熊本 1-0 福岡大 [水前寺]
[熊]田中達也(77分)


いいものを観せてもらったなぁ…。素直にそんな感想を持ちました。

福岡県代表の福岡大学との天皇杯1回戦は、どしゃぶりの水前寺競技場で午後4時キックオフ。ロアッソのスタメンは、やはり大きくメンバーを入れ替えてきました。GKは畑、CBの一角に大谷、左SBは上原、ボランチの上村と組むのはなんと21日にトップチームに登録されたばかりのユース選手、まだ高校2年生の米原。左SHにルーキーの坂元。前線は前節出場停止で休んだ齊藤に、清武の2トップ。清武は母校との対戦で、いいところを見せたい。

なんと平均すれば21.9歳と。ひょっとすると福岡大学と変わらないくらいの若い赤馬たち。まあ多少の先発の入れ替えは予想していましたが、ここまでとは。経験を積ませるためとはいえ、指揮官も思い切ったことをする。しかし、これは一方で興味深い。

20150829福岡大

対する福岡大学は、中盤が一枚降りてきたようなほとんど5-2-3の布陣。中もサイドも使わせないようにということでしょうが、しかし決して引いて守るわけではない。鳥栖の特別指定選手にも選ばれているGK・永石の守備範囲がやはり広く、DFラインを高く保てて陣形はコンパクトそのもの。裏を狙うロアッソの戦術を読みきって、次々にオフサイドに仕留めると、乾監督もしたり顔の様子。1対1の能力も高く、大雨のなかスリッピーな足元を気にするロアッソの選手たちは、なかなか球際も取り切れません。

しかし20分頃、スルーパスに飛び出した坂元が、GKの頭を越えるループ。これはクリアされるも、再び拾って中に入れる。しかしGKがキープ。

続いては米原から嶋田へパスが通る。嶋田が切り替えしてシュートもGK正面。惜しい。

前半終了間際に福岡大学は、右サイドからのスローインを繋いでニアでシュート。これは畑がクリア。続くCKはファーサイドからフリーでヘディングされますが、バーに当たり枠を越えてくれる。全体的にはロアッソがポゼッションを握り、福岡大学がカウンターを狙うという展開で前半を終えました。

「オフサイドになった場面は多々あったんですが、決してそれはネガティブなことではないと、ハーフタイムでも思っていたので、しっかり続けると」(九州J-PARK)指揮官は指示しました。それに応えるように、若いとはいえロアッソの選手たちも変に焦ることなく、執拗に裏を狙いに行きます。

後半開始早々、上原のフィードに抜け出した齊藤が絶好の位置からシュートを放つも、これは”宇宙開発”。右サイド奥に展開した上村からのクロスには、ファーサイドの坂元が惜しくも追いつけず。

危なかったのは13分頃、福岡大学の右からのクロスにダイビングヘッド。これはポストに跳ね返されて事なきを得る。われわれの周りには、保護者なのか多くの福岡大学の応援団がいたのですが、大いに沸いたシーンでした。

ロアッソは坂元に代えて巻を投入。清武を2列目に下げて齊藤と巻の2トップに。対する福岡大学は、最終ラインで高さで劣った丸尾が狙われていたのを嫌ったのでしょうか、丸尾を下げて三浦を入れてくる。

それにしても17歳の米原。なにも物怖じすることなくチームを牽引する。ボランチとしての危機管理能力が光るだけでなく、再三のスルーパス。そんな裏への球出しに対して、よく喰らいついて対応しているのは福岡大学。

このままスコアレスだと延長戦。そんな天皇杯のレギュレーションを思い出し、時計を気にし始めていたころでした。疲れた清武に代わって入ったのは田中。これは高い福岡大学のDFラインに走りこめば面白いだろうと・・・。

そんな32分。右サイドにいた嶋田から齊藤がワンタッチで出すと、黒木がオフサイドをかいくぐって右サイドを突破。Pエリアに入るとGKと1対1だったのですが、直前で左にはたく。グラウンダーのクロスを、駆け上がってきた田中がファーサイドでしっかりと押し込んで先制点とします。

乾監督にとどまらず、きっと福大の選手たちも、昨年まで九州産業大のスピードスターだった田中達也のことは警戒していたに違いないでしょう。ラストパスを送った黒木のことはもう現役の生徒はもしかしたら知らなかったにしても、佐賀大から九産大へのホットラインで福大を崩す。九州大学リーグファンとしては、垂涎ものの得点シーンでした。

