6月28日(土) 2014 J2リーグ戦 第20節
愛媛 4 - 0 熊本 (19:04/ニンスタ/2,821人)
得点者:46' 堀米勇輝(愛媛)、50' 西田剛(愛媛)、55' 河原和寿(愛媛)、71' 藤直也(愛媛)


気が付けば今日のゲームが第20節。前半戦もあと1試合を残すのみとなってしまいましたが…。前節に続いてまたもや信じ難い結果となってしまいました。

20140628愛媛

愛媛は3連敗と厳しい状況のなか、前節は6位の大分に引き分けて一息ついて迎えるホーム熊本戦。きっとこれを浮上のきっかけにしたいと思っていたはず。かなりな意気込みを感じました。

戦前、「攻守にいいサッカーをしている。必ずしも実力を反映した順位ではない」(小野剛監督)と警戒していた通り、前半は愛媛が軽快なパス回しで主導権を握る。確かにチーム全体のコンディションがいいことを窺わせます。

スカパー解説者は“お互いに非常に慎重にゲームを運んでいる”と表現しましたが、一方、愛媛の選手たちはこう言っています。

「前半は自分たちが持っている時間が長かったけど、そこからどう崩すかだった。でもサイドが起点になってクロスからいい形は作れていた。」(愛媛・河原和寿)
「前半は相手がコンパクトで、我慢比べのようになったけど後半は絶対モノにしようということで、監督が檄を飛ばしてくれて、いい形で後半に入れたことが点につながったと思う。」(愛媛・堀米勇輝)」

いずれにしても愛媛がポゼッションし、熊本がこれを受けて奪いに行くという構図。主導権は愛媛にあるように見えながらも、熊本が圧倒されているというわけではない。しかし、奪いにいく熊本も、なかなか思うようにはプレスがはまらない。

何が起こっていたのでしょうか…。

前節、4失点した京都戦を振り返って「ボールに寄せきれなかった。あと50センチの勝負。ミーティングと練習で課題は確認できている」(斉藤和樹・27日付熊日、戦前のコメント)と臨んだ今日のゲーム。だったのですが…。

「今日は愛媛とシステム上、合わないところがあった」とする藤本主税のコメントがちょっと気になります。

リーグ戦も折り返しの時期まで進んでくると、相手チームの戦術研究も相当に進んでくるはず。全体的に重そうに見えるコンディションもあるのか。局面局面で抜ききれない、かわしきれない…。そんなゲームが続いたように感じます。

そして後半。1分、5分、10分。10分間で3失点。この10分が全てでした。猛攻の口火を切ったのが、昨年熊本に在籍していた堀米だったことも口惜しい。確かに「どの失点もギリギリの所で必死で足を伸ばしたりしたが失点をしている」(小野監督)ことは見えるので、どうしようもないわけではないのですが、しかし、やはり緩い…。前節に続いて“あと50センチの勝負”で負けてしまった印象。そして切り裂かれた最終ラインは、ほとんど無防備とも言えました。

さらに小野監督が「それ以上にゲームで流れを修正するのに時間がかかった。それは選手ではなく私が責任を負うところ。カードを切るまで修正が遅れて、なかなか上手く修正ができなかった」と言うように、この屈指の智将にしても対応が間に合わなかった連続失点。3点目を失った時点である意味、ゲームは終わってしまっていた。

「誰も予想していなかった2試合連続の大敗に選手の表情は固まった」と書いた熊日朝刊。心配はそこにあります。

4失点での連敗ということで、チーム全体が委縮し、下を向き加減なのは仕方のないことでしょう。しかし、どうも、今日のゲームに関しては大量失点ということもありますが、むしろ修正の時間もなにもないくらい短時間の連続失点のほうが問題。確かに愛媛の攻勢も素晴らしかったが、ああやってチャンスがことごとく得点に結びついてしまうことは、そうそうお目にかかることではなく、ある意味で色んなラッキーが折り重なって極端な事態が起こったとみてもいいのではないでしょうか。

皆が原因を分析して、それぞれの責任を引き受けるだけでは仕方ない。いや、いくら原因を分析しても、効果的な対応にならないことだってある。“あと50センチの勝負”のために、ここはひとつ、この連敗のイメージを吹き飛ばすくらいに、フィジカルもメンタルもリフレッシュする。そんなこともこの一週間の課題ではないでしょうか。

