7月30日(水) 2014 J2リーグ戦 第24節
松本 2 - 1 熊本 (19:04/松本/11,265人)
得点者:41' 養父雄仁(熊本)、44' 喜山康平(松本)、45'+1 サビア(松本)


土曜日の激闘から中三日。ミッドウィークのアウェイゲーム。相手は自動昇格圏の2位に浮上した松本。正直なところ、この試合はコンディション的にかなり難しいのではないか。厳しい結果も覚悟しながら、それでも熊本のゲームがどこまでやれるのか。しかし勝利は欲しい。そんな、ちょっといつもとは違う微妙な気持ちのままゲームに入りました。

出場停止の片山の代わりに左には藏川。CBには前節足を痛めた橋本を休ませ18日に獲得が発表されたばかりのキム・ビョンヨンをいきなりの先発で起用。相方は篠原とし、園田を右SBに出す形のDFライン。

20140730松本

前半、思ったよりも熊本のペースで戦った終わり際の41分、養父のゴールで先制します。波状攻撃のなか左から作りなおす。シュートコースのなくなった齊藤がマイナスパス。それを思い切りよく養父が打つと、相手に当たってゴール左隅に決まりました。

ただ、スカパーのアナウンサーによると、先制してからの勝率は、松本が92.9%なのに対し、熊本のそれは42.5%だという。そんな嫌な数字を聞かされると、立て続けに失点。前半残り5分の間に、逆転されてしまいます。

同点弾は、喜山が放った振り向きざまのシュート。逆転弾は、サビアのヘッド。いずれも岩上の得意とするロングスローインから。

「警戒していたセットプレーでやられてしまったことは悔しいし、僕たちの課題。そろそろ進歩しないといけない」「良い時間帯でのゴールだったので、守りきらないといけなかった」と自身の先制点を守りきれなかった養父が悔やむ。

養父が課題としたのはセットプレーでやられてしまったことなのか、それとも守りきらないといけないという思いなのか。しかし、今の熊本にはどう見ても「守りきる」という部分にひとつ大きな課題があるのは間違いないと思うし、それが典型的な形で出てしまったゲームだったのではないかと。

「セットプレー、特にロングスローは相手の最大の武器ということで警戒していて、それなりにしっかりと跳ね返してくれていました。やはり下がって押し込まれる中で、結局ロングスローから2失点ということで残念に思っています。」と、小野監督は分析を交えた。

先制からわずか5分の間に、セットプレーからの連続失点であっと言う間に逆転されてしまいました。前半41分という時間帯で、このゲームを守りきろうという意識はあるはずはないのですが…、無意識の意識なのか。恐らくは、前半はこのまま守りきろうというイメージはあったかもしれません。しかし、先制を境にまったく別のゲームになってしまいました。

「このスタジアムの雰囲気の中で後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが、かなり重圧をかけられているような錯覚というか重圧感が選手にはあったかもしれません。」(小野監督)

一度、相手にわたってしまった流れ、主導権は、アウェイのアルウィンでは、取り戻すどころか、さらに増幅されてしまいました。

50センチの間合いの攻防で勝負するチームなのに、競ることすらできなくなってしまう。体力的な厳しさも顔を出し始める。アフターのファウルが増え始め、セットプレーからの失点リスクが高まっていく。

巻を投入するも、全体に押し込まれた陣形は、前線の枚数不足で、巻が集中してマークされ、なかなか打開できない。なのに熊本は中盤を省略してロングボールに固執する。前節、巻が効いていただけに、そのイメージが繋がってのことだったのでしょうが、敵将・反町監督のスカウティングにはまるのには十分でした。結果、松本21、熊本4というシュート数。後半、熊本はシュートゼロに終わっています。

しかし、もうひとつ気づかされるのは、完全に自分たちのゲームではなくなってしまった後半、それでも追加点は許さなかったということ。

振り返ってみれば、ほとんどポゼッションできない時間帯が続き、熊本の本来の戦いとはまったく違う展開になってしまいましたが、それでも、熊本の選手たちの気力自体は決して萎えたりしなかった。

