが、惜しい場面を作ります。

五分の成績を打破する要素はひとつ。好調の前線3人の今日の出来はどうなのか。それについてFW高橋は、「前線で3人の関係を意識していたが、いつものゲームよりもスペースがなくて連動性を出すことができなかった」と反省する。

確かに、後半途中にいたった時点でも、スカパー解説者の川本治氏が指摘していたように、「30メートルくらいの幅に20人の選手が収まっていて」両チーム非常にコンパクトな戦いをしている。そこは、草津のスカウティングのなせる技なのか、いずれにしてもこれまでの”空間感覚”とは違っていたのは間違いないでしょう。そんななかで、これまで出色の出来だった西森のワンタッチパスも、影を潜めてしまいます。

草津の思いがけないロングボール戦術にてこずる感じの熊本。34分には、左サイドからの草津のFK。ニアで遠藤がバックヘッド。ファーの御厨が触れば1点という場面。しかし、返す刀で熊本は原田が左サイドをえぐってクロス。ファーに走りこんだ藏川が頭で合わせるも、ゴールの右にそれていきました。

エンドが代わった後半は、贔屓目もあるのかも知れませんが、熊本の方が優勢に見えました。58分には廣井から片山。スピードを上げてサイドをえぐる。クロスを高橋が前方に落とすと武富が倒れこんでヘッド。右にそれる。61分に左サイドを崩したのは養父。クロスを藏川がシュート。ゴール前の混戦のなか、西森が出したボールを養父が角度のないところから打ち抜きゴールインしたもののオフサイドの判定。押せ押せの感がありました。

草津の交代投入のヘベルチもうまくフィットせず。反面、高橋に代えた斉藤は、積極性を見せる。ロングボールに追いついてシュート。あるいは片山のクロスに、ニアで潰れながらも足を出し、あわやという場面を作る。練習で北嶋に動きのサジェスチョンを受けたという斉藤。この日、4枚目のイエローを受けて次節出場停止となった高橋の代わりを務める先発は、彼に間違いないだろうと思わせる動きでした。

「両サイドを含めてうまく対応できていたので、最後のアディショナルタイムをのぞいてはピンチらしいピンチはなかったと思う」というのは廣井。部厚い守備で数的にも完全に対応できていた。高さに勝る草津のセットプレー以外では不安になるような場面はなかったと言っていいでしょう。

特に、バランスを崩さず、無理をしないで、ボールを回し、保持しながら自分たちのリズムで進めた後半。中盤までのエリアでボールを奪われないよう、徹底してコンパクトに、選手の距離を近くしてボールを散らしてビルドアップするところは、“自由自在”という印象すらありました。

ただ、互いの強固な守備隊形、結果的に最終ラインは互いに崩せなかった。一瞬のミスで勝ち点3が転びそうな緊張感は、最後の最後までどちらにもあった。そういうふうにも言えるかも知れません。

翌日の熊日朝刊。「アウェイで勝てない」、「不発」という指摘ももちろんだろうし、ここまでくると“何なんだろう?”とも思う。「消極的だった」と反省する西森のコメントもある。もちろん試合に“勝ちたい”と思わない選手も監督もいないわけで、この試合に関してもそれは同じだったのは当然でしょう。

高木監督はこの試合前、対戦相手・草津に対して「うちと戦力は変わらない」(スカパー)と表現していました。試合後のインタビューでは、「草津は過去3試合、良い内容の試合をしていて失点が少ないということは分かっていたが実際に粘り強さを感じた」と言っている。そして、「選手にはそれも伝えていたのであわてずにプレーしてうまく対応してくれていたと思う」「互いに良いところが出たゲームだったと思うが内容的には妥当なドローだったと思う」とも。

”妥当なドロー”。それは、戦前描いていたイメージ通りだったというような感想とともに、現状のチームのコンディションのなかで的確に対応し、相手のいいところも消したうえで、自チームのいいところも表現できた。そして現実的な結果を得た。ミスは少なかった。そう言っているようにも読みとれます。

