4月29日(火) 2014 J2リーグ戦 第10節
水戸 0 - 0 熊本 (17:03/Ksスタ/3,431人)


中二日の連戦のアウェー。熊本は今日も前節からスタメンを3人入れ替えて臨んできました。中山、吉井を先発に、そして何よりこれまで全試合先発の片山は熊本に残したまま。

ある意味、メンバーは固定していないという監督の明確なメッセージ。前節の「今は誰が出ても、変わらずにロアッソのサッカーを貫いてやってくれる」という言葉通り、チーム内の競争を煽るという意味だけではなく。間口の広い、さらに前を向いた選手起用。それに選手がどう感じ、どうプレーするかというところに注目させられます。

20140429水戸

ゲームの流れは、小野監督のコメントをたどれば明らかで…。

「鈴木隆行選手はポジション取りや体の使い方などレベルの高い選手だった。」
「ちょっとラインを下げられたところがありました。」
「中途半端になってラインが下がるとボールの出所にプレッシャーがかからない。隙間を突かれる」

序盤こそ熊本のハイプレッシャーが効いて主導権を握っていたのですが、徐々に、水戸のダイレクトのつなぎでプレスが剥がされはじめ、流れは完全に相手のペースに。

そこでハーフタイムに「声を掛け合ってチームの意志が規則になるように」という指示が出される。そこだけ聞いても、われわれ素人には意味不明なんですが…。

「DFの背後にとっているポジションに対して怖がらずに押し上げよう」
「押し上げたら背後のスペースに恐怖感が出るので、GKが埋めること」
「コンパクトにしたら前線のプレッシャーがかかると」
…という流れを“スパイラル”ということばを使って
「そっちのスパイラルに持っていければ」
「ほんの数mのところでどちらのスパイラルになるかというところだったと思うので、そこを修正しました」  ということらしい。

もちろん、ハーフタイムでこのような修正ができたことは手応えだし、GKにもフィールドプレーヤー並に、“埋めろ”という指示があったこともちょっとした驚きですが。しかし、それを可能にしたそのベースは、うまくいかなかったその前半でも、剥がされても剥がされても、諦めることなく狙い続けていたことではないかと。そこが、磐田戦や千葉戦とは違った点ではなかったでしょうか。

そして、「熊本のプレスの勢いが落ちなかったように見えましたが」と問われた敵将・柱谷哲二監督に、「監督が代わって、とてもハードワークするチームになったと感じました」といわしめた所以でした。

もうひとつ。この3試合連続での大きな課題であった終盤での失点。この試合でも、やはり最後の最後は一方的に打たれ続ける展開になりましたが、全員が体を張ってなんとか凌ぎ切り、そしてかち得た完封のうえの引き分け。またひとつ手ごたえを得ました。

さて、今日の試合後の小野監督の会見コメント。いつにも増して味わい深いものがありました。10試合を終えての評価を問われていわく、「欲を言えば、すべて絶対に勝ちたい。そういう意味では引き分けは悔しい。負けは受け入れがたい。それは自分の中にあります」と。

まあ当然と言えば当然の言葉かもしれませんが、「負けは受け入れがたい」ときっぱりと言ってくれて、改めてわれわれも晴れやかに納得した部分があります。

さあ、次は中三日のホーム。札幌、山形を二試合連続で完封勝利した岡山を迎えます。スタメンはどう動いてくるのか…、ベンチは…。この微妙なメンバーの出し入れが、だんだんと戦術味を帯びてきているようで。熊日のスタメン予想も合わせて深読みしながら楽しみたいと思います。

4月26日(土) 2014 J2リーグ戦 第9節
熊本 1 - 1 長崎 (17:04/うまスタ/7,355人)
得点者:35' 澤田崇(熊本)、90'+1 古部健太(長崎)


多分、あと2分も凌げば…というアディショナルタイムでの失点。スタジアム全体に悲鳴のような、ため息のような、何とも言えないガックリ感が。“この一戦”とかなり気を張っていたわれわれは、もうヒザが折れ、腰が立たないような状態。

それでも、試合後のインタビューで小野監督のコメントはポジティブでした。「勝点3は取れなかったんですが、シーズンの中では大きな財産になったんじゃないかなと思います」と。

われわれもなんとか気を取り直し、そして思いました。確かに、実に凄いゲームだったなと。当たり前のように走り続ける両チーム。見た目の運動量もスピードも、そして精度も落ちていない。ベストゲーム候補に挙げるべきものかもしれない。

