【J2第15節】(うまスタ)
熊本 0-0(前半0-0)C大阪
<警告>
[C]椋原健太(83分)
観衆:13,132人
主審:山本雄大
副審:清野裕介、正木篤志


6年ぶりのセレッソ大阪との対戦になりました。6年前も、香川や乾といった若手のタレント(才能)を擁する強豪クラブでしたが、現在のセレッソはそれにも増して。元ウルグアイ代表にして2010年W杯MVPのフォルラン、同W杯ドイツ代表のカカウ、日本代表(候補)の山口蛍、あるいは山下達也、さらにはGKのキム・ジンヒョンは韓国代表という、眩いばかりのスター軍団でした。

エース・フォルランの得点は10で、ゴールランキング1位。チーム総得点でも25はリーグトップ。しかし、失点が17と意外に多い。このあたりが15節を前にして8位に甘んじている原因のようで。守備に弱みがあるかと思わせたのですが…。

コイントスで、エンドを替えたのは熊本。この時間帯の日差しかあるいはこの日吹いていた強い風の向きを考えたのか。

20150524C大阪

前から果敢にプレスを掛ける熊本。もとよりC大阪に”名前負け”する気配は全くありませんでした。キム・ビョンヨンが初先発で左SBに入ったDFラインも、勇気を持って高く維持しました。

ただ、さすがのセレッソ。9分、楠神がハンジンとの1対1で入れ替わってクロスを入れると、山口のミドル。あるいはアタッキングサードでパスを回して熊本ゴールを襲う。なんとか最後のところで足を出してクリアする熊本。目を見張るのはカカウのボールコントロール。そしてフォルランとのコンビネーション。これぞ”プレーセンス”。しかし、絶対、中央は通させない熊本という図式。

38分、中山が拾ってスルスルっとエリア内に侵入してシュート。こぼれたところを齊藤がシュート。惜しくもブロックされます。その後もセレッソゴールを攻める時間帯がありました。

ハーフタイムを挟んだ後半。セレッソは、ピッチを大きく使い始め、揺さぶり始めます。

52分、セレッソの攻撃。左から作って中へ入れるとフォルランがスルー。パブロのシュートはハンジンが身体を投げ出してブロック。熊本は右の養父へ。養父が溜めてグラウンダーでクロス。しかし”溜めた”分だけニアに入った高柳はオフサイド。

攻守の切り替えが早い展開。66分には、養父のロングスローをGKがパンチング。カウンターを奪って黒木のモビリティー。アーリークロスにニアに巻が入りましたが、直前でキーパーがパンチングで凌ぐ。惜しい。

最初にカードを切ったのは熊本の方でした。その巻に代えて平繁。巻は今日もポストプレーヤーとして、文字通り身体を張って(その大きな体躯を生かして)、その身を削るように相手と競って、相手に身体を当てて、飛んで、転んで、セレッソの守備をかく乱しました。大きな働きでした。拍手。

対するセレッソは、なんとピッチにいる3人の外国人選手を一気に3枚替え。玉田、吉野、沖野を入れてきます。”個”で打開できないところを、”組織”で打開する策に出たのか、セレッソが攻勢を得る。それはサッカーの試合90分のなかで、一番きつい時間帯でしたし、しかもセレッソが実はこれまで一番点を取ってきた”怖い”時間帯でした。

熊本は嶋田に代えて藏川。ビョンヨンの前に置くことで、落ち着かせる。ここから少し持ち直しました。セレッソの攻勢を押し戻し、両者アディッショナルタイムに与えられた3分間も、勝ち越しの”1点”を奪うことに執着しましたが、”振り子”は傾かず。スコアレスドローのまま、終了の笛を聞きました。

前節長崎に敗れ、今節”最下位”の熊本に引き分けたC大阪サポーターは、ゴール裏からブーイングを浴びせました。この日、1万3千人を記録したホームスタジアムの熊本ファンの評価は、拍手と叱咤が半ばするような。

「セレッソの調子が悪かったのにもかかわらず叩けなかった」という意見があるようですが、それには首を傾げます。サッカーは相対的(相手あっての)ゲーム。セレッソの作る攻略を、防ぐ熊本の守備戦術が奏功して、セレッソの”刃”を抜いていたとも言える。外国人選手の3枚替えは、敵将の思い切った戦術転換ではありましたが、裏を返せば、熊本が大阪の最大の強みをどれだけ消していたかということでもあります。それも”個”に依存しない、チームとしての泥臭いハードワークをベースにして…。

