「正直なところ来シーズンのことまでは気持ちが及ばない。」そう書いた翌日に、熊日で小野新監督との契約が基本的に合意したとの報道。続いて今日は公式発表。本当に、1年間休みなしのような精力的な池谷氏の行動に、追いつくのが精一杯のわれわれ。そして頭が下がるばかりです。

小野剛氏といえば真っ先に思い浮かぶのが、フランスW杯のときに、岡田監督の参謀としてベンチの隣にいつもいた姿。選手としての実績よりも、学究肌の人。そのスカウティング能力を買われて協会のスタッフになった人。フランスW杯のあとは広島を率い、森崎兄弟や駒野、佐藤寿人を擁してJ1に昇格させた人…。と、まあごくごく通説どおりの印象でしかありませんが。

けれど、どこか遠くの存在だったので、そんな世間の評判、評価を含め総合的に考えたとしても、今はまだ全く”未知数”だとしか言いようがありません。今シーズンの失敗(監督交代劇)の後遺症が、どうしてもわれわれを慎重にさせます。

しかし、少なくともJ2下位に沈むプロビンチャなわがチームにとっては、ちょっと場違いなくらい実績は非常に高いビッグネーム。現状ではベストな、とても“積極的”なカードを引いたと言えるのではないでしょうか。

手元に昔買った一冊の本があります。

小野剛著「サッカースカウティングレポート~超一流のゲーム分析」という、おそらく編集者が題名を決めたのでしょうが、こちらが赤面するような表題の本。そのプロローグで氏は、ここ最近、日本において「スカウティング」の解釈を勘違いしていると危惧して、こう書いています。

「スカウティングは試合に勝つためだけに行うのではない。選手一人ひとりの可能性を伸ばすため、チームを成長させるため、そして、スカウティングによって得られたデータを多くの人々が共有するために行うものなのです。」

最近ふと思い立って、読み返したばっかりだったので、何かの暗示だったのかと不思議な気もしながら。もちろん試合には勝ってもらわなければいけませんが、新監督の指導やその采配ぶりに期待してみたい。そう思えた一文。

小野・新熊本の形を早く見たい。熊本のシーズンは終わったばかりだというのに、これでは嫌でも来シーズンに目を向けなくてはいけませんね。経営者・池谷のセンスも感じさせるスピード、タイミングです。


11月24日(日) 2013 J2リーグ戦 第42節
神戸 3 - 0 熊本 (12:35/ノエスタ/18,756人)
得点者:48' 河本裕之(神戸)、64' 森岡亮太(神戸)、90'+2 吉田孝行(神戸)


かつてないほど苦しんだ今シーズンの締めくくりに、やはり、残念ながら今シーズンを象徴するようなゲームとなってしまいました。

20131124神戸

前半、2度のミスからGK・南と一対一の決定機を作られ…。ここは相手が外してくれたから胸を撫で下ろしたものの、このあたりのDFの対応はお粗末と言うほかないものでした。

しかし、そういうラッキーな流れを掴みきれないまま、後半立ち上がりでの失点。セットプレーとは言え、これまたゲームの要所が締まらない展開。「来るとわかっていた相手に先に跳ばれた。個の力の差」(矢野)と“脱帽”されてしまってはどうしようもない…。重要な時間帯であるという認識は「集中して耐えながら守っていただけに残念」と北嶋を悔しがらせました。

今季最終戦。本当の北嶋のラストゲーム。このゲームへの熊本のモチベーションは、北嶋のゴールだったのでしょうが。もちろんそんな流れになれば言うことはなかったのですが、昇格する神戸を相手に、今の熊本に力でそんなラッキーを期待するのは難しかったのかもしれない。多分、北嶋はそんなことは承知の上で、あの時間帯、必死に守っていたのでしょう。

しかしその北嶋。スタメンで90分間フル出場しました。プレーヤーとしてのラストゲームとなる試合で。守備に追われながら。もちろんFWとして貪欲にゴールを狙い、思い切りのいいミドルも見せてくれた。

90分間、泥臭くピッチを走り回って、そして力尽きて…。この試合でのゴールどころか、今シーズンはノーゴールに終わって…。

試合終了後、繰り返された神戸ゴール裏からの「北嶋!」コールに、こみ上げてくるものを押さえきれずに、目頭を押さえながらピッチを去っていく姿は、美しささえ感じてしまうくらいで…。