20140426長崎

勝った試合の後は、メンバーをいじらない。それがこの世界のセオリーのように言われていますが。長崎とのこの試合、小野監督は、GKにわずか一か月の期限付きで熊本にきたばかりのシュミット・ダニエルをいきなり起用。そして篠原、原田、ファビオと、前節からスタメン4人を入れ替えてきた。高木監督が「…驚きは全くないんですが、僕の中では『なぜ?』というクエスチョンがあって…」と語った、このゲームのひとつのポイントでした。

これについて小野監督は、「ここから2週間で5試合、そこをチーム全体で戦わなければならないということ」を理由のひとつに挙げます。しかし、GWの連戦に対するターンオーバーというのはわかるにしても、それは、連戦を戦いながら、選手のコンディションを見極めていってからでもいいんじゃないか? めったにお目にかかれない4連勝を狙う試合、長崎とのこの一戦でなくても? と、戦前われわれに思わせました。

しかし、これもまたスカウティングを得意とする高木監督を意識した部分が少なからずあったのではないかと。「今は誰が出ても、変わらずにロアッソのサッカーを貫いてやってくれる」「メンバーを変えてやっていっても行けるかなという手応えを私が感じた」ということは確かに結果としてもあるのですが、それ以前に、高木監督の裏を、裏の裏を狙ったのではないかと邪推してしまいます。

ただ、われわれはかなり強く意識していた“長崎とのこの一戦”という特別な心理。そして、もしチーム、選手たちにもこの特別な意識があるとすれば、それは試合の変数として意外に大きな要素になってしまう。しかし、少なくとも我が小野監督には、微塵もそんな意識はないということだけはわかる。

肝心のゲームはといえば、前節・山形戦でも感じたように、試合開始から序盤、時に応じて、明らかに意識的に“多めに”相手DF裏に打ち込んでいきます。長崎の術中にはまるリスクを減らすために、また、長崎にリズムを作らせないように。敢えて、空中戦を大目に演出していく。

そんな戦術的な要請からのファビオの起用だった、みたいなことも理由としてはあるのでしょう。けれど、どうもそんなことより、何かもっと違う思考が働いているのではないか。そんな気がしてなりません。時間軸の取り方が違うような。

とにかくこのゲームで4連勝を狙っていく。GWを見通して選手起用を考える。当然、それもないはずではなかったでしょう。しかし、これらが一手先、二手先とすれば、「メンバーを変えてやっていっても行けるかなという手応えを私が感じた」というコメントには、さらに十手先、二十手先を見据えるために必要なことだと言っているように思われるのです。それが、アディッショナルタイムで同点に追いつかれて、悔しくはないはずなのに、冒頭のコメントになったのかと。

長崎というチーム。中盤で引っかけられて奪われると、2枚、3枚とダイレクトで連動して、あっという間にゴールまで運ばれてしまう。縦にも横にも素晴らしく速い。しかも目の前で見たように、その2枚、3枚の連動の精度が非常に高い。2試合続けて、終了間際に追いつく持久力。走力。こんなサッカーがやりたかったんだろう高木監督の理想のもとに、メンタル面も含めてかなり完成度の高い印象がします。

ただ、対照的だと思ったのはハーフタイムでのコメント。「同じミスを繰り返さないこと」というのを見ると、いかにも高木氏らしい気がしてなりません。叱咤激励という言葉からすると、高木監督が使う手法は「叱咤」。

一方同じ“ミス”という件に関しても、千葉戦で、「できることを1つのミスで捨ててはいけない 」と言った小野監督は、常に「激励」。選手のプレーを否定することなく、よりよい方向にアドバイスするというのが信条。この日発した言葉も、「全員でハードワークのたすきをつなげよう。」「魂でプレーするぞ!」などという、気持ちが溢れ出るようなものでした。


さて、先週来、アスリートクラブの株主総会後のリリースで、チームの財政状況と7000万円の増資、およびロアッソ熊本存続支援募金の実施が伝えられています。この件に関するサポーターミーティングも行われたようです

まさに“チーム存続の危機”にほかなりません。こうやって普通にリーグ戦を戦って、いいゲームができて、勝ち点も積みあがって…。ついつい忘れてしまいがちでしたが、債務超過という現実から遠ざかっているわけはなく。

