7月29日(日) 2012 J2リーグ戦 第26節
熊本 0 - 3 徳島 (19:05/熊本/6,940人)
得点者:29' 青山隼(徳島)、36' 津田知宏(徳島)、81' 衛藤裕(徳島)


試合の途中で席を立つ人を何人見送ったでしょう。夏休みに入ったこの時期。周りにも、サッカー(ロアッソ)初心者の女の子を誘ったといった風情の若いカップルも見受けられた。動員が心配されている今シーズン、この好機を、むざむざとチームは棒に振ってしまった。そんな悔しさも滲みました。

北嶋のホームデビュー戦でした。試合前、いつものようにアップする選手たちのなかに、当たり前のように長身のその姿がある。それが今更信じられなくて。「MAX! MAX!キタジマックス!」。ゴール裏からは、熊本の北嶋のために用意された新チャントが繰り返し歌われ、選手紹介でもスタンドから万来の拍手。熊本での初ゴールが見られるかという期待感で高まる。しかし、前節のような”見せ場”はなかなか訪れない。ついぞ試合中に、そのチャントを再び聴くことはありませんでした。

徳島20120729

「非常に残念な結果で、僕自身、正直言うと失望しています」「今はなぜこういう状況になるのか分からないというのが正直なところです」。それが試合後すぐの高木監督のコメントでした。

この試合、結果は0-3。完敗だしホームということや3連敗ということを考えれば“惨敗”とも言える。しかし、その試合内容、失点の仕方など、今のチーム状況と重ね合わせると、単純ではなく、色んな見方ができるし、できてしまう。

「これまでのような”怖さ”が全く感じられない。」何がしたいのかわからないというのが、前回対戦での徳島の印象でした。ところが、ようやく小林監督の守備戦術が浸透したのか、この試合で敷いた徳島の強固な守備ブロックを、なかなか破れない熊本。それに対して、「引く相手をうまく崩せなかった中で、焦れてクサビを入れてしまって、失点もそうですけど、そこで取られてカウンターというのが何回もあった…」と後ろからのビルドアップの心理状態を矢野が説明している。

「あ、失いどころが悪い」。瞬間、誰もがそう思ったでしょう。縦パスを青山がインターセプトすると、カウンターぎみに展開し、最後は再び斜めに走り込んだ青山がヘッドで決める。

「前半に失点するまでは本当に良かったし、あの時間帯に取れないことと、あの時間帯で、いい流れなのに失点してしまったのがもったいない」と、GK南が悔やむ先制点の献上。ある意味、この敗戦を象徴する失点でした

高木監督が憤るのはむしろ2失点目でした。ロングボールに飛び出した津田を追いかけて、エリア内で廣井が後ろから倒してしまう。「特に背後への対応は絶対的に気をつけなきゃいけないストライカーがいるにも関わらず、その辺でやられてしまうというのは、力が無いと言うしかない」(高木監督)。前回対戦時も痛い目にあったこの危険人物に対してのマークが、あまりにもお粗末すぎました。

もちろん熊本も、手をこまねいていたわけではなく、徳島の3倍近くのシュート数が示すように、フィニッシュまで持ち込みました。徳島の速くて読みのいいプレスを外して前線まで持っていく幾度かのプロセスは、確かに“本当に良かった”と見えるものでした。2点のビハインドからの後半、市村、そして藤本を入れて4-4-2にしたあたりからのポゼッションとパスワークには、ワクワクさせられたのも事実です。

しかし、シュート数5本(そのうちPKが2本)から3得点という徳島のいわば”決定力”、そしてその執拗なまでの戦術にまんまとはまってしまった。「焦らされた」というように、自らがミスをして与えてしまった3失点でしかありませんでした。

ただ、今回の(3連敗ということも)結果が単なる偶然の産物とも言えないわけで。やはり何かしらの敗因は掴んでおきたいのですが。

「勝ってた時期は前半の早い時間に点が入っていたから、そこだけかなとも思うし。チャンスは作れているので1つ決まればトントンと入るかもしれないし」「すごく悪ければ修正もしやすいと思うけど、決してそんなに悪くない」と南のコメントもはっきりしない。

