5月26日(日) 2013 J2リーグ戦 第16節
岡山 2 - 3 熊本 (16:03/カンスタ/8,356人)
得点者:21' 仲間隼斗(熊本)、48' 仲間隼斗(熊本)、65' 齊藤和樹(熊本)、89' 押谷祐樹(岡山)、90'+1 押谷祐樹(岡山)


何度も録画を見返してみましたが、”戦術的”にどちらがどう修正してきたのか、どうもはっきりとした潮目は見えませんでした。ただ熊本の運動量が徐々に落ちてプレスが甘くなったことと、これまでの得点の半分は試合残り15分で上げているという岡山の終盤の強さがあいまった結果かと。それでもなんとか逃げ切ったというゲームでした。

吉田監督は「もう5分あったら負けていた。1失点目は仕方ないが、2点目は人数をかけ攻めることが考えられない状況でカウンターを受けた。許せない。あれで負けていたら立ち直れない」(熊日朝刊)と言う。選手を責めるコメントをあまり見ないこの人にしては、よほど腹に据えかねたのか、随分厳しい言葉でした。

前節の栃木戦の裏返しのような。試合への入り方、メンタルの強さなど、まるで栃木から触発され、それを見事にお手本にしたようなゲームでした。

20130526岡山

岡山・景山監督が「(昨夏から無敗だった)ホームで戦えることもあり、心に隙があったとすれば、今日の熊本のようなチームには勝てないと痛感した」(熊日朝刊)というように。現象面ではセカンドの争いで熊本が圧倒し、ゲームを完全に支配する形で試合が進んでいきました。

もうひとつの前節との違いはファビオのスタメン。この試合での大きな存在感。岡山もプレスをかけてくるチーム。それでも、うまくいなしてダイレクトや長めのボールでつないでいく。ファビオにおさまる。正確に言えば、ファビオと齊藤のコンビネーションで、かなりなボディーコンタクトをしながらも、玉際の厳しさと、技術面で上回り、マイボールでおさめていった。序盤から(熊本にとって)ボールもゲームも落ち着いて見えました。

前半21分。中盤の争いからマイボールにすると、片山が仲間に出す。そのパスにうまく前を向いた仲間がドリブルで一気に仕掛ける。齊藤のプレスにも助けられ、粘りながら何人抜いていったのか仲間。Pアーク付近まで持ち込むと軸足を滑らせながらも右足を一閃。ゴール右隅に蹴り込み先制点を奪います。

後半3分には、高く上がったクリアボールを岡山DFが処理しそこなった。そこを齊藤が奪って右サイドを突進。PAゴールラインぎりぎりまで持ち込みマイナスパス。中央のファイビオのシュートはGKがパンチングで逃れるものの、詰めていた仲間がそれを押し込み追加点。

さらに20分には、齊藤が落として仲間が中央をドリブル。DFを十分ひきつけたところで追走してきた齊藤にパスを出す。左45度、齊藤は落ち着いて決めるだけでした。

積み重ねる得点。仲間の2ゴール、1アシスト。まさに仲間の日。

守りでは、相手の2シャドーはDFとボランチがサンドする。ボランチにはFWふたりとこちらのボランチが。3-4-3に対するひとつの対応が確立したかも知れない。

そして、無理をしない見切ったプレーに徹していました。高い位置で奪われること を最も警戒しながら。カウンターでいけそうな場面でも、“もし奪われたら”のリスク管理がなされるようになっている。引き際が潔い。これも進歩だと思いました。

さらに、小気味いいワンタッチパスでリズムを作る。持ちすぎない。球離れが実にいい。景山監督が「昨年からそれほどメンバーは代わっていないのに、スタイルはがらりと変わった」 (J's Goal)と言い、「前節の後半に見せたようなパス回しをやられるとまずい」(スカパー)と警戒していた熊本の姿がそこにありました。

岡山はマイボールになる位置が低く、攻撃への切り替えでボールと人が動く距離が長すぎて、熊本に易々と対応されてしまう展開。熊本の圧に押されてカウンターに転じる際のパスミスも連発します。

