10月28日(日) 2012 J2リーグ戦 第40節
鳥取 0 - 1 熊本 (16:03/とりスタ/3,120人)
得点者:51' 藏川洋平(熊本)


J’s GOALの鳥取側の記者もプレビュー記事で、熊本は「現実的に考えれば、モチベーションが難しい状況ではある」と書きました。われわれも、その点では同意。それ(モチベーション)をどうキープして戦えるのかというところが、この試合の一番の注目点でした。

思えば、これまでのシーズンでは、相当に早い段階で昇格圏は絞られてしまっていたわけで。リーグ終盤のこの時期まで、プレーオフ圏と言う名のモチベーションが保たれるこのシステムは、それなりに効果的だったとも言えるでしょう。

自力ということではなく、あくまでも他力の、計算上の可能性ではありましたが、昇格プレーオフ圏への望みが断たれた前節・横浜戦の敗戦。終戦というべきか。支えていたものが無くなった、あるいは、ポッキリと折れてしまった、そんな状態なのか。身も蓋もない言い方をするならば“消化試合”ともいえる。

「残り3つで9ポイントを取る、それがわれわれの最低限度の目標になりました」と高木監督が言う。それは目標とも言えないような目標。それで選手たちのモチベーションが保てるのだろうか。

そこに、この試合に勝てば残留決定という、これ以上ないギリギリの状況で、それでも自力で自らの命運を決められるという鳥取が相手。しかも相手のホーム。少しでも気後れすれば、あっと言う間に持っていかれそうな予感は試合前から感じていました。

鳥取20121028

しかし、そんなわれわれの不安を吹き飛ばすような序盤。中盤を制圧し、セカンドを支配し、主導権を握る熊本。片山、藏川。両SBが高く上がって攻撃に参加する。右藏川からのクロスに大迫がニアでそらすもゴールの左に抜ける。惜しい。藤本からのパスを市村が前で落として、養父のシュートはDFに阻まれる。

ただ、慌てていた鳥取もポジションの修正を図ると、徐々にペースを掴み始める。中央の住田に通されるとDFがクリアしたボールは左にいた小井手の足元に。このシュートはバーに当たって事なきを得ますが、その後も鶴見から小井手が落として住田の決定的なシュート。これは守護神・南の手中に収まりました。

値千金の先制点、そしてこの試合の決勝点は後半6分。熊本のポゼッションから、原田が縦にループで入れる。そこには左から機を見計らった藏川がするすると入り込んでいた。自分の後ろからくるそのパスをダイレクトで振り切る。シュートはネットを突き刺しました。

後半、右SBから右SHの市村とポジションチェンジしていた藏川。指揮官の「もう少し流動的な動きのなかで(サイドだけではなく)中央でボールを受けて相手の懐に入る」という意図によるものでしたが、いずれにせよゴールに近づいた藏川が、その期待どおりに結果を残したのですから指揮官の采配はみごとに奏功しました。

それにしても藏川。確かに原田のパスもピンポイントでしたが、斜めに走り込んだとはいえ、ほとんど真後ろからのボールを、ダイレクトボレー。これまでの藏川のフィニッシュの“実績”を思い浮かべたとき、悪いんですが、あのシュートは正直とても想像できるものではありませんでした(笑)。「1年に1度しかゴールしないと柏の時から言われている(笑)」と南もブログで書いていますが、その一度しかないゴールも、いつもスーパーなゴールなのだと言います。

先制した試合は負けがない熊本。後はしっかりとブロックを敷き、明らかに守備を固めながら、カウンターの一発狙いへ戦術を転換。スカパー!実況の解説者が何度も口にしたように、打てばDFに当たって入ることだってあるというシュートも、鳥取の打たない“パス”に救われる場面が何度も。そして、GK南の安定したセービングにゴールを割られることはありませんでした。

町田との対戦のとき、降格戦線を彷徨う町田のことを”手負いの獅子”と表現しました。この鳥取は、それにも増して「この試合に勝てば自力で残留が決まる」という状況において、荒ぶるような猛獣のようでした。しかも、この試合時間の前に、最下位・町田が岐阜に勝利し、勝ち点差4に迫っていた状況ならなおさら。

その”猛獣”の攻撃をうまくかわしながら、急所を一突きした。その後も荒れ狂う相手をいなしていなして、我慢して。90分戦って、ようやく力尽きたのを見届けた。矛と盾をうまく使い分けた。”我慢のゲーム”。全くそんな試合。

勝ち点というのは、こうやって積み上げるんだというリーグ戦サッカー。モチベーションがどうのこうのと心配する以前に、「大人になったなぁ」としごく感動を覚える内容でした。

「今までのロアッソは負けた試合の後、あっさり連敗してしまったり、良くても点がとれず引き分け止まりだったりするゲームが多かったけれど」と、南はブログで続ける。

「今日は最初からいい入りが出来て内容でも相手を上回れたと思うし、最後押し込まれた場面でもバタバタする事なくみんなが体を張ってしっかりと逃げ切れたのはチームが成長している証だと思う」と。

