3月24日(日) 2013 J2リーグ戦 第5節
東京V 1 - 1 熊本 (16:03/味スタ/3,291人)
得点者:66' 飯尾一慶(東京V)、88' 高橋祐太郎(熊本)


試合2時間前。発表されたスタメンとベンチメンバーを見てなんとなくイメージしたのは、先行逃げ切りがこの日の吉田監督のゲームプランなのではないかということでした。静かな外見とは違って常に”攻撃的”だということも段々分かってきたので。

しかし、実況や試合後の各メディアも指摘するように、実際のゲームでは極端に”堅い”前半。互いに探り合っているのかシュートに持ち込む回数も少なく、両監督とも落ち着いてベンチに座り込む。“我慢くらべ”なのか。

20130324東京V

上がってこない熊本のサイドバックの姿勢を見て、スカパー解説の羽中田氏は、熊本は前半0-0で良しとしたプランだと分析していましたが、試合後の選手のコメントや監督の「連戦の影響もあったのかもしれないですが、少し体が動かなくて」という言葉を読めば、それは結果的にそうなっただけだというのが分かります。

「上がってこないサイドバック」の理由は、この試合ヴェルディが、初めて3-4-3というシフトを組んで、攻撃的なSHで押し込んできたせいもあるし、何より開幕以来まだ手にしていない勝ち点3を、このホームゲームでどうしても欲しいという相手のアグレッシブさに押された部分も少なからずあったのではと推測します。

結果として、我慢のゲーム運びが要求され、そして自ら修正。それはそれで、見事な対応力だったと思います。よくよく我慢して勝機をうかがったと。 前半のその集中したプレーぶりは、見ごたえすら感じました。うまくいかないプレーにも焦らず、バランスをとり、カバーを怠らず。ピーンと張りつめた雰囲気。

そして試合が動き出したのは後半。

まず腰を上げたのはヴェルディの三浦監督。高原に代えて中後を投入。高原は前半、嫌な動きをしてくれていたので、ちょっと助かった感じもしましたが…。敵将は、「前半少し、狙いとしているサッカーというよりも、勝ち焦るような、五分と五分のボールや高原に向けてルーズなボールを蹴って、つぶれたところで前を向いて攻めるというイメージしかなかったので」(J’s Goal)と、その交代の訳を明かしている。

ただ、それよりやっかいになったのは、西が一列前に配置されたことで明らかにヴェルディに「リズムとテンポ」が生まれたことでした。

藏川のサイド。度々、突破される展開。クロスを上げられるというだけでなく、中央に切り込まれ、ゴール手前までドリブルを許してしまう。思えば、このゲームだけではなく、ここが今の熊本のウィークポイント。片山サイドも同じと言えば同じ。そこに西が一列前に出て、サイドに絡むようになってからはさらに。

「(失点場面は)守備的MFとしての癖が抜けず、前へ出て行ったしまった」(熊日朝刊)と吉井。
「(失点は)自分のミスだし、チームとしても気の緩みがあった」(熊日朝刊)とは蔵川の弁。両者がそのミスを悔やんでいる。

失点自体は典型的ですが、この場面にはゲームの、チームの色んな伏線が一気に表面化しているように思います。全員で守るチームなのに、この日のサイドは、頻繁に一対一の形に持ち込まれてしまっていた。それは、ボランチと吉井、蔵川の連携、カバーリングの問題だけなのか。もちろん、個々の選手の問題(スピードがないとか)としてしまうと、また全然違う性質の課題になってしまうので…。

その時間帯のチームの重心、バランスのありか。やはり前がかり過ぎていたように思えます。なぜそうなってしまったのか。修正なり“リバランス”をするきっかけはなかったか。そういった“バランサー”の役割は誰なのか。

しかし、失点してからの交代カードは素早く、しかも結果を出しました。見事でした。

黒木から縦に入ったパスを仲間が右に戻す。藏川のアーリークロスはゴール前に飛び込んだ高橋の頭にどんぴしゃ。ネットに突き刺し同点とします。その2分前に全く同じ形のヘディングを外していただけに、「よけいに大事に大事に決めました」と言う高橋でした。