しかし、試合途中で3点リードしたからといって、まだひとつの勝ち点も得たわけではないのも確かでした。熊本の運動量、プレスがペースダウンしていく経過は、スカパー解説者が、時間をおって本当に丁寧に分析してくれました。その熊本のペースダウンと見事に相対して、岡山の攻撃が徐々に徐々に、それこそ生きたパスが一本づつ繋がりはじめ、ジワジワと活性化していく。そこがやはり、岡山が今この順位にいる理由だったのでしょう。

そしてその均衡は、実は後半の早い時間帯から崩れはじめており、多分、仲間の追加点後あたりからではなかったかとも思われます。あの得点は、相手DFの軽率なミスから。解説者の言うように、前の3人で1点とったような形でしたから。

70分あたりからは見た目にも主導権が移り始め。一旦移った流れは、なかなか押し戻すことが難しくなる。あと20分。どう戦うか。それが熊本の課題でした。

「疲れている選手を順番に代えていった」というのは吉田監督。堀米のスタミナ問題が常に熊本にはつきまといます。明らかに岡山は、“行けなくなっていた”堀米のサイドを執拗に狙っていた。熊本のブロックに開いた蟻の一穴。

ただ、堀米から藤本の交代が定番化しているものの、今日の藤本、うまく試合に入っていけたとは言えなかった。持ちすぎで、ボールを奪われるケースが目につきます。もちろん、試合をうまくクローズするために、”持つために”投入されているのもわかるんですが、うまくいかなかった。失点の起点になった石原へのアプローチにも不満が残ります。

怒涛のような岡山の勢いに押され、終了間際になってあれよあれよという間に1点差に迫られる。0-3から神戸に追いついたこともある岡山の終盤の粘り強さ、怖さを思い知らされる4分のアディッショナルタイム。ロングボールのキャッチに飛び出した南が、敵味方選手と激しく交錯して、もんどり打って倒れる。動けない。これは落ち方が冗談抜きに悪い。

時計が止められ、医療スタッフがピッチに入る。赤のサポーターが「雄太!」コールを延々と続ける。長い時間が費やされ、そしてようやく、なんとかゆっくりと起き上がろうとする南。そのときでした。岡山のサポーターから、そんな南に対して大きな拍手が送られたのは。

既に3枚の交代カードは使い切っていました。もし、このまま南が立ち上がれなかったら、フィールドプレーヤーがゴールマウスを守るしかない。そうなったら、残り時間わずかとしても完全に岡山に分があった。岡山にしては劇的な逆転勝利を手にするチャンスでもありました。しかし、岡山サポーターが、(ある意味時間を使ったともいえる)南に対して送ったのはブーイングでもなんでもなく、温かい激励の拍手でした。

試合後、アウェーに駆けつけたサポーターとともに勝利の「カモン!ロッソ」を唄ったあと、熊本イレブンは、当然のように岡山サポーターの元にも挨拶にいきました。この南へのスポーツマンシップ溢れる拍手に感謝すべく。そしてそれに応えるように、さらに岡山サポーターから湧き上がったのは「南コール」だったのです。

ヒーローインタビューに立った殊勲の仲間は、岡山のホーム戦15戦負けなしが、昨年の熊本戦から始まったことに触れ、「熊本で始まったから、今日の熊本で終わらせたかった」と、この試合に懸けた思いの強さを語りました。それは選手と同じく、間違いなくわれわれの思いでもありました。

けれどこうして激しいゲームを終えた今、その勝利の喜びとともに、それを超えた爽快感と深い達成感に思い至りました。今日のカンスタで見せてくれたフェアでクリーンなメンタリティ。素晴らしいサポーター。その圧倒される数。サッカーやっててよかったなあと。そしてまたひとつ大事なことを学ばせてもらったなと。ファジアーノ岡山。J参入5年目と6年目のほぼ同期。お互い切磋琢磨してきた.。今後も良きライバルでありたいものです。

5月19日(日) 2013 J2リーグ戦 第15節
熊本 1 - 4 栃木 (13:03/水前寺/3,381人)
得点者:25' 杉本真(栃木)、51' 近藤祐介(栃木)、76' 當間建文(栃木)、81' クリスティアーノ(栃木)、90'+2 吉井孝輔(熊本)