先週の熊日によれば、株主総会後の記者会見で、池谷社長は債務超過の原因を問われ「組織として体をなしていない時期があった」「運営体制にも問題があった」と述べ、過去の経営陣の責任を明確に指摘しました。もちろんいまさらそれを言っても仕方ない(リンクは貼りませんが、就任当時のわれわれのエントリーを探してください)し、その経営者ひとりの責任ということでもなく。その経営者を起用したことや、その問題のある運営体制を許していたことにも責任はあるわけで。まあ、これからの活動を考えれば、一度は公式に説明しておく必要があると判断されたのだと思います。

しかしながら、リーグから示されたタイムリミットは8月。増資の引受先のメドを問われて、「まだない」ということは、株主、スポンサー企業にもまだ説明されている様子ではない。われわれには見えないいろんな事情があるのだとは思いますが、クラブライセンス制度が導入され、財政状況のこの課題を期限までに解決するには増資以外の選択肢はなかった。時間がありません。これまでの経緯から、増資の方針を打ち出すには慎重にならざるを得なかっただろうし、相当の企業努力をしてからでなければ言い出せない、ということも想像できるのですが。

出来うれば、この先、まさに十手先、二十手先を見据えた財政基盤の立て直しを構想して欲しいと思います。チームも運営会社も、誰のものでもない、われわれ熊本県民の“宝もの”。くまなく情報公開し、深々と頭を下げ、中途半端ではなく、堂々と支援を要請するべきであると思います。

4月20日(日) 2014 J2リーグ戦 第8節
山形 1 - 2 熊本 (17:04/NDスタ/5,766人)
得点者:43' 園田拓也(熊本)、64' 齊藤和樹(熊本)、83' 川西翔太(山形)


この日、仙台からの育成型期限付移籍のGK獲得が発表されたものの、この試合での控えのGKは、選手登録されたばかりの加藤GKコーチ。44歳の新加入選手はしかし、ベンチの裏でアップに励むわけでなく、いつもと変わらず監督の横でボードを使いながらスカウティングしている。この一試合だけの、万が一の措置だったことが理解できます。

今日の相手は山形。現状、下位に甘んじてはいるが、感覚的には、ひとつ上の力を持つチーム。いまひとつの状態の時期に当たるのは、かなりラッキーというのが実感でした。

20140420山形

いつも通りの激しいプレス。当然のことながら、山形からも厳しいプレスがかかってくる。一歩も引かずこれに応じる熊本。しかし、特に気張っているということでもなく、試合の入り方としては非常にスムーズ。剥がされないようなクレバーなチーム戦術。サイドでは人数をかけてさらに厳しく奪いに行く。これも板についてきたような感じがします。

プレスは、それだけをうまくやろうとしても成り立つものではなく、攻守両面でのテーマ。お互いにこれを剥がし、剥がされる攻防。

しかし、「前半はワンタッチパスで相手のプレスを結構外せた。プレッシャーはあまり感じなかった」と言うのは藏川。スカパーの解説者いわく“スピーディ”にワンタッチでいなし、剥がす熊本に対して、見た目、一瞬の判断の遅れで熊本の網に引っ掛かる山形。リズムが作れない。そして、高いラインを敷いた山形DFを何度も裏返して走らせる、スペースを狙った長めのパスも相手のリズムを微妙に狂わせていました。

状況的には互角とも言えましたが、うまくいってない感じは山形側のほうが強かったのではないでしょうか。まあ、今の熊本にとって、”うまくいってない感”などという感覚表現はあまり適切ではなくて、うまくいかなくて当たり前、うまくいくまで続ける、という”信念”のようなものがある。失敗してアタマを抱え、いつまでも“うまくいってない感”をアピールする選手もいなくなった。

なかなかに戦術的な攻防が激しく、見応えがあったこの前半。そして、いい時間帯での先制点。左コーナーキック。仲間から岡本とパス交換。岡本がクロスを上げたファーサイドに構えていたのは園田。頭でズドンと突き刺す。

「たとえば、ショートコーナーを仕掛けて、相手が出てきたらここが空く、逆にそこを塞いできたらどこかが空く、咄嗟の判断を楽しめという感じで、この前も遊びながらやってたんですが、相手を見ながらのセットプレーということで言えば狙いどおりだったかもしれません」(J's Goal小野監督コメント)