俄然流れは熊本に傾く。残りわずかとなった時間。勝ち切りたい熊本は人数を掛けてペナルティエリアに迫る。迫力ある攻撃。

ただ、藤本は試合後、自身のブログでこの時間帯のことを「イケイケになる気持ちはわかるけど、そこでも一つ冷静になることが重要」と釘を差す。それは決して引き分けでOKということではなく、相手の方が焦っているのは明らかであり、バランスを崩すのを見届けそこにつけ入る隙を見つけるべきだと。北嶋も「玉砕覚悟の攻めはよくない」(J’s Goal)という表現で、同じことを指摘していました。この両ベテランに共通した試合勘は、とても重要な気がして。結果、前節のガンバ戦と同様勝ち越せなかった、引き分けて残念だったとしても、相当のリスクを感じていたことが、“玉砕”という過激な表現に込められているように思います。

われわれも引き分けで御の字とは当然思っていない。ただ、特に前節と同じように、追いついての引き分けゲームは、「よく追いついた」というトーンがベースになってしまって、逆にどうも、課題や反省点が忘れ去られてしまいがち。失った勝ち点は2。追いつかれても追いついても、あくまで引き分けは負けに等しい。重要なのは、何が課題だったのかという冷静な反省だと思うのです。

ひょっとしたら北嶋も藤本も、ピッチを離れたから見えたこと、感じたことなのかも知れません。ならば、この時間にピッチ上でそれを感じ、統率できるのは、今の熊本では誰なのかということになります。まだビハインドの段階、2枚目のカードとして投入された養父。攻撃的カード。同点を狙ってのことであることは当然で、ピッチ上の同僚も大いに鼓舞されたことは明らかですが、やはり入ってすぐに1つ2つ、指さして何らかの指示があってもよい。ベンチで感じていたこと。あるいはコーチから指示があったことを。それが途中から入る選手のもうひとつの役割だし、それが個人で打開するのではなく、組織で戦うということにつながるのではないでしょうか。

先制してからの東京ヴェルディのぎこちない試合運び。多くの時間を残しながらも、とにかく勝ち点3を意識するあまり、あからさまに守りに入ってしまって、ゲームのバランスを大きく崩してしまった。後半の終盤の熊本の攻めも出色でしたが、それを招いてしまったのは、東京の自滅ということも大きい。そんな相対的なことを勘案して、われわれも少し気難しいことを書いてしまいました。

ただ、最初から意図したものではなかったにせよ、試合のなかでの対応から生まれたゲームの流れ。これだけ尻あがりで、先制されてからもその勢いと粘りはまったく変わらず、衰えなかった。連戦のなかでこれだけ動けたのは自信にしていいと思います。次節こそホームで勝ち点3を。結果を残した高橋を先発で、北嶋はやはり途中投入がいいのではないか(などと言ってみます)(笑)。

3月20日(水) 2013 J2リーグ戦 第4節
熊本 2 - 2 G大阪 (13:03/うまスタ/11,874人)
得点者:21' レアンドロ(G大阪)、39' 武井択也(G大阪)、58' 矢野大輔(熊本)、63' 仲間隼斗(熊本)


朝からの強い雨にもかかわらず、大きな動員が掛かっていたわけでもないのに、開幕戦を上回る入場者。やはりそれは、いくら遠藤、今野の日本代表組が帯同していないとわかっていても、“あの”ガンバ大阪がやって来るという期待の表れだったのでしょうか。われわれの席の周りにも、青でもなければ赤でもないという姿の入場者が目立ちました。

いや、われわれにしてみても初めて公式戦でガンバ大阪と向き合えるのは、嬉しくもあり怖くもあり。こちらが上がっていったのではく、向こうが落ちてきたからとはいえ。

20130320G大阪

試合開始から押し込む熊本のペース。受けに回るガンバのラインが低い。しばらくは様子見なのか。8分、怪我が癒えてこの日、初先発となったSB藏川のアーリークロスに、ゴール前の仲間。これはガンバDFが対応。ファビオの故障で、前線(トップ下)に起用された仲間が最初から飛ばしている。