しかし、3連敗する前(勝っているとき)って、攻撃が良かったわけでもなく、守備が良かったわけでもなく。“バランス”と“リスク管理”つまり“良い守り”からスタートして、“数少ないチャンス”を決めて、“徹底してブロックを作って””守り抜いた”ということではなかったかと。

その意味では、「いい時間帯の時には、やっぱり後ろが耐えてあげないといけないと思います。カウンターのチャンスは相手にもあるし、そこはやっぱり止めたいというのは強く思います。0-0の時間を長くすれば、後半も違った形ができると思う」と続けた南のコメントは、(多分)今日のこの結果とどう向き合うかを示してくれているように思えるのです。

武富は、「相手も(スペースを)消していたので、自分たちが抜けるより足元で作っていくしかないのかなという状況でした」と、前線もなかなか思い通りのリズムが作れなかったことを反省しています。

付き合わせてみれば、くっきりと浮かんでくるのは、“守りからのゲームの組み立て”にもかかわらず“相手がブロックしてきた”ので、ゲームのイメージとして同じものを描けなかったのでは。監督と選手、選手同士が…。

「誰かの責任にするのではなく、全員がこの敗戦を受け止めなければいけない」 と北嶋はインタビューに答えました。そして試合後すぐにtwitterで、こうつぶやきました。

「課題だらけ。でも、それだけ伸びしろがある。可能性がある。だから絶対にあきらめない。ずっと前を向く。そのことから逃げない。」

無用なホームでの敗戦を目の当たりにして、正直肩を落としています。しかし、新しいエース(まだ無得点ではありますが)の力強い決意を信じて前を向く。もう一度作り直しです。われわれも決して逃げません。

7月22日(日) 2012 J2リーグ戦 第25節
東京V 2 - 0 熊本 (18:04/味スタ/4,160人)
得点者:37' 深津康太(東京V)、90'+1 高橋祥平(東京V)


前節、京都に敗れはしたものの、その戦いぶりはこれまでとは違った手ごたえを感じ、指揮官にして「何も変える必要がない」とまで言わしめました。勝ち点から言ってもほぼ首位(首位戦線は、まったくの週替わりではあるものの)のこの東京ヴェルディとの対戦は、厳しい戦いになるという怖さより、どんな戦いをしてくれるか見てみたいという気持ちのほうが上回る。確かにそんな試合前の心境ではありました。

しかし。しかしです。実際のスタジアムは、そんなわれわれの、取るに足らない“プレビュー”など、どうでもいいような、特別なシチュエーションの試合だったわけで…。

そう。この試合は、元日本代表にして、柏の”シンボル”であった北嶋秀朗の、待ちに待った熊本デビュー戦でもありました。実際に赤いユニフォームを着てピッチに立つ北嶋の、その存在感は大きく、激しく、圧倒的であり、遠い熊本の地でテレビ画面越しにしか見られないわれわれにさえ、その”オーラ”を感じさせるには十分でした。

実際のところ、われわれとしては年齢的なものもあり、幾度もメスを入れたその脚のこともあり、慎重な見方をしていました。できるだけ期待しないように、自分を抑えていたような。しかし、それは予想を上回る、いや、われわれの勝手な先入観を、いい意味で大きく裏切る、魂のこもったプレーをしてくれた。正直言って”痺れ”ました。

多分、高木監督は、FWに対して危険なエリアで危険を顧みないプレーを求めていたと思う。それを実際に見せてくれた北嶋。試合前日には、「ウチは、みんなヘロヘロになるまではするチーム。“巧くやる”の前に、とにかく走ることが求められる」と言われたという。序盤から飛ばして、果たしてどこまで行けるかという心配もしていましたが、「試合後、ヘロヘロでした」と笑顔で語る北嶋。得点こそ取れず、勝ち点こそなかったものの、この逸材が、何より初先発の試合で90分間走れることを実証したことは、この日の熊本の最大の収穫といえるのではないでしょうか。

