4月28日(日) 2013 J2リーグ戦 第11節
札幌 1 - 3 熊本 (13:03/札幌厚別/6,003人)
得点者:13' 前田俊介(札幌)、50' 仲間隼斗(熊本)、57' オウンゴ-ル(熊本)、88' オウンゴ-ル(熊本)


雪のあとは、またも風のゲーム。今季も何度か強風下の試合はありましたが、今日のそれはちょっと違っていた。これまで経験したことのないような、とんでもない強風。いやこれはもう烈風。セットプレーのボールがまともにセットできない。こんな状況はわれわれも見たことがない。ある意味、”サッカーをやれるような状況ではなかった”のかも知れません。

そして、これだけの風になると、風下はどうにもならない。久々、風上に圧倒的なアドバンテージがあった。コイントスに勝ったのは札幌。当然、風上を選択する。熊本も”いつも通り”の風下で、前半を我慢することから試合に入ったのですが。

20120428札幌

南のキックもハーフウェイラインを越えるどころか、戻ってくる。これはヤバイなと思っていた前半もまだ13分。札幌・前田がダイレクトで左にはたくと、岡本が左サイドからPAに侵入。深くまでえぐってマイナスパスで前田に戻す。熊本のDFは完全に振られてしまって。前田が落ち着いてゴールに流し込みます。早い時間帯での失点でした。

その後も、強風を背にした札幌が嵩に懸かって攻めたてる。上里の低い弾道のFKが、ゴール前を襲う。ちょっとでも触ればゴールというキックに脅かされる。耐える時間帯が延々と続く熊本。一方的。

原田からのロングボールにエリア内でDFをかわした養父のビッグチャンス。しかしシュートは右に大きくそれる。数少ないチャンスなのに。これも強風のせいか。サイドを使おうとする横パスまで、カーブが掛かって戻される始末。

「なんとかこのままで前半を終えたい」。それが試合を観ていたわれわれの正直な気持ちでした。いつもなら早く同点にしたいと思うところ。しかし、今日は「後半が早く来てほしい」と願った。こんな気持ちは初めてでした。

「前半よく耐えた」。ハーフタイムで吉田監督がイレブンを賞賛し、鼓舞したこの言葉が、結果的にこの試合のすべてを物語っているように思います。試合後はさらに、「前半を1失点で抑えたところ。そこが今日のゲームの勝因だった」と言うように。

まるで野球の表裏の攻守交替のように、後半は熊本の試合になりました。50分、札幌GK杉山の高く上がったパントキックが風に煽られ、なんとPAまで戻される。札幌DFがなんとか掻き出す。しかしそのクリアボールも高く上がってしまい再び戻される。高いバウンドを収めきれないところ、混戦を制して仲間がすかさずゴールに押し込みます。後半立ち上がりの同点弾。

そして7分後には養父のFK。GKがパンチで逃れるものの、DF奈良の”逃げ足”に当たってオウンゴールを誘う。逆転。

ゴールに向けて芯をとらえて正確に蹴れば、それがシュートになってしまう。集中を欠きがちな、バタバタした試合展開のなかでも、選手は逆に落ち着いて見えたのは、そのせいか。さらに言えば、ピッチのどの位置からでも狙えるならゴールを狙っているような。それはまさしく”サッカーの原点”でもありました。

88分には駄目押し。左サイドから作ったあと養父のクロスを、代わって入ったばかりの札幌・松本がクリアミス。

風の影響。相手のミス。オウンゴール…。久々の勝利も流れの中での得点がなかった、などと注文を付ける気はまったくありません。それどころか3得点とも体ごと押し込んだような得点。オウンゴールというのは、相手を押し下げて、後ろ向きに守らせて、こちらもゴールに詰めていて、正確なクロスが来て、そして初めて生まれるもの。だから、2点目も3点目も、チームの得点だし、決めたのは養父なのだと思います。

