9月28日(日) 2014 J2リーグ戦 第34節
熊本 0 - 1 北九州 (13:05/うまスタ/7,026人)
得点者:75' 渡大生(北九州)


先週のホームゲームの肌寒い空気から一転して灼けるような強い陽射し。気温は30.8度。選手のコンディション面にも影響するだろうな、と。ちょっと心配でした。

「選手たちも最後の最後まで走って何回もチャンスを作って、ゲームはかなりコントロールしてくれた」
「相手がある程度引いて守ってそこからカウンターというのは分かっていたので、それに対してどこをどう抑えていくか、どうボールを奪うか、攻撃の糸口をどう掴んでいくか…」
「勝点に結びつけられなかったのは私の責任」
ゲームの見え方としては、小野監督の会見コメントの通りだったでしょう。

20140928北九州

序盤、基本戦術通り、アグレッシブなプレスで主導権を奪う熊本。

「前半は入りが悪くて向こうのペースになってしまった」「しっかり耐えてどこかで自分たちの流れに持っていこうと…」(北九州・大谷幸輝) 

ゲームを立て直すようにしっかりと引いて守備ラインを固める北九州。攻撃はロングボール中心に前線に当ててくる。セカンドボールは熊本に分があり、そこから揺さぶりながらチャンスを窺う。シュートの意識は高く、それなりの数は打つが、決定機というまでには至らず。

結局、前半はスコアレス。思うようにいかない前半でしたが、カウンターからの失点という事態にはならず、まあ、後半勝負。悪くないと気合を入れ直してハーフタイムを迎えました。

両監督のハーフタイムのコメントは、小野監督の「攻撃のタイミングを自分たちでつくろう。攻守の切り替えの意識を。」に対して、柱谷幸一監督は「球際を厳しく、しっかりとやる。ブロックをしっかり作って対応すること。後半は点を取って、勝って帰ろう。」でした。

始まった後半は、まさにお互いそのコメント通り、さらに守りを固め、カウンター狙いを徹底してくる北九州。熊本のポゼッションはいっそう高まってきますが、正直なところ、これは熊本の形ではなく…。

「最後の最後まで、かなりボールを運んでチャンスを作ってくれたんじゃないかなと思ってます」(小野監督)。

ブロックで固めた北九州に対して、タテもサイドもなかなか付け入る隙を見つけることは難しい。後半20分前後、何でもない局面で熊本の対応がほんの少しずつ遅れはじめます。

危ないなあ…。と思ったところで、仲間→養父、巻→黒木。やや早めの交代カード。今日の暑さのせいなのか、徐々に熊本の足が止まりはじめます。一方の北九州は、その前に前線の原に代えて渡を投入。その交代が奏功します。

カウンターぎみに池元のパスを受けた渡がドリブルで中央突破。熊本は背後から追いかける。橋本のスライディングも空しく、畑もキャッチしに体を投げ出しますが、それをも交わした渡が、無人のゴールに流し込む。後半30分のことでした。

それでも残り15分。前節の大逆転劇を見ているファンは、最終盤の巻き返しを期待しましたが、残念ながら、チームの消耗は如何ともしがたく、相手を突き崩す“脚”は残っていませんでした。

「何度かあるチャンスをしっかり決めていかないとこういう結果になる。その辺のところはしっかりと、簡単にそれを次の試合でということにはならないんですけれども、しっかり認識したうえで、また次に向けて頑張っていきたいと思っております」(小野監督)

今日の90分のゲームのなかで言えば、勝敗の分岐点は前半の特にゲームの入りの部分にあったということなのでしょう。特に引いて守る相手を引っ張り出すには先制点が一番なわけで…。

ポゼッション率が高くなると、逆に勝率が下がることもあるというプレッシングサッカーの典型のようなゲームでしたが、今日の敗因を問う記者の質問に対する小野監督の総括はいかにもあっさりとしていました。しかし、それは今日の敗因についてチームの戦術自体がどうこうという話しではないということを暗に言っているような気もします。

敗戦の悔しさ120%の気持ちも含めて言えば、今日の勝敗という結果に対する反省点は少なくないし、まだまだその戦術にチームのスキルが追いついていない部分もあるかもしれない。けれど、それでも、口悪く言えばまさに8-0-2のシフト、前半から引いてブロックというサッカーよりも熊本の今のサッカーは断然、面白いし、エキサイティングだと思います。

「スピードアップすべきところと…、落ち着いてボールを動かした方がいい局面とがある…。その局面の共有というのが1つ、重要なところでした。」「…選手たちの判断はかなりいい形で、しっかりとボールを動かす所は動かす、その局面は作ってくれたんじゃないかと思います」(小野監督)

一朝一夕にどうなるというものでもない大きな課題ですが、多分、監督のなかでは戦前からその部分に意識があったのだと思います。まあ、このコメントも分かったような、よく分からないような…。多分、話せない部分のほうが大きいのでしょう。敗戦の後で、変な話しですが、残り8試合、どんな形で、どこまでの答えを見せてくれるのか、楽しみではあります。

9月23日(火) 2014 J2リーグ戦 第33節
岐阜 2 - 3 熊本 (13:04/長良川/7,328人)
得点者:13' 阿部正紀(岐阜)、21' 遠藤純輝(岐阜)、77' 澤田崇(熊本)、86' 巻誠一郎(熊本)、90'+2 園田拓也(熊本)