6月21日(土) 2014 J2リーグ戦 第19節
熊本 1 - 4 京都 (19:03/うまスタ/7,031人)
得点者:20' 澤田崇(熊本)、45' 大黒将志(京都)、55' 大黒将志(京都)、65' 大黒将志(京都)、78' 伊藤優汰(京都)


京都。その苦手意識ゆえに、リーグ戦では残念ながらまだ勝ったことがない相手。と思い込んでいましたが、実は2011年の初対戦のときに、勝っていたんですね。しかし、その喜びの記憶も薄らいでしまうように、その後は5試合勝てていない。選手、監督は入れ替わるので、苦手意識があるとすれば、それはほとんどわれわれファンのことかもしれません。

その京都、成績低迷により監督が代わって最初のゲーム。もともとの戦力を考えれば、多分、先週までとは別のチームになっていることが十分に考えられる。人が変わることで整理できることもあるだろうし、少なくともモチベーションは半端なく高いだろう。うーん。これもまた巡り合わせか…。

20140621京都

“大量”4失点。しかも久々のホームうまスタ。雨脚の強い中、7000人が駆け付けたスタジアム。このところ1点勝負のドローゲームが続いていただけに、その結果にはわれわれも少なからずショックを受けました。どんよりした梅雨空と金曜日のW杯代表戦と相次ぐストレスの溜まる結果に、せっかくの週末も穏やかな気持ちで過ごすことはできませんでした。

しかし、気を取り直してよくよく振り返ってみれば、サッカーのラッキーとアンラッキーがかなり偏って出てきてしまったようなゲームで、まあ、今日はわれわれの日ではなかったなあと。たまにはそんな持っていきどころがあってもいいのかもしれません。

こんな観戦記を書いていると、ときに後講釈の身勝手さで、すべての結果には原因があるみたいな言い方で、いかにも必然的なシナリオっぽく都合のいい結果論を語ってしまいがちです。しかし、ギリギリの勝負をしているなかでは、跳ね返ったボール、ルーズボールがどこに収まるのか、選手が雨のピッチのどこで足を取られるかとか、それはもうだれも推し量ることはできないもので…。1点の重みが極端に大きいサッカーというスポーツでは、それがどのタイミングで現れるかで、そのゲーム自体が決まってしまうことがあり得ることは、多分、誰もが否定できないことでしょう。

まあ今日は、小野監督のコメントを待つまでもなく「決して選手が下を向く必要はない」と整理して、われわれも次に目を向けることにしたいと思います。

「右サイドの裏に入れられて、そこからのドリブルからクロスを入れられてしまった。同じことを繰り返さないようにしたい」(園田拓也)

「(失点した後は)なかなかボールに行けずに、クロスに対しても寄せられずに、中盤でもフリーでもたれることが増えて、ラインを上げられずに押し込まれてしまった」(篠原弘次郎)

「スペースを使うのが上手くて、背後を意識したらボランチの所で上手く時間を使ってきたり、こっちの動きを見て対応するのは上手いなと感じました」(橋本拳人)

ただ、選手たちのコメントでは、もちろんアンラッキーなどということは一言もなく、むしろ最近のゲームにはないような、いろんな角度からの具体的な振り返りがなされていて、どうも「下を向く」云々とかいう話しではないような雰囲気。

「ボールに行けないのであれば皆でブロックを敷くというのも、今日の試合では大事だったかなとも思いますけど、ボールに行くことで自分たちにはチャンスが生まれるというのもあるので、そこの意思統一が、今日はちょっとうまくいかなかった」という橋本のコメントは、おそらく4失点目を指しているのでしょうか。

決して選手たちは下を向いてはいなくて、むしろ今日のゲームを“きっぱりとした敗戦”として真っ直ぐに見ているように感じます。自分たちの失敗、相手の上手さを率直に受け止めている。

“実際に選手が何かを学ぶなら、勝ったときより負けたとき、敗北から学ぶことが本当に大きい。”何度も引用しているオシム語録ですが、しばらく引き分けが続いたなかで、今日の敗戦はまた自らを整理し直すチャンスなのかもしれません。