これまで繋ごう繋ごうとするあまり、逆にゴールマウスが遠かった。今までチームに足りなかったものを、厚別の風が教えてくれたようなそんなゲームではなかったかと。

敵将・財前監督が「点を奪われたのは技術の差。熊本のほうが止める、蹴るといったプレーをしっかりやっていた」とコメントしていますが、それは、シュートから逆算したプレーができていたことを評価したということではないでしょうか。いずれにしても、この「止める、蹴る」ができているという評価は、われわれとしては最も嬉しい褒め言葉です。

しかし、なによりこの試合のMVPは、仲間。ですね。

翌日の、熊日は「汚名返上」と見出しをとった。しかし、われわれには、そういった意趣返し的なものよりも、あの長崎戦を糧にして、また大きく成長したように見えました。

同点弾の後、逆転のOGの後。ゴール裏を煽るように、両手を広げて精一杯の喜びを表していたのは、決して嬉しかったからだけではないように見えた。不振のチームにあっての久々の得点、そして逆転。この流れを渡すまいと、必死でゲームをアゲていた。そういうふうに見えました。

71分。相手ディフェンダーに引っ掛けられて、バランスを崩し、よろけながらも踏ん張り、持ちこたえてボールをキープ、さらにゴールに向かおうとプレーを続けた。プレーが途切れたところで相手選手にイエローが出された。スカパー!解説者も称賛していました(ちょっと趣旨が違うようにも感じましたが)が、われわれにとってもこの試合一番の印象に残るプレーでした。

ファウルを貰おうなど微塵もない気持ちの強さ、前に進む意志。仮に膝をついても、プレーを続ければ、審判はアドバンテージを見る可能性もある。相手がセルフジャッジでプレーをやめれば大きなチャンスにもつながる。これもサッカーの原点を感じさせる。これまでの彼のプレーには、なかった”行為”。これがまさしく彼に欲しかったプレー。完全に”あの試合”で一皮剥けた。次のゲームでは、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。楽しみになってきました。

しかし札幌。後半あれほどのバタつき。ホームなのに。それについてはJ's Goalのレポートで 斉藤宏則氏は「平均年齢が27.00歳の熊本が、同23.36歳の札幌に悪条件のなかで我慢強く競り勝った」と”経験の差”をあげています。南と杉山の差は、確かにあったと思う。また札幌の上里に脅かされたものの、強風を背にした後半、原田、養父というこれまた経験豊富な左右のキッカーがいたことも大きかった。

でも・・・。

きっと本当に強いチームは、こんな状況でも、風のせいにも、雨のせいにも、ピッチのせいにもせず、何食わぬ顔で普通のプレーをするのだろうなあ。コンディションに合わせたプレーを、正確に積み重ねていくんだろうなあと。

なんか、7試合勝ちなしから脱した久々の勝利は、1つの白星、勝ち点3以上に多くのものを、熊本にもたらしたようにも思える。”サッカーをやれるような状況でなかった”ようで、実はサッカーの原点が隠された試合だったのかも知れません。

最後に。表示気温は7度。烈風と冷たい雨のなか、声援を送り続けたゴール裏のサポーター。体感温度は限りなく零度、いや多分、氷点下だったのではないかと思います。そんななかでの後押し。ありがとうございました。この勝利の余韻とともに、しばし温まってください。

4月21日(日) 2013 J2リーグ戦 第10節
山形 1 - 0 熊本 (13:04/NDスタ/4,433人)
得点者:43' 堀之内聖(山形)


今季、強風に悩まされた試合はいくつかありましたが、まさかこの季節に雪に見舞われるとは思いもしなかったですね。おそらく前夜から降り続いた雪が、ピッチ全体を覆っていた写真をネット上で見ましたが、スタッフはもちろん、ユース選手、サポーター有志の懸命な除雪作業のおかげで、試合開始前には真緑色のフィールドが姿を現していました。頭が下がります。ただ、湿り気を十分含んだであろう芝は、8日間で3試合目の選手の足には、相当堪えたのでないかとも思います。