勝った。勝ちました。大逆転勝利です。

ただ、この驚くべき結果にしばし酔いしれるとしても、これはベストゲームうんぬんとは違う、現時点でチームの今シーズンを集約したようなゲーム。色んな要素がぎっしり詰まっていて、ひとつひとつの噛みしめる価値のある、そんな試合でした。

試合後の会見、記者にもそんな雰囲気が伝わったのか“この勝利の意味は何でしょうか?”との質問が。小野監督は「苦しくなったときにチームが一つになれるか。これはプレシーズンの時から取り組んできた。1失点しては意気消沈した苦い思い出を繰り返した。今日、強い気持ちで戦えたのは、これらの日々の成果だと思っている」と、胸を張って(多分)答えています。

20140923岐阜

さて、データ的には、平均タックル数26で1位の熊本と25で2位の岐阜。同じくファウル数17で1位の熊本と15で3位の岐阜。その数字が示すように、激しい球際のせめぎあい、ぶつかり合いでゲームが始まりました。序盤、熊本が押し込み、チャンスを作りますが決めきれず、岐阜も負けずサイドにスピードのある若手を走らせ押し返します。

「これは私のミスで、遠いラインで何が起こっているかわからず判断が遅れた。それは私のミス。」(小野監督)

前半3分、熊本の左サイドを駆け上がる岐阜・比嘉を、橋本が倒し早々とカードを貰ってしまいます。このFKは凌ぎましたが、同じく前半12分、またも熊本の左サイドで岐阜・森が仕掛けると、今度は仲間が振り切られまいと止めてファウル。そしてこのFKを高地がゴール前の阿部に合わせ先制を許します。

さらに、前半21分、前がかりで岐阜ゴール前に攻め込んだ熊本、奪われたボールは、またも岐阜・比嘉にわたり、熊本の左サイドでカウンター。中央を駆け上がった岐阜・遠藤にわたり、あっさりと追加点を決められてしまいます。

まさに「2失点食らった」(小野監督)という感じの、まったく同じパターンで破られた痛恨の場面でした。

まだ試合は序盤。しかし、この季節にしてはやや暑い26.8度。中二日のコンディションで2点のビハインド。かなり苦しい状況に追い込まれたことは間違いありませんでした。さらに、そんな熊本、前半43分にはアンデルソンが足を痛めて×印が出る。澤田の交代投入を余儀なくされます。うーん厳しい…。

前半のシュート数は岐阜9本に対し熊本はわずか1本。いかにうまくいっていなかったがわかります。前半途中までは、片山や園田は今日はベンチかな?と思うくらい、サイドを封じ込められていました。

ただ、不思議なことに今日も2点差。前節、前々節とは逆の立場ですが、2点リードした側の気持ちがよくわかるだけに、まったく戦意は衰えず、まだまだ戦える。そんなイメージは共有されていたように思います。

小野監督のハーフタイムの指示も「次の1点で大きく状況が変わる。相手を苦しめよう」と。そして「 勝てる試合だ!後半は走るぞ!」と檄を飛ばしました。中二日で苦しい状況のなか、精一杯、選手のモチベーションを掻き立て、“まず1点”という具体的な目標を授けます。

後半も、やられはしないけれど、うまく繋がらず、なかなかシュートまでいかない。思うようにいかない。時間だけが過ぎていく。しかし、そんなストレスが溜まるような時間帯も、選手はひとつひとつのプレーを大事に戦っていたような印象があります。無理して繋がず、きちんと切るプレー。ファウルを取られても、されても、レフェリーの判定に対して実にクールでした。焦らない、めげない。全員の集中した”ポーカーフェイス”が印象に残ります。そう、サッカーは90分を闘うゲームでした。

熊本の戦術はと言えば、まったくブレはなく。剥がされても、いなされてもひたすらプレッシャーに行く。奪えばゴールへの最短プレー。失点後の長い我慢の時間帯を凌いで押し返し始める。一方で岐阜の足が徐々に止まっていくのがわかります。

しかし、今日の澤田。そのキレ方は尋常ではありませんでした。アンデルソンの足は心配ですが、120%の結果論で言えば、この交代が逆転の伏線だったかもしれません。

後半7分、中央の中山からの浮き球のスルーパスに反応して裏に抜け、ゴール前右に走り込んだ斉藤にふわりと浮かせて合わせたシーン。後半11分、中央で浮いたルーズボールをおさめ。単独で相手DF3人に囲まれながら強引に前に持ち込みシュート。さらに、後半17分にはエリア付近右サイドからのスローイン、ゴールマウス右に深く切れ込んで受けたシーン。熊本の押し返しも、ついにスイッチが入った。そんなシーンが続きました。

そして後半32分、岐阜陣内で相手DFが頭でのバックパス。浮き球でコントロールしにくい。狙っていた澤田がこれを逃すはずもなく、一瞬早くスタート。スピードで上回ってかっさらうとGK川口をかわし落ち着いて流し込む。さあ、いけるぞ。反撃の狼煙でした。

直後の後半33分。またも澤田。岐阜陣内の右サイド。スローインからのボールをおさめるとドリブルで中に切れ込む。相手DFを股抜きで交わして中央でフリーの岡本にラストパス。熊本の攻撃はいよいよトップギアに入ります。

これに対して後半35分。岐阜3枚目の交代カードはDF森→FWナザリト。1点差に迫られて残り10分。この場面、追加点を奪い、突き放す。“とにかく弱気になるな”というラモス監督のメッセージでした。