ところで、われわれの勤務先でも、会社としての増資とは別に、社員有志という形で社内募金を立ち上げることになりました。チーム存続の危機、それもタイムリミットは8月。お金も足りないが時間もない。崖っぷちの厳しい状況は何も変わっていません。こんな観戦記を書いてるヒマがあったら…ですね。何とか百万円単位まで持っていければと思っていますが。

6月14日(土) 2014 J2リーグ戦 第18節
群馬 1 - 1 熊本 (15:04/正田スタ/2,461人)
得点者:8' ダニエルロビーニョ(群馬)、13' 澤田崇(熊本)


「引き分けという結果についてはそれ以上でもそれ以下でもなく、それがいまの現状。今日はそれがすべてだと思います。」(巻誠一郎)

素人の観戦記ブログとは言え、これだけ似たようなゲーム展開で引き分けが続くと、なかなか切り口が見つからなくなるのも正直なところです。

秋葉忠宏監督は「勝点1を拾えたということはありますが、勝点3を取れたゲームでもあり、どちらとも言えるゲームだったと思います」と。先制した群馬にとっては、ややもったいないゲームと振り返るのは当然でしょうが、熊本からすれば、ゲーム序盤にポッカリと穴が空いてしまったあの瞬間を除けば、ほぼ完全にゲームを支配していたように(われわれには)見えました。

しかし、そんなタラレバは決して言わない小野監督のスタイル。「我々はゴール前まで多く行きながらもこじ開けることができませんでした。それは次への課題なので、次の試合へ向けて準備をしていきたいと思います」と言うのも、これまたいつもの光景で…。

20140614群馬

今日のスタメンは、前線のトップを巻に、シャドーの齊藤。右に澤田、左に岡本はいつものとおりながら、ボランチには初めて中山を橋本と組ませます。養父を出場停止で欠く今日のゲーム。選手起用も少し手が加わっていましたが、もともと本職はボランチだという中山の真価が問われるゲームでもありました。

ただ、「形はいつもと同じでした。形よりも選手のファンクションの方が大事なので形にはこだわっていませんでした」と小野監督。ベンチには原田、黒木。このあたりにどんな意図があったのか、もう少し詳しく知りたいものです。思い付きや、その場限りの策は決して打ってこないことはもう、われわれにもわかります。案外、こんなところの選手起用に監督の次のビジョンや仮説が仕込まれているのかもしれません。

前半8分。前節・北九州戦に続いて早い時間帯で先制を許してしまいます。それも何となく付ききれず、詰めきれず、マークを離してしまった中途半端な守りから。しかし、わずか5分後、右サイドで粘った澤田が、中に切れ込んで一閃。DFに当たったシュートに逆を突かれたGKの手をかすめて、ゴールに突き刺さる。今日も前半のうちに追いつきます。

失点に下を向かない、先制されてもゲームの流れは渡さない。そんな強さというのか、たくましさというのか、いつの間に身に着けたのか、そんな底力は感じられるようになった。

われわれでさえも今日のゲーム展開を見ていると、追いつくのも、勝ち越すのも時間の問題と思ってしまう流れではありましたが、「ゲームはほとんどうちがコントロールできていたので1ゴールしか取れなかったことはもったいない」(巻誠一郎)と言うように、結局勝ち越しには至りませんでした。

今日も積み上げた勝ち点は1。徐々にではありますが、プレーオフ圏内の6位との勝ち点に差がつきはじめているのが気になります。しかし、思えば昨シーズンの終盤で、勝ち点1ずつでも積み上げて降格圏内から這い上がったあの頃とはゲーム内容も全く違う。「勝ち点3“量産”の日は近い」。翌日付けの熊日では山本記者がそう書きました。チームを間近に見ている番記者の、その予測を信じたいと思います。

さて、地球の反対側、ブラジルでは熱狂のW杯。わが代表は初戦を落としてしまい、グループリーグ突破には非常に厳しい状況に立たされてしまいました。

そんななか、先週6月11日付熊日朝刊のロアッソ特集は小野監督のインタビュー。これまでもいろんな場面で繰り返し語ってくれている内容ですが、このW杯のさ中に聞くと、また一段とリアリティが増して、道のりの長さと重みが感じられます。

