2013.12.29 年末ご挨拶
ようやく年の瀬らしい寒波のおとずれ。何とかこのエントリーを書くところまでこぎつけたなと、正直ホッとしています。今年も拙ブログを読んでいただき、ありがとうございました。毎回いただく「拍手」を心の拠り所にして、青色吐息で更新してまいりました。

さて、年をまたぎストーブリーグ真っ只中。来る人もあれば、去る人もあり。北嶋のこと、筑城のこと、移籍する南のこと。触れなければいけない人も多いなかで、今年の最後にどうしても書いておかなければいけないのは彼のことではないでしょうか。そう、福王忠世選手です。

言うまでもなくロッソ熊本のチーム創立、九州リーグから戦ってきたメンバー。以来9年間、共に戦ってきた仲間。色々な思いと思い出。しかしながら、とても伝えきれる自信がないので、忘れられない出来事として、そのときのエントリーを二つ抜粋してみます。少々長いのですがお付き合いください。

2008.04.17 スカウティング。セレッソ大阪
あれは2005年4月。忘れもしない”ロッソ”熊本としてのデビュー戦。宮崎県運動公園サッカー場で行われた九州リーグ開幕戦。シャワールームはもちろん、ロッカールームもない、地域リーグとしてはごく普通の会場風景。選手も一般客も何の隔たりもないコンクリ造りのスタンドに、選手たちが気の向くままに置いた各々のスポーツバッグ。一瞬、福王のそれに付いているキーホルダーに目がいきました。ピンクとブルーの縦縞のユニフォーム型キーホルダー。おそらくC大阪時代の自身の背番号の入ったチームグッズだったのでしょう。
ユース時代は日本代表でも活躍した逸材。しかし、トップチーム昇格後は出場機会に恵まれず解雇されロッソのセレクションに参加。並み居る元Jリーガーのなかでも飛び抜けた才能だということは、誰の目にも明らかだったのですが、チームへの帯同はかなり遅れました。おそらくそれまでの経歴から考えれば、そのほかにも選択肢があったのだろうし、見ず知らずの遠い九州の地に赴くことへの不安や葛藤もあったのでしょう。
ご存知のように、その後の彼は熊本の不動のCBとして大活躍。初年度は九州リーグ最優秀選手賞に輝きます。そして今や欠くことのできない熊本の柱になりました。
セレッソ大阪。この対戦を一番心待ちにしていたのは、この男なのではないでしょうか。
能楽ワキ方福王流宗家の三男に生まれ、セレッソサポーターから今も「ぼっちゃん」の愛称で親しまれている福王。ジュニアユースから自分を育ててくれた古巣相手に、名残の桜の季節に故郷のハレの舞台で、彼がどんなプレーを演じるのか、福王ファンのわれわれとしては、ぜひこの目に焼き付けておきたいものです。


2009.07.12 一丸の勝利。札幌戦
福王が何やらつぶやきながら「バッさん」と呼びかけ、思いっ切りその背中を叩き、引き起こしてしっかりと抱きしめる。ユニフォームで涙を拭いているようにも見える河端。後半にもオウンゴールになりそうなボールを、木下の素晴らしい反応が助けてくれた。肝を冷やしたはずです。快心の笑顔でゴール裏に向かうのは市村。
福王、河端、市村。思えばこの3人は、今や数少ない“ロッソ”生え抜きの選手。あの寒い冬の日、KKウィングで行われた初めてのセレクションに参加していた。前のチームの練習着そのままの姿で。そして九州リーグを知っている仲間。あの過酷な地域決勝も共に戦った戦友。JFLの2年間も共にあった…。河端と福王は足にメスを入れ、その後の長いリハビリ生活も乗り越えた。そんな想いがブラウン管越しにも伝わってきて、こちらの胸も熱くなってしまいます。



ありがとう福王忠世。去る者は日々に疎し、などという言葉はあるけれど、われわれは君のことを忘れないぞ。君の活躍はチームの歴史に、そしてわれわれの心に深く深く刻み込まれている。これからは敵味方に分かれるかもしれないが、またいつか正々堂々、闘える日を夢に見ている。