まだまだ1点ビハインド。熊本の攻勢はさらに続きます。後半も残りわずかの41分。相手ゴールキックをおさめた橋本が中央を駆け上がる。降りてきた斉藤に預け、一旦、右サイドの澤田に展開。澤田はフォローにあがってきた園田へ。起点ができる。園田は中を見て、斉藤とクロスしてスペースに受けに出た岡本へ。そのとき澤田は園田の外側をまわりこんで、ゴールライン方向へフリーラン。岡本はマークするDFをかわすと迷わず右サイドのスペースに。DFを振り切って受けた澤田はゴールライン方向、ゴールマウス真横まで深く深く切れ込むドリブル。もう充分なタメ。中央で相手DFの背後からギリギリまでタイミングを計って飛び込んだ巻に、会心の折り返し。体を投げ出してキーパーより一瞬先に触った巻の勝ち。頭ではないが実に巻らしい同点弾!

思わず、テレビの前ですが、家中を走り回ってしまいます(笑)。現場はどうだったのでしょう。これはもう勝ちに行くしかない。スカパー解説の森山泰行氏も「この逆境から勝ちにつなげれば、チーム力が伸びるチャンス」とコメント。

そして、ついに後半アディショナルタイム5分が告げられると、後方、中山からの連続したフィードを前線で巻が競り勝つ。リターンを斉藤がダイビングで競り勝ち、トップ下の位置にいた岡本がおさめる。岡本の前方には相手DF3枚に対し、澤田、巻の2枚が裏をねらう重心で構える。いったんドリブルで前に運ぶ岡本。そのとき、岡本にはどんな視野が開けていたのでしょうか。

中央で構える澤田、いったん右方向へ動き出し相手DFを巻くように、逆にくるっと方向を変えて左へ。自分へのスルーパスを通すスペースを作る動きでしたが、一瞬、右側で余っていた相手DFサントスは澤田に引っ張られたのかバランスが左に傾く。岡本はその澤田の動きでできたエリア右のスペースを見逃さず慎重なグラウンダーのボールを置くように流し込む。そこにトップスピードで走りこんだのはSBの園田。一瞬の迷いもなく、エリアのわずか外側からニアサイドにダイレクトでしっかりとミートした。横っ飛びのGK川口が伸ばした手はわずかに届かずネットに突き刺さりました。ついに逆転。なんということでしょう…。

試合後の敵将・ラモス監督は「2-0は一番危険」「2-0が一番怖い」と、二度にわたって言及しました。しかし、それを嫌というほど味わっているのはこちらも同じ。横浜FC戦で悔しい思いをし、栃木戦でも肝を冷やしました。しかし、この日は、逆の立場で”それを”相手に示しました。

フ~っ。まだまだ興奮は冷めません。こんなゲームですから熊本の好プレーを挙げればきりがないくらいです。何度も何度も繰り返し録画を再生して見てしまいます。しかし。90分を戦うのがゲームなら、42試合を戦うのがリーグ戦。たとえば今日の熊本、前がかりになるのは仕方ないとしても、解説者も指摘したようにいかにも軽いボール扱いから奪われピンチを招くシーンも目立ちました。勝てば、そんなことも忘れてしまいがちですが…。

「勝点3はどんな形であれ3であることに変わりない。でも負けたら0。常に新しい試合に向けて、全力でプレーしないといけない。シーズンを通してあきらめないで最後まで戦えるように、フレッシュな気持ちで臨みたいと思います」。(巻誠一郎)

この言葉でもって、今日のお祭りはいったん記憶のなかに仕舞い込み、次の戦いに備えることにします。

9月20日(土) 2014 J2リーグ戦 第32節
熊本 2 - 1 栃木 (16:03/うまスタ/5,218人)
得点者:58' 齊藤和樹(熊本)、69' 齊藤和樹(熊本)、88' 大久保哲哉(栃木)


気温20.3度。16時キックオッフのゲーム。このあいだまでの真夏日がうそのような。スタンドでは肌寒さを感じる季節になりました。

この日の栃木にも、前線には西川という”高さ”が立ちはだかり、さらには近藤という高さ、強さを併せ持つ”曲者”の存在がありました。立ち上がりこそ、熊本が出足良くチャンスをつくり、ゲームをコントロールしましたが、徐々に栃木ペースに。サイドでうまく起点を作り、人数をかけてドリブル、ワンツーで仕掛け、熊本のクリアやファウルを誘う栃木。CKやエリア近くでのFKなど危険なセットプレーが延々と続いた前半でした。

20140920栃木

「コーナーキックも多かったので、どこかで1本でも決めなきゃいけなかったと思います。」と栃木・西川優大。

しかし、スタンドのわれわれのドキドキ感とは違って「前半はたくさんコーナーを取られたけど、前節コーナーキックからやられていることもあって、皆すごく集中して跳ね返せた。」(片山奨典)
「前半は我慢する時間かなという感じだったけど、前節セットプレーで2本やられているので、皆にも集中しようと声かけしていました」(園田拓也)

崩されているわけでもなく、相手の攻勢というわけではないけれど、うまくセットプレーの状況を作られているような感じ。相手のロングボールもあって、熊本のハイプレスも今ひとつハマり方が不十分。園田の言うように、ここは“我慢”。そんな前半をスコアレスで終了しました。思えば、ここを凌いだことがひとつの勝敗の分岐点だったような。

ハーフタイム、小野監督は「後半も引き続き、全体でハードワークをしよう。」「前線からプレッシャーをかけよう。」と、普段通りのアドバイスを送ると同時に、SB大迫を下げて、篠原を入れ、園田をサイドに出すという戦術的なカードを切りました。