ロアッソは、この虎の子の1点を守って勝利。最後は米原から園田にスウィッチ。ベンチに下がる米原に、スタンドから大きな拍手が送られました。

冒頭に書いたとおり、この試合、正直”ここまで”選手を入れ替えてくるとは思っていませんでした。小野監督は試合後のインタビューで天皇杯、その対戦相手が大学生だったことに関してこう言いました。
「否応なくモチベーションが上がってくる(相手)チームに対して、受けて立つのは、自分たちでしっかりとメンタル面のスイッチを入れてマックスの状態にしなければいけない。そこに非常に難しさがある」(九州J-PARK)と。

なるほど、それに対して指揮官は、大学生と同等の年代の選手、公式戦に絡むか絡まないかという線上の選手たちを並べ、そのメンタルのスイッチを入れた。受けて立つのではなく、”チャレンジ”させた。そう言えるかも知れません。相手の年はさほど変わらない。しかし、自分たちはプロであるというプライドも。

新しい(若い)戦力。その可能性を見るのは、プレシーズンマッチのときのワクワク感に近いものがありました。しかし、これは天皇杯という公式戦であり、そしてそのなかで、勝利という結果ももぎ取りました。

試合前に送られたエールにタイミングがなかった熊本のゴール裏から先に、試合後「福岡大学!」のエールが送られました。それに応えて福岡大学から「ロアッソ熊本!」のコール。福大の選手たちも、ホーム側のメインスタンドに並び一礼して、スタンドからは万来の拍手。すがすがしい。これも天皇杯。

雨のなか90分間飛び続けたゴール裏には、ご褒美のような「カモン!ロッソ」。日ごろユニフォームで参加していなかった選手たちも、この日ばかりは胸を張って飛び跳ねただろう・・・。自分たちが戦ったのだと。

いいもの(試合)を観た。冒頭に書いたのはそんな色々な意味があったわけで。ロアッソがJ参入以来、ファンとしてのモチベーションに首を傾げていた「天皇杯」でしたが、今日のこの試合ばかりは、その意義を感じた天皇杯となりました。

【J2第30節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半1-1)札幌
<得点者>
[熊]巻誠一郎(33分)
[札]前貴之(22分)
<警告>
[熊]清武功暉(60分)、上原拓郎(81分)
観衆:6,532人
主審:前田拓哉
副審:清野裕介、正木篤志


前節のエントリー。後味の悪い敗戦にも関わらず、また年甲斐もなくジャッジに対して毒を吐いたにも関わらず、思いがけない数の拍手をいただき恐縮しています。3連勝を飾り、6位の背中が見えてきて、さあこの一戦と臨んだ試合、大事な舞台を勝手に主審に”壊された”という思いが、キーボードを叩く指を滑らせてしまいました(笑)。ただ、その後spirits of roassoさんから頂いたコメントに、わが意を得たりと思うと同時に、冷静さを失った自分たちを恥じ入るばかりです。以下ご紹介したいと思います。

「昨年や今年の北九州戦後にいつも思うことがあります。結果が全ての世界で、負け惜しみと言われればそれまでですが、目前の戦いに向けた戦術と、長期を見据えた戦略という概念の中で、小野ロアッソはJ1でも通用するような戦略を重視した戦い方を目指し、北九州はその対比をなすという点です。結果は欲しいですが、課題を突きつけられながら、着実に成長することが更に重要と感じます。」
spirits of roassoさん、勝手にご紹介してすいません。コメントありがとうございました。

さて、札幌戦。1ー1の結果を受けて、「妥当なドロー」と書こうとしていたら、井芹さんは九州J-PARKで「必然」と表現されていました。もうまったくこの記事どおりで、これ以上われわれが書くこともないのですが…(笑)。

18時キックオフの“うまスタ”はまだまだ夏の暑い太陽が沈みきれず、気温を30度から下げきれずにいました。前節のキックオフ時間から1時間早いだけで、こんなに違うのかと。早くも消耗戦の予感。

この試合まで11戦勝ちがない札幌は、四方田体制になって5戦目。この四方田監督は、小野監督が日本代表に関わっていた頃の”戦友”らしく、互いに手の内を知り尽くしている間柄だったかも知れません。

20150823札幌

試合展開の詳細は先の九州J-PARKに譲るとして、実際のところ熊本は、DFラインを下げさせる札幌の徹底した裏へのロングボール戦術に苦められました。前線のナザリトが体躯を活かして空中戦は競り勝つ、ボールは納める、ときに両CBの間で受け、前を向かれるとドキッとしますが、シュートに精度がなくて助かります。