試合のほうは、「シュート数、精度で見劣り」という翌日の熊日の見出しそのままの内容でした。

20130421山形

山形の厳しく、早い寄せに手を焼きながらも、辛抱強くボールを運んでいた熊本。決定機は確かにあった。そう数多くはありませんでしたが、確かにありました。そこを決める精度、技術と言ってしまえば、今回のエントリーは終わりになってしまうのですが。

守備は厳しく寄せて、球際も見劣りしていない。ここ数試合、ほとんど崩れていない。相当に組織されてきていると見ました。そういう意味では、ゲームは作れている。ゲームになっていると。

90分のなかの、その一瞬を除けば。

前半も残りわずかの時間帯。熊本のゴール前で、山形が右に左にワイドに振ったあとクロス。PAからのクリアを拾った堀之内が、チェックにきた仲間を切り返しで振りほどくと、躊躇なく右足を振り抜いた。PA右から対角線を描くように、シュートがゴール左に突き刺さりました。
まさにワンチャンス。しかも、あのシュートが決まってしまってはどうしようもない、そんな、派手さこそなかったが、まさにスーパーゴールと言えました。

その後ゲーム自体は、お互いに潰しあう、クローズな、ジリジリするような展開になりました。先制された熊本も、変に慌てるわけでなく落ち着いて試合を運ぶ。ただ、時間を経るに従って、ミスも目立ち始める。なるほど落ち着いていると見える半面、ギアをシフトアップする“推進力”もなかったのかも知れない。目に見えない3連戦の疲れというもうひとつの敵と懸命に戦っていたのかも知れません。交代選手が入っても、それはカンフル剤にはなりませんでした。

実は山形にしても、直前まで3連敗と、どん底の状況だったわけで。

お互いに気持が入ってはいたが、やはり“マイナスの気合い”というのか、リスクを避けることが第一なっているような。選手同士がその次のプレーにつないでいくイメージが共有されていないような。“精度”というよりも、“呼吸”“タイミング”のところか。何センチ、コンマ何秒が、ことごとく合わない。

そんな状況のなか、山形が文字通り“虎の子の1点”を守りきることで、連敗からの脱出を図ることが出来た。そんな試合でした。

現状ではこれが精いっぱいだろうなぁ。という感想を持ちました。
「厳しい試合になるのはわかってたんですけど、そこで自分たちがやることを100%できないと勝てないと思ったので、100%できなかったのが敗因かなと思います」(J’s Goal)。そう言う仲間の言葉が、チーム状況とコンディションとを言い表しているのではないかと。

巡り合わせ、悪循環…と言うべきか。

今日も、監督同士のシステムの読み、修正がゲームを動かす大きな要因になっていました。90分のなかで、わずかな勝機を探りあうような指揮官同士の神経戦。我慢とはこんなときに使う言葉なのかと。何を変えるべきで、変えてはいけないものは何なのか。

「この状況を抜け出すには、より大きなエネルギーが必要」という北嶋。故障者続出のチーム、3連戦の3試合目ではそのエネルギーは出てこなかった。

「休息から得るものは何もない」というオシム語録もありますが、ここはいったん「休む」こともトレーニングであり、戦術なのではないか。心と体をリセットする必要がありはしないか。これ以上、ケガ人が増えないことを祈りつつ。われわれも、今回はこれが精一杯のエントリーといえます。


4月17日(水) 2013 J2リーグ戦 第9節
熊本 0 - 1 愛媛 (19:03/うまスタ/3,501人)
得点者:90'+4 加藤大(愛媛)


何が起こったのか、すぐには理解しがたい、思考停止してしまった時間でした。

スコアレスのまま突入した後半のアディッショナルタイム。怒涛の攻勢で熊本が愛媛ゴールを襲っていましたが、愛媛はカウンターに石井が右サイドを駆け上がる。クロスに対してPA中央に入ろうとしていた愛媛の選手を、矢野が倒したとしてFKが与えられる。Pアーク付近からのFK。愛媛は壁のなかで3人がひざまずいて南からキックポイントの視野を奪う。加藤が蹴ったボールに、南は一歩も動くことができず、ネットに突き刺さりました。