スカパー解説者が、ゲーム最終盤にいたっても、カウンターを阻止すべく、激走する黒木や、孤立しながらも体ごとぶつけて空中戦を闘う巻を称賛したように。

ゲーム全体としてはやられているけれど、局面、局面の個々の戦いでは決して負けていない。結果、最後の10センチ、体をはっての守りは試合終了まで持続できた。やられている熊本から見れば、厳しい戦況ばかりが目につきましたが、逆に松本から見ればどうだったのでしょうか。あの後半の展開で、追加点を奪えず、それどころか、決定機(本当の意味での)すら作れていなかったことに。

ピッチ上の熊本の選手たちには、多分、あの大量失点の3試合を思い起こしていたんではないでしょうか。特に、最終ラインの篠原の思いは、ひときわだったのではないかと。

「後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが…」と、わが指揮官は言う。

結局、ゲームを立て直すことはできなかったけれど、ゲームが壊れることにはならなかった。少なくとも、何も得るところのないゲームではなかった。負けゲームで言うのもなんですが、こんなゲームでも、チームの成長を感じる。ひとつには今日確信した新しい戦力、キム・ビョンヨン。確かな技術とともに闘志も伝わるプレーぶり。今後に大いに期待が持てました。

「本当に強いチームなら3点目をとらないといけない。しっぺ返しをもらってもおかしくなかった」と振り返る反町監督の言葉は、半分くらい本音が混じっているのかもしれません。

ただ、そんななかでも。いつかのエントリーで「GK陣もまさしく”育成”の最中」とは書きましたが。まるで湘南戦の菊池のシュートを思い起こさせるような、同じニアサイドへのグラウンダーの早いシュートで割られた今日の同点弾。これもまた熊本をスカウティングするなかのひとつになってはいないかと思うのは考えすぎでしょうか。

「シュートまでのイメージは出来ていたが、止められたかなと思った。打てば入るもんだなと(苦笑)」と言う喜山。この敗戦の悔しさに追い打ちをかけるようなコメントでした。

7月26日(土) 2014 J2リーグ戦 第23節
熊本 2 - 1 水戸 (19:03/うまスタ/10,232人)
得点者:39' 船谷圭祐(水戸)、51' 澤田崇(熊本)、77' 養父雄仁(熊本)


「最後は本当に皆、ぼろぼろの感じでしたけども、スタジアムに多く集まってくれた皆さんの声援が疲れた背中を押してくれて、スタジアム中の皆さんとともに勝点3を取ることができたという風に思っております」。小野監督は、試合後そう語りました。

前節・湘南戦。敗れたものの、その戦いぶりを見て“自信より確信に近いものを得た”と書いてしまいました。その流れは(決して勢いではありません)いささかも揺らぐことなく、この試合も続いていました。

梅雨も明け、夏休みに入った最初のゲーム。熊本県民デーと銘打った動員作戦。うだるような暑さ。西日が照らすなか1万人で埋まったスタジアム。キックオフの笛と同時にようやく日が沈みはじめます。

20140726水戸

立ち上がり。熊本も行くが、それを上回るのは水戸。気にしすぎかもしれませんが、前線の鈴木隆行にどうしても目がいく。PKとはいえ前節も2得点。高く強い空中戦。次々と起点をつくられ、ボールを散らされ、ラインを押し下げられ、プレスを剥がされる。ゴール前の狭いエリアもポンポンと水戸の小気味よいパスが通り、後手にまわる熊本。

そしてこの日の、そのストッパー役は橋本。それでも徐々に押し返す。鈴木も強いが、橋本も冷静でした。嫌な動きをされても、肘を入れられても、とにかく自分の役割は鈴木を潰すことと心得ている。

13分。水戸のスローインから広瀬のシュートはあわやゴールポストが跳ね返す。その跳ね返りを狙っていた鈴木のヘッドにGK畑が好反応。片手一本、いやほとんど指一本で掻き出しクリアした。いつもなら決定的な失点シーン。ホッとすると同時に、今日は勝利の女神が熊本に傾いているかも知れないと思いました。