では皆様、よいお年を。

ストーブリーグの人事情報に一喜一憂し、思いは来季に飛んでしまって…、それは辛かった2013年シーズンのことから目を背けたいからに他ならず。しかし、辛くてもやはりこのブログの恒例として、今シーズンのことを記録として振り返っておかなければいけませんね。

毎年キーワードとして使ってきたのは、「今季積み上げたものは何か」ということだったのですが、今シーズンあえて言うなら「降格の危機を経験したこと」になるのでしょうか。これが、来季からの熊本にとって前向きの経験値になれば、決してこの1年も無駄ではなかったといえるのですが。いや、無理やり言っているのではありません。ポジティブにそう思いたいということです。

思えば、3年間の高木体制を終え、全く新しい監督を迎えた今シーズンの開幕前。その期待は高かった。チームの雰囲気がいい。戦術が継承されている。テストマッチの内容もいい。例年よりケガ人がいない…。今思えば、あまりにも根拠が薄いものだったにもかかわらず、「去年の同じ時期に比べて、今のチーム状態はかなり良い」という藤本主税のブログの言葉を頼りに、勝手に妄想だけを膨らませていたのかもしれません。

開幕ホームで鳥取に逆転負けを喫すると、続く千葉には力負けで連敗。松本戦で強風を味方につけてようやく初白星を飾ったものの、その後は引き分けが続き、どうも強さに確信が持てない日々が続きました。

長崎に無様な負けを喫するとその後は敗戦続き。ようやく、相性のいい札幌戦から続くゴールデンウィークの連戦で気を吐いた。5月6日、0-3で圧倒したアウェイ徳島戦は、今シーズンのベストゲームと呼べるかもしれません。

しかし、その後も不安定な戦いが続く。徐々に、徐々に増えていった故障者の数が、それに拍車を掛けました。

リーグ戦を戦うクラブを初めて指揮する吉田監督としては、ここが正念場でした。自分の戦術に当てはまる選手を、いわば無尽蔵に選んでこられる年代別代表の指導者と違って、限られた選手層のなかで必要になる現実的な戦い方。敗戦のあとも1週間後にはまた試合がやってくる課題修正の切迫感。

あの北九州での大敗。止まらない失点と、迫り来る降格圏。そして遂に、大雨のコンディションのなかでの愛媛の引き分け劇(引き分けを良しとせず、攻撃的に向かったこと)が決定打となって、クラブは吉田監督に退任を促しました。

監督交代という大きな勝負に出たこと。熊本にとっては初めての経験、そして賭けでした。その大役を任せられるのは、このクラブの立ち上げから関わる池谷社長の他にはありませんでした。

その賭けに勝った。

このクラブを九州リーグからJFL、そしてJ2へと導いた池谷監督代行は、とにかくまず引き分け勝ち点1をベースに、そのうえで勝ち点3を目指すという現実的な目標を立て、降格圏からの脱出、順位浮上を目指しました。

就任後の第2戦の栃木戦で勝ち点3を奪ったものの、8月18日に群馬に敗れるまで、実に4試合が引き分け。勝ち点1を粘り強く積み重ねていきます。

ただ、それでもまったく気を緩められない戦いが続く。下位チームの試合結果が気になる。なんとか降格圏を逃れられそうだと思えるようになったのは、10月、札幌、富山に連勝したあたりだったでしょうか。いや極度の心配性のわれわれですから、もっとそのあとだったかもしれません。

その間、吉田前監督がそのキャリアを活かして新制度で呼んできた堀米、橋本が重要な駒となり、またしかし二人とも故障を経験した。池谷監督代行就任後の第1戦となった岐阜戦で得点できなかったことが、北嶋に引退を決意させることになった。

最後の最後まで、先制されると下を向いてしまったり、プレスが強いと恐れてしまうメンタルの弱さは克服できず、歯止めのきかない大量失点の癖も直りませんでした。

武富、廣井が去り、その穴を埋めることができなかったこと。期限付き移籍選手に依存するチーム構成。それは、クラブの財政の問題もあるし、さらに言えば、前回のエントリーでも触れたように、ファン獲得のために有名選手の獲得にこだわりすぎた。長期的なチーム作りにつながらなかった、つながっていない現状を示された年でした。