ヴェルディ20120722

試合は、森や土屋や飯尾を欠き、杉本もいなくなったヴェルディが、大きくメンバーを入れ替えてきた。阿部と組む2トップの一角には巻というのもなにやら因縁深い。その巻にさすがに高さのない熊本の3バックが制空権を一方的に奪われます。そしてPA内に人数を掛けざるを得ない守りは、なにやら前節の京都戦の後半を思わせる。ただ、一見押されっぱなしのようでも、少ないポゼッションのなかで、意図的な速い攻撃が機能する瞬間は、これまた京都戦の前半と同じ感覚で、決して悪くない。

藤本、藏川、養父と右サイドから崩して、武富のシュート性のクロスのニアに北嶋が飛び込む。いかにも北嶋らしいプレーは、惜しくもGK土肥に阻まれる。北嶋のポストプレーから繋いで、武富のクロスに飛び込んだのも北嶋。その右足にわずかに届かない。果てはハーフウェイライン近くからの養父のFKに、Pアーク付近にいた北嶋のバックヘッドは、バーに当たって跳ね返されます。

しかし、この日のナーバスな主審の笛を味方につけたのはヴェルディ。熊本のゴール前でファールを取ると、中後のキックは速い。深津が身体ごとゴールに飛び込むようにヘッドで叩きつけて先制点を得ます。

その中後が片山への危険行為で一発レッドの退場。ひとり少なくなったヴェルディでしたが、後半はこの1点を守りながらカウンターを狙うという意思統一ができたという意味では、熊本にとっては厳しい展開になりました。ヴェルディの一人ひとりの運動量が増す。逆に熊本の止める技術、パスワークの技術の荒さ、未熟さが目立ち始めます。

時間も少なくなり、熊本は矢野を前線に上げてパワープレー。薄くなったDFラインにカバーで入った養父が持ち上がろうとしたところで痛恨のミス。奪った高橋が預けて再び貰いなおすと、カーブを掛けて狙いすましたシュートは、駄目押しの2点目となってゴール右角に吸い込まれていきました。

1人少ない相手に対して、3バックから4バックに変えなかった意図を記者に問われて、「ミスマッチのゲームをしたかった」と高木監督は言う。「そのままの形で後ろの変化をつけることで、ギャップともっともっとミスマッチしたゲームをしたかった」と。そして「チャンスも意図とする部分で、選手も非常にいろいろ理解しながらやってくれたなと、プレーに関しては非常に満足している」と総括しました。

対するヴェルディは、高橋も刀根も西も、さらには川勝監督さえも土肥の名前を挙げて、再三のピンチを救い、後ろから守備を牽引した今日の試合の功労者だと称えました。前節鳥取戦から柴崎に代わり久々にゴールマウスを守る。熊本出身のJリーガーでは今やおそらく最年長になるであろうGK土肥の活躍が、熊本にまたしても連敗をもたらしたことは、複雑な心境です。

さて、再び北嶋に関して。サッカーライターの元川悦子氏は「柏ではレアンドロ・ドミンゲスやジョルジ・ワグネル、酒井宏樹(ハノーファー)といった質の高い選手たちからピンポイントのパスが供給されるが、熊本では同じようにはいかない。そういう部分でもギャップを感じたはずだ」と書きます。それに対して北嶋は、『柏と比べていたらストレスに感じるが、熊本だってしっかりボールをつないで攻撃を組み立てることはできる。自分が加わることで一緒に内容を高めあっていけたらいいと思う』と応えたのだという。

さらに彼自身のブログでは、はっきりとこう書いています。
「このチームの選手達は彼ら(レアンドロや酒井)とはまた違う特徴を持っているし、彼らにはない部分だって持っている。だから比べる意味も必要もない。だからそういう意味でのストレスもない」と。

「我々のチームに本当にフィットしたということではないとは思いますけども、また今後、もっともっと質の部分で上がってくることも今日のプレーを見て感じました」と、試合後の高木監督は言う。そう。もっともっとフィットしてくるはず。多分、もう少し時間はかかるだろうけれど。

盟友の南は言います。「チームとしてはキタジが周りのレベルに合わせるのではなく、周りがキタジのレベルまで上がらないと。それがこれからの熊本の大事なところだと思います」と。