しかし、その後はいくつかあったチャンスも決めきれず。澤田のシュートがポストに嫌われ、その跳ね返りを五領が狙うが枠を外すあたりでは、女神もまだまだ様子見なのかと嘆いた。まさにその直後のゴールキックからでした。

前節、「チャンスのあとにピンチを招く」ということを書いたばかりですが、また今日も。前線で鈴木が落として小谷野に収まる。それを折り返されると、上がってきた船谷に押し込まれてしまいます。警戒していたカウンター攻撃。それもリスタートからの。「ビッグチャンスの後、その瞬間切り替えよう」。指揮官もハーフタイムでそう呼びかけざるを得ませんでした。

「実は前半、もっと早いタイミングで改善しなければいけないところを、私自身、手を打つのが遅れてしまった」「巻も非常にいい働きをしてくれたと思いますし、それだけじゃなく、ハーフタイムで修正点等、チームの意識が統一されてピッチに出て行ってくれたんじゃないかと思っています」。

最近、何度か出てくるコメント。ゲーム中に改善しなければいけないところが出て、しかしその対応が遅れたというもの。と言っても、具体的にはそれがどこなのか。この部分だけは決して教えてはもらえないところ。想像するしかありませんね。

連敗の最中、今日も先制を許してしまう嫌な展開。しかし、チームの成長がはっきりと見えたのはまさにその失点後の時間帯でした。前半39分という時間帯も幸いだったかもしれない。

ホームに1万を超える観衆。勢い込んで取り返しにいくというのは、よくある危ないパターンなのですが、前半はしっかり落ち着いて、やり直す、作り直す。連続失点だけはしない。

「自分自身、点を取られた後も、これはいけるという風に思っていましたし、おそらく私がベンチで感じていたということは、選手もそういう思いを持っていたと思うんです」。

監督も、選手もそう思っていたように、われわれスタジアムのファンも間違いなく思っていました。下を向いて消極的になったり、逆に無理な前がかりでバランスを崩したり。結果、決定的な2点目を失う事態になってしまう。とにかくプレスを弱めない。相手のミスを誘っていく。ゴール裏も失点から逆にボルテージが上がっていきます。

そして後半開始から五領に代えて巻。久々の先発の五領も決して悪くはありませんでした。ワイドに動きまわり、前線をかき回した。けれど巻に”空中戦”を加えられた分、水戸はますますDFラインにプレッシャーを感じたのは間違いないでしょう。

「絶対返すぞ」。ハーフタイムの小野監督の激は、知将というよりむしろ闘将の顔でした。

後半6分、片山のロングフィード。巻の落としから橋本のシュートはバーに跳ね返される。しかし、最後は今度こそ澤田が体ごと押し込みます。大歓声と共にマフラーが振られる。後半の主導権を完全に握った瞬間。

プレスがはまり、水戸の選手がばたつきはじめる。フィールドプレーヤーばかりでなく、GKまでもが…。面白いようにボールを奪ってカウンターに持ち込む。

そして後半32分、ゴール正面。巻がまさに“奪い取った”ファウル。「(養父が)練習でFKを決めていたので、機会を作ろう」(巻)と。それを「周りを気にせず、自分のリズムで」練習どおり決めてみせたのは養父自身でしたが、そのキックの瞬間、蹴られたボールには、1万人の観客の祈りが乗り移っていたに違いない。さすがに勝利の女神もへたな悪戯ができないほどのファンの強い勝利への想いが後押しして、水戸のゴールをみごとに割らせました。「スタジアム中の皆さんとともに勝点3を取ることができた」という冒頭の指揮官の言葉どおりに。1万人のスタンドは総立ちになりました。

終わってみれば、熊本20、水戸7というシュート数が物語るように、とにかく熊本は打った。パスよりもまず自分が打つ。角度がなくても打つ。打つ。これははっきりと伝わってくるくらい徹底していました。攻守の切り替えの早い相手をスカウティングして、奪ってから縦に急ぎ、そして必ずシュートで終わろうという意図もあったのかも知れません。