緩慢さが漂っていたガンバも、徐々にボールを持ち始めます。21分、バイタルで右に左にボールを回して様子を窺うガンバ。家長からのパスなのかシュートなのか。一度倉田に当たりこぼれるものの、それを倉田が素早く拾って裏へ短く出した。そこにレアンドロ。飛び出した南の頭上を越えるシュートで先制点とします。

「広げられて、中が薄くなった時は狭いエリアでも崩す力がある」。試合後に吉田監督は、この1点目をしてそうガンバを評しましたが、熊本にしても人数は揃っているのに、これがガンバの崩しなのかという印象。スペースのないところでもきちんとフォローするプレーヤーが入ってきて3角形ができて正確なショートパスがどんどんつながるのはさすがというところ。

2失点目はPA内でのクリアミスが相手へのプレゼントパスのようになって。そこを見逃さなかった武井の詰め、きっちりと押し込むところもみごと。崩されたわけでもないのに前半だけで2点差。少ない好機をきっちりものにする。「う~む」これがガンバとの差なのかと思いました。

われわれがスタンドから俯瞰して“感じよう”としていたのは、ピッチ上の選手たちの“気持ち”でした。流れのなかでは互角の展開。しかしこの2点という点差に気落ちしてしまうのかどうか。開幕戦敗戦のあと吉田監督が言っていた「苦しい時に我慢してチャンスの時に出て点を取る」という修正点が、いわば今こそ発揮できるのかどうか。J’s Goalのプレビューで井芹記者も書いていました。「ピッチの中に過剰な敬意はいらない。臆することなく、立ち向かうのみだ」と。

後半開始から北嶋の投入。狙い通り。これが奏功します。調子を上げていた大迫の先発でしたが、今日は藤本、藏川という縦横の両フリーマンの動きに、バランスを保つことが仕事になってしまった。そこに仲間を下げて、北嶋がトップに入る。北嶋がくさび役になって、齊藤がサイドから裏を取る。片山のチェイシングから齊藤がドリブルでえぐってクロス。ニアに北嶋。DFに当たってあわやオウンゴールは、ポストに跳ね返された。しかし明らかにガンバDFはマークを絞れなくなってきている。

反撃の狼煙は、プロ生活をガンバでスタートさせた矢野から。ショートコーナーのボールを右サイドから藏川が入れる。中央での齊藤のヘディングは、GK藤ヶ谷に弾かれるものの、ゴール前、高く上がったボールに飛び込んだ。多分、ボールには触っていない。GKにも不当に接触していない。まさに体ごとなだれ込んだ泥臭い得点。でも、われわれから見れば今節のベストゴール。ガンバにすれば2-0というある意味難しいスコア。あの時間帯で1点返したことが、ガンバをセーフティリードの気持ちから追い落とし、追加点を狙いにこさせた。そこでまた熊本にも好機が訪れる。

63分、スローインから繋いだボールを齊藤が入れる。北嶋の胸トラップの落としをPアーク前で振りぬいた仲間。ボールはDFのかかとに当たってコースを変えゴールマウスに吸い込まれる。逆を取られた藤ヶ谷は一歩も動けず。

スタンドからはシュートコースもわからず。ゴールネットが揺れた瞬間、飛び上がってしまいました。そして回した回した。赤いタオルマフラーを。メインもバックもゴール裏も一緒になって。

その後も熊本は、黒木、北嶋が決定機を作りますが決め切れず。ガンバもカウンターから持ち込んでシュート。これは守護神・南が左足一本で防ぐ。押せ押せの熊本に、虎視眈眈とワンチャンスを狙うガンバ。終了の笛が鳴るまで勝敗の行方がまったくわからない展開に、1万人のファンの血液が沸騰したのは間違いありません。

せっかくの動員試合だったにもかかわらず敗戦の開幕戦。ファンの拡大策としては失敗と言えました。しかし、今日のこの試合はそのマイナスをカバーして余りあったのではないでしょうか。ガンバ見たさに訪れたファンも前半に満足し、そして試合が終わってみれば気付かされたに違いない。自分にも“赤い血”が流れていることを。

