先日の最終戦のエントリーに対して、すぐに以下のようなコメントをいただきました。

「小野監督の退任は本当に残念です。試合後”全ての責任は私にある”と決して選手の所為にしない発言は、決して常套句ではなく、それだけの気構え・姿勢で一戦一戦の準備をされていた指揮官の思いを感じました。”くだんの事件”は容認される行為ではありませんが、それだけの思いが、一部スタッフの練習準備の不備に”度を超えた行為”につながってしまったのでしょう。AC熊本のクラブとしてのガバナンスの未熟さも露呈しましたね。小野監督にとっては当然と思われるスタッフの管理など、J1に上がるクラブとして未だ体をなしていないことを突きつけた形となりました。2年間若手を育てながら、J1でも通用するような戦略を基に築かれた小野監督のサッカーを誰が継承できるのか、AC熊本に更に難題が投げかけられていると思います。小野監督には深く感謝したいです。」(spirits of roassoさん)

突然のニュースでわれわれが言い尽くせなかったところを簡潔に表現していただきました。勝手に文章を持ち出して申し訳ありませんが、ファン目線としてはこれ以上の意を尽くしたものはないと思いましたので。

そして、コメントにもありましたが、“くだんの事件”です。

ネット上では熊日、さらには担当の山本記者への非難が渦巻いているような状況もあったのですが、そこに井芹さんの文章があがり、最も現場に近い第三者の立場で、経緯も含めてほとんど言い尽くされているようにも思われます。

で、今さらの感もありますが、この件についてはわれわれも少々、思うところがあり、ひと言付け加えさせていただきたく書いてみました。

ネガティブなアクシデント、トラブルが起きたときに、その組織の力量なり、真価が問われる。これは何にしてもあてはまることですね。

Jリーグの公式戦で、審判よりも、選手よりも、何より先にピッチに入るのはフェアプレーフラッグです。サッカーというスポーツの姿勢や価値観を端的に表現している光景だなと思っています。その運営会社であるACは夢を売る企業、いや”夢だけ”を売っている組織であるわけで、その立ち居振る舞いは一般企業や行政あたりよりも、さらに注目を集め、“フェア”であることが当然のように求められています。

今回のこの問題についてわれわれは、ACの成熟度の問題であり、チーム広報機能の熟練度の問題ではないかと思っています。あの組織の中に、「これは一刻も早くリリースしないといけないよ」というスタッフが一人も居なかったのか。その一声があがらなかったのか。広報窓口は、記者や報道機関との間合いのなかで、その状況を感じ取れなかったのか。

身内感覚によって事の重さの認識が歪んでしまうことはよくあることです。しかし、報道機関からの問合せを受ける前に、先にリリースしなければ「隠ぺい」と見られてしまう。これはこの情報環境のなかで動いているビジネスパーソンにとって、きわめて当たり前の実態でありルールになっていると思います。逆に言えば、単純ですが、とにかく先に出すこと。報道機関に一斉ファックスするなり、ホームページに上げるなり、記者会見するなり。色々あるけれど、先手さえ打てば8割方メッセージは正しく伝わる。後手に回れば、それを挽回するのには膨大なエネルギーを要する。一度でもこういった経験をすれば(こういった経験をしたことがあるものですから)身に染みてわかることですが、なかなかそういったケースに直面することは多くはありませんけれど。

今回の件は、ファン感情とそのタイミングなどが絡んで議論が複雑になっているように見えますが。小野監督については、普段のわれわれの言説をご覧の方々はお分かりのように、冒頭のコメント同様に、心酔するほどの小野派です。ある意味で国の宝だと。代表チームに取られるのであれば仕方ないなと思っていたくらいです。

言うまでもなく小野監督は智将です。しかしその前に生身の勝負師です。諦めているわけではありませんが、実際のプロスポーツの現場においては、こういったことは一定の確率で起こり得ることではないかと思っています。(もちろん、このカテゴリーのこの立場では許されるものでないことは当然ですが)。何しろピッチの上では日常的に起こっているわけですから。ただ、ピッチ上では、誰の目にも明らかだし、即座にカードが提示され、そのことでお互いに状況を理解し、謝罪し、受け入れることができるわけです。そこにルールや審判という第三者の役割があると思います。