「キックオフの直前はここにいたるまでの色んなことを思い出し感情が高ぶり涙が出そうになった」と言う北嶋。(ブログから)

ケガや累積などで選手層がどんどん薄くなっていくことばかりだった今シーズン。連敗にはなったけれど、また、チームの成長を待つ楽しみが増えたような、そんな気分です。身近に新たな目標ができた。さらにレベルアップしていける。そんな期待感でいっぱい。敗戦のあとなのに…。初めて感じる不思議な心境です。

7月15日(日) 2012 J2リーグ戦 第24節
熊本 0 - 1 京都 (19:05/熊本/7,620人)
得点者:81' 中山博貴(京都)


「九州北部豪雨」と名づけられた豪雨災害。まずもって、この災害で亡くなられた方々のご冥福を祈り、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

「大きな災害があった中で、今日こうやって無事にゲームができたこと、こういう環境を与えてもらったことに、関係各位の方、熊本の皆さんに感謝したいと思います」と、試合後の高木監督は言う。 多数の犠牲者と甚大な被害をもたらしたこの水害。かの大震災以来、サッカーと社会の関わり、繋がりかたを考えさせられることが多く、今回も、この試合を、この週末にホームゲームとして催行することが適切なのかどうか。被害の報道を目の当たりにしながら、そんなことを考えていました。おそらくは高木監督もそんな意識のもと、試合をできることの有難さ、大切さを感じていたのかと。ヘリコプターで救助された住民が、近くの避難所に運ばれる。そんななかで練習をしていれば、そう思うのは至極当然のことかも知れません。

しかし、チームの好調さと、連休の中日という影響も少なからずあったのか、この夜、7千人以上もの人がKKウィングに足を運んだ。試合を前にして、京都サポーターからは「一日も早い復興をお祈りします」という即席弾幕とロアッソ熊本コール。それに対して熊本ゴール裏は京都サンガコールで応える。胸が自然と熱くなる。誰が何と言おうと、これがわれわれがともに戦っている戦友の温かさ。このリーグの良さに違いない。

京都20120715

さてゲーム。とりあえず監督としてはこの一言ですべてを総括している恰好です。
「選手たちには全てにおいて満足してますので、負けた悔しさはありますけれど、特に修正することはなく、次の東京V戦に向けて準備をしていきたい」。

CKから矢野のヘディング。原田のミドルシュート。いずれもGK水谷の機敏な反応に阻まれますが、試合開始早々から好機を作ったのは熊本。前回対戦で、あれほど一方的に攻められた相手に、互角以上の内容。

確かに、この試合の前半、熊本が展開したゲームは、冴え渡り、相手を消すと同時に、高度に連動した動きで相手ゴールを何度も脅かしました。よく練習を積み、よく戦術を理解したものだけが到達するような。

4分の1コートを利用した大木サッカーの非常にコンパクトな「クローズド戦術」に対して、熊本のスピード、ワンタッチの展開力、全員の意図がシンクロする快感のようなものが何度も何度も繰り返された。

そして指揮官としても、自らのスカウティングも含めて相当な手ごたえを感じたのでしょう。あるいは京都との今季の戦いを終えたから許されたことだったのか。試合後の会見で、ボードを使って自ら敷いた戦術を具体的に説明したというのも異例も異例。そしてそのなかで「我々がやったことが間違いじゃないということを皆さんにわかってほしいですし、彼ら(選手たち)がやったことはすごく難しいことです」と説明を始めたのだといいます。

しかし、前節、岐阜戦もそうでしたが、後半の相手の出方とその対応が課題。敵将・大木監督も”修正力”を持っていました。高木監督自身も、「後半にチョン・ウヨン選手が出てくるだろうなというはわかっていました」とウヨンに対する警戒は十分にしていた。しかし「彼が入ることによってペースが変わることもわかっていましたが」「わかっていましたけども、そこに対して厳しく行くというのがなかなか難しかった」。それが”ピッチ上”で起こっていた現実でした。