しかし、勝ち点3を狙っていた監督は、試合後「不満である」とはっきり言い切りました。「まだホームで1度も勝っていないので、応援に来ていただいている方に勝点3をプレゼントしたい」と。

今日も同点に追いついた後も五領、養父と切るカード切るカード全てが攻撃的。追加点を狙えという指示に見える。常に「ラインを下げるな」と選手たちを鼓舞する。一歩も引かない。ただ考えればこれも、全員守備全員攻撃という戦術が徹底されているからこそ。コンパクトにすることが守りにも奏功するからのことではないでしょうか。徐々に吉田サッカーの色が見えてきたように感じます。

選手たちもインタビューやブログで、「勝てた試合だった」「勝ち切れなかったのがまだ弱さ」と口を揃える。翻ってわれわれはどうか。あのガンバ大阪を相手に引き分けた、と満足しているのではないか。 彼我の戦力差は明らかだけれども、戦力スペックで勝敗が決まるわけではないし、与えられた条件のなかで勝っていかなければ明日はないわけで… 。どうだろうか?われわれは。

ゴール裏にも掲げられている弾幕。「スラムダンク」のあの有名な言葉。「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という安西先生の台詞が思い浮かびました。逆に言えば、ここで満足してしまえば、試合終了なのかも知れないと。

さて、一戦一戦課題が修正され、良くなってきていることを実感できるこの開幕からの4戦ですが、勝ち点を上げることができたこの2戦に共通していることは、相手があまりプレスを掛けてくるチームではなかったことです。次節対戦するヴェルディはなかなかそうはいかないかも知れません。まだ開幕から勝利がないというチーム状況も、ある意味不気味。かなり走ってくると思います。3節からの先発ボランチ原田、黒木のコンビが、ヴェルディのプレッシングをどう凌ぐのかがポイントになるかも知れない。しかし、もちろん期待して次節を待ちます。チームの更なる進歩と、勝ち点3を見届けるために。

3月17日(日) 2013 J2リーグ戦 第3節
松本 1 - 2 熊本 (13:04/松本/12,959人)
得点者:28' 齊藤和樹(熊本)、79' 齊藤和樹(熊本)、90'+3 玉林睦実(松本)


前節のエントリーの最後に、素直なわれわれの見方を書きました。選手個々のコンディションやバランスをもう一度見直してみたらどうだろうと。それは“ブレる”ことや戦術を変更することではないだろうと。行間に隠していた深意は、明らかに原田やファビオを途中投入してからの方がバランスが良かったし、北嶋も途中からのほうが真価を発揮するのではということだったのですが。そのことも衆目の一致するところでもあったと思います。

そんな素人ブログの声など届くはずもないのですが、今節、吉田監督は、先発メンバーを4人も代えてきた。特に縦の3人。矢野の怪我からの復帰。そして原田、ファビオの先発起用。どれも、それぞれの相方(あるいは前後、左右のプレーヤー)との連携、バランスが大きく改善されたように見えた。整理されてきたように思えた。吉田監督にとっても、当然の修正範囲だったのでしょう。

20120317松本

松本にとっては今季のホーム開幕戦。あの美しいアルウィンという専用球場が、緑色のレプリカユニで埋め尽くされ、バックスタンドも熊本側のゴール裏さえもその緑色が飛び跳ねチャントを歌う様は、J1クラスの試合様相と形容しても過言ではないでしょう。2連敗中の熊本。この雰囲気に呑まれなければいいが…。

更には、画面からも伝わってくる現地の強風。これに対して熊本は前半風下を選択する。その理由は藤本主税のブログに詳しいのですが、まるで昨年9月のホーム大分戦を思い起こさせました。前半を我慢することで戦術をシンプルにする。「割り切る」ということ。これが今節も奏功した。ロングボールの着地点を見誤る松本は、セカンドの競り合いでも後手を踏む。徐々にボールが回せるようになった熊本が主導権を握ります。熊本は風を味方につけたとも言えました。