出場停止で斎藤を欠く熊本は巻を先発で使い前線のターゲットとしますが、「2トップの関係として(清武と)少し距離があった」(九州J-PARK)と反省するように、なかなか起点になれません。攻守にわたってなんとなくスイッチが入らない状態。激しさも、速さも…。

そんなFWの組み立てにやや違和感を感じていた前半も半ば頃、ゴール前でサイドに振られ着いていけずに失点。先制点を奪われると部が悪い熊本は、それまで五分五分の様相が、ここからちょっと意気消沈したように見えた。逆に四方田体制での初得点の札幌は、パス回しにも軽快なテンポが出てきたような。

ところが今日は前半のうちに同点に追いついた熊本。ハーフウェイラインあたりからのリスタート。黒木が素早く左の嶋田に送ると、嶋田からのクロスはゴールマウスファーサイドの巻。巻がDFの頭の上から一段高くヘディングを叩きつける。ボールは逆サイドのネットに突き刺さります。

巻の真骨頂。意外にも熊本移籍後、ホームでは初ゴールだったそうで。それにしてもこの男が点を取るとスタジアムが沸く。

さあ、試合は振り出しに戻った。後半に期待。熊本は「試合開始前に体調のよくない選手がいたため」(熊日・小野監督)、岡本、上原を途中投入。古巣対戦への高いモチベーションは狙い通りに前線を活性化します。対する札幌も上原で高さを加えると、元日本代表の小野、稲本とカードを切ってくる。互角。

しかし、いかんせん両者最後の詰めを欠く。幾度も決定機を外し、あるいは思わず目をつぶってしまう決定機を相手が外してくれて。最後は熊本も足が止まり始める。「これは引き分けでも御の字か」と思わせて試合が終了しました。

まだまだ、同点にはできても逆転する力はなかった。

「改めていくつかの高めていかなくてはいけないところ、そういう必要性を感じた試合」(九州J-PARK)。そう指揮官は試合後振り返りました。そして「その週のトレーニングの全てが次の試合のための準備ではないです。いろんな考え方とか、自分たちのプレーの厚みを出したりさらに良くするためのことであったり、その中に少々、次の試合のための準備があるということ」とも付け加えた。それはまた冒頭のspirits of roassoさんのコメントとも相まって、われわれの狭窄した視野を押し広げてくれます。

個々人は別にして、チーム全体としても少し夏の疲れがピークに達している頃かも知れません。この試合を終えて、リーグ戦は一時中断。次の2週間の天皇杯期間をうまく利用して、多少なりともリフレッシュしてくれるといいのですが、しかしわが指揮官のハードな練習には“中断期”などないのかも知れませんが。

【J2第29節】(うまスタ)
熊本 0-1(前半0-0)北九州
<得点者>
[北]井上翔太(38分)
<警告>
[熊]齊藤和樹(69分)
[北]前田和哉(60分)
観衆:7,680人
主審:野田祐樹
副審:大西保、西村幹也


20150815北九州

今節はあまり多くのことを書く必要がないかも知れません。「相手のカウンターを恐がってはいけない。一方では残っている選手をしっかりつかんでおかないといけない」(九州J-PARK)と戦前語っていた小野監督に対し、北九州の柱谷監督は、「うちが引き込んでカウンターを狙う展開も必要だろう」(スカパー!)と。自他ともに認めるカウンターサッカーの北九州に対し、前回対戦と同じように”策に嵌り”敗れた。

シュート数は熊本11に対して、北九州は1。たった1本のシュート、カウンターに敗れたという、サッカーではありがちな展開と言ってしまえばそれまでなんですが。しかし、前回対戦と違っていたのは、北九州が作るタイトな2列の守備ブロックを、うまく崩す場面がたびたび見られたこと。これは実は大きなチームの進化ではないかと感じました。

前半20分前後の攻勢。嶋田が左から入れると中山が清武にパス。シュートはGK。続いてはダイレクトパスの交換からゴール前に侵入。左からグラウンダーで入れたクロス。これは清武がジャストミートせず。養父のクロスを清武がニアで受けてマイナスに出すと、齊藤のシュートはDFがブロック。幾度となく熊本が確実にアタッキングサードまで攻め込めていました。

北九州は2トップの原と小松が裏を狙う動きこそ見せますが、なかなかボールが出てこない。防戦一方の展開。しかしこれが「うちが引き込んでカウンターを狙う展開」だったとすれば…。ちょっと考え過ぎでしょうか。