”とっさの判断を楽しめ”とは、また小野監督らしい、新鮮な表現でした。練習通り、方針通りに繰り返してきたCKが(またもや)実を結んだ。もうひとつ言えば、その前のセットプレーから続いて得たCK。その仲間のドリブル突破から得たファウルが起点。仲間は現在、J2で被ファウル数がトップとのこと(スカパー解説)。ボール奪取から強引に前を向くあのプレーは、ファウルで止めるしかありません。

2点目も同じ。確かにこのカテゴリーではあってはならない相手のミスではありますが、齊藤にとっては、(われわれが何度も見てきた)何度も何度も繰り返してきた状況下のプレー。前線からのプレスの一言では片づけたくない”宝石”のような一瞬。うまくフェイクを入れながら、硬軟取り混ぜたプレッシャーを掛けて追いつめた。心理戦も垣間見えたこのプレー、おそらくは繰り返し繰り返しシミュレーションしてきたのではないでしょうか。この一瞬のために…。

今日のこの2得点。結構なインパクトを感じます。

なかなか思うようにはいかないのがサッカー、特に攻撃面では。たまにしかうまくいかないこと、本当に数十回に一回あるかどうかのプレー。しかし、それならそれを数十回繰り返して結果を取っていこうということ。しつこく。諦めず。

こうして少しずつ結果に結び付いてくると、さらにチーム戦術に対する信頼感、求心力が高まってくるのではないでしょうか。自分たちがやっている(やってきた)ことは間違っていない。感情的な盛り上げでもなく、心理面のマネジメントでもない、本当の意味でのチームの一体感が固まってくるような。

後半途中からの巻、ファビオの投入は、前線からのアグレッシブな守備と、相手のセットプレーにも高さで対応するためでしょう。篠原を入れて完封して、彼のモチベーションを保ちたかったのが監督の意図ではなかったのでしょうか。

残念ながら終盤の失点が続きますが、ここで「ゲームの終わらせ方がまずい」などと綺麗ごとのような批評を言うつもりはあまりありません。

あの状況下で、ホームゲームで0-2のビハインド。これはもう山形としてはありえない展開だったはず。山形のチーム力からすれば当然の反撃力だったと思いました。それより、これまでの熊本だったら、同点に屈していただろうと。そういう意味では、クリア一辺倒だったとはいえ、不恰好だったとはいえ、逃げ切れる力がついたのだと。こうやって、勝ち点がもぎ取れていければ、結果はついてくる。これで山形との対戦成績も3勝2分3敗の五分になって、苦手意識も払拭されました。

3連勝。一気に勝ち点9が積みあがりました。今週もまた“いい気に”なって一週間が過ごせる幸せ。新緑の季節とも重なって、束の間の我が世の春。

さて、次はホームに現在、堂々2位の長崎を迎えます。42試合のなかの1試合などという素っ気ない話ではない。これはもうリーグ前半戦の最大のイベント。勝ちたい。絶対勝ちたい。小心者のわれわれらしく、ドキドキしながら週末を待つことにします。集結しましょう。

4月13日(日) 2014 J2リーグ戦 第7節
熊本 4 - 1 讃岐 (19:03/うまスタ/6,574人)
得点者:3' 藏川洋平(熊本)、58' 仲間隼斗(熊本)、75' 岡本賢明(熊本)、89' 仲間隼斗(熊本)、90'+1 我那覇和樹(讃岐)


北野、上村、高橋、山本、岡村、木島。熊本との浅からぬ縁のある面々。熊本側も当時からすると大きくメンバーが入れ替わっているとはいえ、今日の対戦相手にはわれわれファンも含めて、特別な思いがあります。

「勝っていない相手とのゲームほど難しいものはない。格下と思うと大きな危険がある。しかし、あまりにもレスペクトしすぎてはいけない。いい緊張感が必要だ。自分たちのサッカーがどれだけ発揮できるかだ。」(戦前の小野監督のコメント)

要するに自分たちのサッカーをする、と言うこと。ちょっと小野監督らしくない、あれでもない、これでもないというような言い方に聞こえますが、それは今日の相手とのゲームの難しさを、他のどのチームよりも認識していたということ。いやむしろ、われわれも感じるように、今日のゲームの最大のポイントはここにあるんだということを選手に伝えて、チームのメンタルのベクトルを揃えようとしたのではないかと思うのです。