「前節昇格の可能性がなくなり、相手は残留争い真っ只中のチームでともすればモチベーションで圧倒されかねない試合でしたが」とは南も認めるところ。鳥取側にとっては、熊本には何のモチベーションもないだろう、あるいはモチベーションでは優るだろうと明らかに予想していたのでしょう。スカパー!試合後のヒーローインタビューで、その点を問われた藏川は、「厳しい試合になるのは予想していた」と前置きしながら、「”プロとして”1試合1試合に結果を求めるのは当然」だとキッパリと応えました。

リーグ戦も残り2試合。次節はアウェイ・甲府戦。これまた、昇格という最大の目標を達成してしまったチーム。終盤において、さらに“難しい”ゲームになるだろうことは必至。どう戦うのか。それを見届ける。まだまだ今季の楽しみは終わっていません。


10月21日(日) 2012 J2リーグ戦 第39節
熊本 0 - 1 横浜FC (13:05/水前寺/6,585人)
得点者:45'+1 オウンゴ-ル(横浜FC)

久々の水前寺のゲーム。6500人を超えるスタンド。これまで観客数がなかなか伸びなかった水前寺でしたが、特に今日のゴール裏は立錐の余地がないくらいの入りになりました。そう言えば、8月12日の栃木戦以来、天皇杯岐阜戦も含め、ホームでは7試合負けていない。プレーオフ圏内にとどまる横浜FCに対しても、まったく当然のように、チームは“勝ちにいく”し、ファンは“勝つのを見にきた”というような意識。水前寺でもカモン・ロッソを踊る。そのためにゴール裏に陣取るみたいな。

「熊本のサポーターも、今日は僕らにかなりプレッシャーをかけてきたので、やりづらかった部分はあります」とは、敵将・山口監督の試合後の弁。それだけ”ホームらしく”なってきたということでしょうか。

しかし、ゲームはと言えば、先に取られるとこうなるという見本のような・・・。

横浜20121021

高木監督も「今日のゲームの内容に関しては、横浜FCに対してやりたいことというのは、選手たちも頑張ってくれてある程度できた。それは評価に値するものじゃないかなと思います」と言い、原田選手も「内容的には前節より良かったですけど、結果が出なかったのは残念」と言う。

序盤、主導権を握って試合に入ったのは熊本。「相手の水源(ボランチ)を断つ」と試合前に指揮官が予告していたとおり、中盤でビシビシとボールを奪い、高速のワンタッチでこちらは“水が流れるように”前に前に運びます。原田の惜しいミドル。五領がエンドライン際で粘ってマイナスクロスに養父のシュートはDFにクリアされる。

しかし、ジワジワとセカンドを支配しはじめた横浜もチャンスを作り始めます。両チーム、奪えばタテに速く、鋭い。シーズン終盤特有の、チーム戦術が成熟し、高いレベルで連携しているもの同士の戦い。密度の高い時間が過ぎていくなか、前半のうちに何かが起こる予感はしていました。

失点の場面。熊日も「一瞬の隙」と見出しに取るもように「あそこは僕が簡単に外にクリアするべきだった」と廣井が後悔する。早いリスタートにカイオが走って、廣井が入れ替わられた。その時点で”終わって”いるわけで…。

最後の局面は、シュートコースも絞られていたし、ポストに当たるシュートは、当たる理由がある。幸運でポストに助けられるわけではない。ただ、どこに跳ね返ってくるかは、これはもう神様も預かり知らない。不運と言う前に、”終わっていた”プレーでした。

後半から五領に代えて市村を投入する熊本。対する横浜は八角と森本を入れ、4-1-4-1の布陣に。「横浜FCはリードしていると4-1-4-1という形を取るケースが多かった」と言う高木監督。「僕が横浜FCにいる時に山口監督がアンカーを務める役割をしてました」と言う。その山口監督は今、その同じ役割をベテラン八角に託しました。

市村に徹底的に裏を狙わせる熊本。藤本には大迫が代わり、さらに縦への推進力を求める。養父に代えて仲間。前に起点を設ける。しかし、熊本はアタッキングサードまでやすやすとボールを運ぶものの、そこからがっちりガードを固めた横浜の守備ブロックを崩せない。バイタルまで運んで、そこで明らかに躊躇しているのが伝わってくる。横浜にとっては怖くない。かえってシュートまでやり切れているのは横浜のほうでした。

養父という”アイデア”を失ったツケ。原田はアンカーとしてゴールより遠いところにいました。”人に使われる選手”と”使う選手”。前線に投入されたのは”使われる選手”ばかり。躊躇するのが当然でした。そこで求められたのは武富の才能だったろうと思いました。武富しか、”使われる”ことと”使う”ことを両立できる選手はいませんでしたから・・・。