一方で、大木監督はこう言っている。「ウヨンを入れるということもあったんですけれども、もう1つは中村充孝を前に上げるということ」「誰を入れるか考えたんですが、中村を上げようと。そこでまず落ち着きどころを作りました」と。

熊本のDFラインはPA内に押し下げられて 、防戦一方の展開。攻撃に転じても押上げが効かない。跳ね返しても前線に収まらない。自然とスペースが空き始める。前での溜めを期待して、前節から試合に復帰した主将・藤本を入れる。しかし押し戻すまでには至らない。

藤本から縦に入れたパスを齋藤が収め切れず、奪われたあとの京都のカウンターでした。右サイドから中村がエリアに持ち込むと一度戻す。もらった工藤はカーブを掛けてゴール左角を狙うシュート。ポストに当たって難を逃れたかと思ったのも束の間、詰めていた中山に蹴りこまれました。

京都にとっては全く”いい時間帯”でした。我慢して我慢してもぎ取った得点。熊本にとっては苦しい時間。仲間を入れて押し戻し、好機を作るものの決めきれない。残されたアディショナルタイム。ペナルティエリア内で倒された片山のプレーに、すわ「PK!」とスタジアム全体が沸いたもののノーファールの判定。しかし、やはりこれは疲れているのか。チーム状態というべきか。豪雨のなかで、練習やコンディショニングが十分だったとは思えない。この高湿度のゲームのなか、後半守りに終始した展開も足にきたのか、最後まで戦う姿勢は見せてくれたものの、その後に追いつく気力も体力も、熊本には残されていませんでした。

しかし。指揮官は、次の試合に向けて「特に修正することなく」と言い切る。大木監督の「クローズド」戦術に対して自身が”見切った”打開策に関して、よほど選手たちが理解し、それを実行できたことを想像させる。大げさに言えば、人生のなかでそう何度も体験できる感覚ではない。とでも言うべきか。

「イタリア語で言うプロビンチア、我々のような地方のチームでも京都のようなビッグクラブに対してこれだけできるんだということを示してほしい。ああいうクラブに勝つためには必死で頑張らなければいけない。でも頑張れば苦しめることはできますし、そして勝利することだってできる。選手たちの頑張りをこういうところで伝えるのも、自分の役割かなと思いましたので」と監督は言う。

そしてこのコメントも今まで聞いたことのないような内容。そう、われわれはまさしくプロビンチア=”地方にある小さなサッカークラブ”。ウディネ-ゼとまでは言わないにしても、目指すは、J1に長く居とどまる新潟や、今まさにその戦いのなかにある鳥栖。それを経験した甲府。

敗戦という結果に、今日の試合の意図や内容が覆い隠されてしまうのがよほど耐えられないということなのか。敗戦を見返すことは辛い作業ではあるけれど、ビデオを何度も見返して、高木監督の意図をなぞってみたい。今節はそう思わせる戦いだった。そんな気がしました。

7月8日(日) 2012 J2リーグ戦 第23節
岐阜 0 - 2 熊本 (19:04/長良川/4,023人)
得点者:26' 大迫希(熊本)、37' 武富孝介(熊本)


前回対戦では3-0で勝った相手。われわれも「相当の研究と意気込みでくるはず」と先週予想しましたし、高木監督も「岐阜は非常に調子がいい」と警戒していました。

熊本のシステムは 吉井が復帰して3バックに戻る。ただ、驚いたのはこれまで全試合出場の廣井がいない。ポリバレントな藏川も高橋も、果ては市村もベンチにすら入っていない。故障によるものだと後で知りましたが、折角の連勝で勢いに乗っていたところに水を差すこの事態。しかし試合前、指揮官は選手たちを前に、ネガティブな表現を一切使わず、「新しい組み合わせ、フレッシュな選手、それを存分に生かして欲しいし、期待している」(藤本主税のブログ)と選手たちを鼓舞したようです。