試合に先立ち、サポーター有志たちの活動によるペットボトル募金が贈呈されると、それに応えるように、池谷社長からは債務超過解消に目途がつきそうだという発言がなされました。株主たちは増資を行い、サポーターは募金を募った。「選手たちもそれに応えてほしい」という県民運動推進本部長の田川さんの”煽り”のような呼びかけに、5連敗からの脱出を今季初めての逆転勝利という劇的な結果で応えました。

試合終了後、この試合、2アシスト(サカくまの記録では)をあげた”影の立役者”の巻選手が、胸を張って選手たちを先導していく。それは、連敗中も顔を上げて、サポーターの激を真正面から受け止めていた姿といっこうに変わらないけれど。
すっかり久しぶりになってしまったカモンロッソ。移籍後初得点はまたお預けになりましたが、今日の勝利の大きさを物語る彼の笑顔が、夏の夜のナイター照明に浮かび上がって…。とても心に残りました。

7月20日(日) 2014 J2リーグ戦 第22節
湘南 2 - 1 熊本 (19:04/BMWス/7,519人)
得点者:48' ウェリントン(湘南)、65' 菊池大介(湘南)、78' 仲間隼斗(熊本)


まずもって、前回のエントリーに多大な(過大な)拍手をいただいて申しわけありません(汗)。いただいたコメントに感謝を申し上げるだけのつもりが、何やら拍手を要求するような内容になってしまって…。反省しております。皆さまからの激励の“お中元”ととらえて、今後も頑張って参ります。

さて、リーグ後半、最初の試合となった湘南戦。「前期、先制しながら負けて、そこからどうやってこの試合をモノにするか考えていました」というように、小野監督は多分、ずーっとそのことばかりを考えて、考えて、考え抜いての今日のゲームだったのでしょう。そして、それは選手のプレーぶりからも十分に伝わってきました。

この日、チーム唯一の得点者・仲間隼斗が、「前期も前半はうちのほうがよくて後半ピタッと足が止まってしまった印象があるが、今日は前後半とも戦えていたし、セットプレーでもったいない部分はあったが、下を向く内容ではないと思います」と言う。それは見ているわれわれにも共通したこのゲームの印象でした。

小野監督の考え抜いた戦術。陣形は岐阜戦から試している4-3-3。DFラインは前週の天皇杯・山形戦で試みた橋本、園田のセンターバックに、大迫、片山の4枚。養父、上村、黒木を中盤に。斉藤、中山、澤田のスリートップ。

基本の4-2-3-1をさらにコンパクトにし、勇気を持ってラインを高く保ち、果敢にプレッシャーをかけて奪いに行くという姿勢を鮮明にした布陣。それにスカパー解説が「前がかり」と表現するように、陣形うんぬんよりも、そもそも“攻める”(それは同時に守ることとも同義語なのですが)戦いをしようという意思と陣形を生かすために走りきるという前提が共有されていました。

20140720湘南

湘南のGK秋元が、「相手の前線の3枚がハイプレッシャーだったので前半ちょっとばたついた場面もあった」と認めるように、今日の前半は、アウェーにもかかわらず、前回対戦よりさらにアグレッシブ。熊本のシュート数6に対して、湘南のそれをわずか1に抑え込む。「湘南は、いつもより前に運べていない」と解説者が言う。

「球際のところとプレスではめるところは狙い通りできましたし、ウェリントンは多少強いなと思いましたが、ほかのところは僕らの狙いとするところはうまくできたかなと思います」と言うのは養父雄仁。湘南にサッカーをさせていませんでした。

それでも、ここ数試合に共通するように、相手を抑え込んでいて、しかし、自らのチャンスを決めきれない前半がスコアレスのまま終わります。

問題は、前回対戦時のように、後半ガクッと運動量が落ちてしまうのかどうか。小野監督はハーフタイムに、「気持ちの入ったいい試合、後半も続けよう!」「セカンドボールをしっかり拾おう!」「全体でプレスをもっと激しく行こう!」と、前半の戦いをそのままに、さらに激しくいこうと選手を送り出します。