38分、右SBの養父のショートパスでした。井上がカットして素早く熊本の右サイド裏に出す。小松が走りこんで運ぶ。園田、養父も追いかけるが間に合わない。小松がマイナス気味に入れたクロスを、追走してきた井上が右足でダイレクトに突き刺す。貴重な先制点が北九州にこぼれ落ちます。

堅守速攻のチームに対して、痛恨の先制点献上でした。熊本は、攻勢の時間帯に得点が欲しかった。しかし、完全に崩し切れないフィニッシュを思うと、やはりどこかに北九州のカウンターを気にする”後ろ重心”があったのかも知れません。それに対して、北九州のワンチャンスの集中力、決定力は見事というしかありません。

ただ、点差は1点。指揮官がハーフタイムで「このまま続けていこう」「自分たちを信じて戦おう」と言ったのも当然でした。前回対戦のころとは”自信”が違っている。崩せている。必ず逆転できるはず。

その後半の反撃に水を差す第3の役者が現れます。前半は割とまっとうな笛を吹いていたといえる野田主審その人でした。

後半すぐさまカウンターから齊藤が倒されるがファールなし。エリア内でロングボールに競った清武が倒されるがファールなし。嶋田もボックス内で倒されるがファールなし。続いてもカウンターから齊藤が前の清武に付ける。清武が倒されるがファールなし。

そのたび、ゴール裏を中心にして怒涛のようにブーイングが鳴る。しかし、もちろん主審は意に介せず。けれど、この度重なる(スタジアム全体としての)ファールのアピールが、野田主審自身をかえって意固地にさせたのかも知れません。

68分頃でした。北九州GKのボールを、前目の位置でインターセプトした齊藤がドリブルで突っかけPエリアに迫る。GKと1対1。引っ掛けられて齊藤がもんどりうって倒れる。前々節・栃木戦と同じように、GKは1発レッドカード、こちらにはPKが与えられると思った瞬間…。

野田主審が示したイエローカードは、なんと齊藤に示されていました。シミュレーション。故意に倒れたという判定。騒然とするスタジアム。ブーイングの嵐。

これには熊本ベンチも黙っていない。激怒するコーチ陣。控えの選手たちも総立ち。当の齊藤は唖然とするばかり。チームキャプテンの園田が主審に詰め寄る。しかし、もちろん判定は覆されるわけもなく…。

日ごろ選手たちに、「人間誰にでもミスがある。誤審であっても抗議はしないこと」と、口酸っぱく指導している小野監督でした。試合後のインタビューでは、「おそらく、ルールに関しての私の認識が違っていたのかなと思います。ただ、齊藤はゴールに向かって精一杯のプレーをしてくれたし、我々は判定に従って精一杯戦うということだけなので。ルールに関する考え方がちょっとずれていたことだけが残念です」と述べました。監督としては、主審に対する”精一杯の皮肉”ではなかったのかと。

誤審(あるいは不利な判定)を嘆くより、それを上回る力を発揮すればいい、数ある決定機を決めていればいいのだという多くの意見があります。われわれも日ごろは、主審のジャッジに対してそうそう文句は言わないようにしていますが。

しかし、この日のこのシーンは、まさしく”勝敗を左右する”ワンプレーでした。その他の数々の決定機に決め切れなかったのが悪いということでは決してない。この”決定機”が決まっていたのかも知れない。前節の清武のセットプレーのワンチャンスで勝利したように。ここで同点にしたら、展開はまた違ってきた。そういう意味で、この時点でのこの”誤審”は許せないのです。

そもそもいわくのある人であるのは知っています。よくあるのはサイドを割ったボールの判定が逆なこと。今日もハンドを見逃した。はっきり言って、ポジショニングが悪いのは明らかです。プレーを(ボールを)選手の背中越しからしか見ていない。

それは何故かと言えば、彼自身が走っていないから。チームの、選手の運命を左右する責を担う者としてなすべき努力をしているのかと。

熊本は、その後もポゼッションを保持したまま攻勢を続け、アディッショナルタイム4分、パワープレイで攻め続けましたが、とうとう北九州のブロックを崩せず、終了の笛を聞きました。GK・ダニエルが見たこともないような悔しそうな表情で、グローブをピッチに叩きつける。熊本はこの敗戦で15位に後退。またPOの背中が遠くなりました。