そのなかで熊本が勝ち点3まで得ることができなかったのは、突き詰めれば、そのカウンターにどれだけの切れ味があるかという問題ではなかったかと。そして、そこに立ちはだかったのはこれもまた何人もが身体を投げ出すセレッソのゴール前の守備。サッカーの基本のような”泥臭さ”に屈したということでしょう。

あのセレッソにしてこの泥臭さ。その意味では、スコアレスドローは妥当だったのだろうと思います。しかし、スコアレスドローとはいえ、攻守切り替えの早い、良質な試合を観たような気がします。そういう意味では、サッカーにしてもなんにしても、”うまい”相手と対戦しなくてはならない。スター軍団だろうがなんだろうが。そんなことを改めて思った試合でした。

大分が負けたことによって、この試合で最下位は免れ、21位に上がりました。

【J2第14節】(水前寺)
熊本 1-2(前半0-0)岐阜
<得点者>
[熊]齊藤和樹(46分)
[岐]岡根直哉(48分)、難波宏明(81分)
<警告>
[熊]養父雄仁(75分)、中山雄登(79分)
[岐]ヘニキ(23分)、阿部正紀(78分)
観衆:4,164人
主審:塚田智宏
副審:佐藤貴之、鈴木規志


20150517岐阜

「今日は勝点6をかけたゲームだと話して入った」。同点弾を決めた岐阜の岡根もそう言っていたように、同勝ち点差で下位に沈む20位の熊本、21位の岐阜両者にとって、互いに勝たなければいけない、負けてはいけない試合でした。

炎天下の水前寺でのデーゲーム。前半の45分を終え、日陰を求めてスタグル広場に出ると、「まるでバレーボールの試合のよう」という女性の感想が聞こえてきました。時には砂埃も舞うような芝の禿げた「不良」のピッチ。互いにの頭上をボールが行ったり来たり飛び交う。荒れた地面でのプレーリスクを避け、陣地を押し上げようとロングボールを蹴り合う様は、ラグビーのパント合戦のようにも思えました。

そして一方で、先に失点したくないという、ある意味両者の現在置かれている状況、この試合の位置づけ、その“硬さ”を感じたスコアレスの前半。

ところが後半に入ると一気に試合が動きます。

開始から1分もたたない岐阜のFK。ゴール前で跳ね返す熊本。そのボールがまだ自陣に残っていた斎藤に収まる。斎藤は単騎、右サイドから持ち上がると、黒木がサポートしてDFをけん制する。Pエリアの前でブロックに入ったDF2人の間をすり抜けた齊藤。3人目が視野に入ると左に持ち替えて交わしシュート。うまい!ニアにぶち込みます。

2試合連続で魅せたエースのテクニック。そして思い切りのよさで先制に成功。

しかし、このあとが…。ある意味この試合のこの後の展開、結果をも決定づけたのは、喜びもつかの間といえる、2分後の同点弾ではなかったでしょうか。

岐阜に与えたFK。左足の名手・高地からファーに放たれたボールにGK原も出ることができず、岡根のヘディングが決まる。何度も見たおぼえのあるようなシーン。

まぁ、すぐに追いつかれたものの、この時点ではまだ熊本にも攻勢があり、点の臭いもしていたのですが、岐阜が宮沢を下げてロドリゴを投入、高地がボランチにまわったあたりから形勢が変わってきました。徐々に岐阜の時間帯に。

残り時間も10分となったところでした。岐阜のキーパーから左へ展開。野垣内からロドリゴに渡りシュート。ブロックしたボールが高く上がり、そしてそれをバウンドさせてしまう。ここがミスでした。エリア内にいた難波がオーバーヘッドで打つ。それを中山が両手でブロック(したような形)。全くもってバレーボールでした。

難波がPKをきっちりと枠内に収めて岐阜が逆転。ヘニキを退け高木和道の高さで守備固め。熊本は先に投入した平繁、そして岡本、常盤と攻撃的カードを切りますが、同点に追いつくこともできず終了のホイッスルを聞きました。