今回、毅然と(というよりも、ごく普通に、当たり前のこととして)カードを提示する役割はクラブ側にあったのではないかと。そこに未熟による躊躇やもしかしたら保身があったために、必要以上に問題を大きくし、プレーヤーである小野監督や被害者であるスタッフに(そしてもちろんファンに対しても)、無用のストレスや迷惑をかけてしまったように感じます。結果として、小野監督を守ることができなかったのではないかとも…。初動の段階でもっとこの事件に対する危機管理の意識があったならと。

ガバナンスとかリスク管理とか色々と言い方はありますが、やはり経験が足りなかったのではないか、と同時に、逆にACも10年を経て組織として経年劣化があるのではないかという気もします。決してACが悪いと言っているのではありません。組織であれば誰もが免れられない制度疲労のようなものであり、乗り越えていかなければならないものですから。

さて、いずれにしても小野監督を送ることになってしまいました。冒頭のコメントの通り、とても“残念”です。今シーズンの結果はここ2~3日の熊日に詳しく総括分析されており、監督への高い評価はこれに代わるものはないと思います。そのなかでも「枝葉をどれだけ整えても、幹を太くしないと本当の強さは身につかない。結果が出ない苦しい時期でも地中に根を張って、ぶれずに乗り越えた」という監督自身のコメントがわれわれの気持ちに一番ピッタリだなと感じました。

未練かもしれませんが、またいつか。もっと上のステージでチームを見ていただければ。まだそんなことを言いたい気分です。とても残念でなりませんが、「お疲れ様でした」という言葉を送ります。

【J2第42節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半0-0)岡山
<得点者>
[熊]齊藤和樹(72分)
[岡]岩政大樹(86分)
<警告>
[熊]黒木晃平(14分)、上村周平(50分)、清武功暉(88分)
[岡]渡邊一仁(90分+1)
観衆:8,193人
主審:荒木友輔
副審:藤井陽一、小曽根潮


試合が終わって、「なんだか今シーズンを象徴するような結果だったなぁ」という感想を持ったのですが、全く同じことを井芹さんが先に書いていました(笑)(九州J-PARK)。先制点を奪ったものの追加点が奪えないままで追いつかれる。1得点ではやはり勝ちきれない。ダニエルが移籍以降、1試合平均失点が1点以下になったとはいえ、勝ちきるためにはやはり1得点では辛いのです。

20151123岡山

ボランチに中山と上村というコンビも初なら、齊藤がスタメンにいないのも、累積警告での欠場以外、初めてのことではなかったでしょうか。
「齊藤が良くないということではなくて、90分の中での流れが必要になるかなと。あるいはそういうことを考えられるだけ、誰を先発で出しても全く遜色ない、そういうレベルにあったというのが1つです」。その意図を、小野監督はそう説明しました。そしてその点では策がうまくはまった。

序盤から攻勢があったのは岡山の方でした。熊本を上回る早い寄せ。セットプレーのチャンスを作る。しかし、熊本もセカンドボールを回収し、組織的なプレスでボールを奪い、少しずつ少しずつ挽回していく。

23分頃には岡山のFKをクリアしてカウンターに。黒木がキーパーの位置を見てロングシュートを放つも枠の左。31分頃には再び岡山のセットプレーからカウンターに転じ、清武が運んで最後は右から走ってきた嶋田に。しかしトラップが大きくてDFに入られる。

一番惜しかったのは38分、黒木からのパスに嶋田がダイレクトでシュートは相手GKが弾きますが、そこを拾った清武がシュート。これがポストに嫌われる。思わず腰を浮かせ、そしてガックリ座りなおしたシーンでした。

スコアレスで迎えた後半。知将同士のベンチワークの戦いにもなりました。「主導権を取るために」(長澤監督)、早めに岡本を入れてきた岡山。それに対して平繁を用意している熊本でしたが、岡山のCKのチャンスに交代をストップ。

それに対して72分、今度は自分たちのCKのチャンス。直前に中山に代えて齋藤を入れる。「熊本さんのセットプレーは十分に注意していたんですけど、交代選手のところのマーキングでズレがあった」と長澤監督が言うとおり、清武の蹴ったボールは、ポッカリとフリーになったど真ん中の齋藤が頭で捉えてゴールに突き刺しました。交代で入ったばかりの齋藤のファーストタッチでした。