ピンチのあとにチャンスありと言いますが、ここのところの熊本はそれとは逆。チャンスをものに出来ず、そのあと必ず失点している。

後半開始わずか3分。FKからウェリントンに頭で合わせられて失点。さらに後半20分にはCKからの“練習通り”のパスワークで菊池に決められ0-2。と、書いてみればここ数試合を思い起こさせるような失点経過。首位・湘南の底力を感じさせ、3点目、4点目…ということにもつながっていきそうにも思われたのですが…。

ただ、熊本の運動量が落ちて崩された失点ではなかったのが、この試合のポイントでしょう。(逆に言えば、流れが悪くてもセットプレーで加点できるところが湘南の強さでもありますが…)

熊本は、後半11分 、上村から仲間。25分には黒木に代えて巻。と交代カードを切る。ある程度バランスを欠いても、さらに闘うぞ、攻めるぞという意思表示。

それに対して、湘南・曹監督が 「…今日熊本さんのああいうかたちの戦い方は我々も予想したんですが、そこの1対1の競り合いや球際の戦いなどで勝てなかった場面がとくに2-0になったあとに多く、僕の交代のメッセージも悪かったかなと思っています」と振り返る。それはFW岡田を下げてDF島村を入れた交代カードを指していることは明白で、2-0とリードした後の消極的な戦い方を反省している。

熊本は、先制された後も、2点目を取られてからも、決して気落ちした様子が見られない。それどころか、そのプレーの激しさはさらに増していき、とても首位チームに0-2で“やられている”感じではなかった。

後半33分。中山のピンポイントのフィードをPエリア内で巻が絶妙に落とす。そこに飛び込んできたのは仲間でした。一矢報います。その後も何度も巻がターゲットとしての本領を発揮しました。ようやく巻の“使い方”がフィットしてきた。

スカパーの実況、解説が何度も「熊本は闘ってますねえ」と繰り返していたのは、そのファイティングスピリットを称賛しているからだけではなく、やっぱりこのボールを挟んだ激しい攻防ということがサッカーの本質のひとつであって、間違いなく見ていて面白い、引き込まれる、ということを言いたかったのでは、などと思いながら聞いていました。

もらったフリーキックの数は湘南28、熊本25。合計53は、この日のJ2のゲームのなかでは最も(断トツに)多い。熊本のファウルが多いのは意識していましたが、熊本に煽られたのか、湘南も同じくらいに多かった。しかし、見ていて、熊本のファウルは、明らかに相手との距離の問題。そこは解説者も正当に“評価”していましたね。

相手との距離を完全に詰めて、お互いにちょっと動けば足が、手が引っかかる間合い。いや、もっと言えば体で抑え込むくらいの。そこにはかわされるリスクもあるし、自分もケガをする怖さもあるだろう…。そこが球際。そこが勝負の瀬戸際。

4失点を喫した京都戦の後、FW斉藤和樹が「ボールに寄せきれなかった。あと50センチの勝負。」と表現していたその間合いが、実は自分たちのチーム戦術の根幹だった。そのことをチーム全体が体得したような。

「積極攻守 ロアッソ惜敗」「選手に自信 立て直し手応え」。試合後、明日の熊日はどんな感じの見出しなんだろうと想像していましたが、確かに言い得てはいるが、何とも長いものでした。5連敗は5連敗であり、まだ結果が出ているわけではない。しかし、リーグ後半の初戦、湘南とのこのゲーム、勝ち点を得ることはできなかったけれど、相手が湘南だったからこそ、多分、自信と同時に“確信”に近いものを得たような気がします。


7月13日(日) 第94回天皇杯 2回戦
熊本 0 - 1 山形 (18:00/うまスタ/2,018人)
得点者:87' 山崎 雅人(山形)