われわれも、心の奥のどこかで、讃岐にJ昇格初勝利を献上してしまうんではないかと、ちょっとビクビクしていたのは嘘ではありません。畑の怪我を受けて急に先発指令が出た金井。ベンチには控えGKが全くいないという状況も、少し不安を掻き立てました。

20140413讃岐

しかし小野監督は、そういったメンタル面の統一だけでなく、アンドレアには必ず2枚で対応する、序盤、高木にはより激しく行くなど、明らかに要注意人物に対する具体的な指示も感じさせました。

加えて、今日のスタジアムにはゲームを左右するもうひとつの要素が待っていました。ピッチを左右に吹きわたる強い風。そこそこの強さであれば、なんとなく風上が有利なように感じられますが、これまで何度も強風下のゲームで経験した“ゲームにならない”あるいは“風がゲームを支配する”ようなレベル。

そんな中でも開始早々の3分、これまであまりラッキーに恵まれなかった熊本、久々に、“オーッ”というような、相手からずれば、“あれが入るか”というような、藏川のビューティフルゴール。この先制点が、心配性なわれわれの不安を一気に吹き飛ばしてくれました。

初先発の原田からのCK。練習通りのまさにサインプレー。この試合の原田、そのほかにも、多彩なキック、セットプレーのバリエーションを見せてくれた。チャンスに恵まれない間にも、色んな引き出しを作り続けていたのでしょう。

先制後は、なかなか決定機を作れない熊本。やはり問題は風。断続的に降った雨の影響と重なって、思うような展開ができません。時にロングボールを効果的に使いたい熊本。相手DFの裏に、あるいはオープンスペースに打ち込んでいきますが、ことごとくボールは流れていってしまいます。

多分、勝敗の分岐点は、このうまくいかない先制後の前半だったのではないかと。攻撃はうまく繋がらず、消化不良が続きましたが、結局、前半は讃岐をシュート2本に抑えて、主導権という意味ではゲームの流れを相手に渡しませんでした。全くの想像ですが、バタバタとせず、風下の後半を待ったのではないかと。まあ、それは深読み過ぎるとしても、時間帯を意識して落ち着いて勝機をうかがっていたのは間違いないのではないかと。

典型は2点目。相変わらず素早い養父のリスタート。向かい風の壁に当てるように、右サイドから左サイドの片山に大きなサイドチェンジのロングパス。讃岐DFは対応できず、片山にボールコントロールの時間を与えてしまいます。片山もワンタッチで体勢を固めると素早くアーリークロス。これも向かい風でカーブを描きながらゴール前へ。ゴール前は熊本が3枚。相手DFは2枚。戻りきれていませんでした。

もうひとつ感じたのは、選手たちひとり一人から伝わる”責任感”。与えられた相手、与えられたゾーン、期待されるチャレンジを実直に遂行するといったような。プレスバックの激しいこと激しいこと・・・。
ハーフタイムの監督の指示、「プレーのミスはみんなでカバーしあおう」という言葉のなかにも、このチームで重きを置かれていることが何なのかがわかります。

讃岐との対戦。冒頭に言ったような人の繋がり、因縁などを感じつつ、それよりなにより熊本も10年続けてきたという事実。そしてこの熊本から始まったストーリーみたいなものも感じられて…。勝負うんぬんとは別の、“確かにやってきた”“しっかりやってきた”感というのか、そういった感慨が先にたちました。

さて、敵将としてホームに迎えた北野監督。これもあの人の個性なんだろうけれど、終始、対戦相手以外のものとも戦っているような身振り手振り。それは選手たちにも伝わってしまうんではないか…と危惧もしました。

「古巣との一戦でしたが、5年ぶりに帰ってこられた感想は?」と試合後に記者に問われて、「全くないです」と一蹴した北野監督。結果が伴っていたら、もっと饒舌だったであろうことは想像に難くありません。


4月5日(土) 2014 J2リーグ戦 第6節
横浜FC 0 - 1 熊本 (16:03/ニッパ球/3,719人)
得点者:35' 齊藤和樹(熊本)


土曜日夕方のゲームに勝つと、週末の夜、こんなにも安らかに眠ることができる。久々の感覚でした。

20140405横浜

前節・千葉戦を受けて、ファンのだれもが同じ気持ちだったと思いますが、今日の注目はただ一点、ゲームへの入り。最初の10分。突き詰めて言えば、各選手、ファーストコンタクトはどうか、ということでした。