「日本がW杯に行くことが目標なら、アジアは弱いほうがいい。だが、日本がW杯で優勝するのなら、アジアを強くしないといけない」「自分のすべての仕事は、日本のW杯優勝につながっている」。
別のインタビューではこの部分に「国内で指導する人、国外にいてアジアを底上げしていく人の2種類が必要だと思うんですよ」と具体的に付け加えている。

土曜日、前橋でのJ2アウェイゲームと日曜日のW杯の日本代表戦と…。まったく別世界の出来事のように見てしまいがちです。そしていずれの試合も、われわれにとってなかなか思うようにはいかず、フラストレーションの溜まる結果でした。しかしこんな、遥かな高みで見通している視線があることを思い知らされると、われわれを取り巻くサッカーの景色がまた違ったものに見えてくる気がしています。

6月7日(土) 2014 J2リーグ戦 第17節
北九州 1 - 1 熊本 (17:03/本城/3,702人)
得点者:24' 小手川宏基(北九州)、43' 齊藤和樹(熊本)


「…何とか勝ち越し点を取りたかった。勝たないとここのスタジアムではいい記憶にならない。」(片山奨典)
「やはりチームとしてあの悔しさがあったので、絶対勝ってやろうという気持ちはあった。」(齊藤和樹)

ちょうど一年前の6月15日、その場所も同じ市立本城陸上競技場。0-7という歴史的な惨敗を喫した北九州との対戦。その後、チームは降格線上を彷徨い、監督交代という非常事態に…。雨で再試合となったホームでの後半戦でもリベンジは果たせず。だからこそ、この一戦にかける思いは格別のものがありました。

監督も、そして多くの選手が入れ替わってはいるものの、実際にピッチで戦った選手たちにとっては、一年たった今でもあのゲームが残した傷は深く、きちんと“始末”をつけないことには悪夢にうなされるような感じなのかもしれない。

いやむしろ、それはファンにとっては、なお一層のものだったのかもしれません。本城のアウェイゴール裏をきれいに赤く埋め尽くし、明らかに(スカパーの画面を通してみた限りでは)その応援のリズム、声量、迫力で完全に上回っていたのですから。

前節、富山を相手に久々の勝利を手に入れた熊本。勝利の結果論としては、先制し追加点をとれたこと、でしたが…。

20140607北九州

ゲームへの入りは、小野監督が「途中までは相手が引いてきたので、ボールを動かしながら引き出して裏を取る動きだったが、崩せていてビッグチャンスは数多く作れていた」と言うように、先制は時間の問題かなと思うくらいに、次々と決定機をつくりだす熊本。

が、しかし、これまた、あのシュートが入るのか…、というような北九州・小手川のゴールで先制を許してしまいます。小手川の持ち上がりに対して、ズルズルと下がり、まさか打ってはこないだろうという一瞬の気の緩み。

「崩して打ったわけではない。あの位置まで行けていたので、思い切って打ってみた」と本人も言う。前半24分。

ここ最近のゲームのように中盤での激しいせめぎあい、主導権を巡っての攻防…というような厳しい入り方ではなかったのが、逆に災いしたのか。

「…前半はボールホルダーへのアプローチが遅かったり、十分に寄せきれていない場面もあった」(畑実)
「今日は守備がちょっと不安定だったかなと思う。人に対して強く行けなかったり、1対1で後手を踏んだり、そういうことが少し多かったかなと思う。」(片山奨典)

確かに、ゲーム序盤、攻勢に出てはいたが、本来の熊本のスタイル、サッカーだったのかどうか。選手たちは、そんな微妙なリズムの違和感を感じながらプレーしていたのかもしれません。

さて、先制され、しかもああいうゴール…。いやな記憶は押さえつけようとしても、ムクムクと頭をもたげてくる。

しかし、まだまだゲームは序盤。この時間帯で先制された以上、まず二点目をとられないようしっかり落ち着きたいところ。しかし、なんだろう、今日の北九州、“ここが勝負”というような追加点に向けての圧力が感じられない。序盤の攻勢でやや息が切れかけていた熊本に落ち着く時間を与えてくれたように感じました。

時間の問題と思っていた熊本の得点は、前半43分。スローインの流れから、中山のクロスに齊藤がゴール前で競って首を振った。ボールは左ポストぎりぎりのところでゴールに吸い込まれました。