いろんな感情がないまぜになり、われわれも複雑な心境です。しかし、先に書いたように、苦手とするブロックを敷く相手に対して、自分たちの戦い方で応戦し、それは着実に進化しているということ。それでも今日のゲームは、まだダメだ、もっと速く、もっと強くなれと教えてくれているのではないかと。そんなふうに総括して自分を納得させようと思っています。

【J2第28節】(長良川)
岐阜 0-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[熊]清武功暉(58分)
<警告>
[岐]岡根直哉(57分)
[熊]清武功暉(25分)
観衆:7,272人
主審:飯田淳平
副審:宮島一代、堀越雅弘


暫定ながら最下位に沈む岐阜は、夏のウィンドーである意味なりふり構わぬ選手補強を敢行。この試合でも、CBに渡邉、2列目に風間と砂川を先発させてきました。難波に高地の名前を聞いただけでもかなり嫌な印象なのに、さらに砂川まで。どうしてもあの札幌ドームでの直接FKが思い出されて…。ちょっと身震いしてしまいそうな試合前でした。

前回対戦時は互いが20位、21位の降格圏内で、「勝ち点6を賭けた」ゲームに、逆転負けを喫し、二度目の最下位に打ちひしがれた相手。「どんな相手でもチャンスを作ってくる危険なチーム」(7日付・熊日)と、小野監督も警戒心100%。特に前回の3連勝のチャンス、ヴェルディ戦では、「少し緩みが出たのか、落として」しまった。「かなり今週のトレーニングというのはピリピリとした状態のなかで、敢えてやるように」したのだという(ロアッソ熊本公式サイト)。

20150808岐阜

岐阜は開始早々、右サイドのスローインをゴールラインぎりぎりにいた砂川がダイレクトではたくと、中央に難波が入ってきてスライディングシュート。これはDFが体を寄せてゴールの枠外。しかしヒヤリとさせられます。

対する熊本は、岐阜の攻撃をインターセプトした嶋田が左サイド(岐阜の右サイド)のスペースに齊藤を走らせるパス。齊藤がCBに競り勝ちクロスを入れますが、これはGK。岐阜のSBが上がって、「空け渡してくれる」スペースを使うという指揮官の意図が見えます。

11分には、相変わらずの素早いリスタートからダイレクトパスで繋いでPA内まで侵入すると、左の齊藤が収めてシュート。これは惜しくもGK正面。

CKこそ、砂川や高地といったキッカーから繰りだされるボールに、嫌な感じがしましたが、流れの中で難波が裏をとるようなシーンはなく。今日も早めに嶋田と清武がポジションをスィッチし、組織的に守る熊本が、”勝ちたい”気持ち一心の岐阜の圧力を凌ぎながら、チャンスもきちんと作ったといった印象で前半を折り返しました。

前回対戦のときも、試合が動いたのは後半でしたが、同じように開始早々から岐阜は猛攻を仕掛けます。風間がスピードに乗ったドリブルでアタッキングサードを脅かす。スローインからボックス内で振り向きざまシュートはダニエルがキープ。益山に渡してミドルは枠の上。ハンジンの股を抜いたパンチのあるシュートはダニエルがクリアします。

それを凌いだ熊本。反撃のなかでロングフィードにDF・岡根と競った清武が倒されてFKを得ると、Pアークちょっと左からのそのFKを清武が自分で蹴る。「毎日練習している」(スカパー)というFK。前半にも同じような角度を練習していた清武。ボールは、岐阜が作った壁を綺麗に越えて、GKの伸ばした手に触れるものの、ゴールネットに突き刺さりました。移籍後はもちろん、意外なことに鳥栖時代も含めてJリーグ公式戦初ゴール。熊本が値千金の先制。

その後も熊本は惜しい場面が続く。直後にはダニエルからのキックを齊藤が落とし、高柳が拾ってシュート。そのクリアを嶋田が再び拾ってのシュートが、ゴールネットを揺らしますが、惜しくもその前にファールの判定。

69分には高い位置で奪って、齊藤がドリブルで突っかける。ボックス内で3人に囲まれますが、こぼれ球を強引に打つ。しかしボールはゴール左外。すぐ後も、途中交代で入った巻が、右からのクロスにGKがかぶったところをファーから頭で打ち抜きますがこれも枠の左。74分には、右サイド奥に送られたボールに齊藤が追いついてグラウンダーのクロス。そのクリアを養父が拾ってのシュートはGKがキープ。しかし、なかなか追加点を奪えない。