何と言っても出色の出来だったのは「守備」でした。前節は「(数回ですが)」と前置きせざるを得なかった中盤高い位置での守り(インターセプト)がうまくはまっていて。ボールへの寄せも早く、警戒していた松本のカウンター攻撃を“芽”の段階で潰したことが大きかった。

先制の場面は、藤本、ファビオ、藤本、片山の流れから。これまで、詰まったようなぎこちない動きだった片山の、お約束のような見事なトップスピードに乗った追い越しも、そういった“守りへの安心感”の表れではなかったでしょうか。

前節、試合後のインタビューで「クロスの質であったり、ゴール前への入り方、そういうところをもっともっと良くしていかなくてはいけない」と課題を語っていた吉田監督。先制点の片山からの低い弾道のクロス。ゴール前では仲間が齊藤と入れ替わってニアに入る。齊藤はフリーでヘディング弾。後半の追加点も、大迫が右サイドからグラウンダーで入れた早いボールに、ファビオがスルーしてDF2人を連れだしたところに齊藤の右足。いずれの得点も、指揮官の課題に対してひとつの答えを出した形です。

しかし藤本はそれでも満足していない。「もっとビッグチャンスになり得るシーンでも、GKに取られたり、中に人がいなかったりという事が多過ぎた。俺も何回GKに取られたか…」と。(自身のブログより)

その藤本。今節は彼の良さが出た試合でもありました。フリーマンよろしく、相手のマークをはがす縦横無尽なポジショニングから、敵の嫌がるようなスルーパス、あるいは先制点につながったような“溜め”を作るプレー、そして相手のパスカット。松本も捕まえきれない。これも原田と黒木という両ボランチとのバランスがあってのことでしょうが、相当良かっただけに、後半、大迫に代って下げられるとそのバランスを失わないのか多少心配しました。これも中二日の連戦を考慮した采配なのか。それほど重要なプレーヤーなのだということも確信しました。

2点リードでの終盤アディッショナルタイム。完封間近のアウェイ戦。しかし、せっかくのゲーム運びもその閉め方、終わらせ方がいかにも中途半端でしたね。時間の使い方。キープも繋ぎも。あれはその前のプレーで、相手にボールを渡してしまったこと自体が問題。ドタバタした気持はわかるが、松本も足が止まり、攻め手を欠いていた状態。決して押しこまれていたわけではなく…。“放り込めば何かが起きる”的な流れに乗っかってしまいました。開幕鳥取戦のこともある。ここは一度立ち止まって深く反省すべきでしょう。

試合前。この一週間のわれわれの心理状態はと言えば、まったく定まることがなく、落ち着き場所を失っていました。

開幕ホーム連敗で憔悴しきったファン心理とでもいうのでしょうか。松本に対する何とはない苦手意識。そしてもし負けたら、次はガンバだし…。という悲観の連鎖。さらに、反町監督に対する「この監督に“だけ”は負けたくない、負けたらいやだなあ」という好き嫌い問題。試合前日のJ’s Goalの松本側記者が書いた「プレビュー」のはしゃぎっぷりへの苛立ち。それやこれやがごちゃ混ぜになって、ますますどんよりとした気分の深みにはまっていました。

しかし、今節目の前で(テレビ画面越しですが)見たものは、その一週間でまたひとつ課題を修正させたチームの姿でした。そしてその結果として、今季初の勝ち点3を敵地でもぎ取ったイレブン。意気揚々とゴール裏に挨拶に行く選手たちの笑顔。
そして。1万人以上の緑のなかで、90分間必死に声を枯らしてくれた赤いサポーターだけに許されたご褒美。選手たちと踊り、跳ねる「今季初のカモン!ロッソ」でした。

2013.03.12 千葉戦。連敗
3月10日(日) 2013 J2リーグ戦 第2節
熊本 0 - 3 千葉 (18:04/うまスタ/4,409人)
得点者:10' ケンペス(千葉)、69' 米倉恒貴(千葉)、75' ケンペス(千葉)


