【J2第25節】(石川西部)
金沢 0-0(前半0-0)熊本
<警告>
[金]山藤健太(45分)、安柄俊(90分+1)
[熊]八久保颯(21分)、上原拓郎(30分)、清武功暉(38分)
観衆:3,304人
主審:岡部拓人


われわれは、これまであまり「アウェーでの勝ち点1は御の字」といった書き方はしてこなかったつもりです。前々節の横浜FC戦もそうは思いませんでしたし。しかしこの試合だけは、よく勝ち点1をもぎ取ってきた。そう思います。

前節、清川監督は対戦する徳島のことを「前回対戦とは別のチーム」と評しましたが、今節この金沢も、あのベアスタをホームにしたリーグ復帰後初勝利の対戦時とは全く別のチームのように変貌している。その大きな要因となっているのは、その後鳥栖から期限付きで加入した中美、そして同じく岐阜から移籍の秋葉の存在だったでしょう。順位は20位とはいえ、山形、岐阜を倒し、3連勝を目論む試合。そして熊本へのリベンジでした。

20160724金沢

「出だしから少し金沢さんの勢いがあり、ほぼセカンドボールなど拾えなく、リズムが相手の出足に完全に負けてしまって、良い場面をほとんど作れなかったです」(公式)。試合後のそんな清川監督のコメントが、全てを語っています。試合開始早々からずっと自陣内での耐える時間が続きました。

前半、唯一のチャンスは22分頃。カウンターから右サイドを上がってきた清武。平繁、八久保の姿も見えたでしょうが、得意な角度、エリアに入ると自分で撃つ。しかし、枠の右に外れます。

ミッドウィークのゲームを挟んだ3連戦最後の試合。しかも移動距離の長い金沢の地とあって、熊本の選手たちの疲れはさすがに隠せない。ボールへの出足は鈍くセカンドボールをことごとく拾われ、なんとか奪って攻撃に転じても、なかなか後ろから追い越す動きまでには至らない。角度のいいパス回しで中盤を崩していくというシーンも作れない。悪い時の熊本でした。

60分頃、八久保からのカウンター。右の清武に渡すと、清武は左にサイドチェンジ。平繁が受け取ると、追い越した片山へて縦に入れる。しかしこれを片山がうまくトラップできず。

69分には、左サイドから清武のFK。金沢のクリアを八久保が拾ってクロス。中央清武のヘディングはしかし左に反れる。

後半も、熊本の見せ場はその場面くらい、あとは金沢の猛攻をゴール前で死守する時間が続きます。何度もヒヤリとさせられますが、懸命にボールを掻き出し、身体を投げ出し、最後は金沢のフィニッシュの精度にも助かっている。

「崩されたところもあったが、皆、身体を張って最後のところはやらなかった。皆、疲労は多少あるが、後半は疲労が出たのか、ずっと押し込まれたが、結果0で抑えることができた」(公式)。DFリーダーの植田が振り返ったとおりの試合展開でした。

もちろんこんな一方的な試合でも、一瞬の隙を狙ってカウンターやセットプレーでゴールを割り、勝利を手にするということもあります。(何年か前の厚別・札幌戦がそうでした)

しかし、今日ばかりは全く勝ち点1狙いの試合でしたね。敵ゴールには遠かった。けれど自ゴールは死守する。それを確実に達成した(2試合連続で完封を達成した)チームの頑張りに、大いに拍手を送りたい試合となりました。

これまでは、”勢い”のある相手に対したとき、自らのコンディションの問題もあって、なすすべなく屈してしまっていました。今節もこんな押し込まれっぱなしの試合でしたが、結果として勝ち点1をもぎ取れるように”しぶとく”“我慢強く”なった。そんな成長を感じる試合でした。同じ引き分けでも、きっと金沢はショックのほうが大きいでしょう。

「チームとして守って、チームとして攻めるのが、ロアッソなので、チームとして守った結果、得点が取れなかったのは、自分も含めてもっと攻撃に参加できればよかった」(公式)。数々のスーパーセーブで窮地を救った守護神・GK佐藤は、そう言います。守備陣がいて、攻撃陣がいてということではない。今の熊本の一体感を現しているような言葉。そんななかで掴んだ勝ち点1のような気がしました。

【J2第24節】(うまスタ)
熊本 1-0(前半0-0)徳島
<得点者>
[熊]清武功暉(87分)
<警告>
[熊]片山奨典(45分)、上原拓郎(70分)、佐藤昭大(90分)
観衆:3,701人
主審:岡宏道


うまスタ復帰第2戦となった徳島戦は、中3日のミッドウィークの試合。この節は、J2リーグ全体の日程であり、表面的には相手徳島も条件は同じと言えましたが、繰り返す真夏の過密日程は、じわじわと効いてきますね。

月曜日に梅雨明け宣言があったばかりの熊本の夜は蒸し暑く、両チームの選手たちとも身体が重そうに見えましたが、試合のほうは集中の途切れない、激しい攻防に終始する素晴らしい内容でした。