ベンチにいた篠原が「前半、マッチアップで少しズレがあった…」と表現していますが、それはスタンドのわれわれもミスマッチを感じるくらい。何らかのシステム的な対処が必要だったのでしょう。

小野監督は「特に左の近藤(祐介)選手が攻守に渡って大きなキー…」「どうしてもあそこにロングボールを入れられて」「園田の場合…あそこをしっかり高さでも抑えることができて…」とその意図を説明しています。

しかし、指揮官が「大迫は決して悪くなかった」というように、前半24分にゴール前に走り込む斉藤にピンポイントで合わせたアーリークロス。前半36分に養父からのロングフィードに反応して、自らピッチ中央に駆け上がり相手DFとの勝負に持ち込んだシーン。いずれも決定的なシーンを演出しています。「それが得点になっていたらまた別の展開もあった」と言うように・・・。決まるかどうか。多分それだけ。試合展開のなかでの戦術的な交代ということなんでしょう。

そして後半。「相手は前から来ていたし、皆プレッシャーにビビっていたので、うまくいなせるぐらいのつなぎが特に中盤では必要だし、自分たちが奪っても相手が多い所に持って行ってまた取られてる。」(栃木・近藤祐介)

熊本のプレスがハマりはじめ、徐々に攻撃にもリズムが。後半11分、相手DFへのプレスから、中盤で奪ったボール。養父がタテに入れると澤田が抜け出して決定的なシュート。これはGKの左手一本のセーブに阻まれますが、得点の匂いは十分。
そして後半13分、最後列の橋本から、低く速い“パス”が右サイドのスペースを駆け上がる園田にピタリ。ダイレクトの折り返しに齊藤が一瞬GKより早く、アタマで合わせ先制します。

「アンジー(アンデルソン)が前節取って、アンジーじゃなきゃタメだと言われるのも嫌だし、後半しっかり取れたのでよかったです」という意地のゴール。そしてなんと彼の今季ホーム初ゴールでした。

待望の先制。1点リード。さぁ、どうする?

直後の後半18分、熊本は仲間 → 巻の交代。ここは明確に追加点を奪いに行くメッセージです。巻が入るとゲームがラクになる(ように見えます)。前線での空中戦の勝率が一気に上がります。

後半24分、畑からのフィードを巻が簡単に(簡単に見えるだけですが…)おさめ、養父に預ける。そのリターンを絶妙なタッチで澤田がエリア内に持ち込んで得たCK。ショートコーナーから出てきた中山のセンス溢れる浮き球のラストパス。斉藤がトラップ一発、豪快に蹴り込んでこの日2点目をねじ込み、一気にチームのトップスコアラーに踊り出ました。

中山は、そこに「誰かがいるだろう」と瞬時に判断した。齊藤は「(中山)はああいうプレーが得意」と準備し、GKを見ずに「感覚で撃った」。ようやく息がピッタリあってきたことを思わせます。

さて、2-0。2点リードして残り時間20分。本当なら、勝ち点3を皮算用できる状況なんでしょうが。この弱気な雰囲気。多分、スタジアムの誰もが、前節、横浜戦の悪夢がアタマによぎるのを振り払うように、ゲームに、目の前のプレーに意識を集中しようとしていたのではないでしょうか。

案の定、後半28分には イ・ミンス → 大久保哲哉のカードを切る栃木。西川とのツインタワーにして強力なパワープレーのシフトを敷きます。

まさに、ゲームはここから正念場。しかし、今日の熊本。前節の悔しいドローをバネにあくまでも前から激しく、時にはうまく時間を使いながら…、ゲームをコントロールしようと踏ん張ります。

「前節も追いつかれる経験をして、今日は皆で守り抜こう、絶対やらせないという気持ちが出ていて、やられる気はしなかったです。ラインを上げられる時にサボらず、押し込まれて下げる位置が低くならないように最初の段階で1歩でも2歩でも上げることは意識していました」(橋本拳人)

それでも終了間際の後半43分。大久保の“パワープレイ”に屈し、1点を返されてしまう。そのとき、イレブンは円陣を組むように集まり、何かを確認しあうように声を掛け合いました。それは、忘れていましたが、今シーズンの開幕戦で見たシーンと同じでした。土壇場で福岡に1点返され、追いつかれそうになった試合。指揮官の教え。「失点したら一度集まれ」。

守るのか、攻めるのか。11人の意思をしっかりと統一しました。そして、5分に及んだアディショナルタイムを凌ぐ。栃木は最後の猛攻。ゴール前に入れられた大きなクロスに大久保が”かぶる”。味方に当たってこぼれたボールを畑ががっちりとキープした瞬間、終了の笛が鳴る。久々のホームでの勝利を手にしました。

ゲームの経過はドキドキでしたが、前節と似たような展開の”課題”も克服し、試合自体は、あるいはその内容は、前節も書いたように、手ごたえが着実に増している感じで、それは今日もまた少し積みあがったように思います。何となくだけど、確実に負けなくなってきているような、そんな感じですね。

「まだまだプレーオフは目指せると信じてます。」(小野監督)

いやいや、われわれも忘れているわけではありません。残り10試合。6位大分との勝ち点差は10“しか”ありません。中2日でまたゲームです。

9月14日(日) 2014 J2リーグ戦 第31節
熊本 2 - 2 横浜FC (19:04/うまスタ/8,234人)
得点者:35' アンデルソン(熊本)、51' 仲間隼斗(熊本)、77' 野崎陽介(横浜FC)、84' 松下年宏(横浜FC)