そしてそれは今節、19位以下のチームが全部黒星を重ねた中で、勝ち点1をしっかり積み上げたという結果になったことにつながる。21位岐阜との勝ち点差がようやく6に広がった。ともかくも、しばらくはこういう”現実的な”ゲームを積み重ねていくことが必要なのでしょう。決して悪くはない。それが今節のわれわれの素直な評価です。

6月7日(木) 2012 J2リーグ戦 第18節
熊本 2 - 1 水戸 (19:03/熊本/3,127人)
得点者:2' 高橋祐太郎(熊本)、28' 武富孝介(熊本)、88' 岡本達也(水戸)


まだ試合開始のホイッスルが吹かれたばかりの時間。水戸の右サイドのクリアが小さい。拾って繋いで、原田がすかさずゴール前にクロスを入れると、DFと競りながらも一段高い打点で高橋が頭で合わせる。GK本間の手がボールに触れたものの、そのままポストをかすめゴールイン。早々の、そして久しぶりの先制点。こうなれば試合展開は熊本のものでした。

水戸の市川は「試合の入り方が問題だった」「球際の厳しさなどが足りなかった」そして「スタートのところから相手に襲い掛かるような気持ちでいかないといけない」と反省する。柱谷監督は「“これまで3勝しかしてないチーム”とは思えないくらい・・・」と表現した。それらの言葉の奥には、やはり下位チームとの対戦ということでの、気持の隙、あるいはスカウティング不足があったことを読み取れるような気がしました。

水戸戦

今日も熊本の当たりは厳しかった。ファウルもスレスレ。前線のボールホルダーへの人数をかけての囲いこむような守備。2人、3人での対応。ここのところ形作られている自陣でブロックを作る戦法。ある時点では5バック。そして攻撃に転じた際の早さと、トップの高橋への収まりもいい。課題だった、人数をかけた攻撃姿勢もある。山形戦の成功で、妙に”色気”を出した前節。高橋がサイドに流れ、パス回しを多用しましたが、今日は中央に張って、CFWに徹している。

守りの堅さで売ってきた水戸も、先制されると苦しい。得意のカウンター攻撃を遅らされると、打つ手がない。互いのチームの”色”という意味でも、本当にこの早い時間の先制点が試合運びを楽にさせてくれました。

ただ、注意すべきは水戸FWの鈴木。なにしろキープ力がある。筑城がなんとか身体を当てて、吉井が絡め取る。もうひとつの課題だった片山、藏川両WBの上がった際の守りは、ボランチのどちらかがDFラインに入ることによってバランスをとる。これも”コンビネーション”。戦前、「3バックのサイドを使う」と言っていたのは市川でしたが、熊本はそのスペースを使わせませんでした。

高木監督が、ゲームの総括として使った「3トップのバランスが非常に良かった」、「3人目、追い越すということ」、「今日はここでという時に決めてくれました」という表現は、2点目の得点シーンに集約されていました。

28分、左サイドの攻防から高橋が縦に入れると、中央の西森はワンタッチで裏に出す。その瞬間、水戸のDFラインは完全に崩れていました。左から走りこんだ武富。迫るGK本間をあざ笑うかのような小さいループで、追加点を流し込みました。

「今日は午前中にあった時にキタジ(北嶋)さんとかにもアドバイスをもらって、(南)雄太さんや監督にも少しずつ声をかけてもらって、メンタルの持って行き方の方向を示してくれたので、楽と言えば楽でした」と武富。コメントの大半は前節のPK失敗がらみでした。期するところもあったでしょうし、ひと回り経験値を増したのでは。前日に来熊し、この試合前の記者会見で「自分の経験とかも伝えていきたい」と語っていた北嶋。ここにも、早速の”北嶋”効果がありました。

またもや後半45分を守る展開。前の3人に疲れが見え始め、プレスがはがされ始めると、熊本のDFラインも自然と下がっていくしかない。根占、大迫、そして矢野までもが交代で前線の位置に入る。そしてハードワーク。