今シーズンはこれまで“風”“雪”など気候条件によってゲームの行方が影響されることが多かったのですが、今日は“雨”。それも豪雨でもない、いわゆる“こぬか雨”。影響するのかしないのか。とても微妙な気象条件でした。

熊日朝刊では“高さ”を敗因としていました。確かに高さの差は明らかでしたね。それはまず純粋な空中戦。ヘッドでほとんど勝てなかった熊本。これはDFも前線も同様。ここまで徹底して勝てない光景を見るのもあまりない。完全に制空権を奪われてしまいました。そしてセカンドボールもことごとく栃木が支配。それにしても序盤から人数を掛けて攻めかかる。

ゲーム観というか戦局観というか(戦術のもっと手前にあるゲームの“枠組”みたいなものでしょうか…)。選手の心理的な問題にも波及するような。この日の栃木の戦局観はとにかく思い切ってエリア内、ゴール近くへズドンとボールを運んで、滑りやすいピッチで守るリスクのほうが高い条件のもとでゲームを進める、というものだったのでしょう。ラグビーではないけれど、とにかく地域を進めるとでも言うような。

そして、高さの勝負の影響がもうひとつ。ボールの収まり具合。雨天ということで、やはりピッチは滑りやすく、コントロールが難しいグラウンダーのボールより、どうしても浮き球でつなぐ比率が多い。これを栃木の選手は上背を活かした高い位置での胸トラップで、うまくコントロールしておさめていた印象が強い。これは、高さと、それにともなう身体の強さ、そして技術の高さも。雨の中でもボールがきちんとおさまる。

逆に、熊本はボールが落ち着かない。サイドチェンジを交え、ピッチを大きく使って揺さぶろうという意図は見えるものの、栃木陣内に入ってからの潰しは早く、密集地帯でパスが引っかかって繋がらない。起点のぼやけたゲームになってしまいました。結果、なかなかシュートにたどりつかないことに。

20130519栃木

岐阜戦と同じく両者とも高いラインで、コンパクトサッカー同士の対戦。狭い狭いエリアでの戦い。それでも熊本の意図はいつも通り丁寧につないでいくこと。そこにピッチコンディションの問題と、もうひとつ高さの問題が加わって、プレーの選択肢が微妙に“心理的に”狭められていたようにも思えます。結果、判断がワンテンポ遅れて、栃木の網に引っ掛かってしまい。カウンターを食らう。

それでも前半、先制点を奪われたあたりから逆に栃木のプレスに慣れはじめたのか、栃木サイドのバイタルまで長いパスが通るようになります。堀米のFKから、あるいは筑城のアーリークロスに養父のダイレクトボレーなど、惜しい場面も。同点には追いつけなかったものの、よく1点でしのいだ。後半、ゲームコンセプトを修正すればもっと戦えるとも思えたのですが。

たとえば、熊本も高さを入れてもっとオープンなゲームにすれば、得点のチャンスはまだまだあった。多分、大きくゲームを転換する必要があったわけで、結果論を承知で言えばファビオ、高橋の2枚替えなども選択肢ではなかったのかと。

そこでわれわれの間でも論議に及んだのは1枚目のカード、藤本。もちろんバイタルのスペースに入り込んで、パス回しのリズムを作るのに長けているのは藤本。そして熊本の攻撃のスイッチを入れる役回りの片山を活かすための藤本というチョイスだったのでしょうが…。しかし、それも更にファビオの高さが加わり、戦局のバランスが変わってはじめてのことだったようにも見えました。

そこで、試合後の吉田監督のインタビューで知った、試合前からの南の脚のアクシデント。確かに前半でしたか、左足でのプレースキックばかりを選択するそのプレーに首を傾げました。やはりベンチとしては選手起用、交代カードの切り方に、微妙に、いや大きく影響していたのではないかと。最終ラインとの連携、押し上げが厳しかったのも、そのあたりの事情かもしれません。