ちょっといつもより遅れてスタジアムに到着したわれわれの耳に飛び込んできたのは、騒然とも言えるようなブーイングの嵐。それは場内アナウンスでアウェーチームのGK・南の名前が紹介された瞬間でした。

4年間、熊本の守護神としてゴールマウスを守り続けた男が、今日始めて相手チームの一員として”うまスタ”のピッチに立っていました。そこに浴びせられる壮大なブーイング。しかし、自身のブログで書いたように、それは彼の”望むところ”でもありました。

キックオフ直前。熊本のゴール前にスタンバイした畑へ送られた「ミ・ノ・ル!」コールも、いつもより増して力強い。「今はミノルがわれわれの守護神」。畑にとっても、今日は特に期するところがあったに違いありません。

前半戦では、齊藤の貴重なゴールで下した横浜FC。しかしその後、ここまで13試合負けなしと好調を維持し、プレーオフ圏内を窺う9位につけている。なかなかの難敵です。

20140914横浜

千葉のケンペス。札幌の都倉。大分のラドンチッチ…。彼らの圧力と闘ってきたように、このチームにも前線にパク・ソンホという191センチの高さがありました。「相手のロングボールというのはわかっていたんですけども」(小野監督)と言うように、前線のパクをターゲットにして組み立てる横浜。対する熊本は、橋本、キム・ビョンヨンという若手コンビが初めてセンターを組むDFライン。完全に2枚でパクを挟み込むスタイルで相手のターゲットを潰しにかかります。

9月もなかばのナイトゲームは気温24.7度。選手もゲーム序盤からパワー全開の思い切った動き。「立ち上がりから相手にプレッシャーをかけ続けてくれて、何度もチャンスを作ってくれました」という小野監督。

ただ、今日のプレッシャーは、好調、横浜をさらに圧倒しようという気持ちというか、気迫というか、いつにも増して激しく、執拗。それはやはり、南の守るゴールを割りたい!という一心ゆえか。そんな選手の気持ちがスタンドにいるわれわれにもシンクロする。

「前半は相手の土俵で同じことをやってしまって…それ以上に相手のプレッシャーが強くて、それは想定していましたけど、もろに受けてしまって。」(横浜FC・松下裕樹)

先制点は熊本。横浜の波状攻撃を凌いでのカウンター。自陣から養父が前の仲間に出すと、見事に前に向き直りすかさず左に流れた齊藤へパス。仲間も飛び込みましたが、齊藤が入れたクロスにニアで合わせたのはアンデルソン。2試合連続のゴールとなりました。

ただ、横浜にもチャンスがなかったわけではなく。しかし、GK畑の片手一本のクリアや、ゴールマウス前の密集のなかでのキープなど、熊本の最後の守りに塞がれる。前に出る積極性も今日は光る畑。試合前のあのコールが気迫を注入して、”今日は当たっている”。そんな感じが伝わりました。

そして早めに欲しいと思っていた追加点は、後半6分。澤田からのスルーパスに仲間が飛び出してシュート。芯を捕らえていなかったのが幸いしたのかも知れませんが、南の脇をすり抜けて、ゴールに突き刺さります。もうスタジアムは歓喜の渦。

2点リードして残り40分。まあ、2点リードすれば、誰が何と言おうと、勝たなければいけないわけですが。これで終わるわけはないのが今の横浜の底力であり、敵将・山口監督の采配でもありました。飯尾、野崎という曲者を入れてくるなかで、「並びというか立ち位置をちょっと変えた」(山口監督)。そんななかで、さすがに熊本の運動量も多少落ち、やはり横浜の攻勢、バイタルへの侵入にチェックが遅れジリジリとラインが下がりはじめます。

対する熊本のベンチワークは、後半14分に仲間に代えて黒木。これは前節と同じく、まだ追加点を取りにいくんだというサインに見えました。しかし、24分に大迫に代えて藏川が入ったところでは、ピッチ上の誰もが「守りきる」ということで頭が一杯だったのではないでしょうか?しかし、それにはまだまだ長い時間が残されていました。

後半32分、CKから野崎に決められ、さらに、39分には、FKを直接松下年宏に突き刺される。いずれも横浜の得意とするセットプレーから。ここまで気を吐いていたGK・畑でしたが、セットプレーへの対応には、まだまだ未熟さを見せてしまいました。

それにしてもアンデルソン。日に日にフィットしてきている。コンディションが上がっているのがはっきりわかります。

「特にディフェンス面で、かなり効果的にプレッシャーをかけてくれて、前線で起点になって、ゴール前でも頑張ってくれました」と小野監督。

そしてこの試合の終盤、連続した2枚目のカードで退場。もちろん引き分けという試合結果も残念ですが、それにもまして…。この退場劇はどうなんでしょう。

熊本としてはホームで追いつかれて、終盤で「絶対に勝ち越してやる」と誰もが思っていた場面。遅延行為をする意味のない場面で、何であのプレーがカード(遅延行為)なのか?アンデルソンにそんな”意図”があったかどうか。

「彼としてはもちろん、オフサイドじゃないと判断してのプレーだったと思います。私も、声を出しても中には聞こえない状況でした。その中で、必死でゴールを奪おうとしていた姿勢、判定は判定として受け入れながらも、私は彼のゴールを目指す姿勢は評価しています」と小野監督はアンデルソンを庇いながら、やんわりとジャッジを批判しました。

