8月22日(水) 2012 J2リーグ戦 第30節
熊本 1 - 1 草津 (19:04/熊本/3,809人)
得点者:35' 根占真伍(熊本)、77' 横山翔平(草津)


アデッショナルタイムは3分。もちろん誰もがこのCKがラストプレーだと分かっていました。蹴るのは藤本。弧を描いたボールは、草津のDFが必死にクリアしてエンドラインを割る。しかし、主審は再びコーナーを指差すことなく、”お約束どおり”終了のホイッスルを吹きました。追いつかれてのドロー。何度かあった追加点の機会も決め切れなかった。そんな欲求不満な試合内容を象徴するような終わり方でした。

「勝点3が取れるゲームだった」と言うのは高木監督。もちろん表面的なゲームの経過だけを見ての感想ではないでしょう。内容についても「非常にいい入り方ができて局面においてのプレーも良かった」「選手たちもアグレッシブに動いてくれた」と評価する。

確かに藤本が言った前節の課題、「トライする縦のパス」の意識が、試合序盤から高く、選手たちは前を向いて2列目、3列目の追い越しも随所に見られました。 しかし、草津が決定機を外してくれたとの印象も強い。前半、ポゼッションはやや熊本に分があったように見えましたが、“決定機”ということで言えば、草津に軍配が上がったでしょう。もちろんサッカーでは、こういうことはよく起こるけれど、あの目を覆うような瞬間を普通に決められていれば、0-1あるいは0-2の前半だったわけで。

そういう巡り合わせも含めて、“幸運にも”先制できたゲーム。バイタルから思い切りよく左足を振りぬいたのは根占でした。GKの目の前でバウンドしたブレ球は、脇をすり抜けるようにしてゴールに吸い込まれます。栃木戦時の接触での傷がまだ癒えないのでしょう、この日は赤いフェイスガードを装着して試合に臨んでいました。バットマンならず”仮面の忍者赤影”。そんな昔のヒーローの名前が浮かんでしまうと歳がばれます(笑)。

前半終了間際のいい時間帯であり、草津もここからは前に出てくるしかない。そうなればまたアタッキングサードにもスペースが空くはず。そういう意味でもこの先制点の価値は高く、この試合は絶対に取りに行くぞ。そんな絶好のゲーム展開になるはずでした。課題はまさしく、ゲームが動いた後の、後半の戦い方でした。

草津20120822

当然のように押し込んでくる草津。加えて身長のある前線に対して早めにボールを入れてくると、DFも後ろを向かざるを得ない。さらに自陣でファールを犯すと、松下や熊林のFKという脅威もある。熊本は中二日のコンディションのせいなのか、プレスだけでなく、パスの出し手に対しても厳しくいけていたかどうか。こんなときは、前線の齋藤に厳しく競ってもらうなり、時間を作ってもらって押し上げたいのですが。一度だけ矢野のロングボールにDFの裏を取って走ったシーンがありましたが、シュートは枠を捉えられず。

「2トップの距離が前節は遠かったので、そこを修正したことでコンビネーションが繰り出せた」(熊日)。そう齋藤は言います。しかし一方の武富が「コンビネーションを意識しすぎ、出さなくていいところでもパスを出してしまった」と自戒しているのはなんだか皮肉的です。北嶋の怪我によって回ってきているチャンス。ならばもっとプレーから”貪欲さ”が伝わってきていいはず。これもこの日のファンの欲求不満を誘う一因でした。

再三、機転を効かせた大きなサイドチェンジで好機を演出していた原田が、足を攣ったのか吉井に交代してしまう。齋藤が高橋に交代すると、先制点は”虎の子の1点”のように思えてきました。

しかし77分。2度続いた草津のCKのチャンス。右CKからゴール前の密集のなか、林立する足の間を射抜くようにして押し込んだのは草津の横山。厳しい時間での同点弾。センターサークルに戻る熊本の選手たちの重い足取りから、その精神状態が伝わってきました。

「ザスパの得点の時間帯というのが、前後半の残り15分の時間帯に偏っているというのがあって、それは選手たちにも今日は意図的に伝えたんですけども、本当にそういう状況になってしまった」と高木監督は言います。「相手がそのメンタルで上回ったのか…」と。

「2点目が取れないとこうなりますね」とは武富。根占も「やっぱり早く2点目を取ることだと思います」と言う。

堅守速攻の相手から奪った貴重な先制点。そこから描けるはずだった自分たちが主導する試合展開。フィニッシュに行く手前での“回し過ぎ”。結局は草津のブロックにつかまっている。カウンターのリスクも背負うことになる。ミドルの精度の低さ。相変わらず枠にいかない。

どうもゲーム観がちょっと掛け違っていたのではないかとも思えます。先制点が重要なのは全く異論のないところですが、それで逃げ切れるほど、草津は弱くはないと。草津の後半の強さ。さらに残り15分の執拗さ。淡々と言ってもいいほど、最後まで走りきるパフォーマンス。改めて90分を俯瞰してみれば今日のゲーム、前半を1-0で折り返せたことが、かなりの幸運だったようにも見えます。そのうえでの後半への入り方、戦い方。

ハーフタイムのコメントの「セオリーを崩すプレーをするな」という指示の具体的な意味を問われた草津・副島監督は、「例えば自陣でバウンドさせてしまった小柳のプレー」「気の抜けた凡ミスに近いプレー。公式戦の場で出てしまうのは許せないし、チームにもマイナスに伝染してしまう怖さがあった」「本人に対しても厳しく指摘した」と選手の名前を出して答えました。

「土井がチャレンジする姿勢が欠けていた」とも。これは前半のうちに金への交代カードを切ってしまいました。自らの求めるものに対して明確に要求を出していく姿勢。できるようで、なかなか難しい。「本当にチーム全体がアラートな状態で攻守に関わっていくことが求められる」なかで、ひとつのプレーも見逃さないぞという厳しさを選手に伝えているのでしょう。

前節、数名の選手名を挙げて”叱咤”した反町・松本は、今節6連勝中の京都に土をつけました。松田・栃木は退けたものの、それに続く反町、副島・・・。一癖もふた癖もある勝負師たちとの対戦が続くなか、なかなか勝ちきることができず、欲求不満が募ります。