サッカーの神様は、「これでもか」というほどの試練を与えます。

前節長崎の敗戦で心折れそうななか、多数の選手の怪我での離脱が発表されて、チームはまさしく緊急事態。藏川の穴には筑城を入れて、黒木に代ってボランチの一角には吉井を上げた。CBには開幕戦以来の福王。両SHは齊藤、養父。2トップは北嶋、ファビオという、なかなか腐心された布陣でした。

20130417愛媛

選手は闘っていました。前節の不甲斐ない敗戦。サポーターからのブーイングを受け、この試合、吉田監督は「倒れるまでやれ」と選手に指示し、「本来“気持ち”でプレーするのは嫌い」という北嶋は、「空回りするぐらい“気持ち”でプレーしたい」と言っていた(スカパー!)。

5戦勝ちなしの状況でしたが、守備は崩れていない。ケガ人は多いが、その分、控えにまわっていた選手にチャンスが来た。そしてこれは、チームが変わるきっかけになるかもしれない。チームと選手は違う部分がある。選手は選手で自身の生き残りのために死力を尽くす。それが競争。

思うに、選手層が“薄い”ということかどうか、ベンチメンバー、いわゆる主力と、そうでない選手の起用について、固定化しているようなイメージがあった。それが、少し風が通った感じなのは怪我の功名かも知れない。

ただ“闘っていた”ことは確かだが、前節も書いたように詰まってしまう形、足元のつなぎが目立つ。オープンでダイナミックな展開にならない。自信のなさか。安全に確実に“つなぐ”ことが目的になってしまっているのか。そして“作って”はいるが、フィニッシュあるいはその前での判断。フリーの味方にパスするのか、自分が撃つのかの判断。結果論かも知れないし、紙一重だが、そこがうまくいかない。

「全体を通して動きがあまり良くない状況」(石丸監督)だったという愛媛は、カウンターに活路を見出す。前戦の河原がうまくボールを収め、的確なスペースにパスを送り、また自身はゴール前に入っていきます。相変わらずうまいなと唸らされました。

吉田監督の心情を思えば、今まさしく初めてクラブチーム監督の苦境を味わっているに違いない。怪我人が出ても代えの選手が無尽蔵にいる“代表”というチームとは違うクラブ監督の仕事。待ったなしにやってくる(しかも過密日程)リーグという長い長い起伏に満ちたシーズン。しかし実はそれは“醍醐味”“冥利”と裏腹なわけでもあり。

長崎戦の敗戦の後、選手たちに「勝てなかったことは自分の責任」と言い切り、この試合後は「グループと個人の質を一歩一歩積み上げて高めたい」と記者団に語った指揮官の目線はしかし、われわれよりも、もっともっと遠くを見つめているに違いありません。

引き分けも敗戦というわれわれの見方からすれば6連敗になります。そして開幕から9試合、まだ1つしか勝てていない。怪我人が相次いでいる。 降格圏に限りなく近づいた。

けれど今節の光明は、吉井がやっぱりボランチの方がよかったということ。養父が“汗かき”SHにフィットしてきたこと。ドゥグラスが非常事態だからだろうが初お目見えしたこと。特別指定の坂田に可能性を感じたこと。

そしてなにより。この非情な現実を前にして、ゴール裏のサポーターたちからブーイングではなく、自然発生的に唄われた歌。「ロッソと共に我らは生きる」。顔を覆いながら、あるいはタオルマフラーで溢れる涙を拭いながら。選手たちのゴール裏への挨拶に、飛び跳ねながら唄われた”絆”の歌。

この崖っぷちだからこそのファンの想い。

ピッチ上の勝敗が一番ではあるけれど、常に勝ち続けるわけではない。うまくいかないことも多い。それは人生と全く同じ。勝敗を超える共感。これがサッカー。
「さあ、次だ、次!」。次に行きましょう。

4月14日(日) 2013 J2リーグ戦 第8節
長崎 1 - 0 熊本 (13:05/長崎県立/5,916人)
得点者:85' 高杉亮太(長崎)