ただ、クラブの歴史でワースト記録となるリーグ19位という、今季これほどの結果であっても(またさしたる無料動員試合があったわけでもないのに)、観客動員数は昨年を上回り、確実にファンが拡大していることも明らかになりました。勝っても負けてもホームチームの試合を観にいく文化が定着してきた。

齊藤や、仲間といったチーム生え抜きの若手たちが活躍を見せたのも明るい兆しといえます。

そしてこのオフシーズンでは、J2の他のチームから完全移籍で即戦力と思える的確な補強が行われているように見える。新たな方向に舵を切ったように思えます。

経験値は決して無駄になっていない。その差は目に見えるほど大きくはないのかも知れませんが、やはりクラブとして積みあがっているんだと思える。今後もそれを見ていきたいと思います。

2013.12.09 昇格劇に思う
J1リーグは広島が逆転優勝。J2プレーオフは徳島の勝利。そして入れ替え戦はJFL2位の讃岐が鳥取を下し、J2昇格を決め…。たくさんのドラマが生まれ、この週末、Jリーグの全日程が終了しました。

感慨深かったのは徳島のJ1昇格。われわれの“青の時代”、JFLでは古豪・大塚製薬として、どうしても超えられない壁のような強さを誇っていました。J2で再びあいまみえても、どうも苦手意識が先立ち、一昨年でしたか、もう徳島は早くJ1に上がってほしいなどと書いたような記憶があります。

ようやく掴み取ったJ1の座。ただ徳島にも紆余曲折がありました。2006年から08年までは、3年連続で最下位に沈んだ(この最後の08年にわが熊本はJリーグに昇格しているわけですが)。その責任をとる形で熊本出身の高本浩司社長が退任されたことは当時のエントリーでも書いています。家族で外食していても、心無いファンから「金返せ」と揶揄されるなどの苦労があったと聞きます。

ところがその間、徳島は着実に環境整備に手をつけていたのでした。天然芝2面、人工芝1面を誇る練習グラウンドを建設。レンタル移籍中の大崎が「広島よりいい」と驚く程の設備を持つクラブハウスも完成。そういった環境が整うと09年からは資金を戦力強化に集中します。「練習環境の良さが評価され、いい選手が徳島に来てくれるようになった」。現在の新田社長がそう明言するように、それから着々と力を蓄えてきたのが徳島でした。(@j_leaksジェイリークス 選手・監督コメントから)

この昇格を、一番喜んでいるのは高本元社長かも知れない。

先日、熊日で連載された今シーズンを総括する「崩れた方程式」というシリーズの冒頭。池谷社長の言葉を借りる形でこう書かれていました。

「勝利を追い求め、選手強化に資金をつぎ込み続けたことが、約7千万円の債務超過を生みだした」。「結果論だが、どんなに弱くても下部リーグへの降格がなかった11年までの4年間に、クラブとしての“体力”をつけるべきだった」と。

どうしても対比してしまいそうになるのですが、やはり結果論。今更悔やんでも詮無いこと。ただ記事では、「今季はチームが低迷したにもかかわらず、入場料収入は過去最高。池谷は『県民への認知度はかなり高まった。これをバックボーンにどうクラブづくりを進めるか。次の段階に入った』と、視線を前に向けています。

さて、J2の入れ替え戦は“最初で最後”になるそうですが、讃岐が第2戦を勝利して栄冠を手にしました。北野監督、上村コーチをはじめ、木島、高橋、山本、岡村といった、熊本に縁のあった選手たちも多いとあって、熊本ファンは讃岐贔屓が大勢を占めていたようですが、われわれはこれも“青の時代”に一緒にJFLに上がった鳥取にもシンパシーを置いてみていました。一歩間違えればわが身だったという点も、J2側を応援したい気にさせていたのかもしれません。

しかし、ちょっと酷な言い方かもしれませんが、試合をみれば鳥取がこのままJ2に残るには値しなかったのではないか。讃岐の勝負強さが光りました。

来シーズンの讃岐の構成がどうなるのかは不透明ですが、昇格させた北野監督の続投はまず間違いないことでしょう。おそらく木島もしかり。北野・讃岐は、熊本戦を心待ちにしているでしょう。迎え撃つ熊本は、一日の長をしっかり示したいものです。長崎にできなかったことだから今度こそ。