大分が水戸に引き分けていたので、熊本はこの時点で再び最下位に転落。「勝ち点6の価値」の言葉どおり、岐阜は18位まで順位を上げました。ちょうどリーグが3分の1終わってのこの順位は、混戦模様の勝ち点差とはいえわれわれをかなり不安にさせます。


「1失点目は僕がちょっと下がるのが遅れて、僕のところでやられたので申し訳なかった。1点取った直後だったので、ああいうところは守らなきゃいけない。その後もチャンスもあったし、あれは決めなきゃいけないボール」。

巻はそう切り出しながら、「そういう責任はちゃんと、誰がどうしたっていう部分はハッキリさせなきゃいけない」「そこからどれだけ反骨心をもってやれるか、そういうのがプロとして大事な部分で、ポジティブに、切り替えながらやるべきかなと」「どこかで必ず、このミスは取り返したいと思います」と結びました。

勝利者インタビュー。ラモス監督の異例とも思える発言がありました。

「この場を借りて言わせていただきたいのは、岐阜のサポーターだけじゃなくて、全国のサポーターの皆さんに。勝つときは12番目の選手になるんだけど、負ける時には選手と監督だけが悪いという気持ちはやめて下さい。今、私達とロアッソ熊本とかいろんなチームが苦しんでいて戦っているんです。声援を送ってあげて下さい。一緒に苦しんでいって、這い上がりましょう。岐阜のサポーターだけじゃなくて、サッカーを愛しているサポーターの皆さんにお願いします。」

ホームチームを(その苦しい状況を)応援するひとりとして、ちょっと素直に心に沁みたコメントでした。

【J2第13節】(札幌ド)
札幌 2-3(前半0-2)熊本
<得点者>
[札]都倉賢2(75分、86分)
[熊]齊藤和樹2(2分、27分)、巻誠一郎(55分)
<退場>
[熊]園田拓也(79分)
<警告>
[札]内村圭宏(52分)
[熊]黒木晃平(83分)
観衆:10,405人
主審:東城穣
副審:手塚洋、宮部範久


勝ち点3を得るということが、こんなに大変なことなのかと思わせた試合でしたね。なんとか逃げ切って勝利。順位はひとつあげて20位。それにしても心臓に悪い試合でした。

20150509札幌

黄金週間を挟んだ過密日程5連戦の最後の試合は、アウェー札幌戦。札幌は7試合負けなしで7位につけていました。対する熊本は9試合勝ちなし。この前の4連戦を2敗2分という結果できていましたが、ここ2戦の引き分けは、内容に手ごたえを感じさせるゲームでした。その流れや勢いをそのまま持ち込もうというのか、なんと、前節痛んだ片山のあとに途中起用した右SB・養父をこの試合でも先発に。あとは中山と嶋田を入れ替えたくらい。3試合連続で巻を1トップに置いてきました。

そして、その勢いのとおり、熊本が3点を先取する。

1点目は開始早々。札幌の攻勢のなか跳ね返したボールを、まだ自陣にいた巻が大きく相手DF裏のスペースに蹴りだしてカウンター。齊藤が拾うと左からドリブルで持ち込む。エンドラインギリギリまで持ち込むと、そのまま撃つかと思わせて鋭く切り返し、追走してきたDFを交わし、素早く撃ったシュートは、構えたGKの股を抜いて、ゴールに流し込みました。うまい!

2点目も齊藤。27分、嶋田が右サイド、養父の前の大きなスペースにサイドチェンジのパス。養父は迷わずアーリークロスをゴール前に送る。そこに齊藤がダイビングヘッドで飛び込みゴールに突き刺しました。美しい!