水戸はようやく88分、途中交代の岡本がFKからのボールを頭で流し込んで1点を奪いましたが、時すでに遅し。熊本がうまく時間を使いきり、逃げ切りに成功。ホーム戦では連勝という結果を勝ち取りました。

指揮官が、「あまり詳しくは言えないですけども…」と前置きしているこの“3トップのバランス”。ここが今日の最大の勝因であり、戦術の核心部分なのかなと。

「ここまではボールサイドに寄り過ぎる傾向があった…。うまくバランスを取りながら、クロスもいつもよりはたくさん入っていた…。クロスに対して人も入って行けるとか…。クロスに対して人数をかけられるようにするとか…。その辺のポジショニングだけです…」

「3人の距離感というのは物差しで測れるものではないし、どこにポジションを取ったらいいかはなかなか難しい。相手との兼ね合いでも変わってくるので、どれがベストのポジションかというのは難しい。」

なかなか感覚的で、まあ細かいところは言えないし、表現できないといった感じですが。

なんだかんだと言いながらも、ここ3試合、この3トップでスタメンは固定。そして2勝1敗。交代カードもこの3トップを疲労度の順番に代えていっている感じ。相当の運動量とスピードがないと3人のバランスとか、距離感とかは保てない。それだけ運動量を求め、それに応える動きをしているということでしょう。それが、この“3トップのバランス”ということのベースであることは間違いないし、“3トップ”が今の戦術の土台になっているということかと。

それにしても高橋。初得点。相変わらずのヘッドの強さ。いい意味でディフェンダーらしい飛び方に見えます。ポイントに入って、相手ときちんと競って勝つ、みたいな。山形戦で果たせなかった高木監督との抱擁も、清川HCを払いのける様も、試合後のヒーローインタビューも、何もかもが微笑ましい。愛すべきキャラクターの新加入ディフェンダーが、今うちの欠くべからざるセンターフォワードです。

6月2日(土) 2012 J2リーグ戦 第17節
横浜FC 2 - 0 熊本 (16:04/ニッパ球/5,509人)
得点者:45' 武岡優斗(横浜FC)、90'+2 カイオ(横浜FC)


なんとも形容しがたい試合でした。塀の上を転がしたボールがどちらに転がるかを見届けるような。どちらに転んでもおかしくなかった。しかし転んだ方に勝ち点3も転がった。けれど、いくら内容で押していても負けは負けだし、完璧に崩せなかったのは熊本の方でもあったと。そんな不甲斐なさもあって。いつもとは違った”悔しさ”があります。

シーズン途中の岸野監督の解任を受けて急遽就任した横浜FCの山口素弘監督。2006年シーズンに同じように急遽就任した高木監督のもと中心選手として戦い、チームの初めてのJ1昇格に貢献した。そんな二人の”因縁”の対決を、戦前からJ’s goalの記事も「師弟対決}と煽り立て、加えて今日のスカパー中継の解説は、当時のFWの主軸だった城 彰二氏。”舞台は出来上がった”という感じでした。

熊本は怪我から復帰したGK南以外は、前節と同じスタメン。横浜は4連勝中で、J参入後初の5連勝を目指します。波に乗っている横浜だし、大久保、田原の高さのある2トップも脅威でした。しかし…。

横浜戦

「研究されていて、うまく(サイドが)消されていた」という横浜FCの武岡。 あるいは「熊本はクサビへのチェックが激しかったし、真ん中も締めていたので、そこはきつかった。そこを逆手に取って裏に抜けたかったが、前半は守備に追われていた」という田原。

解説の城氏も指摘していたように、また試合後、勝利に微笑む山口監督が「高木さんは昔から意地悪だから、色んなことをされたけど・・・」とインタビューに答えていたように、横浜FCのボールはタテに入らない、タテに入れさせない。サイドを消され、行き場の無い横浜。後は2トップへのロングボール…みたいな感じに。相手選手たちも感じているように、きちんと相手の強みを消して、拮抗したゲームに持ち込んだ熊本でした。