岐阜20120708

試合は予想通り、まず岐阜が前に前に出る展開。序盤の熊本、これをきちんと受ける形で凌ぎます。落ち着いている。シーズン序盤の不振から時間を掛けて守備を立て直してきた行徳監督の岐阜。ここ3試合は無失点。しかし、その高いDFラインの裏のスペースを熊本が狙い始めると徐々に歯車がかみ合わなくなってきます。後半24分あたりでは「相手にペースを渡してしまったような」とスカパーの実況が表現しています。

試合後に「相手が前に来れば背後は空いて来るし、中盤でプレッシャーが掛かれば、近くに繋げなくなる。」「相手が高く来るなら、背後を突くのがセオリー」と高木監督が言うとおり、徹底したシンプルな試合運びの熊本。

原田から右サイド奥へ一気にロングボール。武富がスペースに走りこむと完全にフリー。何のプレッシャーもないなかで狙い澄ましたクロスを上げる。ゴール中央には齋藤に加え、斜めに入ってきていた大迫。「少なくとも高校に入った以降は記憶にない」というヘディングシュートを大迫が決めて先制。これまであまり見たことがない実にシンプルな得点シーンでした。

その後も、岐阜のミスにも乗じたうえで一方的な熊本の攻勢。スカパー解説の大野聖吾氏が、「(岐阜の)ディフェンスラインが(熊本FWの走り出す)いい目印になっている」とまで表現する。

「個人の戦術的な成長も感じる」(熊日)と評価した高木監督。それはもちろん、前掛かりで高い岐阜のDFラインの裏を徹底して狙っていった攻撃ももちろんですが、先制されたとたん一転して下がり始めた岐阜DFのぽっかりと空いたバイタル。今度はそこを有効に使い始めたところ(判断)も含めて言っているのではないかと。個人と言っているが、それは誰と言うことではなく、ピッチ上で臨機応変に戦術を変えた選手たち一人ひとりを”個人”と表現しているのだろうと。いわゆる、チームが同時に同じ絵が描けていたということを指していたのかと思うのです。

その成果は早くも37分に。前線に入るくさびのボールを狙っていた吉井がインターセプトすると左から繋ぐ。バイタルでもらった武富が、林立するDFをかいくぐるように中央にドリブルで持ち込み逆サイドに鋭い角度をつけたシュート。意表を突かれたGK時久が飛びつくものの、ボールはゴールネットを揺らします。武富の個人技も素晴らしい。しかし、奪ったあとの吉井のDFを引き付けながらの爆走、オーバーラップ。左サイドでの細かいつなぎ。まさしく”同じ絵が描けていた”としか言いようがない得点でした。

試合後の敗将・行徳監督は「6月に入って少しずつ勝点が付いてきて、安心したのか、情けない試合をした」と言います。しかし、何といっても今日もうひとつの驚きは、岐阜のスタメンに佐藤洸一の名前がなかったことでもありました。行徳監督は「「恥ずかしい話ですが、佐藤洸一選手が一昨日の練習に遅れてきた。対戦相手のビデオを見て、紅白戦する
日に遅れてきたのが、外した理由」と明かしました。相手監督のマネジメントに何も言うことはありませんが、そこには大きな苦渋の判断がありました。

だからこそなのでしょうか、後半から入った佐藤、いつにも増して粘り強い。さすがの吉井も手を焼きます。「後半は相手が出てくることで、前線にターゲットの選手が入って押し込まれるだろうなと思った。最後までゴールを割らせなかったことが、彼等の頑張り」。指揮官も織り込み済みの展開ではあったものの、そこを実際に完封した守備陣を称えたいと思います。

前から必要以上に追いかけず、完全にブロックを作って受ける体制の熊本。引けば、それまでのバランスは変わる。引けばさらに佐藤を活かしてしまう。そして染矢のスピードにやられる危険な場面が何度も。その対応に、怪我から復帰した藤本主税を当てて西森をボランチに。果ては福王を入れて4バックにしてサイドのスペースを消す。吉井はボランチに上がってユーティリティ性を見せる。まさに、チーム全体が変幻自在。最後は仲間を入れてかき回す。そして勝ち取った完封での3連勝。高木体制では初めての3連勝でした。