終了間際まで熊本も攻め続けました。片山のクロスが大外の市村に向かう。しかしDFの前に入れない。今度は市村のアーリークロスに、矢野のスライディングシュート。これは枠を外れる。終了間際には矢野のパワープレー。ロングボールの落としに仲間が走り込む。しかし切り替えしている間にシュートチャンスを失う。主審のホイッスルが鳴るその瞬間まで、スタジアムの赤いサポーター全員が、同点の可能性を信じた。そんな試合でした。

試合終了のホイッスルは、連勝のストップを告げると同時に、熊本の今季のJ1昇格可能性を打ち消す大きな意味を持つものでした。この敗戦をもって、プレーオフの6位以内に入るわずかな可能性を数字上も失ってしまいました。

ただ、試合終了後のピッチに倒れ込んだ選手は、横浜FCのほうが多かったように見えました。単純とはいえ、その数が、この試合に対しての「勝ちたい気持ち」の表れではなかったのかと。プレーオフに是が非でも残りたい横浜の気持ちが、やはり上回っていたのではないか。

後半、熊本の猛攻を死守したGKシュナイダー潤之助はインタビューでこう答えました。「前節ホームの北九州戦の痛い敗戦が糧になった」。「だから、6連勝中で勢いのある熊本に勝つことが、もう一度這い上がれるチャンスだと思った」と。なぜなら自分たちは「最下位から這い上がってきたチームだから」と・・・。

前進のフリューゲルスからのサポーターにとっては、水前寺は”鬼門”だったらしい。いわば初めての勝利なのだとか。長い苦楽を共にするサポーターにとって、この地での勝利は、勝ち点3以上のものがある、J1に繋がる”吉兆”なのかも知れません。

われわれはといえば、負けたけれど、悔しいけれど、しかし情けなくはない。息を飲むようなスピードと連携、そして闘う姿勢がしっかりと感じられた。勝ち点を争うリーグ戦ということでは、何も手にすることはできなかったわけですが、これもサッカー。長いシーズンにはこんな試合もある、などと諦めるゲームではないゲーム。ホームチームのゲームとして、ホームスタジアムに結集して、純粋にサッカーを楽しめた。われわれはそう思う。

そんなシーズンも、残り3試合。

「プレーオフの可能性はなくなったが、残り3試合と天皇杯があるので、身を引き締める思いで戦いたい。」と藤本は言う。

早く終わって欲しいシーズンもあるが、今は、もっと長くこのメンバーのサッカーを観たい。課題もはっきりしている。見ているほうも、選手自身もわかっている。最後のところで、横浜の守備を崩していないし、相手守備陣のイメージを外し切れていない。織り込まれているし、読まれている。相手を混乱させることができなかった。

プレーオフに生き残った横浜FCと、そこに到達できなかった熊本。その差は果たして大きいものだったのか、それとも僅かなものだったのか。 その答えは、この直接対決だけで急いで出されるものではないのかも知れない。それは残り3試合をしっかりと見届けからでも遅くない。そう思いました。

10月14日(日) 2012 J2リーグ戦 第38節
熊本 2 - 1 町田 (18:04/熊本/7,127人)
得点者:12' 武富孝介(熊本)、55' 平本一樹(町田)、70' 矢野大輔(熊本)


試合前日の土曜日。いつものようにいさむちゃんの床屋へ。今日の話題、まずは朝方の代表戦、フランスへの歴史的初勝利の話しかと思えば…。「ファビオはとうとう出てこんですねえ」「高木監督は来年もしなはるですかねえ」…。いやいや、熊本のサッカーな日常の景色も、大きく変わったなと。それもこれもホームチームの連勝の影響なのかと。

先週日曜日にアウェー山形戦、そのまま熊本には戻らず移動して、水曜日に仙台を相手に延長120分の天皇杯3回戦を戦った熊本。対する町田も同じくFC今治相手に天皇杯を戦っていますが、こちらは今治戦の先発から5人を入れ替えてきました。

熊本は、山形戦、仙台戦とまったく同じ先発メンバー。大分戦以来、入れ替わっているのはケガのメンバー(吉井、筑城、高橋、北嶋)だけという固定された陣容。ある意味、迷いがないというべきか。

町田20121014

それにしても攻撃的な町田のサッカー。手こずりました。高木監督が「(町田は)厳しい状況があって、『何とか勝点3を取ろう』というゲーム、そういうサッカーをやってくる」と予想していたとおり、最下位に沈み降格の危機にある町田は、まるで”手負いの獅子”のように果敢に立ち向かってきました。

もうひとつ指揮官が気にしていたのは、「勝たなくてはいけない相手だったと思うので、その分どうしても難しくなる」という点。大分、福岡、湘南、山形というJ1経験チームに4連勝し、そのうえ天皇杯ではJ1優勝戦線の渦中の仙台を撃破してホームに帰ってきた。リーグ最下位チームには”勝って当然”というファン心理が当たり前のように働く。そこでのプレッシャー。そんな2つの理由を挙げて、「今日のゲームは、ここ最近ではいちばん厳しいゲームになるかなという予想はしていました」と指揮官は分析していたようです。