プレスは“はまる”と強力な武器だけど、剥がされると、戦術の根っこが揺らいでしまう。チーム全員で、ピッチ全面で追っかけないと意味をなさないわけで。

「プレッシャーをかけ続けていって、プレッシャーを掛けていけば(横浜FCはそれを)外す能力は持っているので、一回外されて、二回外されて追うのをやめたらリズムは向こうに行ってしまう。それで、泥臭く何回もやっていく、それでミスを誘っていくようなプレーというのはジャブのようになっていったかなと思っています」。そう小野監督はこの試合を振り返りました。

序盤20分ほどの主導権の奪い合い。まさにジャブのようにじわじわと効き始め、徐々にゲームを支配し始めたのは熊本。

この試合の”変数”のひとつだったのは、Jリーグの審判員交換プログラムで来日したイングランドの主審。確かに確固として”フェア”ではあるが、微妙にリズムが違う。横浜35、熊本21。計56個のFK。笛で止まることの多いゲームだったことは間違いない。ちなみに昨日のJ2の試合、少ないほうで言えば長崎―北九州、山形―愛媛が両チーム合わせて20でした。

激しいプレーであると同時に執拗なプレーは、相手が嫌がるプレーでもあるわけで。横浜プレーヤーのゲームへの集中を削ぎ、それは方向を変えて審判へのストレスに向かい、熊本へのパワーを弱める結果となったように見えました。横浜はその点で弱みを見せてしまったということではないかと。

「なかなかうまくいかないところで、いらだちというか、メンタル面のコントロールが出来ていないというところが見られた」と、敵将・山口素弘監督も認めます。

この試合の貴重な決勝点となった1点は、前半35分。これは何度も練習されたプレーではなかったのでしょうか。中盤で組織的に奪ったボールを養父がロブでDFの裏に出す。走り込んだのは片山。ゴールラインぎりぎりまでえぐってマイナスパス。そこに齊藤が詰めて、DFよりもGK南よりも早く触って押し込みました。完璧で美しい、崩しからの得点でした。

90分間を通して、激しくボールにコンタクトしていった熊本。“ファウル覚悟”という微妙な表現もありますが、ファウル自体が目的ではないし、確信犯的にファウルを狙っているわけではない。しかしプレーはあくまでも激しく、そして執拗で、息を抜かず、ひとつの例外もなく追っかけ続けた。激しくいくのは勇気がいる。何より相手も、自分もケガのリスクは高いのですから。

ファウルを取られても、犯しても、ほとんど動じないか、まあ申し訳程度にアピールはするが、大半は次のプレーに気持ちもカラダも動いていくのが今季の熊本の良さ。だから56回もゲームが中断してもゲームに向かう集中が持続できる。そこのメンタルは明らかな変化、成長。相手との戦い、自分との戦い、それ以外のものと無駄な戦いをしないということ。

三ツ沢での横浜FC戦は、あまり悪い印象はないということもありますが、しかし、あの千葉戦からわずか一週間でこのプレーぶり。同じことは繰り返さないというのは確かにそうなんですが、逆に、ここまで“闘うチーム”に修正してくるというのは、どういったプロセスがあったのか。

確かに、報道でも小野監督はこの一週間、「原点に帰ろう」と呼びかけていたといいます。あの開幕・福岡戦で見せた、組織的なプレス、攻撃への反転、守備への素早い帰陣といったような「チームの原点」に。しかし、単に言うのは容易いこと。実際に、その”闘う”メンタルをもう一度持ち直させた方法は何だったんでしょうか。そこが興味深いところです。

69分の橋本、76分の中山。これを決めていれば、という決定機だったのですが、“決定力”などという得体のしれないスキルを云々するより、もっとチャンスを増やしていくというわかり易い戦術理解。決してフラストレーションは溜まらない。とは言っても、あれだけの決定機を外してしまうと、どんよりいやな空気が漂ってくるのですが、そこで退場者が出て、残り時間を守りきる、勝ちきる、ということではっきりしたことは、不幸中のさいわいでもあったかも知れません。

交代する岡本に対して「ファウルは多かったけれど闘ってましたねえ」。同じく、ピッチを去る仲間には「いや、よく走りますねえ。今の熊本では走らないとピッチには立てませんけどねえ」。さらに90+2分あたり。自陣ゴール前でセカンドを拾って単騎、左サイドを、相手を引きずるように、相手陣内深く攻め上がる齊藤にも、「闘いますねえ…」とは、スカパーの試合解説の渡辺一平さんのコメント。相手ホームの解説者からの言葉は掛け値なしと受け取りたい。ピッチを見渡して、事実として見えたものなのでしょう。

