7月27日(土) 2013 J2リーグ戦 第26節
熊本 1 - 1 山形 (19:04/うまスタ/5,013人)
得点者:31' 山崎雅人(山形)、58' 仲間隼斗(熊本)


20130727山形

「3バックがこなれていない」。それは前節、栃木の松田監督が熊本を評した言葉。3人のCBだけを指しているのではなく、システム全体に対しての指摘でした。

この試合も、前半どうも両サイドハーフの動きがぎこちない。攻め上がるタイミングも、下がって“スペースを埋める”タイミングも。5バックに近くなると、中央は守りが厚いというより、妙に人が余ったような感じに。変に守りの意識が先行するのか、下がってしまって・・・。試合後、池谷監督代行が「エリアは抑えてるんだけどボールサイドに行けない」と表現したように。中盤のサイドは薄くなって、右往左往するような…。相手との陣形が噛み合わず、何だかふわふわした状態のまま攻め込まれます。

もっとプレッシャーを掛けるように指揮官は指示しますが、それをはがすようにボールをすばやく回す山形のうまさ。完全に主導権を握ります。そして、人数をかけて次々に熊本ゴールを脅かす。風上の優位も生かして、遠目からも打つ。強い。とても13位に低迷しているようなチームには思えない。防戦一方の熊本は、もうゴール前を固めて、体を張るしかない。

それでも凌ぎきったのが前節でしたが、今日は31分、ロメロフランクから出たパスに中島がエリアイン。囲まれてもドリブルで粘ったあげく、マイナスに出したところに、詰めていた山崎が落ち着いてゴールに打ち込みました。

ただ、よく1点で済んだとも言える。おもわず目をつぶった決定機は三度、四度。前半中に、2点目を奪われなかったことで、熊本にとってのこのゲームが壊れなかった、作れたことにつながった。

後半開始から北嶋に代えて仲間を投入。そして4-4-2にスウィッチ。こうも劇的に戦況が変化するというのは、面白いとばかりは言っていられない。最初からこのシステムで入ればどうか、と誰でも思ってしまうほど。今日の山形は、前節の栃木より、ゴール前の精度、技術が高く、前半でゲームが終わっていた可能性もあったわけで。とにかく、目の前にマッチアップする選手をしっかりつかまえることで守備が安定した熊本は、次第にボールポゼッションも高まってきました。

得点はまたも、一発のカウンターから。58分、スローインのボールを齊藤が落とすと、サイドハーフにポジションチェンジしていた黒木が、狙いすましてサイドチェンジ?アーリークロス?ロングパス?とにかく前線の大外に構えていた仲間に送る。仲間がうまくトラップしてDFもGKも切り返しでかわすと、無人のゴールに流し込みます。

前節のファビオ、斉藤と同様に、交代カードの仲間が力を発揮した。「レギュラー」だった選手が、累積でもないのに先発を外れている。そんなちょっとしたチーム内のバランスの揺らぎがもたらす効果かもしれない。あるいはそれはもしかしたら、本当にピッチの外から見ることで、違う戦局が見えてくるのかも知れません。

明らかに選手の疲労による交代で3枚のカードを切っていった山形に比べて、とうとう熊本の交代カードはハーフタイムでの北嶋→仲間の一枚だけでした。相当に疲れは見えましたが、最終盤まで、足は止まっていなかった。どこをいじる必要もなかった。見ているわれわれも、目の前の戦況とベンチメンバー、残り時間を思い比べながら、今のままでフィットしているしなあ…と、交代の必要を感じなかったのは事実。もちろん、これも勝ち点1をベースにした戦局観が基準になっているからこそなのでしょうが。

「残り10分とかで勝負を決めようという考えは無い」と言い切る池谷代行。変に攻撃的選手を入れて、バランスを崩すことを恐れた。その現実感。今はただただ降格圏内を脱することを優先している。思い出すのは、岡山での地域決勝の戦い方、昇格を義務づけられたJFLの頃の戦い方、彼我の力の差を考慮したJ1年目での戦い方。本当にこの人はリアリストであると思わざるを得ません。