危惧していたことがまさかの現実になってしまって、がっかり、ガックリしています。結果はもちろんですが、その内容こそ。

序盤こそ互角で渡り合いましたが、その後は終始、主導権を握られてしまったと言っていいでしょう。数的に有利になった時間帯でさえも、その流れは変わらず。現時点のチームの状態、完成度の差がはっきりと出たということでしょうか。

「勝因は走り勝ったこと」と高木監督は試合後のインタビューで答えています。そのとおりではあるのですが、ただ“無謀”に走っていただけではなかったのも事実です。単に熊本が「運動量で負けた」というのではなく、この試合、選手たちがスペースで貰う、スペースを作る動きが全くない。皆が足元に貰いたがっていた。「スペースを作る、使う、埋めるということがテーマだった」という高木監督の言葉は、熊本の目指すところも同様だし、その意味からは同じようなコンセプトのチーム同士の戦いでした。

20130414長崎

ボールを繋ぐサッカーをしたのは長崎の方でした。水永や佐藤へのロングボールを警戒していた熊本は、サイドを抉られて、面食らうようにズルズルとDFラインが下がった。熊本のボールの通り道であるタッチライン際では蓋をされ、片山や藏川が駆け上がるシーンは皆無。攻守が反転したときは、食い付きが一歩遅いため中盤が置いてきぼりにされ、一気にアタッキングサードまで持ち込まれてしまいます。

「こちらが一度ボールを保持してしまうとミスマッチになり、ドリブルで仕掛けられるようになった」とは高木監督の弁。最終ラインで守らなければならない熊本は、自然にロングボールで跳ね返すしかない悪循環。高い位置での長崎のプレスに、南ですら大きく蹴るしかなくなってしまいました。

対する吉田監督の後半の対策は、「中盤を菱形にして、もっとサイドを上手く使う」というもの。しかし開始2分で「プランが崩れた」。

今節の「タラレバ」は、間違いなく仲間の退場でしょう。まったく不要な、意味不明のプレー。後半のゲームに入っていく重要な時間帯で、大いにチームの士気を下げ、混乱を招き、逆に長崎を心理的な優位にしてしまった。彼にとっても高い授業料になりました。

熊本にはついに、一度の決定機も訪れなかったといえます。高木監督は前監督として、よくよく熊本をわかっているような戦いぶり。絶対的な熊本不利でした。

決勝点でスピードに乗ってサイドを破った長崎・古部のプレーは、本来熊本の片山に見せて欲しかったプレーでした。山田のケレン味のないドリブル突破は、仲間が…。

今、長崎は多分、チームとして最高のプレーをし、パフォーマンスを見せていると思う。上位に位置しているのも納得できる。こんなに早く高木サッカーが浸透しているのを見て、幾分の驚きを禁じ得ませんでした。

一方、開幕して既に1カ月半。しかし、わがチームはまだ深刻な不振から脱していない。この日のアウェーゴール裏は、いつぞやの大銀ドームよりもレベスタよりも、本城よりもベアスタよりも、もっと多くの赤で一色に染まりました。そのファンの想い。だからこそこの敗戦の重さがずっしりと堪えます。

4月7日(日) 2013 J2リーグ戦 第7節
横浜FC 0 - 0 熊本 (16:03/ニッパ球/3,086人)


この4試合連続の引き分けを受けて、翌朝の熊日は「ドロー沼」と、いささか使い古された感もある駄洒落見出しをつけました。確かにファンとしてはフラストレーションが溜まる結果が続く。4試合で得た勝ち点は4。失った勝ち点は8。ほとんど3連敗しているのと同じ状態。順位も17位のまま上がらず。そして、この試合は勝ち切れないというよりも、どちらかと言うとやっと引き分けに持ち込めた形。しかし、そうは言いながらも負けてないという安心感も同時にあって、何となくフワフワしたような感覚に包まれていませんか。

列島を襲った春の嵐。横浜・三ツ沢球技場は見るからに猛烈な強風が吹きすさんで、選手のユフォームを激しくなびかせていました。そんな悪コンディション下に、もはや”定番”になったかのように前半風下を選んだのが熊本。