そして何より残念なのは、このことでの次節の出場停止。これはもう、頭を抱えて参ってしまうくらい残念で仕方ありません。

それでもアンデルソン退場後も、アディッショナルタイム4分が告げられても、熊本がゴールへ迫る勢いは衰えませんでした。最後の最後の澤田の完全な決定機。完璧なシュートはしかし、名手・南の左手に触れられて、枠の外に追いやられてしまい、万事休しました。

振り返ってみれば、2点も先取したにもかかわらず、追いつかれた残念な試合。しかし、失点は結局セットプレー。それに繋がる”高さ”の課題。熊本の守護神・畑は今日、積極的な飛び出しで絶対絶命のピンチを数多く凌いだ自信とともに、たった一度の痛恨のミスの怖さを、改めて思い知ったのではないでしょうか。

そういう意味では、両チームのGKにスポットが当たった試合ではありました。後半、あれほど南の背中に激しいブーイングを浴びせた熊本のゴール裏は、試合後一転して、熱い「雄太」コールを送りました。それは彼が在籍した4年間のファンとの”蜜月”を感じさせるに余りありました。「これからは互いにライバルとして上を目指そう」。準備されていたメッセージがゴール裏に掲げられました。

南の守る横浜のゴールを、まずは古巣相手のアンデルソンが破り、在籍中ずっとシュート練習に付き合った仲間が破った。南を二度もゴール前で腹ばいにさせたことには、胸がすく思いでした。しかし敵もさるもの、セットプレーからの2得点で追いついた。そして最後は、南が熊本・澤田の決定機を防ぐ。”意地”のぶつかりあいのようなゲームでした。

最後に南が弾いたボールに詰めた岡本がDFに倒された場面は、主審に流されてしまいましたが、PKではなかったのかという意見があります。もしそうなっていたら、またドラマチックだったでしょうね。時間にして完全に最後のプレー。勝ち越し点を阻止するために両手を広げて立ちはだかる南。札幌戦でのPK失敗を背にして立つ岡本。ゴール裏からの怒涛のような声が想像できます。果たしてその結果はどちらに転んだのか…。

残念なゲームほど学ぶべき教訓、取り組むべき課題がてんこ盛りのはず。チームの進化、成長はいよいよ手応えを増してきました。選手たちも皆、最後の最後まで闘っている。

残念ではありましたが、それは、がっかりした、とか、意気消沈などとは違う。あと5分でも時間があれば、あるいはという感覚。次のゲームが待ち遠しい。もっと言えば、好調なチーム、上位チームとやってみたい。この残念な気持ちはそうやって晴らしたい。今はそう思ってしまうくらいの状況ではないでしょうか。

9月6日(土) 2014 J2リーグ戦 第30節
大分 0 - 1 熊本 (19:03/大銀ド/20,636人)
得点者:80' アンデルソン(熊本)


「総力戦」と銘打たれた年に一度のホーム大分の大イベント。今日のバトルオブ九州、たまたまでしょうが、そのタイミングに重なってしまいました。2万人以上が埋め尽くした大銀スタジアム。”隣町”とあって、熊本からも多くのサポーターがゴール裏を赤で埋めたものの、騒然としたその雰囲気に、ベンチからの指示は全くピッチ上の選手には伝わらないような状況でした。

ここまでの大分との対戦成績は2勝5分。たしかに負けなし。悪い印象はないにしても、相性がいいという印象もない。なにか勝ちきれない、決着がついてない感じとでもいうのか。それは、過去のスコアが物語る。新しいほうから言えば、1-1、2-1、0-0、2-1、2-2、1-1、0-0。どれもロースコアで勝ちゲームも一点差という状況。全く互角だとも言えました。

そして、大分のここ5戦は、天皇杯で鳥栖に黒星を喫した以外は、リーグ戦負けなし。大宮から補強した新加入のハイタワー・FWラドンチッチが、得点源になっている。

20140906大分

ゲーム序盤、やはりラドンチッチにボールを集め、攻め込む大分。前節、札幌戦である意味“高さ”に屈した部分もあった熊本。今日は、さらに高く屈強な大分の前線のターゲットに加え、「威圧感を感じた」(小野監督)というアウェイ2万人の大声援。「プレスに行く前に前線に送られ、セカンドボールを拾われてしまいました。」(小野監督)という大分の戦術もあって、ちょっと浮足立った熊本の立ち上がりでした。

しかし前半20分頃、仲間がPA内でドリブル。一人交わして、この日チーム最初のシュートを打ったあたりから、徐々に落ち着きを見せ始めた熊本。その後何度も大分ゴールを脅かし始めます。ただ、決定機には至らず。尻上がりに熊本優勢という印象で前半が終了。

そしてハーフタイムを挟んで戦局は大きく熊本に傾いていきますが、この間の戦術的な分析で両監督の見立ては完全に符号しています。

小野監督は、「ラドンチッチ選手はJ1、J2を含めて、あの高さは圧倒的」と見ていました。その対策として指揮官は、「高さで対抗するために背の高い選手を並べる」のではなく、「サイドバックを高い位置に上げボールを動かし、相手にボールを入れさせない」という方策を選びました。そして、「純粋に高さで勝負するよりそっち(ボールを動かす方)で対抗できるメンバーを選びました」という。