終了のホイッスル。疲労で倒れこむ山形の選手たち。熊本も堀米ががっくりしていたのは、「勝てたのでは…」という、精神的なもののように見えました。90分間走り切れるようになった堀米。アディッショナルタイムに敵陣でもらった、2度のFKのチャンスをものにできなかった悔しさもあったのだと思います。

原田が累積のこのゲームでしたが、黒木が復帰して、徐々にコンディションを上げていることも大きなプラス要因。「我慢して守るというよりも自分からアプローチをしかけて奪う、奪って出る、そういう力をすごく持ってる選手」。指揮官も信頼を寄せているのがわかります。

われわれ自身を落ちつかせたいわけではないのですが、とりあえず監督交代から3戦負けてはいない、と言ってみたい気がします。まだまだドキドキの試合運びではあるが、少なくとも打つ手はハマっていると言えないこともない。”ぎこちない”3バックを除けば…。われわれ素人目からすれば、4バックをベースにさらに守備的なオプションを考えたほうが現実的な感じがするのではありますが…。

さあ、8月です。そう言えば堀米と橋本の移籍期限は8月まで…。そこがまたひとつの区切りかもしれません。

7月20日(土) 2013 J2リーグ戦 第25節
栃木 0 - 1 熊本 (18:03/栃木グ/4,676人)
得点者:79' 片山奨典(熊本)


前半戦、水前寺での対戦では1-4で大敗を喫している栃木を相手に、アウェーの地でとにかく勝った。スカパーの画面を通じて、本当に久々に見る「カモン!ロッソ」。画面越しにではありますが、スタンドで飛び跳ねるサポーターのその腕に、声に、確かに力がこもり、思いが溢れそうになっているのがわかります。これだけのアウェーへのサポーターの数。これも難敵・栃木が相手だったからでしょうか。

金曜日朝刊の熊日予想フォーメーション。その分析は詳細でした。前節、岐阜戦途中から3-4-3にしたことを踏まえ、栃木戦はスタートから3バックを予想。18日の練習では両サイドのMFが最終ラインに下がる動きを確認し、池谷監督代行の「守備に戻るときは素早くスペースを埋めることが大事」というコメントを引いていました。しかも橋本が最終ラインに下がり、片山・黒木・原田・藏川というMF陣。何がなんでも守るという決意のようなものさえ感じました。

「守りが乱れてきたら、5-4-1の守備的な位置取りに引くよう指示している」という試合後の池谷代行のコメントもそれを裏付けている。対する栃木・松田監督は「熊本は3バックがこなれておらず、後半は4-4-2も想定したが、徐々に慣れたようだ」とみている。

栃木もここ6試合勝利から遠ざかり、前節の敗戦でプレーオフ圏内の6位の座を福岡に明け渡してしまいました。優勝、昇格を掲げるチームとしては、このホームゲームは下位・熊本を相手で立ち直りのきっかけにする試合だと“計算”しているに違いない。試合序盤から押し込む攻撃的姿勢に、その気持ちが表れていました。

20130720栃木

厳しいプレスに手を焼き、ボールを保持できない熊本。人数を掛けた栃木の猛攻。失点も時間の問題かと思われましたが、跳ね返し、詰めて、最後は身体を投げ出し凌ぎ続けます。杉本の決定機は守護神・南がスーパーセーブ。

ただ、押し込まれてズルズル下がったということではなく。押し込まれたら戦局に応じてのオプションのひとつとして準備していた。-----これは見た目は同じでも、まったくの別物。プランだと思ってやるのと、あわててて対応するのとではまったく違う。

「前半は『耐えよう』という共通理解があった」と吉井が言い、北嶋も「前半は割り切って守る意識を共有できた」と言う。

前節のエントリーでも引用したように、吉田前監督交代のきっかけになった飯田本部長の要望3点。①勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び、②攻撃時のリスク管理など守備の改善、③チーム内の意思統一

今日も、その意識を感じられたし、特に③は完全に一本の筋が通っていた。

0-7の惨敗を喫した北九州戦。われわれは「誰もいない。誰も行かない」と書きました。しかし、今日のこのゲーム、前半は確かに3バックが「こなれていなかった」こともあって攻め込まれましたが、指揮官のプラン通りに決定的なスペースは消されており、決定機にも誰かが行っていてフリーにはさせなかった。