「…チャンスを作ったのでそれを得点に持って行かないといけない」と言う小野監督に対して、「精度を上げることと、それで入らないならもっとチャンスを作らないといけない」とコメントした齊藤和樹のゴール。練習していた形だという。

前半のうちに追いついた熊本。ハーフタイムでの小野監督は「ここからとどめを刺すところ。必ず勝利を持って帰ろう」と、選手を鼓舞しました。しかし、北九州は“熊本の課題”をスカウティングしていたのでしょうか。それはまさに後半勝負をうかがわせるような試合運びに転じます。

意表を突くようなダイレクトプレーを織り交ぜ、次々にペナルティエリアに侵入し決定機をつくり出すのは北九州。これを何とか持ちこたえ、押し返す熊本。攻守が目まぐるしく入れ替わり、中盤でのセカンドボールのせめぎあいは激しさを増す。

後半27分、 岡本→巻の交代に対して、後半30分、原→大島で応じる柱谷監督。さらにこの北九州のベンチワークに対し、後半37分には、なんと藏川→矢野、中山→キム・ジョンソクの二枚替え。

「相手がロングボールでヘディングを起点にしての攻撃をしていたのでシャットアウトしないといけない。それで矢野選手を入れたがどうしてもDFを入れると引き分け狙いのメッセージを与えてしまう危険性があるので、一番前の推進力、前へ前へゴールに向かう選手が必要という意味でも…」と小野監督。確かに、ヘディングで勝ててないなあ、とは思いながらみていましたが。うーん。深い…。こんな手もあったか…。

後半40分にはさらに長身の山之内を投入してきた柱谷監督でしたが、明らかに制空権は矢野にありましたね。高さに備える。高さを加える。両監督の選手交代の思惑が、とたんにゲームをオープンで、パワープレーの応酬のような様相に変えていきました。

結果は互角。

前節に続いて、後半勝負の相手を押し返して、ギリギリの勝負ができたことは、熊本の課題に対して、またひとつ確かな成長をみせてくれたと思います。先週の練習で、かなり調子を上げていたといわれるキム・ジョンソクのデビューも観られた。残り10分というわずかな時間でしたが、巻とのコンビネーションにはワクワクさせられました。またひとり、確かな戦力を得ました。

因縁の本城、北九州戦ですが、リベンジ論議はもう十分でしょう。大差のゲームも、勝ち負けは一時のもの。昨年の惨敗のときにも、むしろああいうゲームの後の振る舞い、言動こそ、チーム、サポーターがどれほどのものか、その正体が透けて見えるような気がしたのを覚えています。負けた側も、勝った側も。

今日のゲームは、勝ち点3をとれなかったけど、完璧ではなかったけど、ゲームに向かったチーム、サポーターの意気と成長を感じさせてくれた。北九州は昨年以上にレベルアップしている。しかし、われわれもさらに成長している。それが感じられた素晴らしい九州ダービーでした。

試合後のゴール裏で、選手たちにねぎらいの拍手を送る満員の赤いサポーターたちを観ながら、「次こそ勝とう」ただそれだけ思いました。

5月31日(土) 2014 J2リーグ戦 第16節
熊本 2 - 0 富山 (14:03/水前寺/3,580人)
得点者:34' 岡本賢明(熊本)、39' 養父雄仁(熊本)


前節、讃岐に敗れて5連敗中の富山。開幕前、七城での練習試合で見た富山からしたら、こんなに不調なのが不思議で仕方がない。養父も戦前「いまの順位を見て試合をやると痛い目にあう」(ERGOLAZOweb版)と警戒を怠りませんでした。

もちろんこちら熊本も7試合未勝利。引き分けてはいるが、勝てていないことは同じ。お互いに多くの課題を抱え、何より、どうしても勝ちたいという気持ちが溢れ出るようなチーム状態なのに違いはありませんでした。

しかしながら…。確かに、勝った。勝ち切った。押し切った。とは思ったけれど、それはそこまでで。突き上げるような喜びではなく、なんかホッとしたというような。

熊本もこの間、決して下を向いていたわけでなく、ひとつの答えを求める生みの苦しみのような状態だったわけで。まさに今日の勝利という結果に対しては「勝点3というものでチームの成長とやっているサッカーに対する自信、それからさらに1歩前に出て行く力というものが絶対に必要」と小野監督が言うように、さらに先を見据えた受け止めというのが正直なところでしょう。