【サッカー、次回天皇杯決勝は横浜 国立競技場は改築工事に】47news2013/11/14 18:19【共同通信】
日本サッカー協会は14日、東京都内で理事会を開き、来年12月13日の第94回天皇杯全日本選手権決勝を横浜市の日産スタジアムで行うと決めた。東京・国立競技場以外での決勝は48大会ぶり。国立が改築工事に入るため代わりの競技場を公募し、日産スタジアムなど3会場が名乗りを上げていた。第95回大会以降の決勝会場は未定。
2015年1月に日本代表が出場するアジア・カップがオーストラリアで開催されるため、恒例の元日から前倒しされた。日程も決まり、1回戦は7月5日に始まる。



2回戦から出場した天皇杯。梅雨時に天皇杯を戦うのは初めてのことです。随分前倒しになりました。

スケジュールが変更され、決勝も元日の国立ではなくなって、この歴史あるカップ戦もさらに焦点が定まらなくなってしまったような…。しかも雨の日曜のナイトゲーム。ファンにとっては、ただでさえその存在意義やモチベーションの持っていきどころがぼんやりしてしまって。入場者数も2000人というやや寂しい会場風景。

しかし、その分、緊張感や悲壮感すら漂うリーグ戦とは違って、かなり“気楽に”観戦できるゲームであることも事実だったかも知れません。

ただしゲームは、終了間際のあっけない失点ということで、脱力感で萎えてしまうような結果に。

20140706天皇杯山形

試合序盤は、うまくゲームに入った熊本が、早くも全開の動きを見せ、何度も決定機を作ります。前節から試している4-3-3の布陣。3トップの一角には仲間が復帰して、前線から非常にアグレッシブ。養父、中山に、ユース上がりの上村を初先発させた中盤3人は、いずれもボールが持てる選手。

ここ数試合の課題だった、相手との距離感に関しては、高い意識があるのか、厳しく体を寄せる対応で、相手に自由なプレーを許さない。山形にシュートは打たれるものの、枠にはほとんど飛ばず、失点の匂いは感じない。

しかし。まあ、これもいつか見たシーン。「ここ最近、決めるべきところで決められないで相手に勢いを与えてしまう、そういった試合が続いている」(小野監督)というまさに、そんなゲーム展開になっていきます。

徐々に、きちんとボールをつなぎ、収めて前に持っていく山形。攻め込まれる熊本。

もうひとつ、今日のゲームの変数だったのは、降り続いた雨でたっぷりと水を含んだピッチ。非常にスリッピーで、お互いに足を取られ、滑り、バランスを崩す選手が続出。決定的な場面でのリスクは相当のものがあったはず。上から見ているわれわれ以上に、ピッチ上の選手たちはピリピリ感じていたのではないでしょうか。

この状況で、攻め込まれた自陣では、かなりロングボール中心でセーフティなプレーを選択する熊本。滑るピッチでは逆に、球足は速く、気温も低めで選手たちの消耗も少なく、ゲーム自体は面白い。

この大会自体の意義の問題は別として、熊本にとって、小野監督にとっては、単に出場機会を与えるために選手を入れ替えて臨むゲームということではなく、いくつかテストしたい、あるいは熟成させたい意図をもったゲームであったことを、試合後のインタビューで説明してくれました。リーグ戦を戦っていく新たなオプションを検証するための布陣というのか。われわれも、スタメンを見てすぐにはフォーメーションをイメージすることができなかったように。

「アウトサイドの選手も高い位置へ出て、そこをセンターバックが幅広くカバーするという形で、チャンスを多く作り出す」ために、大迫を使っていくオプション。「その中では、園田、橋本は大きく左右をカバーできる、それからボールを運ぶことができる」というCBのチョイス。まあ、そんな試みの授業料を最後になって払うことになってしまいましたが…。

「あそこですぽっと空いてしまった。ちょうど中間のところに立たれた選手に対してどっちつかずになってしまった。」「今回初めて組んだ2人だったので、そこのところは次に向けてしっかり立て直してくれるんじゃないかと思ってます。」(小野監督)