最終的な栃木の精度の低さにも助けられたようにも見えますが、やはり、これは守備時のプレスの速さ、集中の高さとみるほうが正しいでしょう。

それでも、あれだけゴールマウス近くで戦えば、どうしてもファウルが避けられず、セットプレーのリスクは高かった。今日もかなりな数のFKを与えています。そこは不安の種でした。

ハーフタイムの指示で、松田監督は「うまくいっている。このまま我慢強く続けていこう」としました。当然の発言だったでしょう。一方、池谷代行は、「セカンドボールを取れないと試合にならない!」と叱咤した。そのうえで、ハイプレスの栃木も、「必ず緩くなるので後半必ずチャンスが来る」(J's Goal)と読んでいました。

その言葉どおり、後半から熊本はセカンドボールを拾いだし、「サイドチェンジを有効に」使い出し、「相手の背後を取る」。

この試合の決勝点となった得点は、79分。攻撃をフィニッシュできない栃木のボールを、自陣深くで奪ったのはファビオ。藏川に預け、堀米。「完全にコースが見えた」という堀米の右サイド奥へのスルーパスに追いついたファビオは中央齊藤にクロス。齊藤は持ち替えてさらに左、遥か後方から駆け上がってきた片山にパス。片山がダイレクトで左足を一閃。GKがこれをはじいてゴールネットを揺らしました。

堀米がファビオに長いグラウンダーを通した瞬間には、まだ自陣のエリア付近にいた片山。「逆サイドの僕が行くしかない」(熊日)と思ったという。栃木DFを全てに遅れを取らせた鮮やかなカウンター攻撃。守備重視で点を取るにはこうして一人余らせるしかない。そんなシーンでした。

「サッカーは90分。90分の駆け引きで勝てた感覚が自信になる」と、試合後北嶋はtwitterに書きました。ハーフタイムには「『こういう試合をしたたかに勝とう!ワンチャンスで仕留めよう。今日はそういう日だ』とみんなで確認しあった」のだと言います。

こうやってワンチャンスが得点に結びつきましたが、やはり今日のゲームは無失点を評価すべきなのだろうと思います。実に11試合ぶり。ゲームプランは失点しないで、まずスコアレスドローをめざすことだったはず。前半の猛攻に、シュート数ゼロは致し方なかった。そして、主に相手の出方(栃木のペースダウン)に対応して、うまく戦い方を整理できた。まさしく「ワンチャンスで仕留めた」。

「決めるところで決めきれないと何が起こるかわからないですよ」と、スカパーの実況アナウンサーは何度も何度も不安を繰り返しましたが、熊本の”90分の駆け引き”に栃木は膝を着いた。こんなドキドキしびれるような勝利ゲームを見たかった。

試合終了を告げるホイッスル。選手も、スタッフも、ベンチも、ゴール裏も、誰彼かまわず抱き合う。長かった、重苦しかった鬱憤を一気に晴らすように、喜びを爆発させる。涙を流すファンの姿も。

9戦勝ちなし。降格圏に限りなく近づいたチーム存亡の危機。監督交代という初めてで、そしておそらく最後の一手を打った熊本。

直後の岐阜戦に終盤の失点で引き分けた。誰も口にはしないし、言葉にするのが憚られるような。しかし、実はこの試合は、チームの歴史の分水嶺になるようなゲームだった。

勝負の世界とはいうものの、この”賭け”ともいうべき大勝負に出た熊本。そして、多分、この勝負には勝てたのではないか。そうわれわれは思います。

下は向かない、上も見ない。前も気にせずただひたすら、この時を戦う。泥臭く戦う。われわれの今は、まさにそんな感じではないでしょうか。


7月14日(日) 2013 J2リーグ戦 第24節
熊本 1 - 1 岐阜 (19:03/うまスタ/5,603人)
得点者:7' 堀米勇輝(熊本)、87' 森安洋文(岐阜)