点差はつきましたが、それはある意味ありがちなことでもあり、われわれも意外なほどダメージはありませんでした。重要なのは、何より最後に1点とれたこと。流れさえ変えられれば、今日のゲームは打ち合いになるはず、と見えたので、このまま惜しいシーンだけでは残念と思っていました。あの1点は、今後の戦いのため、チームの自信のためには、とても大きな1点だった。「後半の中頃から回され始めて、あれを前半からやられていたら怖かったなと思います」。そう言う栃木・當間の言葉がそれを証明しています。

いつものように“タラレバ”はたくさんあったけれど、やはり今日は熊本の日ではなかった。

ピッチコンディションをものともしない栃木の前がかり。一芸に秀でた選手を集め、個人個人の能力で上回れたかと思わなくもありませんでした。しかし、試合前後の栃木の選手たちから漏れた言葉は、終了間際に同点に追いつかれた前節・長崎戦への猛省。そのことを“曖昧”にしなかった姿勢が、この試合、球際でも熊本を上回らせ、最後まで攻撃の手を緩ませなかったのではないかと。そして彼らはまた今日のこの1失点を課題にしている。

「そのあたりはまだ甘いなというか、これからそういうところは大事になってくるんじゃないか」という敵将・松田監督の言葉の先には、昇格圏を争う気概に溢れていて。彼我の差というなら、そこが一番悔しいところでした。

5月12日(日) 2013 J2リーグ戦 第14節
岐阜 0 - 0 熊本 (19:04/長良川/2,860人)


最下位相手に引き分けてしまった…。などと言う気持ちは毛頭ありません。もちろん勝ちたかったし、最後の怒涛の攻めを見れば、もう少し時間があればという気もしないではない。ただトータルで振り返り、誤解を恐れずに言えば「負けなくて良かった」。そういう感想を持っています。今日の岐阜。とりわけ難しい相手であったと。

最下位に沈む岐阜は、いまだリーグ戦1勝にとどまっている。とにかく今は失点しないという課題をまずクリアしようと意図してきました。とりあえず攻撃面は置いて、それも守備から立て直すというより、とにかくなりふりかまわず凌ぐという戦いとでもいうのか。 熊本に対してあれだけ人数をかけて守ってくる。面食らうくらいの専守防衛。このカテゴリーでの対戦では、これまであまり経験したことがない。

ある意味、それだけ割り切って、シンプルに整理されているとも言える。しかも、勝ちたい、負けたくないという意識はギリギリまでつき詰められているような相手。実に嫌な状況での対戦だったとも言えます。

20130512岐阜

岐阜は、前線3枚からして攻撃というより守っている。もちろんそれは引いているのではなく、高い位置からのプレス。しかしプレスというより、むしろ前線からの守備ブロック。

お互いにDFラインは高い。コンパクトとコンパクトの戦い。とにかくスペースがありません。それでも、そこをつなごうとする熊本。ともすれば岐阜の網に引っ掛かってパスミスが多い。

見ているわれわれのこの試合の消化不良感は、この「行こう」という時にとにかく引っ掛かかって溜息をつくシーンが多かったこと。そのために徐々に攻め手を無くして、攻めあぐねてしまったこと。

そして、サイドで手詰まりになるいつもの熊本。

それでも決定機は何度かありました。バイタルでくさびのパスをスルーして左に抜けた堀米、ファーへのクロスに筑城が飛び込む。縦パスに片山がゴールラインぎりぎりまで抉ってマイナス、ニアの齊藤のシュートはポストに嫌われる。終盤にはこぼれ球を拾ったドゥグラスが、ドリブルでシュートコースを作って撃つが、GK時久の手中に。

勝ち点3か1かの差はこれが決まるかどうか。それは決定力うんぬんではなく、決定機の数がやや少なかったということでしょうか。シュート数も含めて。

一方、岐阜の意図は明確にカウンターでした。それも引っ掛かったボールからのショートカウンター。他に得点をうかがうような手立ては見当たらない。それでも、何度かカウンターからの決定機をつくられましたが、「これは入らないな」と見ながら思えたのも事実。そこに現在の順位の理由が透けて見えたような気はします。