「今日は、前半はいつも通りに入れて、後半から自分たちの時間をどれだけ長くするかが課題だった…」と園田が振り返るように、熊本の課題は明確でした。この点は、監督も選手も、そしてわれわれファンも共通していました。

そしてこの課題は、戦術、メンタル、フィジカル…様々な要素が複雑に絡み合ってはいますが、少なくとも、リーグ戦の今のこの時点で“決定力不足”とか“守備に不安”などという掴みづらいものではなく、チーム全体がかなり先に進んだ結果としてこの課題を共有できている。“成長したなあ”と実感させられます。

20140531富山

試合への入り具合はいつも通りアグレッシブ。はっきりと主導権を握りましたが、その後は「局面局面では非常に技術があり」「どんな試合でも必ず決定機を作っている」(小野監督)と警戒していた富山のシンプルなサイドへの展開に後手を踏む場面もあり、防戦にまわる時間帯もありました。

しかし、「リードして後半に追いつかれるという展開が何回かあったんですけど、今週はそれに関して、特に紅白マッチで激しくやって、しっかりと課題を克服してくれて、この試合に臨んでくれたんじゃないかと」と言う小野監督。練習の意識もそこに集中していたことが分かります。

さらに「勝利に貢献できてよかったなという気持ちと、これで油断して次から勝てなくなるのも怖いので、しっかり危機感を持ってやりたい。」とは、この日先制点をあげた岡本。ベテランのこの言葉、すでに次へ向けてのメンタルを具体的に方向づけています。

そして、この試合のもうひとつのエポックは、上村周平。チーム創設10年目、ユース出身選手が、初めてトップチームの公式戦に出場機会を得たこと。われわれは、決して大げさではなく、チームの歴史に新たな、大きな一章が書き加えられたと感じました。全くゼロの何もないところからスタートした下部育成組織。選手本人の努力はもとより、関係の方々のご苦労に心からの敬意を申し上げます。

それに何の何の、顔見せ程度の出場などではなく、まだまだ時間はたっぷりあるという場面。戦術的にも、“今日の課題”をクリアできるかどうかの胸突き八丁の時間帯での投入。いやむしろ、どっちに転ぶかわからない“今日の課題”を熊本に引き寄せるための切り札として起用されたようにも見えました。

激しいボディコンタクトから何度もボールを奪取。プレー選択の判断は的確で、チームのリズムを加速させる。視野の広さとセンスを見せつけるような正確なサイドチェンジ。ゴール前の巻へのピンポイントのクロスはあわや初アシストか…と。待てよ…。上村が送ったクロスに巻が飛び込む…。熊本のサッカー今昔物語がギッシリと凝縮されたような瞬間。思いもかけずこんな凄いシーンが目の当たりに…。一瞬、思考が止まってしまいました(笑)。
ああ…。なんて幸せなんだろう…。

1995年、益城町の生まれ。18歳。これはもう、この年寄りの胸が久しぶりに高鳴ります。ワクワクです。

そして今日の小野語録は、なんといってもハーフタイムのコメント。「誰もいない芝生を味方に」は、かなり深い。

「もらいたいスペースにあまり早く入りすぎるな。相手を引き連れてそこに入ってきちゃいけないと、できる限り空けて、最後の瞬間まで空けてからそのスペースを使えと。」
試合後、丁寧に解説してくれましたが、なかなか想像力を駆り立ててくれる言葉です。われわれは、試合の終盤近く、“この誰もいない芝生”に大きく展開することで、相手の最後のスタミナと戦意を挫くような、そんな意図さえ感じてしまいました。

高校総体の余波での水前寺開催。30度以上の酷暑のなかでの14時キックオフのゲーム。しかし、澤田のスピードは終盤になっても全く衰えず、巻は「このくらいの暑さが心地よい」(スカパー)と言ってのけました。そうか、彼らはそれこそ高校時代、この暑さのなかの熊本で総体を戦ってきたのでした。(その当時から準決勝、決勝は、この水前寺競技場でしたね)。地元出身選手が多いという特徴は、意外にこんなところでチームの強みになってくるのかも知れません。