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6月7日(木) 2012 J2リーグ戦 第18節
熊本 2 - 1 水戸 (19:03/熊本/3,127人)
得点者:2' 高橋祐太郎(熊本)、28' 武富孝介(熊本)、88' 岡本達也(水戸)


まだ試合開始のホイッスルが吹かれたばかりの時間。水戸の右サイドのクリアが小さい。拾って繋いで、原田がすかさずゴール前にクロスを入れると、DFと競りながらも一段高い打点で高橋が頭で合わせる。GK本間の手がボールに触れたものの、そのままポストをかすめゴールイン。早々の、そして久しぶりの先制点。こうなれば試合展開は熊本のものでした。

水戸の市川は「試合の入り方が問題だった」「球際の厳しさなどが足りなかった」そして「スタートのところから相手に襲い掛かるような気持ちでいかないといけない」と反省する。柱谷監督は「“これまで3勝しかしてないチーム”とは思えないくらい・・・」と表現した。それらの言葉の奥には、やはり下位チームとの対戦ということでの、気持の隙、あるいはスカウティング不足があったことを読み取れるような気がしました。

水戸戦

今日も熊本の当たりは厳しかった。ファウルもスレスレ。前線のボールホルダーへの人数をかけての囲いこむような守備。2人、3人での対応。ここのところ形作られている自陣でブロックを作る戦法。ある時点では5バック。そして攻撃に転じた際の早さと、トップの高橋への収まりもいい。課題だった、人数をかけた攻撃姿勢もある。山形戦の成功で、妙に”色気”を出した前節。高橋がサイドに流れ、パス回しを多用しましたが、今日は中央に張って、CFWに徹している。

守りの堅さで売ってきた水戸も、先制されると苦しい。得意のカウンター攻撃を遅らされると、打つ手がない。互いのチームの”色”という意味でも、本当にこの早い時間の先制点が試合運びを楽にさせてくれました。

ただ、注意すべきは水戸FWの鈴木。なにしろキープ力がある。筑城がなんとか身体を当てて、吉井が絡め取る。もうひとつの課題だった片山、藏川両WBの上がった際の守りは、ボランチのどちらかがDFラインに入ることによってバランスをとる。これも”コンビネーション”。戦前、「3バックのサイドを使う」と言っていたのは市川でしたが、熊本はそのスペースを使わせませんでした。

高木監督が、ゲームの総括として使った「3トップのバランスが非常に良かった」、「3人目、追い越すということ」、「今日はここでという時に決めてくれました」という表現は、2点目の得点シーンに集約されていました。

28分、左サイドの攻防から高橋が縦に入れると、中央の西森はワンタッチで裏に出す。その瞬間、水戸のDFラインは完全に崩れていました。左から走りこんだ武富。迫るGK本間をあざ笑うかのような小さいループで、追加点を流し込みました。

「今日は午前中にあった時にキタジ(北嶋)さんとかにもアドバイスをもらって、(南)雄太さんや監督にも少しずつ声をかけてもらって、メンタルの持って行き方の方向を示してくれたので、楽と言えば楽でした」と武富。コメントの大半は前節のPK失敗がらみでした。期するところもあったでしょうし、ひと回り経験値を増したのでは。前日に来熊し、この試合前の記者会見で「自分の経験とかも伝えていきたい」と語っていた北嶋。ここにも、早速の”北嶋”効果がありました。

またもや後半45分を守る展開。前の3人に疲れが見え始め、プレスがはがされ始めると、熊本のDFラインも自然と下がっていくしかない。根占、大迫、そして矢野までもが交代で前線の位置に入る。そしてハードワーク。

水戸はようやく88分、途中交代の岡本がFKからのボールを頭で流し込んで1点を奪いましたが、時すでに遅し。熊本がうまく時間を使いきり、逃げ切りに成功。ホーム戦では連勝という結果を勝ち取りました。

指揮官が、「あまり詳しくは言えないですけども…」と前置きしているこの“3トップのバランス”。ここが今日の最大の勝因であり、戦術の核心部分なのかなと。

「ここまではボールサイドに寄り過ぎる傾向があった…。うまくバランスを取りながら、クロスもいつもよりはたくさん入っていた…。クロスに対して人も入って行けるとか…。クロスに対して人数をかけられるようにするとか…。その辺のポジショニングだけです…」

「3人の距離感というのは物差しで測れるものではないし、どこにポジションを取ったらいいかはなかなか難しい。相手との兼ね合いでも変わってくるので、どれがベストのポジションかというのは難しい。」

なかなか感覚的で、まあ細かいところは言えないし、表現できないといった感じですが。

なんだかんだと言いながらも、ここ3試合、この3トップでスタメンは固定。そして2勝1敗。交代カードもこの3トップを疲労度の順番に代えていっている感じ。相当の運動量とスピードがないと3人のバランスとか、距離感とかは保てない。それだけ運動量を求め、それに応える動きをしているということでしょう。それが、この“3トップのバランス”ということのベースであることは間違いないし、“3トップ”が今の戦術の土台になっているということかと。

それにしても高橋。初得点。相変わらずのヘッドの強さ。いい意味でディフェンダーらしい飛び方に見えます。ポイントに入って、相手ときちんと競って勝つ、みたいな。山形戦で果たせなかった高木監督との抱擁も、清川HCを払いのける様も、試合後のヒーローインタビューも、何もかもが微笑ましい。愛すべきキャラクターの新加入ディフェンダーが、今うちの欠くべからざるセンターフォワードです。