サッカーも社会の縮図のようなものかもしれない。

監督を変えるのは、監督を変えたいから変えるわけでもなく、状況全体を変えたいから、もしくは、まったく違う部分も含めて変えたかったわけで。組織のなかで何かを変えるには、メンバーを納得させる理由が必要になる。監督交代というのは、そのもっともわかりすい方法論ということですね。

初めて経験する監督交代劇。まあ、新監督は、決して新しくない監督(笑)という意味ではちょっと違うかもしれませんが。変えるためにやったこと。果たしてどんな変化があったのか。なかったのか。

はっきりと変わったのは先発メンバー。ベンチの顔ぶれ。ケガの黒木、五領が復帰してきたことで、ずいぶんフレッシュになった印象。布陣も、片山が一枚前に出て。そして北嶋が先発に。ボランチは吉井、原田の組み合わせに。

20130714岐阜戦

一列上がったことで、「得点に絡む仕事をしないといけないと思っていた」と言う片山。効果は早速表れました。開始早々の7分、筑城とアイコンタントがあったという片山が、スローインを受けて前を向くと、ゴールラインぎりぎりまで鋭くえぐってマイナスパス。北嶋がニアにDFを引っ張ったところに、中央でフリーの堀米が決めた。渾身の得点といえました。

そしてゲーム中、目に見えた一番の変化は、中盤までの組み立てで、ボールを下げる場面がほぼ無くなったこと。「一度下げたボールは前に入れる(2回続けて下げない)」。新指揮官のそんなシンプルな指示が奏功していました。

そして何より変えたかったのは、「はっきり言って、ぬるい」と指摘されていた守備の対応。

このあたりの経緯は、11日付の熊日、植山記者の解説に詳しい。愛媛戦翌日、飯田強化本部長が吉田前監督に3点の要望を出したのだという。その一つ目は、「勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び」。それはとてもクリアでわかりやすい。

要するに、1点先制したら(状況によっては)ある意味それを守り抜く。あるいは攻撃の突破口が見つからず、スコアレスなら、そのまま引き分けを狙う、というようなことでしょうか。面白味には欠けるかもしれないが、そんなことは言っていられない。チームの置かれた危機的な状況下で、チームとして生き残るために、敢えて出した緊急避難的な方針だったのでしょう。

今日のこのゲームで、ひとつ納得がいくのは、チームの意図したことが伝わってきたこと。それをピッチ上で実践しようとして、ある程度、実現できていたことではないでしょうか。

最終盤の残念な失点も、セットプレーということで、偶然性が高いように見えるのですが、既に足の止まりかけた状態で、いっぱいいっぱいの末で止めた結果がファウルの判定だったと。やろうとしたことの延長線上にあったことは間違いないとも言えます。

岐阜の行徳監督に対する試合後のインタビュー。記者は「前期対戦したときと今日とで、前からの圧力の面などの違いはどう感じていますか?」と、その”変化”について質問している。彼らも変化を知りたかった、確かめたかったのでしょう。

それに対して、「前半の時は非常にハイプレッシャーで、連動してきたと思います。(中略)今日は攻撃的な配置にしていて、前からプレッシャーをかけるというよりも攻撃に関して圧力があるなという印象を受けました」と答えた敵将。微妙な言い回しですが、戦った相手指揮官の正直な表現。受けて、攻める。あるいは、奪いどころは中盤。そのうえで、中盤でボールを下げない方針が徹底していたというわれわれの印象も、その言葉から裏付けられます。

ついでに言えば、先の飯田本部長の要望の残り2つは「攻撃時のリスク管理など守備の改善」、「チーム内の意思統一」でした。今日のゲームはこのあたりに尽きるだろうし、われわれも、このあたりがどれほど意識されて、変わっていたかを見届けようと思って見ていました。

ただ、池谷監督代行が、「1点とったら、前に前に行っていいかもしれなかったが、ちょっと引いてしまい、流れが向こうにいった」とコメントしているように、意思統一というより”試合運び”。そこに関しては、まだまだ自信を無くしている状態から抜け出していないとも感じられます。