同じくこの日がラストゲームとなった神戸の吉田孝行が、後半途中から出場しておあつらえ向きのゴールを決めて。笑顔でファンに手を振るのに対して、あまりにも対照的な。

「試合終了後、泣いてるキタジに話しかける事も直視することすら申し訳なさすぎて出来なかった」「自分達のあまりの弱さに、そしてこういう試合で結果を出すことを出来ない実力をただただ恨むばかりだった」。盟友の南は、試合後そうブログで吐露しました。

けれど北嶋は。
「今日で俺の現役生活が終わりました。公式戦で一点も取れないで終わったシーズンは初めて。今日はサッカーの神様に少しだけ期待したけどあの人はいつも俺に意地悪なんだ。ブレずに最後まで意地悪だったわ。意地悪に負けず乗り越え今まで闘ってきた。けど乗り越えられなかった。引退は必然。悔いないよ。」
そうtwitterでつぶやきました。

ドラマは生まれませんでした。熊本はボールを奪われ続けた。奪ってもまた奪い返され続けた。それはガンバ大阪戦のときと同じように。圧倒的な彼我の力の差を前に、サッカーの神様は微笑むこともしなかった。

「はっきり言って力の差というか、(熊本の)現状がよく見えたゲームだったなと思います」。試合後、池谷監督代行はそう総括しました。「個のスキルアップとか、フィジカルもメンタルも含めて、もう一段上げていかないと、このステージで勝っていくのは難しいなと。現実的に難しいことをこの1年を通して、今日が一番よくわかるゲームだったかなと思います」とも。

最終戦を終えて…。

どうもこれまでのシーズンとは違って、「終わった」という寂しさに加えて、最後の最後まで厳しい現実をつきつけられたという思いもあって、何かこう“放心感”が強い。最終戦は、来シーズンに向けてのスタート。などということも言えるかもしれないのですが、正直なところ来シーズンのことまでは気持ちが及ばない。

しかし、課題などという明らかなものではないけれど、最後にここでガツンときつい一発をくらって、色んなことが、またはっきりしてきた。これからの数カ月間、来シーズンに向けてかなりの動きが必要になるだろう。そんなことを予感させるものだった。

たった1年半の在籍だったけど、北嶋は大きなものを熊本に注入してくれた。
ありがとうキタジ。われわれは、いつか必ず、もっともっと強くなります。


11月17日(日) 2013 J2リーグ戦 第41節
熊本 0 - 1 横浜FC (14:04/うまスタ/12,003人)
得点者:90'+3 小野瀬康介(横浜FC)


北嶋の現役引退・ホーム最終戦は、朝から小雨模様。時折り薄日が射したり、また曇ったり。冷え込んだ一日。そして、ゲーム内容もこの日の天気のように、なかなか定まらないものでした。

試合終了後、スタンドでたそがれていると、大学生のグループからアンケートに協力を求められ、記入していくと「今日の試合に満足しましたか?」という質問項目。さて。どうしたものか。「試合結果」には全く「不満」なのは間違いないけれど…。しかし、「試合」あるいは「試合内容」はと言えば、全然違うものがありました。

20131117横浜

「点をとらせようとする雰囲気がありがたかった」と北嶋。

当然ですが、いつもとは違う、特別なゲームでした。どこからエネルギーが湧いてくるのかとも思えるような、球際の厳しさ、セカンドの奪取…。試合開始早々からチーム全体が燃えているような気迫を感じさせる。横浜FCにシュートさえも打たせない。さらに、運動量は落ちるどころか、ますます迫力を増していく。

ゴール裏も吹っ切れたような、何か祭りのような勢い。皆が笑顔。これもいつもとちょっと違う。今期最高の12,000人が詰めかけたスタジアムは、後半4分、北嶋の交代登場で一気に、一気に熱くなっていきます。

しかし、いつもと違うゲームは「勝利」というところからは、少しずつズレていたのかも知れません。「押し込んでもチャンスになっていない」と南は言う。「皆のゴールへの意識が強くて真ん中真ん中にいってしまった」と言うのは、池谷監督代行。