3点目は後半10分の右CKから。中山のキックにニアで齊藤がそらすと、ボールはゴール前中央へ。キャッチしようとする相手GKもろとも、巻が身体ごと押し込んだ。実に泥臭い!ある意味巻らしいゴールでした。

後半開始早々、スカパー解説者の秋田豊氏に「2点では不安」と言われてしまった熊本。それはこれまでの試合結果からでもありましたが、いい時間帯で3点目を得ることができて、今日こそは間違いなく勝ち点3、そう思って観ていたのですが。やはり簡単に勝たせてはくれない。

札幌は後半開始から中原に代えて内村を投入していましたが、さらにナザリトを下げて古田を入れる。都倉をトップに置いて内村と古田をシャドーに。前3人の構えを変えてきました。これによって迫力を持って攻めてくる札幌。熊本はひたすら我慢するという構図に。

さらに巻の疲れを考慮してのことでしょうが、常盤と交代。4-4-2にシフトしますが、これによって栃木戦のときに感じたことと同じように、重要なポストプレーヤーを失い、前線での起点が作れなくなってしまいます。

75分。しかもボックスの外からでした。ペナルティアークを横切るようにドリブルした都倉が、DFを前にして倒れながらシュートを放つと、巻いたボールは、意表を突かれたGK原も触れず、ゴール左隅に吸い込まれる。敵ながらみごとなゴールでした。

この1点が、大きく試合の流れを変える。熊本選手のメンタルの乱れを指摘する解説の秋田氏。勢いづいた都倉が縦横無尽にゴールを脅かす。

78分には、ロングボールに裏を取られた園田が相手を倒して一発レッドカードで退場。熊本は10人に。ペナルティアーク右からのFKは枠をかすめる。GK原は一歩も動けない。バタバタの選手心理が伝わってくるようです。

MF嶋田を下げてDF大谷を入れるベンチワーク。残り10分を託します。しかし札幌、右サイドからのアーリークロスに、中央の都倉が大谷に競り勝つとヘッドでゴールネットを揺らす。とうとう1点差に詰め寄りました。

告げられたアディッショナルタイムはなんと6分。「どこから6分が生まれたんですかね」と秋田氏も訝る。熊本にはもう攻撃の形を作れる力は残されていない。クリアに次ぐクリア。前線サイドでキープしようにも奪われる。攻撃にさらされる・・・。右クロスから都倉のヘディングは原キャッチ。左から入れられたボールはファーのイルファン。これは合わず。古田から宮沢のヘッドは左に反れ。ようやくようやく、主審の笛が鳴った。その瞬間が、実に10試合ぶりに熊本が勝ち点3を手にした瞬間でした。

それにしても、3点先取しながら、なにが試合をこんなに難しいものしてしまったのか。やはり連戦のなか、熊本の足が止まる、プレスが甘くなるということなのでしょうか。

そして都倉の凄み。前半、ナザリト頼みの札幌の戦術で、枠を外す都倉は、”今日は入らない都倉”でしたが、ワントップを張った後半からは、”怖い”選手に変貌しました。そこには、さすがにスカパーJ2実況のタイトルバック映像に使われる数少ないこのカテゴリーでの代表的な選手のひとりであるという”存在感”を感じさせるに十分でした。

また、後半途中「自分の事だけ考えてプレーしていては、チームの力は出せない。そこを理解しなければならない選手がいる。」として、看板のナザリトを引っ込め、前線の組み立てをガラッと変えて攻めに出たバルバリッチの采配。今日も熊本のベンチワークは、受け身に徹した感がありました。勝ち越している状況もあり、もちろん、園田の退場というアクシデントの混乱もあったのでしょうが・・・。

ただ、ひとつ思い当たる節もあります。指揮官は、90分間のなかでは、いいときばかりでなく苦しい時間帯も必ずあると常々言っている。その苦しい時間帯を、監督からの指示や選手交代というベンチワークに頼るのではなく、ピッチ上にいる選手たち自身の力で変えることができないものか。もしかしたらそのあたりを求めているのではと…。ああ、それが最近、ベンチワークが遅いと感じる点なのかも知れないなと。実は監督も我慢に我慢を重ねているのではないかと。

「勝点3ということ以上に、選手達が苦しいところを乗り越えながら、まだ大きな波ではないが、ひとつ掴みきれたと自分自身思います」。試合後の小野監督のコメントに、実はこのあたりの心境が隠されているのではないかと思うのは、深読みに過ぎるでしょうか。

【J2第12節】(うまスタ)
熊本 0-0(前半0-0)大分
<警告>
[熊]齊藤和樹(41分)
[大]西弘則(79分)
観衆:12,770人
主審:吉田哲朗
副審:桜井大介、藤沢達也