ここまで3試合連続で3点とっての3連勝。しかし、その内容自体はタラレバが満載でした。そういう意味では、今日のこのゲームは“2試合連続の無失点”というふうに見たい。監督の言葉を借りれば、「初めて、支配しながら得点を積み重ねるという試合が今日出来た」と語ったのが前節・徳島戦なら、今節のゲームは、支配しながら得点できなかった試合、ということ。

モヤモヤした引き分けではありますが、最下位相手に勝ち切れなかったなどと悲観するようなものではないなと。「(試合後)2時間近くがたって冷静になったら、アウェイで勝ち点1を取って落ち込むのはどうかと思うようになった」と藤本がブログに書くように。選手は戦っていたし、前へ前へという推進力は90分間決して衰えなかった。終盤、藤本が入ってからの修正と活性化。ファビオ、ドゥグラスと続いたカードも狙いどおりでチームがギアチェンジできた。まあそれでも勝ち点3には届かなかったというゲーム。

一方で岐阜はせっかく前半攻勢を得ながら、後半ターゲットマンとして入れた新井へのロングボールが多くなり、解説の森山氏が言うとおり「機動力がなくなった」。攻撃の狙いをぼやけさせた交代劇になりました。

冒頭書いた「負けなくて良かった」という表現は、圧倒されたというニュアンスとも違い、ホーム初勝利を目指し遮二無二戦ってきた岐阜に対して、大火傷をしなくて良かったという意味に近いかと。引き分けは負けに等しいと言ってきたわれわれですが、今節を“勝ちなし”とみるかそれとも4戦“負けなし”とみるかと問われれば、今日は「負けなし」との表現に結論づけたい。それほどのアウェイ戦の難しさ、下位と戦うことの難しさ、逆に言えばアウェイで勝つことの価値を、藤本の言葉からも再認識させられます。

では、ホームで絶対の強さを築き上げられるのか。それはホームを預かるわれわれの命題でもあります。「負けなし」で繋いでくれたこの試合。次は、もはや強豪と称される栃木との戦い。試される試合です。

5月6日(月) 2013 J2リーグ戦 第13節
徳島 0 - 3 熊本 (13:04/鳴門大塚/4,583人)
得点者:36' 堀米勇輝(熊本)、38' 齊藤和樹(熊本)、75' 藤本主税(熊本)


ファンの間では鬼門とも言われた鳴門での徳島アウェー戦。終わってみれば3-0の完封勝利。苦手中の苦手相手に、(結果は)会心の試合で、とりあえず“厄は払えた”とだけはいえるのかと。しかし、たくさんのタラレバがあった難しいゲームでした。

20130506徳島

まずは、序盤の南との1対1。DFラインまで下がっていた原田に出した南。柴崎が原田から奪うと右に持ち込み南を釣り出し、すかさずファーへクロス。飛び込んだ津田のシュートは左に反れてくれました。ここで決められていれば万事休す。おそらく逆の一方的な試合になっていたかもしれない。

もうひとつは、齊藤のPK失敗。ここは、徳島にとって壊れかけたゲームが、もしかしたらまだ立て直せる、ツキが向いてきた…と思わせた。前節の養父の同点弾のように、本来ならここで敵の戦意を失わせられるはずでした。

案の定、後半開始早々から、徳島が圧をかけてくる。ひとり足りない状況ですが、どこかで無理をしてでも1点差に詰めれば、色んな可能性がでてくる。徳島はそんな勝負に出た。そして、熊本は凌ぐ。多分、そんな時間帯であることを全員が共有しつつ、バタバタせず、一時的にゲームを閉じ、凌ぐ。凌ぎ切れれば、相手の勢いは一気にトーンダウンすることも承知。

そして、凌ぎ切った。これこそゲームの流れ。この試合のもうひとつの面白さを感じさせる見ごたえのある局面でした。

それにしても今節も堀米。ハーフウェイライン付近から仲間に縦に預けると、仲間がうまく時間を作って堀米の上がりを待った。中への選択肢もありましたが、堀米とのワンツーで裏を取る。前節と同じようなプレーでしたが、今度はGKとの1対1を冷静なループで決めてみせました。