クロスもパスも、とにかく可能であれば北嶋に合わせる。相手にとっては、ある意味守りやすい。

選手は気合も入り、主導権を握ってはいたが、こと攻撃ということで言えば、いつものゲームらしくはなかったと。

「失点してでも勝ち点3をとるよう指示した」と指揮官は言うものの、実際は全員がリスクマネジメントが出来ていました。自陣で不利な体勢なら、迷わずプレーを切っていたし。シュートも多かったが、中途半端に終わるより、きちんとシュートでゲームを切ってしまおうという意図ではなかったかと。不用意に引っ掛かるのを恐れて、前線にロングボールをあてる場面も多かった。

攻撃のリズムと同様に、吉井の怪我というアクシデントもあってか、ベンチワークもいつもとは違う流れになってしまったような。後半24分にして、3枚目の大迫を切ってしまいます。早くなんとかしたい、といういつもと違うようなベンチの思いも伝わる。

しかし、それがこのゲーム。そんなスタジアム全体の思いを乗せたゲーム。

「Max! Max! キタジMax! 」。この日、北嶋の登場から、いや試合前のアップのときから、ゴール裏から何度も何度も繰り返された北嶋のチャント。それが渦のようにスタジアム中の手拍子と一体となっていく。

試合はついにスコアレスのまま後半のアディッショナルタイムに突入。この日ほど、残り時間が少なく感じたことはありませんでした。いやそれは、このまま終わらないでほしい、北嶋と共に戦う時間が、永遠に終わらないでほしいという切なる気持ちに他なりませんでした。

しかし、結末は残酷にやってきました。横浜の3枚目のカードで入ったパトリックが、熊本DFを背負って落とすと、小野瀬がバイタルから思い切りよく振りぬいた。敗戦を決定づけるゴールが、南の手をかすめてゴールマウスに突き刺さりました。

試合終了の笛。がっくりと膝をつく熊本の選手たち。引退試合を勝利で飾れなかった悔しさがあふれるのか…。

思うようにいかないのが人生。思うようにはいかないのがサッカーではあるものの…。こんな結果とは思いもしなかった。

しかし、試合を終えた横浜FCの選手たちは次々と北嶋に歩み寄り、握手を求め、抱き合い、その健闘を讃えている。改めて“それほどの選手”が熊本に在籍していたのだということを実感させます。そしてここ熊本でユニフォームを脱ぐということも…。

試合後の「ありがとうセレモニー」で挨拶する北嶋の背後には、松葉づえをついて立つ吉井の姿がありました。北嶋も挨拶のなかで、吉井のケガについて「ピッチに戻ってプレーできるようなケガではなかったのに、それでもプレーを続けようとしてくれた」と。

われわれの目から見ても、明らかに尋常ではない倒れ込み方でした。しかし、チームスタッフにバツを出させないような勢いで戻っていく吉井。北嶋の出番も来ないうちに、こんな時間帯でピッチを去るわけにはいかない。北嶋と同じピッチで少しでも長い時間を闘いたい。そんな気持ちが伝わってきました。

誰よりも悔しく、泣き顔なのは吉井だったのでは…。特別に重要な試合。そのゲームプランが自らの負傷交代によって大きく狂ってしまった。少なくとも、何もなければ吉井に交代カードというような想定はなかっただろうに。

北嶋のために編集されたビデオを見てウルッときて、両親からの花束贈呈にもらい泣きして…。去年の福岡戦で決めた北嶋を後ろから抱きつきに行った姿が、オーロラビジョンに流しだされると、当の藤本主税もこらえきれず目頭を押さえていた。スタンドの前も後ろも、右からも左からもすすり泣きが聞こえてきて。

試合結果だけがサッカーじゃない、よね。

北嶋の「やりますか!」の声で、カモンロッソが始まる頃には、これまた記憶に残りそうな痛い痛い敗戦を通り越して、北嶋という稀有のプレーヤーの引退を惜しみ、その健闘を称え、サッカーを、この時間、この空気を共有できる喜びに心底浸っているようなスタジアム。

いつまでも、いつまでも名残惜しそうにファンに手を振る北嶋秀朗。

われわれに、そして彼に残された試合は、あと一試合。相手は昇格の決まった神戸。この苦しかったシーズンの思いも乗せて、最後まで後押しします。


11月10日(日) 2013 J2リーグ戦 第40節
熊本 1 - 1 福岡 (19:04/うまスタ/6,561人)
得点者:58' 坂田大輔(福岡)、90'+3 養父雄仁(熊本)