こんな順位での隣県対戦になるとは思ってもいませんでした。大分は勝ち点8で20位、そしてわれわれは7で21位と、互いに降格圏を覗く位置。しかし、スタジアムには(動員もあって)1万人以上の観客。大分からもおよそ1,500人のサポーターが阿蘇を越えてやってきて、ゴール裏を青く染めていました。

20150506大分

立ち上がりは互いのチームの状況とスタメン起用の考え方がハッキリ出た展開になりました。不調のなかでも、前節徳島との戦いに追いついてドローにした大分は、「中2日の連戦のなかでメンバーを大幅に替えて、前回(徳島戦)の内容と同じことをフレッシュな選手に求めた」(大分・田坂監督)。それに対して、前節を追いつかれてドローにされた熊本は、そんななかでも得られた手ごたえを大事に、逆に先発を中山から常盤に代えるにとどめた。そんな個々の選手起用やチーム全体のコンディションの違いがはっきと表れた序盤だったように思えます。

大分の猛烈な押し上げ、波状攻撃に対して、熊本はアバウトなクリアに終始する。それに主審の笛の多さも加わって、集中力を持続するのも難しい時間帯。こんなときに耐え切れずに先制点を許してきたのが今季の熊本ですが、今日はここをしぶとく凌ぎきり、自分たちの展開に持ち込んだところが大きな進歩でした。もちろんそこには、前半途中から高柳のワンボランチから上村を加えた4-2-3-1にシフトチェンジした指揮官の好判断も奏功したのですが。

36分にはこの日連続して鋭いロングスローを放っていた鈴木から、常盤が素早く縦に繋いで齊藤がボックスを脅かす。いい連携だ。続いても齊藤からのパスを巻が折り返して常盤のシュートは惜しくもオフサイド。前半終了間際にも上原のFKを園田がファーで折り返し、鈴木がマイナスで入れると齊藤、そして高柳のミドル。そのあとも、カウンターから齊藤のスペースを狙ったサイドチェンジのボール。惜しくも常盤には通りませんでしたが、「ここが合えば」という攻めでした。

その勢いを加速するべく後半開始から熊本は左SB上原に代えて片山を入れます。しかし、ここでアクシデントが起きました。開始早々のプレー。熊本ゴール前でエヴァンドロがトラップしてシュート。これを止めようとディフェンスに入った片山の足がエヴァンドロのそれと交錯。もんどり打って倒れる片山。痛いのか悔しいのかピッチを叩く。すぐにチームメイトがベンチにバツを示します。

すぐに養父が右SBに入り、鈴木が左にまわります。練習試合では試されたこともあったとのことですが、公式戦では初めてみる養父のSB。まさに総力戦の雰囲気。

その後はそれほど見せ場があったわけではありません。互いの順位が物語るように、攻め上がりのなかでのミスもあれば、フィニッシュの精度の課題もあった。ただ、この試合で絶対勝ち点3をもぎ取るんだという大分のエネルギーは相当なものがあったし、連戦の中日、それを跳ね返すのに精一杯の熊本だったのかも知れません。

アディッショナルタイムには、カウンターから大分・西のシュートが左に反れ、対して熊本は黒木から田中、左から撃つも枠の上に外れる。最後までどちらに勝ち点3が転がり込んでもおかしくなかったのも確かです。

スコアレスドローという結果とはいえ、潜んでいた両チームそれぞれの”苦しい状況”、そのなかでの ”熱いプレー”は、きっと1万人の観衆に伝わったのではないでしょうか。熊日はそれを観て「戦う姿勢 チームに戻る」と見出しを付け、九州J-PARKで井芹さんは「自信も掴んだスコアレスドロー」と詠いました。なにより大分の開始早々の勢いを凌いで、第4節福岡戦以来続いていた連続失点を、クリーンシートに収めた結果は大きい。

確かに片山のケガの程度は心配ですが、あのプレー。今日のゲームを象徴するようなものでしたね。怖くて行けないようなところに、敢えて行く。勇気を持って行く。他にも同じようなシーンが幾度も見られました。肉を切らせて骨を断つ。そんなギリギリのプレーでなければ、相手を紙一重で上回ることはできない。

これをベースにできるのか。崩れない土台を構築することができてきたのか。連戦のなかではありますが、そこが注視すべきところではないかと。みなさんはどのように感じられているでしょうか。