日曜日のナイトゲームとはいえ4,400人のスタジアムはいかにも寂しく。開幕戦のショックの大きさもそれに影響していたのか。そしてこの試合。強豪・千葉が相手だったとしても、大量失点での完封負けを見せられたファンの心理は…。いや、結果はともかく、スタンドの高い席から俯瞰して観ていても、ピッチ上で“闘う姿勢”が感じられない。まん延しているのは頼りなさ、自信のなさといった雰囲気。それがわれわれを何よりがっかりさせました。

開幕2連敗は初めての経験。しかもホーム2連敗。吉田監督の「深刻な状況」(熊日朝刊)というコメントを待つまでもなく、開幕早々に、いきなり厳しい状況に立たされてしまいました。そして、ファンであるわれわれにとって「深刻な状況」というのは、多分「言いようのない不安」に襲われているということだろうと思います。持っていきどころのない不安。

敗因は新監督の戦術やシーズンに向かうチームの方針に関わることでもありますが、目の前のゲームを素直に見れば、それ以前の状況のように思われます。途中まで0-1で経過していたことのほうが幸運であって、早い段階でゲームの行方が決まっていても不思議ではなかった。今日は幸運なので「もしかしたら」などと思うのが精いっぱいでした。その幸運な時間帯にゲームを動かせれば…ということなのですが。

課題はDFの裏だけではありませんでした。

20130310千葉

「相手をマークするのか、スペースを守るのかの判断が遅れた」。片山は試合後そう語っています(熊日朝刊)。確かにこの試合、両SBもあまり高い位置を取らず、中盤と2列のブロックを敷いてスペースを消しているのが、前節との大きな違いでした。それが修正点だったのでしょうが、それが今度は相手のマークを曖昧にしてしまうことになったのか。難しいですね。

ただ全てが駄目だったかというわけでもなく。今年取り組んでいる中盤高い位置での組織的なボール奪取は(数回ですが)見られたし、反転してからのワンタッチでのボール運びは前節よりも良くなってます。

敵将・鈴木監督の言葉を引くまでもなく、千葉にしても、先制はしたものの余裕をかましてゲームを運んでいたわけではなくて、決してうまくいってるわけではなかったわけで。前節これまたホームでの痛い敗戦を踏まえて、どうしてもこの試合を取りたかった気持ちの強さが、粘り強く守らせ、ベンチワークも奏功して効率的に追加点を上げさせた。前節、途中交代で入ったブルーノをまた途中で引っ込めたような、鳥取の小村監督にも通じる“勝負師”としての切れ味のいい交代カードとタイミング。そんな”凄み”がまだわが新監督からは伝わってこないというのが実感ではあります。

「プレシーズンでは大きな問題は出なかったんですけど、僕自身は問題があるなと思っていた」と言う吉田監督。おおよそでよかったところ、アバウトにしてきたところが試合になって差になっているのか。「もっと緻密な守備」(吉田監督)を詰めてこなかったつけが出てきているのでしょうか。

それでも開幕2連敗を「チームを成長させるチャンスだと思っている」とする北嶋。この状況でもなお…。今は、修羅場の数々をくぐってきた多くのベテランがいることが救いかもしれません。監督の、チームの修正能力を信じて。これから良くなっていくと。

選手起用に疑問がないでもないなどと言い始めると、本当の悪循環に陥ってしまいそうです。ただ、選手それぞれのコンディションをもう一度冷静に見直してみて、誰を起用するのか、どう組合せるのか、それからのゲームプランを考えてみてもいいのではないか。それもひとつの“修正能力”だと思うのですが。

3月3日(日) 2013 J2リーグ戦 第1節
熊本 1 - 2 鳥取 (15:05/うまスタ/11,116人)
得点者:58' 藤本主税(熊本)、65' 久保裕一(鳥取)、88' 奥山泰裕(鳥取)

負けました。しかも逆転負け。首を長くして待ったシーズン。早く観たくて仕方なかった新監督の采配、新たなメンバーでのサッカーだっただけに、結果は結果とはいえ、気持ちはドーンと沈みます。