対する大分・田坂監督。「…センターバックの間にボランチを入れ、サイドバックを上げて押し込まれました。前半からその傾向はあったのですが、後半はもっと積極的に来た。」「相手と同じようにサイドバックを上げてミスマッチを作れば良かったのだが。そこに差が出たのだと思います」と言う。

ここに、この試合の勝敗を分けた戦術の”分水嶺”があったようです。

大分はあくまで、ここまで得点を量産したラドンチッチにボールを集める戦術に固執しました。確かにラドンチッチは、その高さから前線でボールを落とせる。けれど、そのパフォーマンスには、徐々に翳りが。しかし、大分はあくまで固執しました。

それに対して熊本は、小野監督がハーフタイムに、「ロングボールを競る選手とセカンドボールを拾う選手の修正をし、ハイボールに対して怖がらないように」指示した。

「サッカーは90分で様々な場面の中でプレーの選択が必要ですが、今日は90分間同じペースでやってしまった」とも反省する坂田監督。指揮官の意識と、ピッチ上の選手と、イメージが少し違っていたのかなと思わせるコメントですね。

スカパー解説も今日の養父のパフォーマンスを絶賛していましたが、われわれから見ても、中盤の底からトップ下まで、自在に動き回り、ワイドなボールの配球は今日の熊本の戦術を体現していました。ここまで自由を与えられることはあまりないのだけれど、と思っていましたが…。「ウチはある程度セットして守るのでボランチが空く。」と大分・高木和道選手が言うように、後半は熊本が大分陣内を脅かす時間が増えていきました。

前節、札幌の高さに完敗した熊本のDF陣。都倉に対していいところなくやられてしまった橋本。今日のラドンチッチをどう封じていくのか、相当な覚悟で臨んだに違いありません。先の小野監督の指示通り、ある時は厳しくからだを当て、競り負けてもセカンドを予測した連携でほとんど仕事をさせませんでした。

後半に入ると、熊本のプレッシャーはさらに激しさを増していく。大分の選手のプレーに少し嫌がっているような素振りが感じられる。

しかし、ほぼ主導権を握り続けるが、幾度も訪れる決定機を決めきれず。大分のゴールをこじ開けることができない。さすがに誰もが嫌な雰囲気を感じはじめた80分。今日の基本戦術の集大成のような展開。大迫に代わって入ったばかりの黒木が、高柳からもらったパスを中に入れる。齊藤のヘッドがミートせず。DFからの跳ね返りを、養父が拾ってミドルで撃った。これには大分・GK武田も弾くほかなく、それを見逃さなかったアンデルソンが、瞬間押し込む。熊本が先制。アンデルソンはチーム加入後二試合目、初先発で貴重な決勝ゴールを奪います。

1点リードで残り10分。さて、多分、本当の勝負所はここから。熊本のファンなら誰もがそう思ったでしょう。これまでこんな展開でどれだけ勝ち点を逃してきたことか…。大分は完全に足の止まったラドンチッチを引っ張り、さらには高松を投入してさらにパワープレーを前面に押し出してきます。

ただし、今日に限っては流れのなかではチームの意思は整理されているようで、そこに危うさは感じませんでした。「これまでリードすると下がって起点を作らせたのですが、最後までプレッシャーをかけ、ボールをつないだ選手に感謝したいです」(小野監督)。「リードしてからも守りに入らず、それまでの流れのまま行けたことも良かったし、最後の方は皆が体を張っていた。キツい中でもすぐ切り替えて戻ってきてくれたので、自分としてはやられる気はしなかった」(畑実)。

しかし、それでもセットプレーのピンチは避けられず、最後のワンプレーが相手のCKなった場面は、小心者と笑われるかもしれませんが、“ああ、やっぱりやられたな…”と目をつぶってしまいました。

さて、アンデルソン。初得点より何より。こんなことで驚いてはいけないのですが。32歳のブラジル人FW。20チーム以上を渡り歩いた百戦錬磨のベテラン。Jリーグでは36点目となる得点を、この日、熊本の歴史に刻みました。「今日の試合では起点になり、後半はクリアボールをおさめ、踏ん張ってくれました」(小野監督)と、チーム戦術に忠実に、それも時間を追うごとに、終盤になってさらに、前線からの守備に献身しました。

本人も「ここまで、チームのスタイルに自分を合わせるのに時間がかかった」「チーム全体がハードワークできたし…」「これからもトレーニングからハードワークを続けるのが大事なことだと思う」と。

結局、その高さということもあって、90分フル出場してしまいました。まだまだ、連携という点では噛み合わない場面のほうが目立ちましたが、間違いなく前線に1枚、強力なカードが加わりましたね。

今日のゲーム。チームの基本戦術で押していくのか、それともまずは相手の高さ対応なのかという選択のなかで、基本戦術をこれまでにないくらい徹底し、それによって相手の高さという強味までも消し去ろうというゲームプランで臨んだ熊本。

実際の超大型FWの迫力は想像以上でしたが、足が止まるのも早かった。「ラドンチッチは守りがおろそか」(橋本)との見切りもあり、高さ以外の武器で無力化することに成功しました。

“戦術がはまった”とかいう表現では語り尽くせない、熊本にとっては、まさに今日の「総力戦」のタイトル通り、知恵も体力もすべて出し尽くしてもぎ取った勝利のようで…。リーグ戦も終盤に差し掛かります。順位はこの勝利でふたつ上げ16位となりました。こうやって毎試合が今シーズンのベストゲームに思えるような、そんな流れになっていけば、嬉しいですね。