アディッショナルタイムも残りわずか。このままセットプレー一発で沈んでしまうのは、どうにも納得いかないゲームだなあ…、しかしある意味今季の熊本を象徴する試合かもしれない。などと思いつつ、そんなふうなブログの書き出しを想像しながら、息を詰めてゲームを見ていたところに、いきなり綺麗に決まった同点弾。11月のナイトゲームで冷え込んだせいもあるでしょうが、喜びに飛び上がった瞬間、年寄りの足は攣りそうになりました(笑)。

20131110福岡

(得点がなかったことを除けば…)前半はほぼ完全にゲームを支配した熊本。福岡にはシュートチャンスすら与えず、決定機はほぼ封じた形。熊本のシュート数8に対して、福岡が2という数字が物語るように、ゴール前に迫る勢いはまさっていた。

ただ、フィニッシュの「精度」と言ってしまえばそれまでなので、われわれはあまり使いたくないのですが、要は完全には崩し切れていないし、こちらのシュートも相手GKの動きと噛み合ってしまったという感じ。

前半終了間際のセットプレー。南のセーブで難を逃れましたが、こんなゲームでは、実によくありがちなパターンを見せられて、何となく後半に尾を引く、後味の悪さが残りました。

今日の福岡のFK。ゴールから35度くらいの角度。ペナルティーエリアのやや外側から。同じようなFKの場面が何度も繰り返され…いずれもヒヤリとさせられる。

福岡の入り方がうまいのか、守備側に問題があるのか。何よりキックの狙い、球スジ、スピード、実に嫌なボールが入って来ていた。遂に、後半13分。今日、何度も練習されたパターンで、ズドンと。一番警戒すべき相手・坂田に決められてしまいました。

ベンチはすぐに動き、ウーゴ、仲間と北嶋、齊藤の2枚替え。直後に、右サイドを破ったファビオからのグラウンダーぎみのクロス。得意のニアに北嶋が飛び込むもボールはGK神山の手中。誰よりもこの男に点を取らせたいのだが。

さらにはファビオから大迫へ交代。ある程度バランスが崩れるのも覚悟して攻める熊本。83分にも波状攻撃。

取りにいってボールも取れる。ゴール前まで何度も攻め込むが、もどかしい。そんな展開が延々と続き、駐車場からの脱出を気にする周りの客が何人か席を立ち始めた頃…。

養父からのロングボール。敵DFのクリアが小さいのを拾った大迫が右サイドを走って低いクロスを入れた。ニアに入った北嶋に詰めるGK。齊藤をケアするDF。ボールはその二人をスルーしていく。そこに走りこんだ養父が左足で押し込む。第1クールでの対戦と同じ。後半アディッショナルタイムで、なんとか引き分けに持ち込む結果になりました。

「悔しい思いをしてきた。だからひとつひとつのプレーに後悔がないよう、準備から全力でやっている」。試合後、養父はそう答えました。“準備から全力でやっている…”と。うっかり聞き流してしまいそうですが、なかなか言える言葉ではないなと。

正直、後半の養父の守りには疲れが見えていました。これまでだったら誰かに代えられていた。そこで指揮官は、4-4-2の中盤をダイヤモンドにして、養父を一列上げて守備を軽減させた。養父の技量と、高い“モチベーション”を、誰よりも承知していた。その彼が土壇場の決定機の大外から走りこんでいました。

経営危機にある福岡。しかし、逆にチームはというと、今までないような「福岡」でした。チームカラーまでが変わってしまったような。決して悪い意味ではなく、むしろフレッシュな、イキイキした感じに。19歳の二人の若手選手の躍動が、そう思わせたのかもしれません。

さて、残り2試合。次節はホーム最終戦。そして、それはただの最終戦ではなく、引退する北嶋のホーム最終戦。

池谷代行監督が あえて試合後のインタビューで名前を挙げて、「次節は北嶋の最後のホーム戦。勝ち点3をとって花を添えたい」と言った。

元日本代表。熊本に来てくれた。その選手が熊本でユニフォームを脱ぐ。

北嶋の最後の雄姿を確かめる。この試合はそれ以外にはない。きっと特別なものになるだろう。そう思います。


2013.11.04 G大阪に完敗
11月3日(日) 2013 J2リーグ戦 第39節
G大阪 4 - 0 熊本 (13:05/万博/11,402人)
得点者:8' 遠藤保仁(G大阪)、11' 丹羽大輝(G大阪)、41' 宇佐美貴史(G大阪)、86' 佐藤晃大(G大阪)