これまでの熊本のチームカラーとまったく違う、動きの質、判断のタイミング。そんな目で見ると単なるキックの軌道までもが違って見えしまう。合流して、チームにフィットするための時間をかけられなかったことで、かえってチームのリズムに同化せずに、フレッシュなままで、逆に周りのプレーヤーが影響を受けて、これまでにないタイミングのプレーが出るようになっているのではと思わせる。相手チームはスカウティングできない状況でしょう。2試合続いたヒーローインタビュー。初々しい受け答えのなかで「あの(得点シーンの)形をイメージしつつ、他のパターンも増やしていければ」と付け加えることを忘れませんでした。

そして橋本。守備の強さが際立つ。後ろのほうでガチガチ暴れている感じ。負担が減った分、原田が前に向かえる。そんな橋本も、堀米の活躍に、オレもとばかり随所で攻め上がる。

さてこの2枚の補強に関しては、前節に引き続き、養父への効果がこの試合でも際立ったと思えました。一列前になったことで、ボックスに養父がいることが多い。養父がほとんどトップ下(ほとんどシャドウ)のイメージで、自らゴール前に絡む絡む。パサーやバランサーではなく、本質的には前がかりなプレーヤーだったことがよくわかる。2点目のゴール前での動きはまさに。

粘ったのは仲間。ゴールラインぎりぎりからマイナスに折り返した。ボックス内の養父には通らず、飛び込んできた片山のシュートがしかしバーに嫌われる。その跳ね返りに頭から突っ込んだのが養父。潰されながらも掃き出し、流し込もうとしたボールが今度はポストに嫌われた。けれど、その跳ね返りは、体を投げ出すように詰めて最後は齊藤がゴールに押し込みました。

この2点目こそが、チームが目指すベストゴールかもしれない。 崩し、ドリブル、切り込み、折り返し、ボレー、リバウンド、飛び込み、粘り、最後は押し込み。実に泥臭い。

3点目を決め、敵地で阿波踊りを披露した藤本は、「徳島が良くなかったことにも助けられました」(J’s Goal)と、熊本にもミスが多かったことを反省していますが…。見ていて、今日のサイドからの攻撃の出来は出色だったと思います。徳島の3バックの弱点を見切って、高い位置からのチェイシングを仕掛けたのも奏功した。

逆に徳島は時間が掛かり過ぎ、陣形の整った熊本のサイドを崩すにはアイデアが不足していた。まるでプレスのきつい相手に手こずる、悪い時の熊本を見ているようでした。熊本は1対1にならないよう、カバーリングに神経を使っていた。これも藤本が交代で入って早々、身振り手振りで指示している様子が見えるように、吉田監督が口酸っぱく言う、「DFラインを高く保って、コンパクトな陣形を」というバランスからの効果なのかも知れません。

筑城は古巣相手に張り切り、片山は後半、独壇場でした。吉井のCBも利いていた。1枚少なくなって、津田の裏への飛び出しだけに集中しさえすればいいという状況になっていました。

やはりこのゲームを決定的にしたのは、柴崎のイエロー2枚。それは決定的な“ミス”。問題は、2枚目ではなく1枚目。FKへの遅延行為。その軽率さは、本人が一番良くわかっているでしょう。

熊本も次節は矢野が累積4枚で出場停止。ただでさえ戦力が逼迫している状況。2人の新加入で様々な波及効果がもたらされていますが、一人の出場停止で、逆の悪循環だってあり得る。累積自体はある意味で仕方のないことですが、この状況下であれば、一人でも復帰してくる時間を稼ぐよう、1試合でも凌いで欲しいところです。

歳を重ねるとなかなかはしゃぐことができなくなって、苦言じみたエントリーになってしまいましたが。この3連勝。勝ち点9を得て順位も上がり、いい黄金週間が過ごせたと思えましたが、決して手放しで喜べるそんな感じではない。ようやく長崎戦敗戦の痛みが和らいだぐらいかなと。(その長崎の順位が遥か上にあるのも一因かも知れませんが。)