【J2第11節】(栃木グ)
栃木 2-2(前半0-1)熊本
<得点者>
[栃]中美慶哉2(64分、88分)
[熊]クォン・ハンジン(42分)、齊藤和樹(47分)
観衆:3,761人
主審:窪田陽輔
副審:高橋佳久、西橋勲


なかなか勝たせてくれませんねぇ。しかし、久々の得点。そしてようやく連敗からは脱することができました。前を向きましょう。

過密日程のなかでの連戦。この試合、熊本は大きくメンバーを入れ替えてきました。前節途中投入で奏功した巻を先発でワントップに。DFには左に上原。クォン・ハンジンと園田がいて、右SBに鈴木。この最終ラインも含め、今日の布陣は魅力的でしたね。試合前から何か期待させるものがありました。

20150503栃木

その期待どおり、開始からアグレッシブに押し込むのは熊本。巻という明らかなターゲットがあることで、細かく繋ぐばかりでなく、早めに放り込む戦法と織り交ぜることができるから、相手に狙いを絞らせない。何より、行けるところまで行くような。激しい気持ち、闘う意思が伝わってきます。

巻が落としたところに齊藤。中山の前線の守備も効いている。上村も高柳も縦の意識が高い。黒木がミドルを狙う。プレースキッカーとしての上原の魅力。鈴木もボックスを脅かす。

何度もあったCKのチャンス。ようやく実を結んだのは42分。上原のキックをニアで反らした齊藤。そこに大外から飛び込み、右足を出したのはハンジン。おそらく練習どおりのプレーでしょう。実に6試合ぶりの得点で、熊本が先制。しかも前半終了間近、いい時間帯でした。

さらには後半開始早々の47分。「キックオフで相手の出鼻をくじこう」というハーフタイムでの小野監督の指示どおり、スローインのボールを巻が奪うと齊藤に渡る。さぁどうする、どうする、と見ている間に齊藤がスルスルっと持ち込みながらDFを交わすと、迷いなく撃った。ボールはゴール右隅に突き刺さります。

これまでの鬱憤を晴らすかのような2点先取。この時点で、勝利に大きく近づいた気がしていました。しかし、栃木は確かに”出鼻”こそくじかれたものの、ここから底力を発揮していく。前半こそ連戦の疲れを感じさせ重い動きだった栃木でしたが、”後半しぶとい”というチームカラーを発揮してくる。

上村に代えて養父を投入したのは、今年から解説者になった小針の言うとおり「落ち着かせる役割」だったでしょう。しかし、栃木は広瀬に代えて杉本。小柄ながらスピードのある嫌な選手でした。熊本の選手たちの足が目に見えて止まってくる。鈴木が入れ替わられる。ボックス内に中美が侵入。堪らず園田がひっかけてしまいます。

このPKを中美が決めると、さらに栃木は湯沢を投入。足の止まった熊本を見越してさらに”速さ”を加え、熊本の右サイドを執拗に攻めます。攻めどころを見つけたという栃木の勢い。

このあたりでの指揮官の意識はどうだったのでしょうか(このあたり監督の詳しいコメントが見られなくなって残念。J's Goalがなくなった損失はこのあたりにもあります…)。小野監督には目の前の課題が見えていなかったはずはないでしょう。守りを優先したのか、まだ勝ち越しているから選手を替えられなかったのか…。選手交代も含めたゲームのマネジメント。どうだったのでしょう。

もう守り切るしかないという時間帯といえた88分。栃木が中盤で奪うと中美がドリブルで仕掛ける。誰もチェックに行けない熊本。思い切りよくPアーク前で足を振った中美。ボールは弧を描いて、熊本ゴール右に吸い込まれました。ガックリと膝を折る熊本の選手たち…。

熊本はようやく黒木に代えて常盤を入れる。カウンターから常盤がGKと1対1に成りかけましたが、プレスバックで奪われる。勝利まで”紙一重”ではあったのですが…。

アディッショナルタイムに入って巻から田中の交代。しかし、時すでに遅し。同点のまま、終了のホイッスルが吹かれました。

試合の入りからやりたいことが出来たのは熊本の収穫でした。特に巻というポストプレーヤーを置くことで、時々にロングボールを交え、セカンドを拾い、アグレッシブに守備をする昨年のようなサッカーが戻ってきた。縦への意識。相手を狙う。速攻。長短織り交ぜた攻撃の形。また、養父、鈴木と二人のロングスローはなかなかの飛び道具でした。