敵将・山口監督が「風上にたったチームがリズムをつかめなかった。見ていて面白いな、と思った」という、評論家っぽいコメントを残していますが、現象面ではまさにその通り。これまでの熊本の経験でも、強風下のゲームでは、風下の場合が攻めやすく守りやすい、というケースは何度も見てきました。しかし、今日はそれが前後半で、全く立場が入れ替わって見えたところが「面白い」ということでもあるのですが…。

20130407横浜FC

前節の山形戦の大敗もあってか、風上に立った横浜は「いきりこんで」(山口監督)しまった。何度も、肩の力を抜けとばかりに指示を送る指揮官。一方で、熊本・吉田監督は、「前半は及第点。風上の後半は課題」とし「ハーフタイムに縦に急ぐな、と指示したが、(勝利への焦りが出て)ゴールへ向かっていってしまった」とふり返る。本来なら味方するはずの追い風が、両者ともにかえってメンタル面で邪魔をしたと言えます。

われわれはスカパー観戦でテレビの前、パソコン(オンデマンド放映)の前に座っていたのですが、その画面を通じて見ても、現地での強風は半端なものではなかったようです。3連敗中の横浜、3試合引き分けの熊本の両チーム選手には、当然「勝利への焦り」もあったのでしょうが、あれだけの風で、セットプレーのボールさえ風で動いてしまうような状況。ボールコントロールは難しく、つなぐサッカーのリスクは想像以上に大きかったのではないでしょうか。特に熊本は、開幕以来全試合で失点を喫しているなかで、チーム全体が失点しないことに大きく傾くのも仕方ないことだったでしょう。

こんなコンディションでは、選手は本能的にリスクを回避するように動くのではないか。風下の方が、リスクマネジマントがやり易かったということもあるのでは。誤解を恐れずに言えば、この試合では「勝ちにいったほうが負ける」、そんなゲームだったとも言えるのではないでしょうか。

後半はスカパー解説者がしつこいくらいに、熊本のラインが低いことを指摘していました。これはもう、今シーズンのチーム戦術としてはありえないことです。守備がゼロに抑えたと言っても、下がって守っただけとも言える。相手は、対熊本戦の定石どおり、黒津に裏を狙わせ、サイドの一対一の勝負で熊本を混乱させていました。ただし今日は、しっかりしたカバーリングがあったことで救われていた。終盤には「守備からやろう!」みたいな藤本の声がピッチから聞こえたというレポートもありました。

守備の意識が非常に強かった。当初は 「前半耐えて、後半勝負」という吉田監督のゲームプランであったのが、結果としては「前半の好機をものにできなかったゲーム。後半は我慢でしのぎ切った」という展開になってしまったというべきでしょうか。

試合の実態と評価は、藤本主税のブログが全て言い表しているような気がします。「コントロールに意識が集中してしまった」という反省の弁。そして「あまり今日の試合は参考にならないけど、良かったのは失点が0ということ」だと。

そのうえで藤本は、自分が「決定機を外した責任は大きい」と悔やみ、同じように北嶋も「批判されるのはしょうがない」と、後半の逸機について触れています。その分、ベテラン僚友のGK南が、スーパーセーブでゴールを死守した。そして個人的にはと前置きしたうえで、「やっと完封出来たことを素直に嬉しく思います」とポジティブに捉える。

助けたり助かったり。そのうえでのチーム。そしてスコアレスドローの結果でした。

モヤモヤと言うよりフワフワと表現した今の感覚。それは選手たちも感じているのかも知れません。「引き分けで得た勝ち点1をポジティブなものにするかネガティブなものにするかどうかは、その後の勝ち負けがとても重要になってくる」「次の長崎戦で勝てれば6試合負けがないという事になり、この勝ち点4が意味をもってくると思う」と南は書きます。

全くそのとおりだと思います。次に勝てば6試合負けなしと言える。もし負けることがあったら5試合勝利なしと言われる。重要なのは引き分けの後の試合。その結果がこの4つの引き分け試合の意味を全く違ったものにしてしまうのだと。