逆にアタッキングサードまで侵入させても、最後のところの執拗な守備で、岐阜に苦し紛れのミドルシュートしか打たせていなかった熊本の堅い守備でしたが、試合も残り10分になってくると、足が重くなってきます。ただ、ここでもダニエルが「ラインを上げたいところで上げれなくて、押し込まれている状況になっていたので、そこを無理やり押し上げるよりは、下げた中で何ができるかというのを真っ先に発信してあげるということが一番良い仕事」(公式)という判断で、「弾くところはしっかり弾く、キャッチして、すこしでも時間を使えるように頭を使ってやれるようにというのは意識して」守り切る。

高地が、途中交代で入ってまだスタミナのある清本を斜めに走らせたところに絶妙のスルーパスを通すが、シュートは左に反れて事なきを得る。今度は左サイドから3人を抜いてPAに侵入した高地がシュート。これはダニエルの正面。

PA左の角あたりで得たFKが、この試合岐阜にとって一番の見せ場だったでしょう。キッカーはもちろん高地。ふわりと上げたクロスはしかし、密集するエリア内でいち早くダニエルの片手がパンチング。ファーにこぼれたボールを岐阜の選手が拾ってシュートはミートせず反対側にこぼれる。

告げられたアディッショナルタイムは4分。岐阜のCKが続く。渡邉も上げたパワープレイ。熊本のクリアに次ぐクリアを再三岐阜が拾って入れ直す。巻がゴール前で手を叩いて鼓舞する。クリアして、田中が走って、黒木が走って。岐阜が自陣から送ったロングボールをダニエルががっちりキープした瞬間、終了のホイッスルが吹かれました。

「幾つかのチャンスをしっかり決めるところを決めないと、勝とうとする思いの強い相手、しかも強力な攻撃をもった相手には、あのような反撃を許してしまうという、そこは次に向けた反省だ」。試合後、指揮官はそう口にしました。確かに前回対戦を思い返せば、先制に成功したのも束の間、2点返されての逆転負け。

しかし、あの頃と違い、今日の1点は返される気が不思議としなかった。解説の森山氏も再三言っていたように、熊本は実にうまく守っていた。もちろんその中心には、前述したようなダニエルの存在があるものの、あの対戦時点からコツコツ”積み上げて”きた細かなルールや約束事。それを手を抜かず90分間忠実にやり通すというベースのようなもの。多分そこの違いがはっきりと勝敗を分けた試合だったように思えるのです。対する岐阜はいわば”新チーム“。互いの連携すらまだまだうまく行っていないように感じたのとは対照的でした。

熊本は初の3連勝。この勝利で勝ち点を35まで積み上げ、順位も12位まで上がりました。暫定最下位岐阜との差を12まで広げたと同時に、プレーオフ圏内6位の金沢までの差が7に縮まりました。なんとか中位グループに入れた、そしてようやく6位の背中が見えてきたといったところでしょうか。

そしてこの勝利は、熊本にとってJリーグ参入以来100勝目という節目になりました。J入りして8年目の100勝。これが早いのか遅いのか。もちろんわれわれ熊本にとっては通過点でしかありませんが。

しかし振り返れば2008年のホーム開幕戦。高橋泰の逆転2ゴールで群馬に初勝利を飾ったあの日からひとつづつ積み重ねたもの。歓喜と絶望。泣き笑い。ときには怒り、連敗のスタンドで情けなさに呆然と立ち尽くした日も。今期にしても叱咤激励の一曲のチャントをゴール裏が延々と歌い続けたゲームもありました。昨日のことのようです。昨年はチーム存続の危機に立たされたことも。

そんな現在進行形の8年の歴史。積み上げてきた勝利が、ようやく100という数字になった。色々なドラマがあったし、これからもずっとそれを見届けていきたい。かけがえのないわれわれのホームチーム。

遠い岐阜の夜空に響く、カモンロッソ!を画面越しに眺めながら、少しだけそんな感傷に浸ってしまいました。

2015.08.02 連勝。栃木戦
【J2第27節】(うまスタ)
熊本 2-0(前半0-0)栃木
<得点者>
[熊]クォン・ハンジン(73分)、嶋田慎太郎(88分)
<退場>
[栃]桜井繁(85分)
<警告>
[栃]廣瀬浩二(59分)
観衆:5,116人
主審:荒木友輔
副審:藤井陽一、佐藤裕一


「ゲームコントロールもできていたし、勝てる試合だった。大きなミスから流れを失ったのが痛かった」とは、試合後の栃木・倉田監督のコメント(2日付・熊日)。われわれですら「たら・れば」を良しとしないのに、これはどうしても「ミスさえなかったら」としか聞こえない(笑)。サッカーのあらゆる失点は、必ずその前にミスがあってのことなのですが。