前々節からリーグは後半戦に入っていますが、前節の横浜FC戦は今季初対戦でした。しかしこの徳島とは震災前に戦い、1-0で下しています。そのリベンジとばかりに乗り込んできた徳島は、目下2連勝中で12位と調子を上げている。清川監督も、「徳島は前回対戦とは別のチーム」(スカパー)と、警戒を怠らない。

熊本は巻の出場停止を受けて、前節連敗を止めたラッキーボーイの八久保を再び先発。平繁との2トップに据えた。ボランチから後ろは変わらないが、SHは岡本、嶋田に入れ替え、そして清武はベンチスタート。

20160720徳島

3-4-3にシステムを変更した徳島は、ボランチのカルリーニョスを中心にボールを散らす。ポゼッションは徳島にありますが、要所でボールを奪うと、熊本も素早いカウンター攻撃で徳島のゴールを襲う。特に、ホーム初お目見えとなった八久保の思い切りの良さには、メインスタンドも沸く。

前半20分頃、PA近くで嶋田がボールを貰うと、反転してゴール左上に巻くようなシュート。バーに嫌われるも、ポストに当たり落ちたボールは、ゴールラインを越えたかに見えましたが、ノーゴールの判定。嶋田もガッツポーズの両手を下ろします。

そんな決定機が何度かあり、その度に決まらないでいると、なんだか嫌な雰囲気を感じてしまうものですが、守備陣も攻撃陣を信じて粘り強く跳ね返している。不思議とやられる感じはまったくなかった、とは同僚の声。

徳島も手をこまねいているわけにはいかず、「相手のDFラインに圧力をかけるには、DFラインの背後を狙うのが大事」(徳島・長島監督*熊日)と、後半17分に渡、そのあともアレックス、前川とカードを切ってきます。それに対して熊本は、エースの清武、スピードの齋藤、そして最後のパスが出せる中山。

息をのむような緊迫した展開。均衡を破ったのは、やはりこの男でした。齋藤が右サイド奥まで持ち込むと中には入れられずマイナスに戻す。エリア内の嶋田が粘って、詰めてきた上原に繋げると、上原は思い切りよく左足を振り抜いた。ちょうどゴール前中央に陣取っていた清武が、それを頭で反らして角度を変える。GKも一歩も動けず、ボールはゴールネットを揺らします。

「オフサイドではないよな?」思わず副審を確認しましたが、その旗は上がっていない。メインスタンドから揺れるような歓声が湧き上がりました。

「ゴールには背を向けていたが『自分のポジションは分かっていた。コースを変えるだけでいい』」(熊日)と瞬時に判断した清武。この試合、徳島のGK長谷川が特に当たっていただけに、その反射神経と一瞬の判断がなければ決勝点は生まれていなかったでしょう。清武がピッチにいるかどうか、そのコンディションはどうか。熊本の戦いのカギは大部分をこの男が握っているのは確かです。

「前半戦1-0で負けたので、今日は2-0以上で勝ちたいと思っている」。倍返しと戦前言っていた長島監督(スカパー)。再び1-0で敗れ連勝にもストップがかかり、忸怩たる思いに違いない。

DF植田はラジオ番組(RKK・VIVAロアッソRadio)で、わがチームについて、「いいときもあるが、悪いときはトコトン悪い。沈みこむと這い上がるのにエネルギーがいる。できるだけ波を小さくしたい」と語っていました。徳島の猛攻にも慌てずにしぶとく対応し、DF陣を統率し、7試合ぶりになる完封勝利に貢献しました。

前節での勝ち点1を次の勝利につなげたいと言っていたのは清川監督。まさしくこのふたつの試合が、再び浮上のきっかけになればと思います。

次節は中3日、金沢でのアウェー戦。移動距離の長い敵地での試合。ほとんど体を休める時間もないでしょう。あらためて各選手のコンディションの見極めと選手起用、戦術の選択。そしてそのなかで清武をどう投入していくか。清川、財前、久藤の3人体制で戦う、コーチ陣の総力戦でもありますね。まさに今シーズンの熊本の正念場に差し掛かってきていると思います。

【J2第23節】(ニッパツ)
横浜FC 1-1(前半0-1)熊本
<得点者>
[横]イバ(86分)
[熊]八久保颯(3分)
<退場>
[熊]巻誠一郎(45分+4)
<警告>
[横]イバ(45分+1)
[熊]巻誠一郎2(13分、45分+4)、片山奨典(40分)、嶋田慎太郎(85分)
観衆:3,296人
主審:藤田和也


ふと思い立って横浜に行ってきました。何年ぶりでしょうか。飛行機が遅延して、三ツ沢に着いたのはキックオフぎりぎり。ゲーム直前にあったという南や市村の熊本へのメッセージ映像は見られず。

落ち着かないアウェーのスタンドで、自分ひとりまだ試合に入りきれない(笑)でいると、南が横っ飛びして横浜のゴールネットが揺れている。ん?八久保?