残り10分。嶋田に代えて、それまではリスクを犯していたとも言えるボランチのところに藏川を入れた(中山が下がったあとは清武が務めていた)。この交代がイレブンに「1点を守りきるぞ」と伝わったに違いない。そうやって試合をクローズしようとした熊本。

それに対して岡山が黄と渡邊の2枚替えで、ゲームをオープンな展開に引きずり戻した。コンフュージョン(混乱)をもたらすかのように。

84分、FKからの流れでしたから、まだ岡山のDFが前線に残っていました。サイドスローから入れて竹田がドリブルでエリア内に侵入。このケアに遅れたのが痛かった。中央へのパス。ゴール前の岩政がヒールで流し込みます。

無情な同点弾。ため息のスタジアム。

さらにそのあとも岡山の強烈なミドルシュートをダニエルが弾いて止める。がら空きのゴールに、ボールを回されシュート。これはゴールマウスに立ちはだかった黒木が右足で間一髪クリアする。絶体絶命のピンチでした。

逆にアディショナルタイム。カウンターから左サイドの藏川が持ち込む。右から走って来ていたのは齋藤だったでしょうか、それともアンデルソンだったでしょうか。しかし、PAに入るか否か、藏川はシュートを選び、それはGK正面に収まり万事休す。終了のホイッスルが鳴りました。

「最後はお互いにカオスの状態になって」「見ていた人はすごくおもしろいゲームだったと思います」と言ったのは長澤監督でした。熊本としても「選手達は死力を尽くして出し切ってくれた」(小野監督)と言うとおりの熱戦でした。

ただ、しかし。冒頭の感想のとおり、それでも勝ちきれないその薄皮一枚のような部分、それがこのシーズン最後まで付きまとった課題ではなかったかと。順位も近かった岡山との戦いだったからこそ、そう思った最終節でした。

終わってみれば13勝15敗14引き分け。順位はひとつ上げて13位で終了。それは昨季と同じ順位でした。今シーズンの総括は、改めて別のエントリーでさせていただくとして。とりあえずは最終戦の感想でした。皆さん今シーズンもお疲れさまでした。




さあ、そろそろこのエントリーをアップしようかと思っていたちょうどそのときでした。小野監督退任のニュースが…。

「…クラブからは来シーズン続投のオファーをいただきましたが、自分の中では1年1年強い覚悟をもってやっているなかで、J1昇格・プレーオフ出場という目標を達成できなかったことに対して、けじめをつけることを決めました。…2年間、本当にありがとうございました」
監督らしい、はっきりとした、潔い退任の弁でした。

九州の二部リーグチーム。なかなか思うような戦力や環境が整わないなかでの戦いは苦しいことのほうが多かったのではないでしょうか。しかし、日本サッカー界きっての智将を迎えたこの二年、われわれにとって、現代サッカーの水準を示してくれるような基本戦術がひとつひとつ組み立てられ、完成度を増していくプロセスを目の当たりにして、サッカーの面白さ、奥の深さを改めて噛み締める至福の時間でもありました。

小野監督。こちらこそ、ありがとうございました。

【J2第41節】(鳴門大塚)
徳島 2-1(前半1-0)熊本
<得点者>
[徳]濱田武(33分)、大崎淳矢(66分)
[熊]清武功暉(83分)
<警告>
[熊]岡本賢明(52分)
観衆:4,124人
主審:塚田智宏
副審:林可人、関谷宣貴


この試合後、北嶋コーチは自身のtwitterでこうつぶやきました。

「今日の敗戦で2015年ロアッソのPO進出の挑戦は終わりました。 悔しさよりも、寂しさが強い。 心の中に大きな穴が空いた感じ。 本気で行けると信じてたんだけどな。」

数字上、可能性がゼロではないという状況でしたが、客観的に見れば非常に厳しいことに違いありませんでした。6位を含めた3チームが勝ち点57で並ぶ状況。それに対して勝ち点52。その差5で追いずがる熊本。どこかが勝ったら追いつかない。とにかく勝つしかなかった。しかし、その試合を落としてしまいした。

試合自体は熊本が支配していたと言っても過言ではないでしょう。シュート数は徳島10に対して熊本15。コーナーキックの数も4対13と圧倒している。しかし、サッカーはゴールに入れた数で優劣を競うゲーム。その点でいえば、どんなにいいサッカーをしたとしても、今日徳島に敗れたという事実は変わることはありません。