KKウィング改め「うまスタ(うまかな・よかなスタジアム)」。ロアッソのホーム名称にぴったりのスタジアムに、午前中から待ちきれないファンが並び始め、最終的には11,000人を超える入場者数になりました。S席も含めてメインからゴール裏までホーム側はぎっしり感とともに埋まった感じ。今回の“動員”方式は、一般500円で全席自由という企画もあって、無料チケットだけでの動員とは一味違うスタジアムの景色。子供たちは100円。同僚の子供(小学生)は、日頃は親に連れて行ってもらうのが、自分の小遣いで行ける金額ということで、友達同士で話し合って、自分たちで出かける計画を立てていたとか。微笑ましくてちょっと嬉しいエピソードでした。

20130303鳥取

試合自体は攻撃的に熊本が支配していたように見えるが、勝負という点での決定的なところは互角。あるいは鳥取に分があったように思います。

熊本の様子も練習試合で受けた感覚とは違っていました。それは開幕戦特有の“硬さ”からくるものか、あるいは鳥取のハイプレッシャーがそうさせたのか。数10センチ単位で起こるパスミス。あるいは足元へのパスを狙われている。選手たちのコメントやいくつかのメディアも指摘しているように、選手間の距離がなんだか遠かった。奪ってからの反転のスピードも、鳥取にうまく守られてブレーキが掛かる。運動量で鳥取の方が勝っていました。

ただ、新たな吉田サッカーを垣間見た面もあります。それは前線に人をかける。攻め込んだときの人数は、得点の期待を持たせてくれる集まり具合。藤本主税の先制点も、シュート自体はアクロバティックで偶然っぽく見えるものですが、(セットプレーからの流れとはいえ)人数をかけた部厚いゴール前の戦術の結果として正当に受け入れたい。そう思います。

得点自体のインパクトもあって、久々のスタジアムの歓声は鳥肌が立つくらい。ピッチ上の選手たちはそれ以上のものだったでしょう。この先制点から7分後までは、本当に至福の時間でした。

やはり課題は大きく背負うDFライン裏のスペースでした。ただ、これも言えることは、練習試合で見たあの新しい守備スタイル、組織で高めの位置で奪い取るというシーンが全くと言っていいほど見られませんでした。こんな感じではない。こんなはずじゃない。そういうわれわれの気持ちは、選手たちの方がよっぽど持っていたでしょう。

鳥取は当然、スカウティング通りに熊本の守備の裏をつく。ただでさえ課題という守備の裏側を。

待望の先制点。多分これまでなら、ブロックを作ってスペースを消して守りきっていた。おそらく。でも、そんな練習はしてないよ、とでもいうような攻撃的な姿勢のままの熊本。しかし、鳥取の圧に押されるようにボランチがバランスを崩すと、中盤を自由にされ始める。

どれだけチームの力を発揮できたかと問われて「60%くらい」と答えた吉田監督(熊日朝刊)。吉田新監督の求める戦術は、基本オーソドックスとは言え、そのうえに非常に高度なものを重ねていくという気がします。そうそう簡単に完成するわけはないとは思っていましたが…。

攻撃的。確かに、ボールが止まることがない、パスの出し先を探すような場面はほとんどない。90分間追いかけまわすだけのチェイシングサッカーではないが、それでも相当な運動量。前半も35分過ぎから、ガクンとペースが落ちた感もありました。

黒木も評判どおりの働きだったし、養父はチームの心臓。しかし、とはいえ、先制点を奪った後、あるいは同点に追い付かれた状況で、あえて一回中盤を締めなおす意味で、どちらかを原田に交代させてもよかったのではないか。素人の縁台将棋と笑われてしまうでしょうけれど、先制の後は、ずっと交代カードに考えを巡らせていました。

ゲームとしては、レベルの高いものだったということは認めるべきでしょう。選手も闘っていた。何かをしようとしてうまくいかなかった。それに不満はない。結果は伴わなかったけれど、今シーズンの監督の意図、チームの可能性は感じられました。シーズンは長い。課題に取り組み、ひとつひとつしっかりとした戦いをしなければ最終的な結果は出ない。

また今年もサッカーがわれわれの日常に戻ってきた。今日はとりあえず、それだけを肴にビールでも飲もうかと思います。