しかし、ゲームを見ていて、もうひとつ難しいゲームになった理由が明らかになる。当然ながらコンディションの問題でした。恐らくはあえてターンオーバーをしなかった熊本。南も「今日は疲れもあって運動量が落ちているなというのは後ろから見てても感じました」と言うように、後半、熊本は明らかに球際に突っ込んでいく激しさ、エネルギーが落ちていた。セカンドに集中する力で町田のほうが上回っていました。

それでも、連勝の手ごたえが疲れた体にしっかり残っていたのでしょう。「チーム状態がいいから、無理な所でもつなごうとするところが前半はあって、ハーフラインを越えてからコンビネーションで作る方がいいなというのは感じました。シンプルにやる所との使い分けは大事だなと思いました」と矢野が言うように、そこはバランスを欠いたところ。非常に嫌な取られ方をする場面が多かった。

しかし、それでもセットプレー2発で勝ち切ってしまいました。

前半12分のFK。原田、養父、藤本3人が相談するなか、蹴ったのは藤本。無回転シュートはGKの手元で変化して、パンチングで逃れる。そのボールがバーに当たり跳ね上がると、真っ先に飛び込んで来ていたのは武富でした。頭で突き刺すと、そのまま身体ごとゴールネットに突っ込んでいくほどの勢いでした。

「(藤本)主税さんのフリーキックは大体ブレ玉なので、枠に飛べばキャッチはできないから、入るかこぼれるかなので、常に狙っているこぼれに飛び込んだというだけです」と、普通に言うのもわかる。相手ディフェンスより1歩先にこぼれを狙ってスタートを切っていました。

前半のうちに投入された町田のベテラン平本が、「僕たちのように経験の少ないチームは先に点を与えると痛いし、この状況で先に失点するとガクンと来るから、まずは失点しない、守備からっていうことも必要」と悔やみますが、どちらかと言えばそれは結果論。実際の戦況は、高木監督が「幸野、ドラガン、平本、そこまでがかなり流動的に動くので、正直言ってうまく捕まえることができなかった」「なぜ捕まえきれなかったと言うと、彼らのパスのタイミングやテンポが良かった。だからこそ、最終的にはボックス近くまでラインが下がってしまう」というような厳しい試合展開でした。

当然、このままでは終わらないだろうとハーフタイムに予感したように、後半になっても中盤での激しい奪い合いから攻守の切り替えの早い試合展開が続く。10分、ワンタッチのスルーパスで平本にDFラインを割られると、右足で流し込まれ遂に同点にされます。

スカパー解説で「熊本の不用意なパスミスが多い」と池ノ上さんが言っているころ、イエローを貰った藤本の顔がゆがみ、高木監督も歯を食いしばっている様子が画面に映る。後半15分、北井に破られ1対1を南が防ぐものの北井がもんどりうつ。あわやPK。万事休したかと思われましたが、これはシミュレーションの判定。

そんな”町田の流れ”の中で、熊本が奪ったCK。右から養父の弧を描いたボールが、ゾーンで守る町田選手を越えて、飛び込んだ矢野の頭にぴたりと合った。これが決勝点になりました。

その後の見せ場は南が持って行きましたね。何本の決定機を阻止したでしょう。圧巻だったのは33分、右サイドから入ってきた町田。ディミッチからエリア内の北井の足元。北井がすばやく脚を振る。その至近距離のシュートを左手一本。ボールは南の手中にぴたりと収まった。得点シーンに値するほどのスタジアムの歓声。場内のビジョンでリプレイされるほどの”美技”にスタンドの誰しもが酔いしれました。

アディショナルタイムは4分。終盤の切り札になった仲間と大迫が、なんとか前線に起点を作ろうとしている。齋藤はまだ一騎ドリブルで持ち上がるスタミナを見せました。苦しんで苦しんで、なんとか町田の勢いをかわした。残留を目指す町田がなんとしても欲しかった、勝ち点いう”獲物”を奪い、前回対戦のアウェーの屈辱を晴らしました。

「悪い時間も何とか耐えていれば、前の選手が取ってくれたり、どこかで挽回できるチャンスがあるってことを分かっているというのは大きいかもしれないですね」とDFの廣井が言う。チーム全体にそんな自信が芽生えているということか。

こんな厳しいゲームでも勝つ、いや、勝ってしまえるというのは、これまでなかなか経験したことのなかった感覚ではないでしょうか。ここが今日のゲームの一番のポイントに違いないでしょう。厳しい試合を凌いでモノにできる”強さ”。流れは悪いなかで、セットプレーで決める効率。相手に与えるそのダメージの大きさ。

ずっと追い続けている人は皆、わがホームチームがこれまでにこんな試合をどれだけ落としてきたかということを、よく知っているでしょう。追いつかれ、逆転され、膝を折った…。「ある意味そういう“勝たなきゃいけない”試合の中で、そういうプレッシャーに打ち勝ってきっちり勝ちきれた事は今までのロアッソにはなかった」と、南もブログで表現するように・・・。