リーグ戦を含めて公式戦4連敗。試合後、選手たちにはゴール裏から厳しい声が投げ掛けられました。ただ、失点シーンこそ、ぽっかりと空いた一瞬の時間でしたが、全体を通せば十分に闘ってくれたとわれわれは思う。そして、仲間が帰ってきたのは熊本にとって何よりのニュース。熊本の基本戦術を体現する選手だから。

「1つの敗戦、連敗というところに選手は顔を背けない、しっかりそこを見て、ここまでも1つ1つ乗り越えてくれてると思ってます。選手にいつも言い続けているのは、『目の前には必要なことが起こる』と。『これを乗り越えろということだ』ということで、ゲーム内容としてはいい方に持っていってくれてますので、それをしっかりと結果に結びつけるということも選手はそこから逃げず、しっかり乗り越えてくれると信じてます」。そう指揮官は結びました。

大量失点での連敗に、先週は、「頭を抱えてうずくまる」と表現してしまいましたが、もうずいぶん長い間、憂鬱な月曜日を迎える日々が続いています。

こうなるとゲームのことを思い出すのも億劫なくらいですが、それでも次に向かうには…と気力を振り絞って翌日の熊日を開き、経過を振り返り、駄文を連ねていく作業を繰り返しています。

いったい何をやっているんだろうかと、自分たちもわからなくなってしまうこともしばしば。もう店仕舞いしようと思ったことも。

それでも、気が付けば多くの拍手をいただき、そのなかには有り難いコメントをいただくこともあります。

戦術分析みたいな大そうなことはではなく、嬉しい、悲しい、もっと頑張ろう…、そんな一ファンとしてのありのままの気持ちを書いているだけですが、これに共感していただき、逆に励ましをいただいている。そんな感じでもう少し続けてみようかなと、気を取り直してまた週末を迎える。いただいた拍手、コメント、そしてそんなホームチームがある暮らしに感謝しています。

7月5日(土) 2014 J2リーグ戦 第21節
熊本 0 - 3 岐阜 (19:03/うまスタ/5,550人)
得点者:34' 高地系治(岐阜)、84' 遠藤純輝(岐阜)、90'+2 益山司(岐阜)


試合終了のホイッスルが吹かれ、選手たちがうなだれ気味にゴール裏に向かうとき、どちらかというと選手たちに”優しい”ことで知られた熊本のゴール裏から、これまでにないようなブーイングの嵐が巻き起こりました。

零封3失点。まあ、われわれファンの心境としても、3連敗ということと、4点、4点、3点の合計11失点と。字面の結果だけ見れば同じように最悪の3試合がごっちゃになってしまって、言いようのない失望感に襲われ、頭を抱えてうずくまっている状態というところ。3失点目を喫した後には、席を立つ人も多かったのですが、それを止める気持ちにはなれませんでした。

しかし、待てよ、そんな感情的な対応だけに終わっていいのだろうか…。

20140705岐阜

試合後の小野監督の会見。「選手達は頑張っていると思いますが、大量失点での3連敗、何が一番の原因でしょうか?」という記者からの問いかけ。まあ、これだけの負け方が続けば、誰しも“大量失点での3連敗”、“何が一番の原因か”とひとくくりにしてしまって、同じような結果とそれに共通する原因探し、という単純な図式にしてしまいがちなのは致し方ないところでしょう。

しかし、この質問に対しての小野監督の答えをきちんと整理して理解したい。
「京都戦は、残念ながら大黒選手の動きに対応しきれず、ある程度いい戦いはできたんですけどかき回されたという感じがありました。それがちょっと尾を引いて、前節はボールに行くのができなくなってしまって…」「前節(筆者注:愛媛戦)はボールに対してプレッシャーがかけられなかった部分はあると思います。」