次節の相手は、あの高木監督が率いる新生・長崎。熊本の選手の特徴も熟知する分析家が、どんな策で戦ってくるのか。初モノ(新規参入組)に決していい結果を残していない熊本だけに、正直不安がないわけではありませんが、決して負けるわけにはいかない。そんな決意がファンにもあります。

「この試合でやっと自分のスタンダードまでこれた」。頼もしい北嶋の言葉を信じて、アウェーを赤く染め、「カモンロッソ」を歌いたいと思います。

3月31日(日) 2013 J2リーグ戦 第6節
熊本 1 - 1 富山 (13:03/うまスタ/5,012人)
得点者:7' 西川優大(富山)、77' 黒木晃平(熊本)


“あの場面以外は…”というのが、この試合の“たら、れば”でしょう。試合後の吉田監督が、「ちょっとした隙で失点してしまうというのが、特に前半の立ち上がりであると、なかなかゲームをうまく運べない」、そう言いたくなる気持ちもわかる。1点ビハインドを背負って、残り90分近くを戦わなくてはならないというのは、もちろんゲームプランには全くなかったわけで。

またもや1対1。カバーもフォローもなし。裏を取られるタイミングと位置取り、地のスピードであっさりと振り切られてしまう。攻撃に人数をかけ、少ない枚数で守る、という単純なコンセプトではないはず。プレーの“軽さ”と言ってしまっていいのかどうか。別に、選手に真剣味が足りないと言っているわけではなく、あれだけラインを高く保つならば、その備え、緊迫感は尋常のものではダメだろうと。強いて言えば、同じ失点パターンが続くのは、課題のハードルがいかに高いか。それを共有できているかということかなと。

20130331富山

前節と同様で、試合開始直後の“入り方”が悪い。「G大阪戦は立ち上がりは良かった」「その時は我々はチャレンジャーという感じだった」「もしかしたら少し受けて立っているところがあるのかも分からない」と指揮官はこの2戦を悔やみます。

富山にしても、熊本のウィークポイントであるDFラインの裏を、一発であっさりと突いて早々と先制したことで、逆に拍子抜けの感があったのかも知れません。その後思ったほどのプレスもなく、連携のミスも目立つ。しかし、そんな富山に対して熊本も“お付き合い”している感じ。アタッキングサードまで持ち込んでも、最後のフィニッシャーとの意識が合わない。撃てるところで、もうひとつ崩し切ろうとパスを選択して潰される。片山のクロスにも切れがない。

「前線で起点を作るために」(吉田監督)、後半から高橋に代えて北嶋を投入。逆に前半を反省した富山は、後半に入って強烈にプレスを掛けてきたように見えました。早く同点にしたい熊本と、追加点を取りにきた富山の正面からのぶつかり合い。

その状況を見た吉田監督の、次のカードがこの試合のポイントでしたね。原田を下げて、怪我から復帰したばかりのファビオを前線に投入。4-1-3-2に見えたのですが、黒木をアンカー、藤本を頂点とするダイヤモンドの中盤だといいます。相手の厚い中盤に混乱をもたらそうという意図。これが奏功します。

同点の場面は、オープンな展開になった77分。最終列の吉井から貰った黒木が、ファビオに預けると、自ら猛然と上がっていく。すでにエリア内にいた齊藤までもを大外から追い越すと、ファビオから出されたパスをダイレクトで撃ち抜いた。「キーパーは多分、クロスを意識してたから」と素早く見切ると、角度のないところからニアにぶち込みました。

開幕前の練習試合からレギュラーポジションを取り、吉田サッカーを体現する“申し子”のような彼の名前(活躍)を、いつ書けるのか、早く書きたくて仕方がなかったのですが、ようやくやってくれました。高い技術に裏づけされた安定したプレーぶりもさることながら、誰もが感心する献身的な運動量。機を見て攻撃に参加する姿勢は積極的で、前半もこの男のドリブルからの惜しいシュートが。後半この時も、ひとりアンカーという重責を任されている状況での“瞬時の判断”。試合前から「常にゴールは狙っている。1点取れれば乗っていける予感がある」(スカパー!)と言っていた黒木。乗ってほしい男です。