「苦しい時間帯や、少し混乱しかけても、そこに対してベテランの選手がうまくサポートしたりということもありますし、常にリカバリーが上手くできているのかなと。実際にミーティングでも話をしたんですけど、今日のゲームでは『リカバリーを多く、上手くやった方が勝てるよ』という話をしました」と指揮官は言う。“リカバリー”。このあたりのコメントは、これまであまりお目にかかったことのない表現でした。

われわれは、最後の最後にこの試合の勝敗を分けたのは、チームに芽生えつつある”強者のメンタリティー”ではなかっただろうかと思いました。それは、新加入会見で北嶋が言った「勝ちに慣れる」という言葉にも似て。どんな試合展開でも、どう勝ち切るかを知ること。それができること。それが「勝ちに慣れる」という意味なのかと。

天皇杯を入れればアウェーでの3連勝を後押しした関東サポーター。その渡された勝利のバトンを、ホームでもまた繋ぐことができました。示されたのはクラブの記録を更新するリーグ5連勝。公式試合6連勝という結果。そして、次節は横浜FCという、これまた願ってもない強敵と対戦する。

今季の”出来”を占う相手としては申し分ない。場所は聖地・水前寺。燃えない理由はありません。

10月10日(水) 第92回天皇杯 3回戦
仙台 1 - 2 熊本 (19:00/ユアスタ/4,269人)
得点者:48' 齊藤和樹(熊本)、64' 渡辺広大(仙台)、119' 養父雄仁(熊本)

勝ちました!

テレビ放送がないなか、久しぶりにネット上のテキスト情報を頼りにハラハラドキドキしていると、JFLの頃を懐かしく思い出しました。

現在J1で2位につける仙台。直近のリーグ戦から先発を7人入れ替えたものの、モチベーション的には「2つのタイトルを狙うための大事な試合になる。激戦を覚悟する」(仙台・手倉森誠監督 日刊スポーツ)と気を引き締めて臨んだ試合。対する熊本も日曜日の山形戦とまったく同じ先発メンバー。

試合の中身は観ていませんので、今回はネット上で拾った情報をキュレーション的に掲載しておきます。


「とにかく自分たちのサッカーをやること。山形との試合が終わって中二日で、何ができるかということが一番大事で、優先順位としてはコンディションを戻すしかありません。あとは『普段やっていることをやるしかないんじゃないか』という話をしました。」高木監督
http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00145121.html

「90分の中で仕留めようとしたゲームプランで、我々は3人を交代しました。それが叶わず、延長戦に行ったときに最後の最後にああいうところで失点してしまったのは残念なところでした。」手倉森誠監督(仙台)
http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00145120.html

「最近特に感じるのは、左サイドで片山とのコンビから崩す場面が多く、良い関係が築けていると思う。」藤本主税
http://blog.goo.ne.jp/chikara-11/e/1ccebf0b5b653dc4215f2dbae71ddcee

「実は延長戦あたりから“PK戦になれなれなれ”って心の中で唱えてました(笑) 」南雄太
http://labola.jp/south/diary/20901532

「(決勝点のアシストは)一瞬、自分がスピードを緩めたときに、縦にいけそうな雰囲気だったので、相手の前に入ろうと思ったら抜けることができて、最後にアシストを決めることができました。」齊藤和樹
http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00145122.html

「自分の力がどこまで通用するのかということを試す場だと思うので、どんどんこういう相手と試合をしていきたい」養父雄仁
http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00145122.html

「柏から出場機会を求めて熊本へ行った時、本人からしてみれば「都落ち」のような無念の気持ちがあったはずと勝手に思っていました。そして、その考えが間違っている事を、昨日の南の行動から知ったのです。あのガッツポーズをしてサポーターの前へ走りだす南の姿は、決して「都落ち」にあった貴族のそれではなく、新しく出逢った仲間の為に「ひたすら頑張ることに生き甲斐」すら見出している侍(さむらい)の姿でした。」ベガルタ仙台のつぼ
http://vegalten.blogspot.jp/2012/10/blog-post_11.html

試合展開の詳細がわかるベガルタファンのブログ ベガルタ・マヴォイ
http://www.mavoi.com/vegalta/archives/000675.php

おまけ・・・
試合後のファンの喜びようが伝わるドメサカ板まとめブログ
http://blog.livedoor.jp/domesoccer/archives/51987329.html


10月7日(日) 2012 J2リーグ戦 第37節
山形 0 - 2 熊本 (18:04/NDスタ/6,541人)
得点者:10' 武富孝介(熊本)、23' 武富孝介(熊本)


完勝でした。昇格戦線の只中にある山形が相手で、という理由だけでなく、その内容、経過、結果、いずれを見ても、今シーズン、これまでで最高のゲームだったのではないかと。前節・湘南戦のような劇的な最後ではなかったものの、スカウティングから戦術の構築、練習、コンディショニングというところが、描いたとおりにできていた、そんなゲーム。