苦手意識の塊りだった徳島を始め、札幌、水戸という、このリーグの曲者を退けた喜びは確かにあります。しかしまだまだ、戦力も厳しい状態は変わらない。目指す戦いができているか?という点についても、「不安定」としか言いようがない。勝ち点が拾えている。そんな感じ。勝って兜の緒を締めよではありませんが、次節最下位に沈む岐阜とはいえ油断は禁物。勝ち点計算などもってのほか。

ただ、縦へのパス、ゴールに向かう姿勢、シュートの質、落ち着きだけは、何となくレベルアップしているのかなと。だから、シュートが枠をとらえている。それが得点につながっている。それは重要なことであって、それが札幌戦の勝因でもあった。そう思えて仕方ない。

うまく表現できないこのモヤモヤとした気持ち。探していたら、この人の言葉が一番われわれの腑に落ちました。「初めて、支配しながら得点を積み重ねるという試合が今日出来た」。しかし「まったく全てが良かったとは思わない」「ただある程度、理想とするゲームに近づいてきたなという気はします」。ただ「まだ成績的には満足していません」「これからさらに良くしていき、少しでも勝点を積み上げられるよう努力したい」。(J’s Goal)

試合後のわが指揮官の言葉。吉田監督と戦うこのリーグ戦。まだ3分の1も終わっていません。

5月3日(金) 2013 J2リーグ戦 第12節
熊本 3 - 2 水戸 (14:03/うまスタ/6,442人)
得点者:43' 堀米勇輝(熊本)、55' 橋本晃司(水戸)、69' 小澤司(水戸)、70' 養父雄仁(熊本)、78' 矢野大輔(熊本)


「育成型移籍」を試験導入=23歳以下の期間を自由化。
日本サッカー協会は、Jリーグなどの若手選手に公式戦の出場機会を増やすことを目的とした「育成型期限付き 移籍制度」を、2013年度に試験的に導入することを決めた。現行のルールでは、選手の移籍は各シーズン中に2 度ある登録期間中に限って認められているが、23歳以下の日本人選手で下位リーグに期限付き移籍する場合に ついては、終盤戦を除いて自由に移ることを認める。これにより、例えばJ1チームで控えの若手選手がシーズ ン中、J2や日本フットボールリーグ、地域リーグのチームに移籍して出場機会を求めることが可能になる。2 013年2月1日時点で満23歳以下の日本国籍を持つ選手が対象で、下部リーグ(J1からJ2、J2からJ FLなど)への期限付き移籍に限られる。また、従来からあるリーグ戦の3分の2を消化した後の移籍はでき ない規定が優先される。14年度以降も制度を続けるか否かは、実績や効果を検証した上で13年10月末までに決 めるとしている。(時事通信社=時事ドットコムから)


この移籍システム、新制度はまるで、われわれの指揮官、吉田監督のためにあるようなものと言ったら失礼になるでしょうか。昨年末の監督就任時のエントリーでも、「出場機会に恵まれない有能なアンダー代表の若手を呼び寄せることもできるのではないか、そんな期待もあります」と書いた。それを後押しするような新制度であり、それを使った今回の新加入。吉田監督のキャリアでこそ獲得できた選手に違いありませんでした。

とは言っても。堀米、橋本。試合勘から遠ざかっているに違いなく、しかもチーム合流後わずか数日の新加入選手を、いきなり先発で使うことは、監督としては相当の決断だったでしょう。この起用、戦術的なものというよりも、とにかく戦力面でギリギリのところまで追いつめられていたということでしょうか。

ベンチメンバーを見れば、前線の控えがいない。実際に、交代カードとして投入したのは、藤本のほかは、坂田、高橋というDF登録の2選手。それを、ある意味で前も後ろもということで、終盤のユーティリーティーのような役割で使っている。もし、この新加入の2選手がいなかったら、どんなスタメンでどんなベンチだったのだろうなどと、無用の想像をしてみましたが…。

吉田監督いわく、「守りは計算できる」選手(熊日)という橋本。90分間の体力には課題があるが、ボールを持てば何かやってくれそうな”天性”を感じさせる堀米。二人とも、遠慮なし。空回りするくらいに動き出す、体をぶつける。それもそのはず、彼らの立場からは出場機会を求めての移籍。それが、いわばJチームの監督としてはギャンブルとも見える采配で実現したこの起用。その期待や責任。懸っているものの大きさを自覚したプレーぶりと見えました。

