10月11日(土) 2014 J2リーグ戦 第36節
京都 0 - 0 熊本 (16:04/西京極/5,906人)


いかに大黒を封じるか…。

ひとりの選手の名前を挙げてゲームプランを語るべきではないかもしれませんが。全体の戦術面も含めて、ある意味この試合、熊本にとってはその点がかなりのウェイトを占めていたと思います。

今シーズン、6月のホームでの前半戦。澤田のゴールで先制したものの、大黒からなんと3ゴールを奪われ1-4の逆転負けを喫してしまいました。分かっていても、警戒していても、一瞬の隙をつかれてやられてしまった。異次元ともいえるその存在感。リーグ得点ランキング1位をひた走る男。

とにかく、少なくともわれわれはには、大黒への警戒感、緊張感で張りつめたディフェンスから入った。そんな感じのゲームでした。

20141011京都

そして、熊本のそれ(ディフェンス)は単純に厳しいマークということではなく、強気でプレッシャーをかけ続けるとうもの。いわば”超攻撃的”なディフェンスというのが、今日の試合の一番の見どころでした。

「少しでもこちらが弱気になってラインを下げると、中盤にプレッシャーがかからなくなる。そうなると、(京都の)決定力というのが表に出てくるので、なんとか強気でプレッシャーをかけ続けられる様に、そしてそういう形から攻撃のチャンスを見出そうと思ってやりました」と、試合後の小野監督は明かす。ここで言う(表に出てくる)「決定力」というのが大黒を指していることは明白でした。

その前半は前節、東京V戦と同じような、お互いに消しあうような中盤での激しい潰し合い。小野監督の狙い通り、高いDFラインによるコンパクトな陣形で思いっきりのプレッシャーをかけ続ける。セカンドも拾えて、逆に京都には拾われず。しかし、なかなかシュートまでたどりつかない。トップの齊藤に対して縦のパスが入らないことを気にするスカパー解説者の長谷川氏の言葉。

京都はと言えば、「縦に急ぎ過ぎる」と長谷川氏。確かに中盤省略のロングフィードが多い。これに対する熊本、数的なバランスは崩れておらず、あまり脅威は感じない。

結果、前半のシュート数は熊本2、京都3。最近、よく見る数字。どうも、激しく行く熊本の戦術に対して、相手チームもガツガツに来る。そんなせめぎ合いでお互いに譲らないゲーム前半の戦いは、必然的にこうなってしまう。そんな気がしています。

スコアレスのままハーフタイム。確かにあまりシュートを打てなかった熊本ですが、ゲームの感触としては決して悪くない。ポゼッションやシュート数だけではゲームは語れない。どちらかと言えば熊本のゲームプランに近い形ではないか。

「ベンチには闘える選手がいる。寝ている選手がいたらサッカーにならないぞ!」「このユニフォームのために全力で闘うこと!」(川勝良一監督)
「前半よく闘っている。集中している。後半ももっと強気でいこう!」(小野剛監督)

両監督のハーフタイムコメントに、数字には表れないピッチの上のゲームの“形勢”が実によく出ているように思います。

そして、このハーフタイムで熊本は片山→蔵川の交代カードを切ります。守備のバランスのためにほぼ攻め上がりを自重していた片山でしたが、この交代は何だろう?と思いました。

「ウチのディフェンスがあまり機能しないと、そこ(=サイドバックのところで)のヘディングでの競り合いは出てこない。でも、はまってきた時に、そこがどうしても一つの逃げどころになって、そこでのヘディングの競り合いに勝てていなかった」と、小野監督はサイドバック交代の理由を語ります。要はドウグラス。唯一の不安材料は、そこでの高さの差。今日、初めて右サイドバックで先発のキム・ビョンヨンを左に、右に蔵川を入れ、ドウグラス選手の頭にキム・ビョンヨンの高さをぶつけます。

ゲームとは直接の関係はないんですが、密かな楽しみ、というのか、小野監督の選手起用には、必ずどこかに1枚ないし2枚、積極的な仕掛けというのか、選手の可能性やチームの引き出しを増やしていくような起用が散りばめられているような気がします。

キム・ビョンヨンを先発で右サイドバックに起用した意図を問われて「…非常に高い能力、これからの可能性を持った選手…。」「ひょっとしてサイドバックでも行けるかなと」「彼がそこまでポジションの幅を広げてくれれば、チームとしてもレベルアップになるなと」。リーグ終盤の連戦のなかにあって、このチャレンジは大きな収穫でした。

後半も20分を過ぎると、これだけの運動量のゲーム、さすがに熊本の反応が少しづつ遅れ始めます。もちろん、よく見れば京都の選手も明らかに息が上がってきている。

67分、GKからのフィード一本で熊本DFが交わされMF・駒井にわたる。大黒への折り返しはわずかにタッチミスで枠を逸れる。

77分、FKからのこぼれをエリア内で拾った大黒、振り向きざまのシュートは、畑が右足でかろうじて跳ね返す。よし!

ゲームは完全にオープンな展開に。押し込まれる熊本。厳しい時間帯が続きます。
後半38分。養父→巻。
後半43分。 キム・ビョンヨン→五領。

流れを変えようと必死にカードを切る熊本。徐々に押し返す場面が見え始める。攻守が目まぐるしく入れ替わる。

アディショナルタイムもほぼ3分。熊本のラストプレー。FKを左サイドで受けた五領が、持ち味を生かして中に切れ込むドリブル、低く上げたクロスを巻が後ろにスラすと、待ち構えていたのは園田。左足で引っ掛けるように抑え込んだシュートでしたが、惜しくもクロスバーの上。

結局、どちらのゴールネットも揺らすことなく、ゲームセットの笛が鳴りました。

コンパクトで高いDFの裏のスペースを引き受けてカバーしたGK・畑。時に思い切りよく飛び出し、確実にボールを処理しました。

そして橋本。うまく、強くなった。大黒という”個”に対して、戦術的なシステムで向かった熊本でしたが、これを封じ切ることについては、橋本という”個”の果たした役割は小さくないと思いました。前回の京都との対戦時のエントリーで書いた「敗戦で学ぶことの大きさ」を体現して、成長著しい感じがします。特に熊本で任されているCBというポジションが、彼を大きく育てているのは間違いない。

3試合連続での無得点ではありましたが…。

「能力的には京都さんの方が上かもしれないけど、そういうところ(セカンドボールだったり、球際だったり、攻守の切り替えだったり)で差をなくしたり、ウチらしい形がたくさん出た試合だったんじゃないかと思います」(巻誠一郎)

分が悪かった対戦成績で苦手意識が先に立つ京都戦でしたが、そんなネガティブな思いもようやく乗り越えられそうな…。そんな意味を持つ重要な引き分けのように感じました。