10月26日(日) 2014 J2リーグ戦 第38節
長崎 0 - 1 熊本 (14:03/長崎市/4,262人)
得点者:10' 園田拓也(熊本)


「まるでホーム」と篠原は言いました。長崎市総合運動公園かきどまり陸上競技場のアウェイゴール裏は、遠路駆け付けた熊本サポーターで真っ赤に埋め尽くされて。響き渡る力強いコールは場内を威圧し、「苦しくなったときに熊本から駆け付けた多くのサポーターが背中を押してくれた」(小野監督)というコメントにもリアリティアがこもっていました。テレビ画面を覗くわれわれでさえグッとくるものがあったくらい。選手たちも大いにその意気に感じたのではないでしょうか。

熊本は前節、磐田戦とまったく同じスタメン。Jスタメンデビューだった嶋田を再度起用してみせます。彼の自信にもなったのではないでしょうか。

20141026長崎

相手の戦術分析に長けた両監督。まずは「熊本の映像を6試合ほど見て、かなり準備しなければいけないと思った」と高木監督がそう言えば、「長崎はわれわれが苦手とするサッカーを徹底してきた」と小野監督が言う。

「長崎が中央の起点からサイドにロングボールを入れて、そこでセカンドボール勝負」(小野監督)と見立てたように、イ・ヨンジェ、佐藤、小松という前線3人の高さをターゲットに押し込む長崎。高さの魅力と魔力と。高木監督は特に高さに対する志向が以前から強いのは承知のうえですが、戸惑い気味の熊本。

ゲームはこれまた、ここ数試合の典型的なパターンが繰り広げられます。激しくせめぎあい、削り合うようなぶつかり合い。攻守の切り替えは激しいが結局、前半のシュート数は長崎2、熊本1。違ったのは前半10分、CKから早々と先制したこと。

キッカーの嶋田から澤田へ、リターンを嶋田に落とし、これを中山にさばく。中山はフワリと中で待ち構える齊藤に。齊藤はヒールでゴール左のスペースへ出す。走り込んだ澤田が中に折り返すと、最後は飛びこんだ園田が頭でどんぴしゃのフィニッシュ。セットプレーとはいえ、すべてをダイレクトでつないだ流れるような展開。美しい! これはある種の“催眠術”とも呼べようか。ダイレクトが3本もつながると、相手はもう完全にボールウォッチャー。後手に陥れました。

凌げば後半の展開に持ち込める。先制できれば、今日のような結果がついてくる。

例えば小野監督の今日の采配での一番の見どころ。前半13分に片山が、クロスを上げさせない必死の守備から近距離でボールを受け脳震盪で倒れると、すかさず篠原を入れますが、左にキム・ビョンヨンをまわすと、右SBは園田ではなくそのまま篠原に任せます。

「最終ラインの4枚がセンターバックタイプになってしまった」と嘆く高木監督。「キム選手もほぼアタッキングサードにアタックしない」「篠原選手も1回か2回」。そして二人は、長崎のロングボールを跳ね返す。SBの特に片山サイドの裏を狙っていただろう高木監督の狙いを、このアクシデントのなかで“消して”しまいます。これも先制点があったればこそなのですが…。

ハーフタイムの小野監督の指示は「ボールの出所を押さえよう」「セカンドボールを拾おう」「強気で強気で最後まで行こう」「熱いハートで泥臭く最後まで戦おう」。要するに、相手にサッカーをさせるな。強気で戦いきるぞ。ということか。ほとばしるような気合い。

しかし、嶋田慎太郎は「相手のセンターバックからロングボールが出てくるので、そこから蹴らせないようにとハーフタイムにも言われて、後半はそこを意識して前からプレッシャーをかけました」と。メンタルを鼓舞する一方で、ボールの出所を押さえるうえでの明確な指示も加えられ、更なる修正が図られます。

さあ勝負の後半45分間。後半の戦いについて高木監督は「熊本が点を取ったということがあると思います。ひょっとしたら無理せずに耐えるということがあったかもしれません。」と、その印象を語っています。

押し込まれた時間帯での落ち着き。高いラインの維持、押し返し。早い段階で1点をとったことの重みが感じられます。

そして耐えることへの自信。今日も最後まで切れなかった集中。安定してきたGK・畑のハイボールの処理。3試合連続の完封。そしてなにより、展開のうえでとはいえ、1-0での勝利を“美学”としていた高木監督のお株を奪うような勝利。

リーグの最終盤、あと4試合というところで俄然、熊本のサッカーのイメージが鮮明な像を結びつつあります。今日も繰り出す交代カードに“意図”を感じましたが、今のベンチに座るメンバーは、誰が出ようと頼もしい。

残りは山形、愛媛、岡山、福岡。過去には、もう早く終わって欲しいと(内心)思うようなシーズンもありましたが、今はこのメンバーで、この体制で、どこまでのものを見せてくれるのか…、名残惜しい、そんな気持ちがいつにも増して強く感じられます。

前週の藤本主税の現役引退表明に続いて、今週はロッソ戦士・吉井孝輔も引退を発表しました。今季は日程的にホーム最終戦が思いのほか早く、慌ただしく過ごしてきたシーズンとともに、心の整理が追いついていない。それもまた実感です。