というよりも、早めに強気で交代カードを切っていき、残り20分近くもあったにも係わらず、最後の切り札・中美を投入し勝負に出た。けれどこれが裏目に出て、あのキーパー退場のシーンで交代要員がいなかった。そんなベンチワークを問われまいとする心理が働いているように感じるのは、深読み過ぎるでしょうか。

われわれの目には、今日のゲームの流れにしては栃木の交代カードの切り方が早い。逆に、ここ数試合のペースから較べるとじれったいほど熊本のカードが遅く感じる。それはスタンドで観戦していて感じていたことですが、帰って録画を見直し、紙媒体も含めた色々なコメントを合わせ読むと、両監督のこの試合に向けたスカウティングとゲームプラン、その裏側の心理、ベンチワークの妙と合間って、こんな面白い試合はなかったように思えてきました。まあ、これも勝ったからこそ言えることでなんでしょうが(笑)。

20150801栃木

対する小野監督が「点差ほど優位に進めたわけではなく、かなり苦しい試合でした」(九州J-PARK)と言うのは、誰しも見てのとおりの感想でしょう。熊本は、試合の入り方こそ悪くはなかったものの、栃木の球際の強さや、出足の早さでボールを失い、短いパス回しで崩されると、幾度となくゴールを脅かされる。頼みの齊藤は、栃木の坂田、ハン・ヒフンの高さのあるCBに自由にさせてもらえません。

ただ、ここを耐え切れる守備の意識が、あるいは戦局観が今の熊本にはある。倉田監督は、最後のシュートの精度を悔やみますが、ゴールマウスに大きく立ちはだかり、コースを切っているダニエルの存在は大きかった。まさにペナルティエリア全域を睥睨し支配している。最後の最後のところで、ハンジンや鈴木の足もよく出ています。

そうやって耐えていれば、後半必ずチャンスはある。指揮官はそう見ていました。「栃木は監督が代わって、かなりアグレッシブなサッカーに持ってきてます。」「その分、今は後半になると少し息切れするところが、ここまでの試合で見えました」(小野監督)。確かにこの日のうまスタも、日が暮れたとはいえ、うだるような暑さが残っていましたが、前半も終わりごろから栃木の選手たちのユニフォームが、汗でぐっしょり濡れ始めているのが、スカパーの画面ごしに見て取れました。

後半開始早々から栃木は、前半目立っていた湯澤に代えて松村を入れてきます。さらに63分には、面倒くさい相手だった河本まで引っ込めてくれる。これが確かにあとから考えると、「とにかくスタートから飛ばしてくる」(小野監督)チームの戦術なのでしょう。ガソリンが切れた選手を入れ替えて、チームのパワーを維持する道を早めに選びます。

そんな攻防のなかで小野監督は、前半途中から清武と嶋田のポジションをチェンジさせた以外は、どっかりとベンチに腰を据えて一向に動こうとしません。いつもだったら、巻を入れて押し上げを図ってもよさそうなのに。いやいや、攻撃の形も作れているので、このバランスを崩したくないのだろうか…。などとスタンドで勝手な思いを巡らせていました。

ようやく指揮官が動いたのは71分。清武に代わって入ったのは田中。このスピードスターの登場にスタジアムが沸き上がります。間髪を入れず栃木は最後のカード、中美を投入。前半戦で2点を決められて同点引き分けに持ち込まれた相手。この選手に栃木は勝負を賭けたというところでしょう。

熊本がロングボールで栃木のDFラインを押し込もうとしていました。栃木DFの坂田のヘディングの処理が悪く自陣ゴールラインを割る。熊本の右CKに、SBからキッカーの養父が駆け上がるとき、養父はコーナーのボールボーイではなく、途中ピッチサイドのボールボーイにボールを要求して自ら抱え、そして急いでセットします。栃木の選手たちとしては、なんとはない小さなミスからのCK。そして、ちょっと水分補給でもしようかという緩慢な気持ちもあったかも知れない。そんな一瞬の素早いリスタートでした。

セットするなり蹴られた養父のキックを、ニアで齊藤が叩きつけるように頭で反らすと、中央に入ってきたハンジンが左足で押し込む。ボールも人も、あまりの速さに栃木の選手は対応できません。前半戦の栃木戦で決めたのと同じようなハンジンの得点で、熊本が先制に成功します。