「ここまでいい形で守れていた。気の緩みがどこかであったと思う。甲府との試合で無失点だったからこそ、その次のこの試合が重要だった」と悔やむ岐阜のDF関田。その言葉とは対照的に、「“ここは勝たなきゃいけない”といった、プレッシャーのかかったゲームを今まではことごとく落としてきたので、今日の試合できっちり勝ち点3を取れた事に、チームとしての成長を強く感じました」(ブログ)と南は言う。

4月以来の先発出場。前半の猛攻の狼煙を上げた殊勲の大迫は「チームとして3連勝が懸かっていた試合なので、自分が流れを変えないようにと思っていた」と、プレッシャーのあったその心境を語りました。4試合連続得点を続ける武富は、試合後のインタビューで、前節千葉戦の勝利におごることなく「みんなが同じ強い気持ちで(試合に)入ったので、それがよかった」と言う。

選手層が厚くなったなどとは、お世辞にも言えない。けれど、かつてのような“誰かがいないから戦力が落ちた”あるいは“交代カードでシフトダウンした”といったようなことは感じなくなった。逆に薄い選手層、故障者の多い状況を乗り越えて、選手たちにポリバレント性を求めて積み上げてきたものがやっと形になってきたのかと。

「3連勝していることは(気持ちから)捨てて、次の京都戦に向かいたい」と言う武富の心は、すでに次節に向かって切り替わっていました。高木監督が「10回やって1回勝てればいい相手」と表現した前回対戦からどれぐらい力が縮まっているのか。

次節ホームゲームでは再び胸スポンサーの高橋酒造さんから、ミニレプリカユニが無料で配布されるとか。スポンサーもファンもチームスタッフも全員が同じ絵を描いて、強敵・京都を迎え撃つのみ。楽しみな一戦です。

ミニユニ


7月1日(日) 2012 J2リーグ戦 第22節
熊本 1 - 0 千葉 (19:03/熊本/4,326人)
得点者:85' 武富孝介(熊本)


5月20日の0-4の敗戦。その時のエントリーを読み返してみると、アウェーの雰囲気にのまれ、先制を許し、後手を踏んだ。偶然に負けたわけではないことを“力負け”と表現していました。 あれから1カ月ちょっと。チームはその間の6試合を3勝2分1敗。結果も内容も悪くないゲームを続けてきています。前半戦最後の試合となった前節は、富山に今季アウェーで初勝利を挙げ、後半戦へ向けて“整理できた”状態だったのかなと。

選手も監督も、おそらくは相当の決意をもって臨むに違いない。色んな意味で今日のこの試合はあの敗戦とセットで見ていくべきだろう。そう思いながら(実はわれわれはチキンの気持でドキドキしながら)この試合を迎えました。

このところの長雨、そして時折り激しく降る雨。相当にスリッピーなピッチコンディション。ちょっと体重をかけ損なっただけでバランスを崩してしまう。試合を通じて転倒する選手が続出。また、上から見ると鏡のようなKKのピッチといえども、実際には相当に水が滞留しているのか。とにかくリスクを避けるプレー、事故を起こさないようなプレーが求められる。

これは相手も同様。いやむしろ、この“重(おも)馬場”の芝の状態や断続的に降った大粒の雨は、アウェーチームのほうがより大きなハンデになったのではないでしょうか。前回敗戦の大きな要因だった“アウェー感”でしたが、今日は天も味方につけてのホームゲームと言えました。

千葉20120701

「負けゲームだったと思います。今年22試合目にして、一番ひどい内容のゲームでした。原因を考えても、良かったことを探すのが難しいので、冷静にいろんなことを考えないといけないのかなと思います」。試合後の木山監督のコメントは「時にはカウンターもあったし、前線で奪われた時の守備も非常に速かった。そういう意味ではある程度、納得したゲームができたんじゃないか」と語った前回とはまったく対照的なものでした。