収穫はセットプレーから点が取れたこと。そして、前線からの守備から得点したこと。球際の危険なところで相手を圧倒する勇気。実に”うち”らしい。忘れていた感覚を少し思い出したような。そして、新たなSB候補も現れた。

ただ、チーム全員の足が止まったときのカンフル剤のなさ。前線でポストプレーやキープができるアンデルソンの不在が、この試合ほど悔やまれたことはありませんでした。

【J2第10節】(うまスタ)
熊本 0-4(前半0-2)千葉
<得点者>
[千]ネイツ・ペチュニク(5分)、キム・ヒョヌン2(15分、81分)、パウリーニョ(70分)
<警告>
[千]中村太亮(65分)
観衆:6,038人
主審:西村雄一
副審:相樂亨、三原純


妙にサバサバしています。もちろん戦前は勝利の可能性を信じていました。アップの前にスタンドに一礼にやってきたGK陣やフィールドプレヤーにも、立ち上がっていつも以上に拍手で鼓舞したし、ゴール裏の「HIKARI」の合唱も力強さが際立っていました。

いつも掲出されている選手名や各種の横断幕はなく、唯一掲げられたのは「チャレンジする事を恐れるな!闘う勇気を忘れるな!俺らと共に全力前進」という手書きのもののみ。

この一戦に賭ける思いは“ひとつ”であったろうと思います。

20150429千葉

しかし、「立ち上がりの失点がちょっと、自分たちのそれからのサッカーを難しくしてしまった部分があった」(九州J-PARK)と小野監督が言うように、開始5分にPA内でハンジンが町田を倒したという判定でPKを献上。前節と同じように早々に先制点を与えてしまいます。

その後は彼我の力の差をまざまざと見せつけられる。2点のビハインドで折り返した後半早々は、途中から入った巻や田中の活躍もあり、もちろん千葉が様子見だったこともあって、一時熊本の時間帯もありましたが、70分にパウリーニョに豪快なミドルを決められると、81分にはキム・ヒョヌンにこの日2点目となる追加点を与え、計4点という大差での敗戦となりました。

くどくどとチームの欠点を書いても仕方がない。ただひとつ見ていて思うのは、「他人(ひと)まかせ」な感じがするということ。ゴール前でのクリアにとどまらず、パスがずれたときの受け手の行動、パスを出したあとの出し手の行動、ミスした後のアクションなどなど要所要所で、ちょっとしたところで、少しずつですが、「他人(ひと)まかせ」そんな意識が見える。自分でなんとかする。自分で取り返しに行く。そんな切迫感が見えない。これは大きな気がかりです。

岐阜が長崎に勝利したことによって最下位に転落。上等だ。わかりやすいじゃないか。ここから這い上がっていくしかない。

試合中も試合後も特段イライラせずに済んだのは、前節と比べたら入場者が6千人に復活していたこと。そのなかのわれわれの後ろに座った若いカップルの彼女の方が、「これ(この場面)ロアッソがやばいよね」とか「今のはロアッソにとっていいこと?」と、可愛い質問をしていたのがなんとも微笑ましかったからかも知れません。

そして感動したのは、この日ゴール裏がただ一曲のチャントを延々と歌い続けたこと。飛び跳ね続けたこと。相手選手を威嚇するでなく、主審の判定に異を唱えるでもなく、ただひたすらに自分たちの選手を鼓舞するためにだけ歌い続けた。終了の笛が鳴っても、ある意味惨敗といえる結果をも受け止め、それを超えて…。そしてゴール裏に選手が挨拶にきても歌い飛び跳ね続け、それはとうとう選手がロッカールームに消えるまでスタジアムに響き続きました。

ようやく場内が静かになったとき、残っていた他の観客から、メインスタンドからもバックスタンドからも拍手が起こり始めました。それはわれわれの、素晴らしいゴール裏のサポーターに送られたものでした。

涙腺が弱くなった年寄りは、たまらず慌ててその場をあとにしました。