京都戦から愛媛戦への負の連鎖のような流れから、熊本のチーム戦術の土台に関わる部分が機能していなかったことを認めている。ある意味で愛媛戦は完敗だったということを。

今日はまさにその「アグレッシブに、勇敢にプレッシャーをかけて行けるか」というチームのベースを問うようなテーマを懸けたゲームだったこと。そしてそれが、今日のゲームでは、きちんと修正されて「選手はそれを100%やってくれた、そういう試合だったと思います」という総括をしている。

それに呼応するようなコメントが、敵将・ラモス監督からも。「3-0の結果じゃないと思いますけどね。1点差の勝負だったんじゃないかと思います」。

もちろん勝利した側の、敗者をおもんばかる余裕の部分はあるにしても、「相手のトップ3人のプレッシャーにけっこうやられてたから、なかなか後ろからつなぐことができなくて…」という部分は本当だろうし、「チーム全体で皆90分走れる」「なんでこのチームが勝てないかなと思ったくらいに、結構印象的」などなど、かなり饒舌に語ってくれているその熊本への印象は、正直な部分が多いと思う。

よくよくゲームを振り返ってみれば…。確かに先制点は滅多にみられないような(アクシデントとも言えるお粗末な)ミスでした。後半も遅い時間帯、84分の岐阜の追加点が決まるまでは、熊本が同点に追いつくのも“時間の問題”と思わせるように攻勢が続いていたわけで。同点にさえできれば、一気に逆転もあるとも思わせる時間帯が長く続きました。

ただ、惜しむらくはチーム自身が、“大量失点での連敗”の呪縛なのか、せっかく奪ったボールをうまく生かせない。スリートップと後ろの選手との距離が“遠い”。チャンスは数多いが、ゴール前に飛び込む選手の数が足りず、決定機とまでは至らない。

得点を奪えない間が長く長く続き、そしてサッカーでよくあるように、痺れを切らしたようなDFのミスによる2点目の失点。あの場面、前を向いている方が有利だとはいえ、1対1で振り切られた”個人”の部分はあまりにも歯がゆい。最後に股を抜かれたGKも…。

3失点目は、園田のチャレンジで人数が足りなかった分、スライドできなかった。右サイドから上がった益山が点を決めるという岐阜のひとつの得点パターンにやられました。

ミスを名指しするわけではないのですが、”育成”がコンセプトの今年の熊本。南がいなくなったGK陣もまさしく”育成”の最中なのかと思います。厳しい言い方かもしれませんが、相手GK・時久とのコントラストがチームの現実を浮かび上がらせてくれたような気がしました。あの川口の前で、なかなか出場機会に恵まれない時久が、巡ってきたチャンスに勇気をもってチャレンジしたことが想像できる。大津高校時代から鳴らしたPKストッパーを”当たらせて”しまったように、シュートを止められてしまいました。

GKもまた育成過程であれば、競争原理を働かせるべきだと思います。次は天皇杯というカップ戦でもあるし、いい機会かも知れません。

ただ、収穫もありました。大迫の右SBでの先発。そしてフル出場。奪ってもなかなか前に行く迫力が欠ける前線で、彼のクロスの精度とタイミング(これがいわゆるセンスということかも)は、必ずや生きる場面があると思う。小野監督が「大迫希は自分の武器というのをフルに発揮してくれたんじゃないかと思う」というように。

「何よりも大切なのは、決してネガティブにならず、今日やったパフォーマンスを続けていくべきだと思いますし、いろいろとそこをほじくる必要はないと、それぐらいの試合を今日はしてくれたと思ってます」。そこまで小野監督は選手たちを称え、そして同時に鼓舞しました。

それは、この試合の失点の理由がきれいに整理できているからであり、それよりなにより、愛媛戦で失われた”熊本の戦い方”のベースの部分が、この試合で持ち直されたことを評価しているからでしょう。逆に言えば、それを失うことを最も恐れているように思えます。それがないと小野・熊本は闘えないのだと。

この試合で今シーズンの前半戦を終えました。その折り返しの節目まで来たところで、これまで積み重ねてきた基礎、土台の部分を失ってしまっては、なにを修正しても、なにを加えても仕様がない。小野監督は、そう確信しているのではないでしょうか。