南、市村、渡辺匠・・・。懐かしい、っていう感じだったけど。今はそれどころじゃなくて・・・(笑)。

J's Goalの横浜側のライター松尾真一郎氏は、ゲームリポートのタイトルに「熊本が超ハードワークを武器に心技体の全てで試合を掌握」としました。

追加点こそ奪えなかったけれど、虎の子の1点を死守して、初の完封試合。試合運びにまだ難はあるとはいえ、新・守護神の畑も当たってきたし、全員で粘り強く守り切ったその結果を称えたい。もしかしたら、今日、目にしたのはオフからリーグ序盤戦へと積み上げ、目指してきたことの、ひとつの答えになる戦いだったのかもしれない。そんな気持ちにさえなってしまう内容を感じましたが、では、今日の戦いを、どんな相手に対しても臆することなく仕掛けられるのか。はたまた、これからどんな進化を見せてくれるのか。いずれにしても、今はちょっといい気になっているわれわれです。


2014.04.02 千葉戦。完敗
3月30日(日) 2014 J2リーグ戦 第5節
千葉 3 - 0 熊本 (16:03/フクアリ/5,957人)
得点者:2' ケンペス(千葉)、56' オウンゴール(千葉)、71' 谷澤達也(千葉)


先週も書いたことですが、良いイメージが全くないこのフクアリの千葉戦。厳しい結果にもへこたれないように、結構な覚悟と、相当に悪いシナリオも思い描いて臨んだのですが…。

実際のゲームは、それを上回るような、単なる一つの敗戦以上にダメージの残るものになってしまいました。“とても古典的”とでも言えるような、嫌なゲームでした。

20140330千葉戦

浮足立ったようなゲームへの入り。厳しく行ってはじめてゲームを作れるチームなのに。どうしても同じことを繰り返してしまう。

左サイドから攻撃の起点を作る熊本に対して、すかさず千葉はサイドハーフの井出と谷澤をポジションチェンジ。マッチアップの相手を変えるだけで、うまくいくということではないだろうけれど、意識的に片山サイドを封じようとする戦術をとられると厳しいことになるというのがわかる。

ただ、先制されてからの時間帯をじっくりと耐えて、追加点を与えず、立て直して攻勢に転じるというところまでは「フクアリの千葉戦」でもできたわけで。しばらくは五分五分の時間帯と、あわやの決定機がいくつかありました。そこに関してはチームの成長。相手がどこであろうと、場所がどこであろうと。

しかし。さあ、これから。と思わせたところでの養父のオウンゴール。後半開始から千葉も圧力を増したとはいえ、このゲームの流れを決定的にしてしまったプレー。精神的にもこれが一番、厳しいものでした。

「相手のクロスが来ていて、スルーする判断はあり得ない」と養父。プレー自体は悪くないし当然の判断。しかし…。ついてない。

われわれの見立てとしては、今季の熊本は“養父のチーム”。養父の調子に大いに左右されるという意味もあって。開幕してからの5戦。これといったラッキーもなく、どちらかと言えばアンラッキーが目立ち。結果がともなわず、苦しい滑り出し。ひとつの気懸りは、養父のそのコンディションでした。しかし、それもまだまだの感がありながら、プレーぶりにも少しずつ上向いている気配は感じられていた。

そこでのオウンゴール。参ってしまったのはわれわれだけではないだろうと思う。引きずらなければいいと願います。

相手選手退場の場面から後は、数的な有利不利というより、「ゲームが壊れた」(千葉・鈴木監督)と言うような、どこを向いて戦っているのかわからなくなってしまうような嫌な空気がスタジアムを覆ってしまった。2点ビハインドの熊本にとっても勢いの持っていきどころが見えなくなって、ゲームに集中できないような、何とも言いようのない状況になってしまいました。

とにかく、このクラスのチームからはボールが奪えない。保持したボールをすぐに失ってしまう。まあ、こんな時こそ、何か一つでも良いきざし、次につながるものを見つけたいと思って、砂を噛むような気持ちでゲームを見続けたのですが…。今日ばかりは、なかなか、それが見つけられない。ここまでのシナリオは用意していなかったわれわれでした。こんな時は、切り替え!切り替え! と言うしかないんでしょうね。