20151114徳島

熊本は、前節復帰を果たしていい働きを見せたアンデルソンを先発で起用してきました。そして点を決めた嶋田に、久しぶりの高柳を入れた4-4-2。

雨が降り出した鳴門大塚ポカリスウェットスタジアムのピッチ状態は、徐々に悪くなっていく。グラウンダーのパスにも水しぶきが上がる状態に。そのピッチ変化をうまく把握した方が先んじる。スリッピーな状況を利用した方が上回る。

熊本は、養父が上がってのクロス。ニアでアンデルソンがトラップ一発、ボレーシュートは惜しくも左にそれる。続いても養父のアーリークロスからアンデルソンがファーで競る。クリアボールを嶋田が拾ってのシュートは枠の右に外れます。実に惜しい攻撃が続く。

アタッキングサードに入ってワンタッチパスでスイッチをいれ崩す熊本。次々に攻撃の形は作れている。しかし、ゴールを割ることはできない。そんなもどかしい時間帯でした。

徳島が持ったボール。バイタルで回す。左の大崎がチャンスなしとみてマイナスぎみで中に入れると、Pアーク前でそれを濱田が躊躇なくミドルで撃った。シュートはゴール左隅に見事に決まります。ダニエルの伸ばした手も届かず。

徳島にとっては”コストパフォーマンス”に優れた先制点といえましたね。熊本が繰れども繰れどもゴールを割れなかったのに比較すると。

後半開始から熊本は積極的にカードを切りました。高柳に代えてボランチの位置に岡本を入れてきます。そして早い時間帯で同点にするために、押し込む。

齊藤が楔のボールを受けて反転。シュートはGK正面。アンデルソンのポストプレーから嶋田に。このシュートもGK。続いては右サイド嶋田がヒールで戻すと、養父がそれをダイレクトでクロス。アンデルソンがヘッドで繋ぐと、中の清武のヘディング!これも惜しくもGK正面。しかし、連携は出来ている。

次々に、好機を演出している熊本だったのですが、ちょっと”攻め疲れ”があったのでしょうか。津田に代わって入った徳島のキム・ジョンミンが、右サイド濱田からの縦のボールを反転しながらシュート。これはダニエルがゴールラインにクリアしたものの。続く右からのCK。ファーの福元がヘッドで折り返したボール、ゴール前で大崎が反らしてゴールイン。追加点とします。

熊本としては痛恨の2失点でした。しかも、ポゼッションはこちらにあるにも係わらず…。

ただ、前回対戦では2点ビハインドから追いついた。時間はまだある。

熊本は2枚代え。斉藤から平繁。嶋田を下げて上原。その平繁への楔のボールから岡本がミドルでシュート。これは惜しくも枠の上。そして81分。ボックス内へのパスに走った清武を、福元が倒して笛が鳴る。PK!

これを清武自身で、きっちりと決める!1点差に追いすがる。

行ける、まだ時間はある、アウェイ徳島に駆けつけた赤いサポーターのチャントも勢いを増すのが画面越しに伝わります。

アンデルソンから岡本。左の平繁へのクロス。全てがワンタッチ。しかし、ファーのハンジンの前でDFが入る。残念。

思いは届かず。アディッショナルタイム3分も凌ぎきられ。熊本も追いすがったものの、徳島に逃げ切られてしまいました。

この敗戦で、プレーオフ進出の可能性は断たれました。小野監督は「なんとかJ1昇格の可能性を残して、最終戦ホームで戦いたいと、選手たちはその気持ちでしっかり戦ってくれました」とコメントし、キャプテンの園田は「自分たちで立てた目標が、残り1試合を残して消えてしまったのは残念」と言いました。

そう。プレーオフ進出は、選手たち自身が立てた目標でした。

熊本が、初めてプレーオフ圏内の可能性を持って終盤を戦ったリーグ戦は、自らの敗戦のため、残り1試合を待たずして終戦となりました。大宮に快勝し、讃岐を下し、最終コーナーを回ったところから、磐田、C大阪、水戸と。ちょっとつまづいてしまったのが残念でした。