開幕戦以来、全試合に先発出場の齊藤をベンチからも外し、しかしチームのサポート役をわざとやらせることによって、何かを感じさせようと試みた。まだ全体合流後、間もない黒木を使ったことは、橋本にも「出て当たり前」ではないことを感じさせたのではないか。そして急造ながらも、試合途中での3-4-3へのシステム変更というオプションを得た。週前半の監督交代劇からわずかな時間のなかで、そんな、ゲーム内外でも出来うる限りのあの手この手で、”変化”を与えようとしているように見えます。

変化は見られた。変化の”兆し”は確かに感じられた。結果は、「良くも悪くもない」(池谷監督代行)ドロー。でも、これがベース。これを基準点にして、まずは降格圏から少しでも浮上すること。決して悪くない。われわれは今、勝ち点23の18位。降格圏との勝ち点差は4。この場所から再スタートです。

2013.07.10 吉田監督退任
7月10日付で吉田監督が退任、代わって14日のホーム岐阜戦から池谷社長が監督代行として暫定的に指揮をとることが発表されました。

シーズン途中での監督交代は、このホームチームを応援するものにとって全く初めての経験。どう受け止めてよいものやら。少なからず混乱しています。

先日の熊日の連載(シーズン前半の総括)で触れられていたように、開幕前の不安材料、開幕当初からの不振…。監督の指導、采配面へ疑問も指摘されており、ちょっとネガティブな意識はありましたが…。

確かに負けが込んではいるけれど、このくらいの状況はこれまでもあったし。われわれファンの側も、今のチームの財政状況で監督を挿げ替えて、いったいどうなるものだろうかという疑問のほうが先に立つわけで。これまであまり現実的な選択肢としてイメージしたことはなく、監督交代論議はあまり盛り上がるものではなかった。今回も、またそうでした。

しかし、正直に言えば、どうにも困ったときは池谷社長がいる、ということが常に頭の片隅にあるのも間違いないところでしたが…。

それにしても突然。

われわれは常々、成績不振に陥ると監督を更迭したがるJリーグ、特にJ1クラブの風潮には懐疑的で、わがチーム作りは長い積み重ねの作業だと思っているのですが。が、しかし、この折り返しを過ぎた時期に降格圏に限りなく近づいているというクラブの危機感は相当なものだったのでしょう。単に、勝った負けたではなく、チームの存廃に直結する。後が無いその危機感。

年代別とはいえ代表監督の経験と、リーグを戦うチームの監督。その差。特に、昨シーズン後に流出した選手に代わる補強ができず、獲得した外国人選手も怪我が長引いた。戦力が整わないなかで強いられた待ったなしのリーグ戦。追い打ちをかけるように続出する故障者。

また、温厚に過ぎるようなその言動。しかし、最近の監督コメントからは、理想とする戦いができないもどかしさ、選手が監督の意図したようになかなか動いてくれない苛立ちのようなものが伝わってくるのを感じていました。ここ数試合の敗戦は、われわれでさえこれだけの後味の悪い敗戦パターンは経験したことがない。単なる1敗ではなく、3つも4つも負けてしまったような重い敗戦。それを、おそらくは一人で背負っていたわけでしょう。そういう意味では監督本人が持ち堪えられなかったのかもしれないなと…。

さて、シーズン途中でバトンタッチする池谷監督。“暫定的に”ということでショートリリーフなのか? あるいは「外部から監督を呼ぶ資金的余裕はない状況にある」(10日付熊日)ということで、今シーズンは池谷体制でいくのか?

徹底したリアリストであり、勝負にこだわる人という印象は強い。そういう意味では前エントリーで書いた「勝ち点を拾うことに集中してはどうだろうか」というわれわれの思いと同じ線上にありはしないかと思うのですが。しかし、チームがうまくいかなくなったときの舵取りに関しては、これまで首を傾げざるを得なかった経験も思い出します。最近は、サッカーというより、経営者、マネージャーとしての資質のほうが優れているとも思ったくらいです。

その点でいえば、もう一方の社長業との兼務はうまくできていくのだろうかという不安も。熊日の連載3回目で、営業収入に関しては目標を達成していっているという今期の状況が紹介されていましたが、まだそれも折り返しの期半ば。チームの成績条件はまだしも、財務状況は未だに降格状態。待ったなしの状況に変わりはありません。