8月31日(日) 2014 J2リーグ戦 第29節
熊本 0 - 2 札幌 (19:03/うまスタ/5,625人)
得点者:29' 都倉賢(札幌)、51' 上原慎也(札幌)


シーズン途中で監督が交代するという事態がどういうものか。われわれも昨シーズン、それを初めて体験したわけで。そのときのチームの状況、ファンの心境などがまだくっきりと思い起こされます。

後がない。瀬戸際。それはそうなんですが、とにかく、1ゲーム1ゲームがトーナメントの戦いのように、異様に集中力が高まっていったのを覚えています。

「監督が代わった時というのは、より前に、よりアグレッシブに、より球際も激しくなる。そういうことは選手も十分、わかった上で臨んでいます」。小野監督もそのあたりのことは想定しながらゲームに臨んだようでしたが。これまで比較的相性のいい、悪い記憶のないホームでの対札幌戦。何もよりによってこんなときに交代しなくても。

“やりにくい…”。われわれのゲーム前の胸騒ぎはこの一点でした。

もちろん札幌のチーム状態が決していいはずもなく、いかに監督交代という荒療治でチームを方向転換できるか、ひとつ歯車が狂えばさらに悪循環にも陥りかねないわけで。先週、財前監督が退任し、バルバリッチ後任監督が着任するまで名塚コーチが代行する体制。短い時間でどうチームをまとめてきたのか…。

「いちばんはメンタルの部分ですけど、サッカーを変えるつもりはなかったし、今まで財さん(財前前監督)が1年半やってきたサッカー、プラスやっぱり前、ゴールへの意識をもう1つ出すためにトレーニングしたつもりです。」(名塚コーチ)

両チームの様々な意図が交錯しながらはじまったゲーム。熊本は、そんな札幌のメンタリティーに負けるものかと、序盤から激しくプレッシャーをかけていきます。

20140831札幌

「熊本の圧力に対して後手後手になり、特に前半は泡を食った面があった。内容的には完敗。」(名塚コーチ)

まあ、そこまで熊本が圧倒していたようには見えませんでしたが、確かに試合序盤は熊本がポゼッションを握り、札幌がカウンターを狙う展開に。これは多分、名塚コーチの想定にはなかった事態だったのでしょう。このチーム状況で的確なスカウティングができていなかったのかも知れません。そしてこれもどうしようもない結果論ですが、勝機はこの時間帯にあった、ということでしょう。

しかし…。前半29分、札幌は高い位置でボールを奪うと、ぽっかりと空いた左サイドに上原を走らせる。ファーに上げたクロスを折り返されると、最も警戒すべきだった都倉にあっさりと決められます。

それでも、まだまだ浅い時間帯。グッと我慢して前半を凌げばチャンスは十分にある。そう誰もが思っていたはずです。

「1点取られて、そこからいくつかのところを修正して、後半必ず取り戻せる、逆転できると思って入りました。決して悪い試合じゃなかったと思いますし…。」(小野監督)

そして、やはり今日も勝敗を分けたのは後半開始からの10分間でした。

CKから折り返されての失点。同じパターンで2点。苦境にある札幌を大いに勇気づける追加点。熊本にとっては非常に難しいゲームになってしまいました。

悔しいのは、混戦であれだけ相手の足が高く上がっているのに…。もし頭で競っていればファウルの判定もあったかもしれない。多分、ここが負けたところなのかも。

「相手に気持ちで上回られないようにということはミーティングで監督も話していたけど、そこで上回られたと思う。」(高柳一誠)

結果としては0-2。しかし、シュート数は熊本8。札幌も9。いかにも少ない。「攻撃はいい部分もあったけど、シュートまで行けてない、シュートで終われていないというので流れを持って行かれた。」(高柳一誠)

得たフリーキックは熊本13、札幌15。合計28。このゲームの背景を示すひとつのデータ。いつもの熊本のゲームと比較すれば、これまた少ない。ファウルを奨励するわけではありませんが、これはいかにも少なすぎる。

翌日の熊日紙面。「ロアッソ決め手欠く。激しさ不発。球際で完敗。」と嘆いています。まさにその通りの数字ですね。

小野監督も「ゲーム全体として、こちらが下回っていたとは思わないんですが…」としながらも、「球際で数段上回りたかった」と、チームの根幹がこの点にあることを、相手を圧倒するような激しさがチーム戦術の原点であることを強調しています。

試合終了の笛が鳴って、札幌の選手たちの多くが倒れこむようにピッチに大の字になった。これが監督交代という劇薬の“効果”だろうと。相手チームながらその姿には感じるところがありました。

もうひとつ、今日のゲーム、印象に残ったのは、橋本拳人。見ての通り、都倉とのマッチアップでことごとく“やられて”しまった。「力のなさを痛感して、センターバックとして必要な強さなどの能力をもっと上げていかないといけないと感じた。都倉選手が身体の入れ方や競り方がすごくうまくて、ほとんど勝てなかった」と自らの完敗を認め、「今日は自分のプレーを見つめ直すきっかけになった試合だと思う」とまで突き詰めた。ここまでのコメントは珍しい。それほどにショックだったのでしょう。

それは多分、自分が勝てなかったことだけでなく、結果として空中戦からの2失点がゲームの勝敗を決めてしまったこと。制空権を渡してしまったことへの自責の念も大きいのかもしれない。だけど…。

闘っているからこそ負けることもあるわけで。結果を受け入れ、他の何かのせいにせず、弱い自分を認め、強くなろうと努力する者だけが階段を一つのぼることができる。頑張れ拳人。