ただ。二度の最下位を経験し、それでも開き直って這い上がってきた今シーズンも、とうとう来週のホーム最終戦で終了。しかし、決して消化試合にはしたくない。何故なら混戦模様の中位の勝ち点差。今季の熊本のがんばりを示すためにも、一個でも上の順位に収まりたい。このまま尻すぼみで終わりたくはない。

「俺たちに残された使命は、最終戦で勝利し、1年間戦ってきてくれたサポーターを喜ばせること」。冒頭の北嶋コーチのtwitterは、そう締めくくられていました。そう。なにより、今シーズンのホームでの勝率の悪さを払拭して、この辛かったシーズンを支え続けたファンに応えて欲しい。まだまだ終戦ではない。

ホーム最終戦。夕暮れのスタジアムのゴール裏で、今シーズン最後の「カモン!ロッソ」を歌いたいものです。

【J2第40節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半0-0)水戸
<得点者>
[熊]嶋田慎太郎(59分)
[水]船谷圭祐(63分)
<警告>
[熊]岡本賢明(30分)、清武功暉(83分)、巻誠一郎(90分)
[水]岩尾憲(75分)
観衆:8,781人
主審:吉田哲朗
副審:村井良輔、熊谷幸剛


いつものエントリーとは別に、われわれとしてもやはりこの事件に触れておかねばなりませんね。

この水戸戦の前日、7日付の熊日朝刊で突然報じられた小野監督およびクラブへのJリーグからの厳重注意処分。最初、記事を読む限りでは、小見出しに取った「嫌がらせ」という言葉からなんだかよくイメージがつかめず、パワハラ的な印象を持っていたのですが、その後のNHKなどの追っかけ、あるいはクラブ公式から発せられた報告などで、おぼろげながらこの実態が、小野監督によるスタッフへの”暴力行為”だということが理解できました。

「監督は常日頃から先頭に立って、試合はもとより、練習の際も選手の怪我、練習環境に大変気遣いをしており、今回もそういう思いが行動に表れた結果ひきおこされました」とクラブ公式は言います。確かに監督のその姿勢、それはわれわれにも伝わっています。公式の言葉をさらに借りれば、「8月26日県民運動公園補助競技場において、数名の選手とのミーティング後、合流した段階で、チームの紅白戦の前のピッチが整備されていないことに対し、チームスタッフの怠慢であるとし、スタッフの一人に行き過ぎた注意をした」と。その”行き過ぎた注意”という行為をクラブは具体的に書いていませんが、熊日によれば「顔を水たまりに近づけさせ、背中を踏み付けるなどした」のだと…。

思い起こせば、この26日は熊本がとんでもない強風に揺るがされて巨木などもなぎ倒された、あの台風15号が通過した翌日になります。恐ろしいほどの暴風雨がまだ記憶に鮮明です。トレーニング環境の整備。それに対してのスタッフの動き。当事者でもなく現場を覗いたわけでもないわれわれが、それ以上の情報や感想を持ちえているわけではありません。その状況下でもスケジュール通り紅白戦が組まれたということ自体、われわれとは異次元の緊張感、価値観を感じます。常にプロフェッショナルの仕事を求める勝負師の姿勢。われわれがこの経緯にコメントする資格はありません。

ただしかしひとつだけ言えることは、仮に事情を勘案したとしても、いえどんな事情があったにせよ、”暴力”だけは絶対に否定されるべきであるということ。この一点に関してはどんな真実にも優るといえます。

クラブからは、「今後、より一層コンプライアンス順守に努め、180万県民に愛され、信頼されるクラブとなるよう精進する所存です」と表明されました。幸いなことに、その後のチーム成績に関しても、一丸となった結果を見せてくれています。

今日の水戸戦。スタジアムのコンコースで逢った旧知のクラブスタッフに、「こんなときこそクラブの真価が問われます」と言われました。われわれが果たすべきことは、事の真実を見極め、クラブに対して正すべきところは正し、そのうえで、支え続けることだと思います。それがホームチームへの愛なのではないかと。

20151108水戸

さて長くなりました。試合はというと。

対戦する水戸は19位に沈む。この試合で勝てば降格圏内を脱し、残留が決まるという状況。ここ終盤においては、対戦する相手ごとに、それぞれ違ったモチベーションがあって向かってくる。それに対して指揮官は、「気迫で上回ること」(スカパー)を命じて、選手たちをピッチに送り出しました。