奮起せざるを得ないと思います。選手も、そしてクラブスタッフも。例えば小さなことですが、ホームゲームの際、入場ゲートの先頭に立って来場者に頭を下げていた社長としての池谷氏の仕事は、もう無理なのは間違いない。それに代わる「ホスピタリティ」は、スタッフ全員が全力で示すしかない。

われわれファン、サポーターも同じではないでしょうか。危機感を共有しクラブのこの決断を受けて奮起することで、より後押ししていくしかないと。前を向くしかないと。それが、「どんな時も温かい応援をしていただいたことに感謝しています」という言葉を残して去っていく吉田氏の思いにも応えることになるのではないでしょうか。

7月7日(日) 2013 J2リーグ戦 第23節
熊本 0 - 3 松本 (19:04/うまスタ/4,139人)
得点者:43' ホドリゴカベッサ(松本)、52' 玉林睦実(松本)、80' 塩沢勝吾(松本)


前節の引き分けに関してわれわれは、連敗という「悪い流れを払しょくできたという意味では、重要な勝ち点1だった」と書きました。神戸戦で守備組織を一度整理し、ピッチコンディションの悪い愛媛戦をなんとかドローに収めて、後半戦さあこれから反転攻勢だという思いだったのですが。なんともまぁ、「まさか…」と呟きたくなるような不甲斐ない試合を見せられてしまいました。

朝から時折の激しい雨と、強い日差しが交互に繰り返す不思議な天候。試合開始の頃には、梅雨というよりすっかり夏空。気温は 28.3度と、スタンドには心地よい風が吹いていたものの、ピッチ上の湿度は 82%という蒸し風呂状態だったようです。

ホームとは言え、熊本は勝利から遠ざかっている。前節、水しぶきの試合から中3日の連戦。「大味な試合の後だったので、余韻が残りそうだった」とは、戦前の矢野のコメント。このカテゴリーにしてもなかなか切り替えが難しいというのも意外でしたが、フィジカル、メンタルともに相当に厳しい状況でのゲームというのが客観情勢だったのでしょう。

20130707松本戦

後ろでつなぐ熊本。後ろで徹底してつなぐ。ここで取られないことは分かるが、つなぐことで一杯いっぱいなのもわかる。

「後ろでの回しがうまくいかなくて、どんどん下がっちゃったというのが、攻撃がうまくいかなかった原因。ボランチも下がるし」(J’s Goal)と言うのは吉田監督。しかし当の原田は「暑かったので、相手の前線の選手を走らせようと最終ラインで球を回した」と言う。高橋は「僕らセンターバックがボランチやサイドの選手をもっと上げられるように(ならないと)」と。確かに堀米の位置も低かった。このあたり、監督も含め、チームの意思はどこにあったのでしょう。

「パスコースを制限されてうまく散らせなかった」(吉田監督)のは確かでした。松本の前線の3人が、高い位置からしつこくプレスを掛けてパスコースを限定する。「ボランチの横のところにどういう対応するかというのは、映像を見せながら少し話をした」というのは敵将・反町監督。中盤も含めて熊本対策を練っていました。今シーズンの自らのホーム開幕戦で1-2の敗戦を喫したことへの意趣返し。目に物見せてやるという強烈な意志は半端ではありませんでした。

果たして熊本側(吉田監督)の、松本に対するスカウティングはどうだったのか。

走れるのはわれわれのほうだ、Jリーグのなかで一番きつい練習をしている…。という、勝利したときほど饒舌ないつもの反町節。しかし、単純にスピードやスタミナで熊本が劣っているというのではないような気がします。ただ“走る”ことで90分間を、長いリーグ戦を通していくのは無理だし、無謀だし。

カウンターへの準備は出来ていた。失点の場面も人数は足りていた。一瞬の隙。ノーマーク。数的に有利でなくても、ちょっとした局面を強引に作ってしまう松本のエネルギー。そしてクロスの精度×シュートの精度。