残り15分。さすがに熊本も疲れが見えてきました。俄然、栃木も反撃に転じ、再び熊本ゴールを脅かす。ゴール前の混戦のなかでハンジンが倒れこむ。おいおい大丈夫か。メディカルスタッフもピッチ内に呼ばれ、ハンジンはピッチの外へ。すぐに大谷が準備される。

あとでスカパーで知ったことですが、これは選手とスタッフとベンチの情報連携のミスだったようですね。ハンジンは恐らく少し時間稼ぎをして、この流れの悪さを断ち切りたかったのでしょう。「まだ出来たのに」とでも言いそうに苦笑いして、ハンジンがベンチに退く。ベンチでは監督もコーチ陣も苦虫でも噛み潰したような表情。この大事な時間帯と、この展開のなかで、いただけないベンチワークの凡ミスでした。

動揺も走りそうなそんな展開を、きっちりと締めたのは、ここでもGKのダニエルでした。栃木の右からのCKをジャンプ一番パンチングで凌ぐと、続いても阪野からのパスを受けた松村のシュートをがっちりとセーブ。栃木に流れを渡さない。

すると85分、栃木の攻勢のなかでのパスミスを齊藤が逃さずダイレクトで広く開いた栃木陣内へ出すと、そこに走り込んだのは田中。相手GK桜井が一瞬、躊躇したぶん、田中のボールに。ドリブルで突っ込もうとした瞬間、桜井は田中を引っ掛けて一発レッド。

冒頭書いたように、栃木にはもう残された交代カードはありませんでした。一旦ハン・ヒフンがグローブを着けるものの、コーチ陣の指示で荒堀がキーパーユニに着替えます。

このFKのチャンスに立った嶋田。前半、同じようなFKをバーに当ててしまったイメージが残っていないはずはありません。ただ今度は左からではなくゴールに向かって右側から。嶋田の得意とする左足から放たれたボールは、綺麗に弧を描いてゴール左隅に突き刺さる。荒堀も手を伸ばしましたが、急造GKとしては苦笑いするしかないコースでした。

このレッドカードからFKに至る流れ。いつも思うのですが、エリア外であっても、このプレーは得点機会阻止のための確信犯。桜井も一発退場に代えて、失点阻止に賭けたのだと。それからすれば一種の認定PKみたいなルールがあるべきではないかと思うのです。逆にこのFKを決めるのはたとえフィールドプレーヤーがGKだとしても至難の技。そのFKを“入れ返した”嶋田の今日のプレーは理屈では測れない価値を持っていると思います。

このシーンの前に、嶋田に代えて巻が準備されていました。「相手が1人少なくなるというのはある意味、メンタル面での危険が出るんで、そこに弛みがないように、入って声をかけてくれ」という指揮官の意図。しかし、FKのキッカーは誰だと藏川に尋ねてそれが嶋田だと知ると、「タイミングを1つずらし」た。「ここは1回託そうと」。その嶋田がきっちりと”仕事”を成し遂げると、残された時間、巻きも託された役割を全うしてアディッショナルタイム5分を凌ぐと、熊本がクリーンシートで連勝を飾りました。

順位は暫定ながら14位まで上がりました。指揮官も「ようやく目指すところ(プレイオフ圏内)が見えてきた」と口にしました。しかし、下位グループは相変わらずの団子状態。

このゲーム、大きなプランを描いたのは小野監督だったのですが、それをピッチ上で微調整、微修正したのは選手たち自身だった。そんな今日の試合の実感が、指揮官を自信めいた口調にさせたに違いないでしょう。

冒頭、書いたようにこのゲームの行方を左右した選手交代のベンチワーク。まさに勝った後の結果論ですが、お互いに決めるべきチャンスを生かせない展開のなかで、小野監督が描いたのは、「悪くはないが思うようにいかない」「こんなゲームはじっくり構える」そんな判断ではなかったかと。逆に敵将には、「決めきれない」焦りからくる、「何らかの手を打たなければならない」と思うような思考回路ではなかったかと。そこまで言っていいのかどうかわかりませんが、その底には選手に対する信頼や自信のようなところがあるのではないかと。

ようやく梅雨明けした熊本はこれからが夏本番。いつもこの時期失速していた熊本のもうひとつの敵”夏の暑さ”を、今日のように”味方”にすることができるのか。まだまだ確信の持てない心配性のわれわれですが、今夜ばかりは(先週もでしたが(笑))勝利の美酒に酔いしれたいと思います。