そんな水戸のモチベーションに押されたのかも知れない。あるいは今節敷いたダイヤモンドの中盤がどうだったのか。水戸が熊本のお株を奪うようなプレスでボールを奪うと、逆サイドへピッチを広く使った攻撃で熊本を脅かす。馬場と鈴木で左サイドを崩していく。受け身な熊本。

そんな中で12分頃。スローインからの流れ。齊藤が落として清武のシュートがPA内に残っていたハンジンの足元にこぼれた。シュートも、これは右サイドネット。

30分には清武が高い位置で奪って平繁にパス。平繁が左からグラウンダーでクロスを入れると、フリーで入ってきた齊藤のシュートはポストに当たって撥ね返されて絶好機を失う。(ただ、完全に崩したと思われましたが、あとでビデオで見返すと、齊藤の入りが遅れていた。丁度野球の振り遅れのファールチップのように、齊藤の振った足が遅れて外れて行っているのがわかります)。

なんとはなく“受けてしまった”前半を終えて。後半開始早々から熊本は岡本に代えて嶋田を入れました。こんなオープンに近い展開にこそふさわしいのは嶋田だったのかも知れない。そしてこれが奏功する。

59分。清武のロングスロー。低い弾道。ライナーで。ゴール近くニアで競った園田。こぼれる。それを嶋田が利き足とは逆の右足を振りぬいて、ゴールに押し込みました。

ここ数試合、精彩を欠いていたといえる嶋田。失点にも絡んだプレーを見ていて、われわれも書こうか書くまいかと悩んでいました。指揮官は言います。

「若い選手には常にありますが、ある程度試合に出続けていくと、途中でなかなか良くなっていかないことがあります。彼に限らず、多くの選手でそうでした。彼 が素晴らしいのは、そこでもう1回、昨年どうやってチャンスをモノにしていったかを見つめていました。終わってからもしっかり1vs1のトレーニングを し、ディフェンスを磨き、そこから攻撃の良さをもう1度つかんでいきました。立ち返るところを自分なりに見つめ、ひとつ壁を這い上がってきました。これは 本物になりつつあるなと感じました。そういうものが凝縮されたゴールだったんじゃないかと思います。 」(公式サイト)

タオルマフラーを全開にし、振り回して喜んだ8千人のスタジアムだったのですが、喜びも束の間でした。63分、水戸がPアークで粘る。熊本はブロックするも鈴木が出したパスに、途中から入った船谷がこれも利き足でない右足を振りぬいた。GKダニエルも横っ飛びで触りましたが残念。ボールはゴール左隅に吸い込まれてしまいます。

その同点弾の前、熊本は藏川を準備して、この1点を守ろうとしていました。同点に追いつかれた段階での交代は、アンデルソン。平繁が足を攣っていたせいもありました。

開幕前に右ヒザ前十字靱帯断裂という大怪我で戦列を離れたアンデルソン。その離脱は今シーズンのチーム戦略を狂わせてしまった最大の損失でした。

そのアンデルソンが、この大事な時期に、残り3試合となった時期に”間に合った”。帰ってきた。場内からは最大の拍手。

「コスタリカで手術」。そして長い長い辛抱強いリハビリの日々。「 こんなに長く試合から離れていたのは初めてで難しかったが、クラブ、サポーター、家族の支えがあって復帰できたので感謝したい」と言った。そして「(途中出場する時のサポーターの声援は)すごく嬉しかった。サポーターが自分のことを忘れていなかったことと、その声援で頑張ろうという気持ちになった」と…。

忘れるわけがないじゃないかアンデルソン。深刻な怪我からの復帰を思わせないそのプレー精度。前線で収める、前を向く。切り替える。サイドに開いてチャンスメイクする…。先々週、全体練習に復帰したばかりとは思えない躍動感。

ただ水戸もしぶとかった。鈴木雄斗に代えてアンダー代表の鈴木武蔵を入れてくると、81分には田中のミドルシュートがバーに直撃。アディッショナルタイムにも左からのクロスが抜けるが、前線の武蔵にも合わず。これは事なきを得ました。

終了のホイッスルが鳴ってピッチに倒れこんだ両チームの選手たち。手にした勝ち点1、こぼれ落ちた2点の重さを体全体で受け止めているかのようでした。

熊本は勝ち点1を上積みし52点とし、6位、7位、8位が57点にとどまり、のこり2試合。その差は5点。PO内への可能性は数字上ゼロではないものの、かなり厳しい状況になったことは間違いありません。順位は12位まで落としました。