いわば、動き出し負け。飛び出し負け。反町監督の言う“走る”は、決定的な動きのことと理解すべきなのでしょう。試合最終盤になってもその決定的な動きができること。おそらく常々、相手DFの死角になるように動き出し、飛び出していくことを徹底的に練習しているのだろうと思わせます。2点目の玉林の長い距離の駆け上がりなど、その典型ではないでしょうか。「キツかったけれど相手もキツそうだったので、走れば勝てると思っていた」と言う玉林。なんともけれん味のない言葉です。

われわれが、この局面で、この日のゲームについて何かもっともらしく、解説調で語っても、それはみんな百も承知でわかっているわけで。そんなことより、失点の仕方がいつもあっさりで、それがわれわれファンでさえ、がっくりと膝をつかせてしまう。

「人数は足りていた」なかでの今日の失点は、組織的に崩壊した北九州戦の場合と違って、個の責任も大きい。「今日は個人に与えられた仕事ができなかった」と矢野も悔やむ。

リーグ前半戦の総括をする熊日の連載「ロアッソ雌伏」の2回目(7月4日付)は、スカパーでホームゲームの解説する瀧上知巳・東海大九州監督のインタビューでした。チームの戦力面、監督の指導面など適切な指摘が並んでいましたが、特にリーグワーストの38失点を喫したDF陣には「はっきり言って、ぬるい」と手厳しいものでした。

選手の入れ替えを示唆する吉田監督。「(今後は)新しい選手を使っていくのも手。練習でモチベーションの高い選手や闘う姿勢の強い選手を選んでいきたい」と。しかし思うに、モチベーションや闘志だけではやっていけないのもこのレベルではわかっていることだし。何より、それって普段からやっていて当り前。それほどメンバーが固定していたということなのか。

「自信を失っている」状態なのでしょうか。監督も選手も。そしてわれわれファン、サポーターも。

いろんな批判や、タラレバや、ないものねだりが一斉に噴き出してきます。確かにもっともな意見もあるのですが、これまで、選手も、監督も、クラブもそれぞれにベストを尽くしてきている。無い袖は振れないし、今になって分かることだってあるし。一番怖いのは、ベストを尽くせない状況に”陥って”しまうことではないでしょうか。

今節のゲームで、0-3という同じスコアで千葉に敗れたG大阪。日本代表MF遠藤保仁は前半12分、23分、後半13分の失点に「相手に効率よく点を取られたのだと思う。下を向く必要はない」と言い、同じく日本代表DF今野は「効果的に点を決められたとは思うが、でもしっかり崩されての失点だったし、セットプレーから取られたのも問題。その課題は修正しないといけない」と受け止める。置かれた立場は確かに違いますが、非常に冷静なうえに、課題に向かい合おうとしています。

迷走するのが一番怖い。完全に降格圏に入ってしまうと別の話になります。それは、チームの存続に関わることになるから。

とりあえず、勝ち点を拾うことに集中してはどうだろうか。自信を失っている状況では何をやってもうまくいかない。悪循環というマイナスのパワーが働き始める。このマイナスになかなか抗うことは難しい。戦術をシンプルにして、出来ること、出来ないことを選別してはどうだろうか。そういう意味で、負けはしたものの守備を整理して戦った神戸戦をわれわれは一定の評価をしたかったのです。

「われわれはまだ何も手にしていない。何も得ていない」とは、よく言われるサッカーの言い回しですが、今の状況は、それとはまったく逆の心理です。

「われわれはまだ何も失ったわけではない」じゃないか!相手も同じカテゴリーのチームだろ!勇気を持って、最高のプレー、最高のゲームを見せてくれよ!と。

7月3日(水) 2013 J2リーグ戦 第22節
愛媛 1 - 1 熊本 (19:04/ニンスタ/1,104人)
得点者:36' 堀米勇輝(熊本)、82' 黒木恭平(愛媛)


久々の平日開催。仕事をしながらキックオフを待つ時間、現地は大雨だという情報を聞いて思い出したのが、2年前6月にやはり同じニンジニアスタジアムで行われた「なでしこ」対韓国代表の国際親善試合。試合開始前から降り始めた激しい雨のため、ピッチのほとんどに水溜りができ、全くパスがつながらないというコンディションの中でなでしこが先制。しかし韓国に追いつかれてドローとなりましたが、水しぶきを上げて戦うそのすさまじい(サッカーとは思えない)シーンが脳裏に焼き付いていました。