いやいや。練習という面では、前節が台風接近で一日遅れだったことから間は短かった。コンディショニングという面では、リーグ中で一番遠い山形への長時間移動。飛行機を乗り継ぐなかで、空港に3時間もの滞在を余儀なくされたアクシデントも。しかし、メンタルにも影響しそうなそんな”マイナス”も、チーム状態を妨げる要因にはならなかった。それほど、チームは今”勢いがある”と言えるのでしょう。

山形のシュート数は前半2本、後半は1本。熊本は前半7本、後半8本。何よりもこの数字が物語るのは”抑え切った”ということ。リーグでもダントツ1位のシュート数を誇る山形相手に崩されなかった。シュートを打たせなかったという事実。90分間の守備意識の集中を示している数字とも言えます。勝利という結果ももちろんですが、長いシーズンを戦ってきて、この最終盤に来て、こういう戦いができるようになったことに、ファンとして確かな手ごたえを感じています。

山形20121007

前節のエントリーで“怪我だけはしてくれるな”などと書きましたが、皮肉なことに、再び戦列から離れることになってしまった北嶋。試合前から「違和感」を感じつつも闘っていたのだと言います。そして得たあの決勝点でした。

その”得点源”北嶋の不在を埋めて余りあったのが、この日の武富でした。2列目から1列上がった彼が、本来の持ち味を十分に発揮した。やはりこの男はゴールに一番近いところが似合うのかも知れません。

5試合勝ち星のない山形のホーム戦。それは前節の湘南と同じ状況。まるで勝利という獲物に飢えた野獣のように襲いかかってきました。その勢いに怯まず、”凌ぐ”という姿勢も前節と全く同様。高木監督が「ゲーム自体は、立ち上がりがひょっとしたらすべてだったのかなと思います」と振り返るように、「非常に怖い時間帯、耐えなきゃいけない時間帯があるなかでも、よく耐え」た。違ったのは、先制点の時間帯の早さでした。

10分、自陣右サイド奥から五領が浮き球のパス。齋藤が付いていた相手を振り払って前を向く。アーリークロスの先は武富。DFの死角に入った武富が、ヘッドで叩き込みます。

「前半は終始、俺らセンターフォワード2人と相手のセンターバック2人が2対2みたいな、マンツーマンみたいな感じだったので、一人かわせればそこでフリーになるというか、1対1の状況で勝てたり奪えればチャンスになるのかなと思っていたので、あそこの駆け引きで裏を抜けれたと思います」と武富が淡々と振り返る。

勝利から遠ざかっていた山形。昇格ラインが徐々に遠くなるなかで、得意のホーム戦。やはり、前がかりでゲームに入ったのは当然の流れでした。

前半戦、第21節を首位で折り返した山形も、この終盤、8位、5戦勝ちなしとあっては、わずか1失点でチームが動揺するのやむを得なかったのでしょう。高く上げた両SB。ポッカリと背にしている大きな背後のスペース。しかし攻め込まなければならない。ピッチ上の選手達のそんな不安な心理。

徐々に熊本はボールを繋ぎながらアタッキングサードを襲い始めます。23分、自陣から持ち上がると、ダイアゴナルに走り込んだ五領にパスが通る。五領がPA左奥からマイナスで返す先には養父。養父のシュートはブロックされるも、そのボールを原田が左に繋ぐ。藏川から武富。武富が切り返してひとりかわすと、右45度の角度から冷静にコースを見切って打つ。シュートブロックも、GKの手も抜けて、ボールはゴールネットに突き刺さる。

武富自身が「理想のゴール」という。指揮官もガッツポーズを決めて「形も含めて非常に満足のいくゴール」と評価する追加点で、山形を突き放します。

猛攻をかけているものの、山形はフィニッシュまでいけない。凌ぎながらも熊本はシュート数を積み重ねる。それは熊本の攻守のメリハリ。奪われてからの帰陣の早さ、そして球際の厳しさをスカパー実況陣も評価する。

片山が前半終了間際に流血。五分五分もないボールに対して、強くいった結果、相手の頭とぶつかってしまった。しかし、これも象徴的なプレーではなかったかと。「球際、行くんだ」という強い意志の表れ。

サイドでの守備が強い印象でしたと記者に問われた藏川。「中に高い選手もいるし、そういう面でクロスは上げさせないように、守備を意識してやっていたのがよかった」と。文字通り強いプレーをしたなと見えました。それは”オレのサイドでは、上げさせないぞ”みたいな並々ならぬ意思が感じられるプレーぶりでした。ピッチ上に藏川が3人くらいいるような錯覚さえ。

齋藤は、やはり最後まで替えられませんでした。前線からの守備、追い込み方の動きで、何かつかんだものがあるのではと思わせる。決して速いとはいえない脚。しかし、スルスルと距離を詰めて、体を寄せていくテクニック。そして攻撃に転じては、連動を感じさせる動き出し。周りの使い方、使われ方が分かってきたような。判断の連動。

2点をリードしての前半35分あたりのボール回し、後方から中盤にかけて実に30本のパスがつながって、最後はうまくいかなかったものの、五領へのくさびをチャレンジ、通ればチャンスという展開まで持って行ったシーン。