試合後、公然と涙を見せていた清武。「今日は絶対勝たなければいけない試合だったし、僕にもチャンスがあったので悔しい」とコメントしました。「ロアッソ熊本にきて、結果を残さなければいけなかったので悔しい」と。それが涙を流させた理由だった。「自分が熊本にきた時は低迷していて、ダンや自分は結果を残してプレーオフまで上げるという強い気持ちなので、残り2試合、頑張りたい」。そんな気持ちで、熊本のために”悔し涙”を流してくれる”助っ人選手”がいる。

そしてわれわれはどうでしょう。その可能性は現実的にはあり得ないくらい厳しいものなのかも知れない。ただ、この最終盤。消化試合のようなものでは決してなく、こんなモチベーションで次の試合も臨んでいける。負けは許されないぞと臨んでいける。最後の結果はどうあれ、われわれ熊本の経験値に間違いなく上積みされる。これを楽しまないでどうする。そんな気持ちの、残り2ゲームです。

【J2第39節】(金鳥スタ)
C大阪 1-1(前半0-1)熊本
<得点者>
[C]パブロ(53分)
[熊]上原拓郎(37分)
<警告>
[C]山口蛍(39分)、田代有三(77分)
[熊]清武功暉(4分)、嶋田慎太郎(81分)
観衆:10,194人
主審:上田益也
副審:村田裕介、津野洋平

「勝点1じゃダメなんだと、勝点3を俺たちは取りに行くんだという試合を、最後のアディショナルタイムまで、お互いが出し切った試合だった」(Jリーグ公式 小野監督コメント)

プレイオフ圏内の6位までの勝ち点差が7の熊本。そしてセレッソ大阪も3位福岡までの差7という、互いに”負けは許されない”という対戦でした。

C大阪の前線には玉田と田代がいて、中盤は山口蛍や扇原が締める。こんなガチンコのメンバーのセレッソと、この終盤こんな状況(モチベーション)で対戦する楽しさ。緊張感と高揚感。そんな気持ちでキックオフを待ちました。

20151101C大阪

いつも通りの自分たちのサッカーをすることをわが指揮官は言い渡して選手を送り出したはずです。熊本は、相手が格上のセレッソだろうがなんだろうが、強い気持ちで前から奪いに行く。前節は磐田に研究されて交わされたプレス。しかし、躊躇など微塵もなく、今節もいつも通り貫いていく。

平繁が右サイドからドリブル。股抜きでエリア内に侵入しようとしてクリアされる。対するC大阪も、園田が玉田を倒してPアーク左でFK。玉田の左足から放たれたボールは壁でブロック。

しかし、1万人のホームの応援を背にしたC大阪。徐々にポゼッションを高める。右サイドからのクロスに、中央で田代のヘディングはダニエルがキャッチ。続いても、裏へのボールにオフサイドを狙った園田に対し、マグノクルスがそれをかいくぐった。前に出てきたダニエルが入れ替わられる。エリアに侵入するマグノクルス。なんとか園田がカバーに入ってクリアします。危ない危ない。

熊本はセレッソの攻勢を”受ける”かたちが続く。バイタルでボールを回すセレッソ。最後のところで撥ね返す熊本でしたが、ここでセレッソにアクシデント。マグノクルスが痛んで、自らバツ印を出す。代わって急遽パブロを入れることになった。「予期せぬカードを1枚切らせることになった。よしよし」とわれわれは思ったのですが、いやいやパブロという選手、前回も対戦していますが…。入ってすぐに左サイドのパス交換から股抜きでシュートまで持っていく。後半に”痛い目”に合うことになるとは…。この交代劇。果たして”よしよし”と言えたのかどうか。

歓喜はそんななかで熊本に訪れました。37分、上村が右サイドの養父にパスを送ると、それまでボックス内ニアサイドに味方を走らせていた養父が、それをチョイスせず、中央に張っていた齊藤にクロスを入れる。齊藤がDFを背負いながら胸トラップで落として左にはたくと、上がってきたのは上原。トラップして浮いたボールを得意の左足で振り抜いた。ゴール右隅に突き刺さります。養父の選択、齊藤の技術と判断、上原の思い切りのいいプレーが生んだゴール。上原にとっては嬉しいJリーグ初ゴールでした。