同点に追いついた熊本は齊藤に代えて養父を投入。再びダブルボランチ、4-4-2に戻します。これはもちろん逆転を狙っていくものの、落ち着きも持とうという意思のカード。前節、藤本、北嶋が憂いた“玉砕”モードの反省を見た気がしました。一方の富山は木本、苔口といったスピードスターを相次いで投入。完全に熊本DFの裏狙いを鮮明にしてきます。

一度リセットしたあと追加点の隙を窺おうという熊本でしたが、時間が足りませんでしたね。やはり前半のモヤモヤとした時間帯がもったいなかったし、後半早々は意外なほどの富山の圧力に少々手こずった。

富山が攻め込んでもバイタルから早々と撃ってくれたのもありますが、“あの場面”以外は、そうそう決定機は作らせませんでした。流れは色々ありましたが、熊本は富山の厳しく、早い寄せに対しても、決してロングボールを蹴らないぞ、という決意めいたものさえ感じるように、繋ぐ繋ぐ。ほぼ90分間、息もつかせず、激しくコンタクトして奪い、富山のプレスをサイドチェンジとワンツーダイレクトでかわしまくる。

但し、それは富山に攻撃面でサッカーをさせなかったという点において。富山にしてみればあれでよかったし、意図したことではないにせよ、あの流れのなかではよく粘り、よく守って、ゲームの裏側ではこれまた支配していたようにも思える。90分間、これまた途切れず走る。これが安間流なのか。真面目なチーム。そういう意味では、難しい相手であったし、内容の濃い試合でした。

3試合連続で先制されてから同点に追いつくという試合。引き分けは敗戦と同じというわれわれの見方はこれまで通りです。ただ、富山の変則的なシステムに対しても何ら戦術を変えず、自分たちのサッカーでぶれずに“勝ち”を目指した吉田・熊本。前述のように各試合、試合の入り方こそ違いがありましたし、東京Vも予想したほどのプレスがなかった。今日この富山が、ここのところでは一番プレスも強く、走り、最も上り調子のチームではなかったでしょうか。そういう意味では、同じ戦い方、同じ同点劇だからこそ、自チームの出来(完成度)が比較しやすいように思えます。

もうひとつ。この試合を見ていても気づかされる今年の特色は、中盤でのボールの奪い方。相手への体の入れ方、当たり方。前を向くテクニック。そしてこの新監督の教えと戦術にフィットしているのが仲間であり、齊藤、そして藤本だと思いました。今季の藤本はフリーマンであり、バランサーでありパサー。ピッチ上欠くべかざるその存在は、この試合で遂に今季初の90分間出場を果たしました。そして、実は今シーズンの養父が、なかなか途中から試合に入っても消えていることが多く感じるのも、今季のこのチーム戦術に訳があるのかと。養父の使い方はどうすれば一番効果的なのか。縁台将棋さながら、われわれは勝手に頭を悩ませています。昨季は藤本に対して悩んでいたんですが(笑)。

3月3日に開幕したわれわれのリーグも、早くも1カ月の日程を終えました。選手入場時にタオルマフラーを回すことにも徐々に慣れ、そして今節は新しく「HIKARI」の熱唱も加わりました。試合前のピッチ練習に現れた選手たちに注入する“魂”。共に闘うという“儀式”。それは感動的で、他のどのチームでも見たことがない、実に熊本らしいオリジナルのパフォーマンス。だからこそ今日こそはホームで初の勝ち点3を奪いたかったのですが…。

ホームのゴール裏で歌い踊る「カモン・ロッソ」は、4月17日の愛媛戦までおあずけ。溜りに溜まった鬱憤の発散で、そのときは大騒ぎになるかも知れませんね(笑)。もちろん、その前のアウェー連戦を一戦一戦大事に戦って、2連勝を飾って帰ってきてくれることが、まず望みですが。さあ、反転攻勢の4月になる予感がします。