試合開始早々こそ、素早いパス回しで熊本のバイタルを脅かしましたが、次第に落ち着きを取り戻した熊本の守備網につかまり始める。この日、熊本が敷いた布陣は開幕戦以来の4-4-2。あとでスカパーの録画で吉井が怪我をしたことを知ったのですが、それが4バックにした理由ではなかった。「ジェフに対してはサイドハーフとサイドバックに初戦でかなりやられたので、このゾーンをしっかり潰していくというのが大きなテーマでありました」と、指揮官がその戦術を語るように、神経質なまでにここを“潰して”いった熊本。このゾーンをケアするために守備が逆算されているような感じで、選手たちからは“絶対にバランスを崩さないぞ”という決意さえ伝わってくるような。

「我々がこのゲームで勝つには、絶対に先に失点してはいけないというのが自分の中にもありました」と言う高木監督。拮抗した展開の前半残り5分。よく“ポカンと意識が空いた”ような感じで失点していた時間帯もしのぎ切る。後半立ち上がり、押し込んできた千葉の米倉にネットを揺らされますが、戻りオフサイドの判定で事なきを得ます。

どちらが先にカードを切るのか。それが後半の最大の興味でした。「正直、前半の出来だと苦しいので後半の頭からという思いもあった」と言う木山監督が、60分になって堪らず深井を入れてくる。下がった田中に勝るとも劣らず、嫌な選手でした。

対して、「0-0というスコアで後半に入る中で、今日のゲームでは僕から見てなかなかいじるところがなかった」と言うのは高木監督。「1つ待ちたかったのは、深井選手が入って来た時にどういうアクセントになるのか、攻撃のリズムや動きが変化するのか観察したかった。」「深井選手が入ったことによる変化も見ることができたので、あとは(齊藤)和樹の疲れもあって、そこで(高橋)祐太郎を入れた」のだと。ベンチワークも白熱を帯びます。

ただ、この重いピッチでオープンな展開を続けていた両者とも、徐々に足が止まってきた感がありました。そんななかで与えた千葉のゴールから45度のFK。ファーの山口の頭が捉える。これはゴール枠を外れたものの、千葉の粘り強さ、一発の怖さを感じさせるには十分。もやもやと嫌な雰囲気が漂い始めます。

そのとき俄かにゴール裏が歌い始めました。それまでより力強く。一層声高く。選手たちを鼓舞する“熊本”の歌(チャント)を。スタジアム全体にその思いが伝播し、手拍子がこだまします。

決勝点は85分。斎藤に代わって入った高橋が、高い位置でボールを奪い、相手を背中でブロックしながら正確なスルーパスを通した。武富がGKとの1対1を冷静に決める。絶妙の時間帯。絶妙のゴール。もう、いつまでもマフラーを回しておきたい。

こうして書くと、まるで守り一辺倒の熊本がワンチャンスをものにしたように見えますが、実はそうではありません。千葉の好機と同じ数だけ熊本も決定機があった。千葉の高いDFラインの裏を、養父のパスが何度も狙っていた。原田の大きなサイドチェンジが千葉を走らせた。千葉の攻撃を単純に跳ね返すだけでなく、繋いでビルドアップしていく。パスコースが増えている。攻撃の“形”が増えている。守備面だけでなく、ひとつひとつのボール、プレーに対するチームとしての集散のスピードが上がっている。それは運動量という“エンジン”をベースにして。

必然的に勝った試合とは言えないけれど、決して偶然に勝ったわけではない。少なくともこの試合だけの結果ではないことははっきりと実感できる。そして得たものは、ビッグクラブ千葉に対する初勝利と、今季初の2連勝という結果。上位といえども臆することなく戦える。そんな自信と経験値でした。

これはまったくの結果論ですが、前回敗戦のエントリーで、「唯一の救いは、大量失点のなか“切れず”に果敢に向かい合ったこと、スタイルを変えずビルドアップして後半シュートシーンを量産できたこと」と書いています。今日の戦いも前回の敗戦とひとつづき。見せつけられた課題を克服するために、ひとつひとつ積み上げてきたもの。次節は前回4月1日の対戦で、ホームで3-0の勝利を挙げた岐阜。まったく逆の状況。相手は相当の研究と意気込みでくるはず。それも後半戦の面白さであり、難しさなのかと。しかし、とりあえず今は、勝ったー!と、勝利の余韻に浸りたいと思います。