さらにその直後、右から縦に平繁が入れて、齊藤がマイナスに落とす。上がってきた清武のダイレクトシュートは惜しくも枠の右。完璧な崩しでしたが追加点は成らず。

セレッソは、その意図するとおりサイドチェンジを多用してピッチを大きく使う。最後のクロスはダニエルがその高さでセーブする。あるいはエリア内の短いパス交換には、喰らい付くようなディフェンスでカットする熊本でした。

ハーフタイム。1点ビハインドを背負ったセレッソ。アウトゥオリ監督の指示はどんなものだったのか。具体論それとも精神論に終始したのでしょうか。後半開始すぐに、右サイドから、この日無尽蔵の運動量で気を吐いていた関口。パブロ、小暮とパス交換。再びパブロに渡りグラウンダーのクロス。これをマイナスに出すと山口が狙いすましたミドルシュート。しかしこれは左ポストに跳ね返り事なきを得ます。セレッソらしい攻撃でした。

そして迎えた53分。セレッソの右CK。玉田の左足から放たれたボールに、ニアに飛び込んだのはパブロ。「(CKで)あの位置から枠に飛んでくるのは、自分のなかでなかった」(熊日・ダニエルのコメント)と言うとおり、ゾーンで守る上原の前に入って頭で反らしたボールは、見事に角度を変え、ダニエルの手をかすめ、ゴールに吸い込まれました。

流れのなかでは点が取れなかったセレッソ。セットプレーで取り返す。

その後は、互いにオープンな、攻守の切り替えの早い展開。激しいゲーム。熊本もサイドチェンジを使いながらエリアに入れていく。セレッソはエリア内中央を崩そうとする。

熊本の左CK。ショートコーナーのクリアからセレッソがカウンター。関口が持ち上がると、左の山口に。1対1とも言えた山口のシュートをダニエルがクリア。超ファインプレー。

右・田代から左・パブロへのパス。パブロが切り返してのシュートは枠の外。仁王立ちのダニエル。その存在感、威圧感に恐れをなしたかのように。熊日が書いたようにダニエルの「獅子奮迅の活躍」が、熊本のゴールマウスをセレッソに破らせません。われわれの目には、すでにシュートを打つ前に勝負あったようにも見えました。

熊本も再三のチャンス。決定機は右サイド養父からの低いクロスが嶋田、齊藤の前を抜け、巻が完ぺきなダイレクトボレー。一瞬、決まったか…と。しかしGK真正面。サッカーの女神は微笑まなかった。

互いに勝ち越し点を奪えないまま終了のホイッスルを聞いてしまいます。激闘でした。ちょっと感動すら覚えるような。膝を抱えるように座り込む両チームの選手たちの多さが、この試合の両者の”ハードワーク”と、そして失った勝ち点2の”重さ”を物語っているようでした。セレッソは、これで自動昇格圏内を諦め、プレーオフを戦うことを覚悟せざるを得なくなった。

強豪・C大阪とアウェーで戦いドロー。これまでだったら”御の字”の結果と言えたでしょう。終盤は引き分け狙いのゲーム運びもあったはず。しかし、今はまったくそんな意識はない。この相手こそ、プレーオフなら倒すべき相手そのものなのですから。だからこそ勝ちたかった。勝たなくてはいけなかった。

順位は11位に下げたとはいえ、6位長崎との勝ち点差は6。熊日は「プレーオフに望み」と見出しを付けましたが、残るは3試合のみ。勝ち続けて勝ち点9を上積みするしか”可能性”は残っていない。他チームの勝敗を計算するもなにもない状況。けっこうじゃないですか。

今季5月の千葉戦で敗戦し5連敗のなか、最下位に沈んだときのエントリーにこう書きました。「上等だ。わかりやすいじゃないか。ここから這い上がっていくしかない。」

そして、チームは文字通り這い上がってきました。この位置まで。あのときと状況は違いますが、気持ちは似ています。開き直って、勝ち続けるしかない。その先にしか結果はない。シンプルで分かりやすいです。ただ勝つしかない。それが次節のただひとつの目標です。残り3ゲーム。1試合1試合がラストゲーム。迷いも、雑念もない。澄みきった気持ちで存分に戦おうじゃありませんか。