何かこう、例えて言えば代表チームの壮行試合のような。決して代表選手にケガをさせてはいけない。行くのは行くが、激しくはいかない、といったような・・・。そして、結果はまさにこの日の夜に行われた神戸対京都の試合結果で、J1復帰を決めたガンバ大阪の、文字通り壮行試合になってしまったと言えるでしょう。

翌日の熊日は「弱気ロアッソ」「強豪ガンバに気後れプレー」と散々な見出し。南のブログでも「完全にガンバという名前に対してビビっている選手が何人かいた」と手厳しい。

闘う以前の、ゲームに入る部分でサッカーになっていなかったのか。それとも、いざゲームが始まってみて、手合わせをした瞬間に「萎えて」しまったのか。テレビの画面越しで見ていたわれわれは、どちらかというと後者のような印象を持っています。

確かに、第一クール、ホームでの大阪戦では、前半2点のビハインドを背負いながら、後半追いついての引き分けに「勝ちきれなかった」と選手たちは口々に悔しがりました。しかし、今日の大阪は、このときの大阪とは別物だった。別物に変わっていた、いや、別物に成長していたと言うべきでしょうか。

20131103G大阪

前線には前節4得点の宇佐美。さらに前回対戦では代表招集で不在だった遠藤がFW登録で、ほぼトップ下に。同じく今野は一枚あがってボランチに。倉田はMF位置する布陣。実に攻撃的なシステム。しかし、守備をしない選手は使わないという長谷川監督の方針が徹底して、とにかく厳しく寄せてくる。サイドに追い込まれて3人、4人で囲まれ奪われる熊本。

まるで、14人くらいでやっているように錯覚してしまうガンバ大阪。多分、これだけのパフォーマンスはそうそう見られるものではないのではないかと思うぐらい。

先制のされかたが無残でした。宇佐美の身体の強さにサイドで粘られ、二川にダイレクトでクロスを入れられると、中盤の底まで下がっていたはずの遠藤にスルスルっとエリア内の侵入を許していた。全くノーマーク。そして、立て直す間もなく、たて続けにCKから押し込まれ追加点。

スコアレスの時間をできるだけ長く保って相手を焦らせ、結果的にワンチャンスをものにしようという、格上を相手にした戦略からすれば、早々の2点のビハインドは重い。それは前回対戦と同じとはいえ、今日の大阪の”まとまり”は、熊本の選手を完全に凌駕していました。

前線からの守備がはまらないために、ボランチのところでも止められず、ダイレクトのパス回しで次々に飛び出してくるガンバの選手たちを、4バックでスペースを消していてもマークしきれない。結果的に南の好セーブだけが目立つ、彼いわく「地獄のような90分間」。サンドバック状態とでも言うような。

個人の技術の差は確かにあるとはいうものの、今日感じたのはやはり”ボールを奪う”ことへの執着心、その組織力の差でした。ガンバ大阪の選手たちは、まるで意地悪っ子が、「これは俺たちのボールだよ」といわんばかりに奪いに来て、それを保持する。一方、熊本は奪えない。高木監督時代から言われてきた、奪ってからのパスが相変わらず繋がらない。

試合後、アウェーの白いユニが汚れていた選手が、果たして何人いたでしょうか。それがこの試合を物語っているようで。

しかしながら、この日の他チームの試合結果で、降格が完全になくなったことはわれわれにとって何よりのニュースでした。シーズン途中での監督交代というかつてない事態から、降格圏での必死の戦いがあってのこの結果。やはり、8月の第29節からの4連敗。いよいよ残りゲーム数と対戦相手も見据えた、なりふり構わぬ戦い。そこに9月8日の天皇杯・徳島戦の勝利。ここから前節・長崎戦までの6試合で実に勝ち点13を積み上げた。

今日の敗戦は厳しくもあり、ショックでもあります。しかし、また大きな課題を与えられたという意味では、降格争いに意識を集中していたわれわれも、もう一度、視野を取り直して、再スタートするきっかけになるゲーム、ということかもしれない。

そういう意味では池谷代行の「今期の結果を受け止め、もっと戦力を整えなくてはいけない。次の試合からはしっかり選手を見定めたい」(熊日)というコメントが、今日のこのゲームの総括であり、下を向いていた目を上げて、また前を向いて行かねばと思わせます。

今度は、プロの常であり、毎年のことではありますが、選手たちの生き残りをかけた厳しい戦いが始まります。