20130503水戸

前半終了も近づいた43分、バイタルで堀米から仲間、再び堀米という短いパス交換で、水戸の堅いDFラインを切り裂いた。たまらず水戸のDFが堀米を倒す。そのPKを自ら決めてみせました。どこかで見たようなこのシーンと思ったら翌日の熊日に。「C大阪時代の香川と乾の映像を見てペナルティーエリア内で仕掛けるイメージを高めた」という。仲間とのコンビネーション。ますます期待が膨らみます。

それにしても、水戸には鈴木。あれだけケアしていても、やはりやられてしまう。意識しすぎるせいなのか。驚くような個人技でもなく、豪快なシュートでもない。結局、エリア内での決定的なワンタッチ。

課題は、やはりDFラインが下がってしまうこと。あのエリアでゲームをしたら、何がおこっても不思議はない。サッカーをやるにはリスクが高すぎる。そして、プレーの精度、運動量において、相当な水準を示す水戸に対して、この時間帯、一歩づつ出足が遅れ始めていました。

水戸が決めた2つのゴール。見事な精度の高いシュートでした。木山監督時代からすれば、それほどのスピードは感じられなかったものの、しかし水戸はいつでも、毎年いいチームに仕上げてくる。「今節、ベンチに入れる選手を考えるのが大変だった」(スカパー!)と柱谷監督は豪語していました。

今日の勝因は、逆転されたあとすぐ1分後には同点に追いつけたことでしょう。勢いづく水戸のイレブンを、落胆させ、萎えさせるには十分な、養父の豪快なミドルシュート(本人は「DFに当たらないように枠に飛ばすことだけを考えた」というコースを狙ったシュートでした)。値千金。

そして決勝点は、これまた養父のCKから矢野のどんぴしゃヘッド。

チームの不振(戦犯とかいう意味ではなくて)の大きな要因のひとつは、養父のコンディションであり、チームの戦術と養父のプレースタイルの微妙なミスマッチだったと感じていたのは、何度か書いたとおりです。今、一枚前にポジションを移したことで、また、コンディションも見るからによくなってきている(ように見える)ことで、養父という武器も、チーム全体も、活性化してきている。ここでもまた、もし、新加入がなかったら養父のポジションは?などと考えてみたりする。

ただし今度は、ここにきて原田のパフォーマンスが今一つなのが気がかり。

先制して逆転されて、再びひっくり返して…。ハラハラ、ドキドキの試合展開は、ゴールデンウィークの家族連れを含めたたくさんのファンを、大いに楽しませるゲームでした。しかし、「まだまだ安定した戦い方ができていない。やはり、しっかりと安定したゲーム運びをして勝ちきれるようにならないと、なかなか上位にはいけない」と指揮官が言うように、明らかに課題の残った試合。勝利も手放しでは喜べないことを誰もが意識している。それでも、その課題を自覚したうえで勝ち点3を得て、次に向かえるということでは、実にいいゲームだったと言えるのではないでしょうか。

5月のこの連休時期にきて、やっとホーム初勝利。いかに苦しい序盤だったのかと。勝利者インタビューで、「ホームで勝てないなか、熱い応援をしつづけたサポーターに感謝したい」と言ったときの吉田監督は、感極まった様子が見られました。「ブーイングさせても当然なのに」と言う。重責を背負うものの胸の内を垣間見ました。

待ちに待ったホームでの「カモンロッソ!」。溜りに溜まったものが、一気にあふれ出て、スーッと5月の澄んだ青空に立ち上っていくような。ファンと選手とが気持ちをひとつにし、“チーム”になったような錯覚。凹み続けて、エントリーを書くのも、上げるのも、気が重く、何でこんなことやっているんだろう、などと下ばかり向いていました。でもやっぱり、この瞬間、この一瞬は、得難く、何物にも代えられない。また、明日からの御し難い日常に向かおうという糧を与えてくれる。それがホームチーム。さあ、次は中二日、徳島戦です。