来ない山形。それは”来れなかった”のか。

集散が自在でパスコースを絞らせない熊本。前節、北嶋が「相手のプレスの矢印をそぐようなパスやポジション取りなどができるようになっていかないといけない」と指摘した課題に対して、すでに少しづつ答えを出しているような、そんな気がするシーンでした。

「ボールを保持はするものの、最後のフィニッシュまで行けてなかったというのが今日の一番の反省点じゃないかなと思います」と、敗将・奥野監督は言う。「相手(熊本)がそうさせないような守備を組織的に、しっかりブロックを作ってプレスをかけてきたというのもひとつありますし、そこで最後のところまで崩しきれずに、最後の精度が高められなかった」と。

山形は、林という高さと、中島という機動力と、ブランキーニョという技量を前線に持ちながら、しかしブランキーニョが左サイドから中に絞り、右に流れ、最後は前線に上がる(上げる?)など、彼の”使い方”が空回りしている様に見えました。何をさせたいのか分からないというべきか。技量のある”個”がフィットしないとき、チームは機能しないということをまた教えられる。

一方で、スカパーのこの日の解説者:越智氏の分析は非常に明快でした。アナウンサーに、「サイドやシャドーも務める武富の適正のポジションは?」と問われていわく、「どこかと決める必要はないのでは。いい意味で”形”がない。どのポジションに入っても技術が発揮できる選手」という答えには、おもわず膝を打ちました。そして越智氏はこうも付け加えました。「ただこの選手は、ゴールを狙えるポジションにいるべきだろう」と。

「北嶋の穴を埋めるのが武富の役目ではない」とも越智氏は言う。全くタイプの違う選手なのだからと。北嶋がそのポジションを脅かされるのではなく、武富にこの北嶋が加えられることで、相乗効果、化学反応が期待できるだろうと。ただ、残念ながら北嶋の長期離脱で、この両雄が揃ってピッチに立つ試合は、もうそんなに見られないのかも知れませんが。

チームの記録としてはJ昇格後、初めての4連勝。しかし、なんとなくその感激よりも、この完璧な試合内容の感動のほうが上回ってしまいました。ここにきて大きな上積みを実感した喜びというべきか。

この勢いを持続すべく、チームはそのまま仙台に入り、10日の天皇杯を迎えます。この遠い敵地で行われる試合に関しては、久しぶりに何の映像も見ることができそうにありません。なんとも残念です。それが天皇杯なのだと承知しつつも・・・。

10月1日(月) 2012 J2リーグ戦 第36節
湘南 1 - 2 熊本 (19:04/BMWス/3,986人)
得点者:43' 齊藤和樹(熊本)、75' 岩上祐三(湘南)、90'+4 北嶋秀朗(熊本)


「言葉がうまく見つからないが、これもサッカーだ」。敗戦の将・曹貴裁監督は、試合後そう言いましたが、勝者側のわれわれもまた同じ台詞が浮かびました。始終押し込んでいたのは湘南。熊本のシュート数はわずかに3本。それでも最後の最後に勝利の女神が微笑んだのは熊本側でした。

湘南にしてみれば、アウェーで2連敗し、ここまで1敗しか喫していない“絶対の”ホームに帰っての試合でした。しかし台風がその燃える状況に水を差したと言うべきか。

大型の台風17号は、湘南ホームBMWスタジアムの試合を丸一日順延するという決断をさせました。それは、昇格戦線真っただ中で、未消化試合を残したくない湘南にとっても、また、遠いアウェーの地に出直したくない熊本にとっても、最良の判断だったのでしょう。ただ、スタジアムで観戦を予定していたファンにとっては辛かった。この勝利は、そんな緊急な変更のなかでも、仕事をやり繰りしたり、宿泊を延長したりしてゴール裏に参集した赤いサポーターたちへの今シーズン一番のご褒美でした。それまで関東では勝利どころか、1ゴールすら見せられていなかっただけに、このドラマチックな幕切れ。テレビの前のわれわれでも“手の舞い足の踏む所を知らず“状態。現地ではどれほどのものだったのか…。感動が際立ちました。

湘南20120930

「うちは前に出て行く力があるので、全員が守備の意識を持てばその攻撃力が活きてくる。引くのではなく、守備の意識を高めて連動することが大事」。
戦前、湘南の基本戦術をそう語っていた曹監督。確かにいいところで奪って、一瞬の切り替えと、スピードとパワーで90分間押しまくる。そんなサッカー。よく練習しているんだなあと感じさせるような序盤でした。

ただ、ほとんどシュートのチャンスさえなかった熊本でしたが、逆に湘南にも決定的なチャンスは作らせない。

これには、それまで序盤から飛ばしてゲームの流れを作っていた高橋を負傷で欠くという熊本側の事情。そして前述したように、昇格争いのなかで岡山、岐阜に連敗してホームに帰ってきたという湘南側の事情が、ゲームプランやモチベーションと相まって、微妙に交錯していたようにも思えます。