そしてこの試合も、はたして予想にたがわぬ最悪な状況に。DF高橋が試合後「サッカーにならない」と言ったピッチ状態でした。

確かに、当日の豪雨ということではあったでしょうが、ゲーム中の雨足はそれほどでもなく、途中からは雨も上がっているような天候。にもかかわらず、試合終了までピッチ内の水たまりは解消することなく、ボールが完全に止まってしまう状態が続いていた。ピッチそのものの水はけに問題があるのかどうか。

雷が鳴らない限り、雨が降ろうが雪が降ろうが…というのがサッカー。それも醍醐味ではありますが、事はピッチ(管理)の問題。“サッカーにならない”ゲームをファンに見せるのは、プロスポーツ、興行としてはいかがなものかという思いもする。ニンスタは現在、2017年の愛媛国体に向けてバックスタンドの全面座席化の工事中らしいのですが、サッカースタジアムの基準として、ピッチの環境も確認されるべきかなと、ファンのひとりとして思ったところです。

スタジアムへの苦言を長々と述べてしまいましたが、それは本来の“サッカー”が見たかったという一心からです。中3日でミッドウィークのゲームとはいえ後半戦のスタート。熊本にとっては4連敗中の、しかも、いずれの敗戦も心理的に引きずってしまうような後味の良くないものだっただけに、ひと区切りつけてちょっとでもフレッシュな気持ちで臨みたい。リ・スタート。まさにそんな一戦だっただけに。

20130703愛媛

試合開始早々から、自陣深い位置では絶対にボールをつながないという、極端なロングボールに割り切った戦いぶり。それは、この環境下で判断したクレバーな選択。しかし、われわれが期待した本来の熊本のサッカーではありませんでした。とにかく、転がしたところで転がらない。そんなミスが命取りになる。

愛媛・石丸監督は、「アンラッキーな失点と、ラッキーな得点だった」と、この試合をふり返ります。ただそれは、決してミスが得点に影響したということではなく、いずれのゴールも天候、ピッチ状態とは別に、それぞれ得点した(失点した)理由のあるものでした。

熊本の先制は、その前のプレーでの片山の踏ん張りと、とにかくゴール近くにボールを運ぶことに整理していた掘米の放り込み。愛媛のゴールは熊本を押し下げたロングボールへの集中。そして逃げ切りたい一念で生じた熊本の心理的なアンバランス。

久々の先制点で、ゲームを見る気持が明るくなりました。しかし、なかなかバランスのとれた試合運びというのは難しい。勝ちたい気持ちが、露骨に表れます。先制してからは、さらに極端になる。攻めるのはファビオ、齊藤の2人。残りの9人でブロックを作って受ける。

愛媛も、後半はロングボールに割り切って戦術を絞り込みます。終盤、ボールの不規則な運動の“ルール”を掴んできた愛媛が、それをうまく利用して攻め込む場面が目立つようになる。

連敗ということもあって、相当に飛ばしていた熊本は、後半途中からは、完全に足が止まって、走り負けでピンチを招く状態に。吉井、藏川というフレッシュな選手で中盤を活性化しようとしますが、思うように奏功しない。

失点後は、足の速い白谷を裏に走らせようという意図だったのでしょうが…。

それでも、引き分けられて“ラッキー”ということではないか。それがわれわれの落ち着きどころです。自身の得点が決勝点にならなかったものの、その堀米が言うように、「(勝ち点)3が欲しかった。でも、このピッチ状態で、さらにアウェーで引き分けたことをポジティブに捉えたい」(熊日)。

これまでの連敗の流れであれば、多分、最後のCKで逆転を許していたでしょう。われわれは(多くのファンも一緒だろうと思うのですが…)そんなイメージが湧いてくるのを振り払うように心のなかで手を合わせた。そういう悪い流れを払しょくできたという意味では、重要な勝ち点1だったと思います。