「ただ、こういうことはいつかはあると思っていたので、今日は割り切ってボールをはたくことに専念しました」と言うのも、先制点を奪った武岡。今の横浜、自らの良さを消されても慌てない、焦れない、冷静に自分達のやっていることを崩さない“強さ”がある。実はこれ、このリーグで戦っていくうえで、最も大事な強さの本質でもあると思えます。

前半27分のCKのチャンス。原田からのキックにファーから入ろうとした高橋がもんどりうって倒れる。狙われたように大久保に身体を払われていました。大久保にファールが告げられ、PKが示される。ボールを置きに言ったのは武富。前節のヒーロー。しかし、ゴール左角に蹴ったシュートは、GKシュナイダー潤之介に、みごとに跳ね返される。

この日の敗戦の責任をひとりで背負い込む形になった武富は「小学生のようなシュートを打ったのがいけない。メンタルの問題で、ひたむきさが無かったと思う。入る気でいたし、そういう意味で謙虚さがなかったと思う」とコメントしました。

PKというひとつの試合の結果を左右する重要なプレーに対して、明らかに準備不足だったことを認めている。それは結果ではなく…。プレーの軽さというか、背負う責任に対する自覚の薄さということだったのか。

吉井が「PKに関しては運もあるし、どんなに良い選手でも外すことがあるし、武富が自分から決めて蹴ったことなので、彼が悪いということではないと思う」と擁護したとしても、その後にもメンタル的に引きずったようなプレーぶりには、よけい残念でなりませんでした。PKの失敗を取り戻すようなプレーを見たかった。もう一回りも二回りも大きくなってほしい。そう思いました。

スコアレスのまま終わるかと思われた前半終了間際。CKからのこぼれ球を菊岡が蹴りこんで横浜が先制点を得る。振り返れば、PK失敗のあとで流れは横浜に傾いていたと言えます。

後半は、攻めざるを得ない熊本に対して、きっちりとブロックを作って、粘り強く対応した横浜FC。そこはまるでわがチームと”擬似対戦”しているかのようで。その45分間に、確かに山口監督の高木監督との”師弟関係”、影響を感じざるを得ませんでした。

後半アディッショナルタイムには、廣井を上げてパワープレーを試みた熊本でしたが、逆にその隙を付かれた。GKシュナイダーからのキック。大久保が頭で競って前に送ると、途中交代のカイオがDFの間を縫ってGK南と1対1。これを決めました。

福岡時代の大久保にも何度か見せらつけられたシーン。怪我で離脱中の主将・藤本はブログで次のように書きました。

「厳しいことをいえば、2点目は正直絶対にやってはいけないミスだったかなと思う。カバーリングという、基本中の基本、システムが変わろうが、人が変わろうが、忠実に実行するべき基本のものだから」。

点を取りに行ったうえでの失点をわれわれは”曖昧”にしがちですが、藤本の指摘は、この2点目の失点のほうに厳しいものがありました。

ただ…。この試合、ブロックとして見事に機能していた守備体系でしたが、そのなかで、GK南の動きにやや精彩を欠いたような印象を受けました。短いながらも、戦線離脱からくる試合勘の欠如を、画面を通して感じたのはわれわれだけでしょうか。このあたりのコンディション面、どうだったのか。ちょっと気になるところでした。

「やっている以上は勝つか負けるかという世界に生きているので、勝てないときもあるだろうし、でも勝つために最大の努力を惜しまないことが、重要なことだと思います」と締めくくっている高木監督のコメント。

思えば、試合後ごとにそう気の利いた、多彩なコメントが出るわけでもなく、チームの基本はそうそう変わるわけではない。PKを失敗した武富の”切り替えられなかった”気持ちと、それに呼応したかのようなチーム全体の停滞感。それに対して、横浜の連勝から来る”勢い”あるいは勝負強さ。それが、勝敗を分ける唯一の要因だったのかと。

翌日日曜日の練習では、指揮官としばらく二人だけで話し込む姿があったという武富。この経験がきっと彼をより成長させる。そうでなければならない責任を、この”逸材”は背負っていると思うのです。いつもと違うと感じた”悔しさ”は、実はそういうことだったのかも知れません。