湘南のスタイル、怖さは、監督の言葉にもあるように「連動」。確かに後半の失点前後の後から後から追い越してくる攻めには、なかなか対応が難しいものがありました。

ところが前半、象徴的に映ったのは高山。持てば、そのスピードを生かして自分で持ち上がり、フィニッシュまで行ってしまう。それはそれで迫力があるのですが、言ってみればとても単調で、守る側は対応しやすかったのではないか。キリノも同じ。自分が受ける、自分が突破する存在感はさすがで、アクセントになってはいましたが、逆に連動の足かせになっていたようにも見えた。「個」が自然と滲みでて、「連動」を邪魔しているような展開。これも2連敗のメンタルの見えない影響だったのでしょうか。

熊本の2得点は、いずれも湘南イレブンの膝をガックリと折るような、絶妙の時間帯でした。

前半も終了間際、廣井がヘッドで大きく跳ね返したハイボールを、前線でDFと競った齊藤が強引に自分のものにして、次にカバーに入ったDFにも競り勝ってゴールネットを揺らす。CFらしい仕事。こんなにも強く、うまい選手だったか。前節のエントリーで“替えたくない、替えられない選手”になってきたと表現しましたが、「課題としているルーズボールから、そして50-50のボールからマイボールにする形ができたと思うので、今後ずっと忘れないでやってほしい」という高木監督の評価と、「泥臭い」という褒め言葉を貰ったみごとな先制ゴールでした。

対する湘南の決断も早かった。ハーフタイムには2枚替えで島村と坂本が入ってくる。18分には消えていた菊池に代えて宮崎。そうした組織的な修正、圧倒的なパワーで押し込み始めると、熊本は自陣にくぎ付けにされてしまう。CKの流れからPKを与え同点。その後も、湘南の猛攻を凌ぐのに精いっぱいの状態でした。

客観的情勢から言っても、交代で退くキャプテン藤本の手のしぐさからみても、これは引き分け狙いかと思わせました。「アウェイで湘南相手にドローも悪くはないので、選手にはそれを頭に入れてプレーするように声を掛けた」。藤本も自身のブログでそう明かしている。

さて、ベンチの思いはどうだったのでしょうか…。

「ボールを持てる選手なので、できるだけはたかずに自分でボールを持って行ってくれと。ボールを保持したなかで時間をつくることをやってほしい」と言って送り出した五領。市村には「とにかく前が空いたら仕掛ける、細かいパスよりもフィニッシュで終わったり前にどんどん出ていこう」と伝えた。その二人と、“替えられない”選手・齊藤を下げてまでも残した北嶋が、最後の最後に歓喜をもたらします。

アディッショナルタイム4分も消化しそうな時、相手GKからDFに向けて転がされたボール。これを見逃さなかった五領。果敢にチェイスして奪うと、市村に素早く渡す。市村は指揮官の指示どおりに仕掛けDF1枚をまた抜きで置き去りにすると、思い切りよくミドルを放つ。ボールはDFに当たり角度を変えるもののバーに嫌われる。その跳ね返りに準備していたのは北嶋。そのヘディングシュートが無人のゴールに突き刺さる。呆然と立ち尽くす湘南の選手たち。

あの場面、残っている五領が視野にありながら目の前のDFにボールを渡した相手GKのミスか、それとも、やや緩慢な判断で五領に奪われた相手DFのミスか。イメージは違うのかも知れませんが、これも指揮官が言った「どこかしら薄いところを突いていける可能性」と同じことなのかも知れない。

市村のシュートがバーに嫌われて逆サイドにこぼれた瞬間は、今までの熊本だと、ここには誰もいないのが普通の景色でしたが、そこにはあの男が待ち構えていました。オフサイドポジションからよく戻っていたし、こぼれる位置によく留まっていたし。

「こぼれてこいと願っていました」と言う北嶋。それも含めてゴールへの嗅覚と表現していいのかも知れません。

しかしこの男は、それ以上に、「相手のリズムのときにボールを大事に扱う空気が足りない。それでは苦しい時間が苦しいままになってしまうので、“相手のプレスの矢印をそぐようなパスやポジション取り”などができるようになっていかないといけない」と、イメージしやすい言葉使いでチーム課題まで整理してくれています。齊藤の開眼も、北嶋が加入して以降のような気がする。怪我だけはしてくれるな。この救世主に対して今、切にそう願います。

初めて敵地で踊られる「カモン・ロッソ」の勝利のダンスを、勝利監督インタビューの画面越しに微笑ましく眺めながら、この白星は偶然や幸運でもなんでもないと思いました。好調の要因はと記者に問われて、「諦めずに最後まで頑張ってくれたことが逆転に繋がったと思う」と答えた高木監督。それは心細い敵地で、負けても負けても次の試合に向かった、諦めず声を枯らし続けた(関東を中心にした)アウェーサポーターに対する言葉のようにも。凌いで凌いで、最後まで諦めていなかったのは、決して選手たちだけではなかっただろうと思いました。