あとで録画を確認しましたが、自陣奥深くからの植田のFK。前線の巻が競って落としたところにDFのクリアが小さい。そこに詰めた八久保がダイレクトボレーで抑えたシュートを撃つ。ゴール左に突き刺します。開始3分の先制弾。初先発となった八久保が、幸先良くリーグ戦初ゴールを決めてくれました。

しかしすぐあと。横浜の左CKにニアサイド、190センチのイバが頭で反らしたボール。わずかに右に外れてくれましたが、ヒヤリとします。

「これまで3試合かなり失点が多かったので、もう一度、守備から入ろうと、それもただ守るとうことではなくて、ボールを奪いにいく守備が自分たちのサッカーだということをもう1回確認した」と言う清川監督(公式)。久しぶりにミッドウィークの試合のなかった熊本は、この試合、布陣を4-4-2に戻すと、球際が実に激しい。ファウルの笛も致し方ない。

そしてそれは、ここ10試合中1勝しかしておらず、しかも現在2連敗中という横浜も同じ。特に右SBの市村は、被災地である古巣との対戦に特別な感情を持つのか。対面する元同僚の片山との攻防も激しくやり合っています。

20160716横浜FC

12分頃、熊本のハーフウェイライン付近からのFK。前線で巻と競った田所が頭から流血し、巻にイエローが示される。ここで主審の巻への印象、肘の使い方の印象みないなもの…、が決まってしまったように思います。

イバの身体の強さ、懐の深さに手を焼きながらも、なんとか守っている熊本。八久保がボールを持つとドリブルで駆け上がりゴール裏を沸かせる。前半終了間際の連続したピンチもなんとか凌いでこのまま先取点を守って前半を終わりたい。もうラストプレーだろうというときでした。自陣手前のGK佐藤の蹴ったロングボールに競った巻。笛が吹かれ、肘を使ったと主審が右手で2枚目のイエロー、続いて左手でレッドカードが提示されます。

「退場は皆が戦った結果だ。ここは皆がもう1つチームとして頑張れるか。絶対パワーを落とさず、あきらめないこと」(公式)。ハーフタイムで指揮官は、巻をかばうと同時に、残った10人の選手たちをそう鼓舞して後半のピッチに送り出しました。

横浜は後半開始からカズに代えて野崎を投入。出だしから猛攻を仕掛けます。

ボールを持ち続けられる熊本。当然、前線からのファーストプレッシングはかからず、横浜のサイドを大きく使ったボール回しに、必死にスライドして対応する。奪われるスタミナ…。

指揮官は、「ある程度のところはブロックを引かなければいけないし、そこからボールを奪いに出て行って、カウンターを仕掛けようと思って」(公式)、平繁に代わって齋藤を入れる。続いて中山に代えて嶋田。

しかし、齋藤を一人前戦に残して、残りの9人がエリア内で懸命に横浜の波状攻撃を撥ね返している熊本。なかなか齋藤にいいボールが渡る気配はない。

一方の横浜も、単調なクロスは中が厚い熊本に撥ね返され、最後のシュートも精度がない。時間はどんどん過ぎていき、横浜のゴール裏のフラストレーションも貯まります。

残り時間も15分近くになって、横浜が高さのある大久保を入れると、清川監督はDFラインに鈴木を入れて3バックに。決して、このまま逃げ切ろうという意図ではなかったとは思うのですが…。

40分、エリア内まで戻って守備をしていた嶋田が、市村を倒したという判定でイエロー。主審がPKを宣告します。もはや4試合連続になるPK。

キッカーはイバ。佐藤も読みきったのですが、その手をかすめてゴールネットを揺らされます。

贔屓目と言われればそれまでですが、横浜はこの1点を取るのがもはや精一杯で、熊本はまだたっぷり残されたアディッショナルタイムまで勝ち越し点を狙いにいったと思います。決して悪い戦いではなかったし、選手たちの意図も明確に見えていました。赤く染まったゴール裏も、応援の声を最後まで緩めませんでした。

結局、八久保の初ゴールは決勝点にはなりませんでしたが、大敗が続いた連敗をここで食い止めたということの成果は決して小さくない。山形戦のとき、「こういうときこそ新しい力、フレッシュな戦力の台頭が必要な気がします」と書いたことも、現実になりました。

ただ、もっともっと新しい力が出てきてほしい。それについては、紅白戦しか出来ず、対外練習試合が行えない、若い選手のゲーム勘がなかなか養えないというのも、震災の大きな影響なのかも知れません。今後の国体や天皇杯に期待したいものです。

布陣を変更してからの失点で、3バックに疑問符を付ける向きもありますが、「震災前から後半を凌ぎきれるかどうかが課題だった」といつかも書いたとおり、今日はしかも一人少ない状況で走らされ続け、あの時間帯にきたときの指揮官の選択肢としては、間違いではなかったと思います。

それにしても、毎試合毎試合、退場やらPK献上やらでゲームが落ち着かない。これもまた連戦を含めた何か熊本に課せられたもののように思えて来たりします。新米監督も試され続けますね。

「判定は言い訳にならないし、チームとして一人一人が強さを出してくれていたので、10人でも耐えていた。後半は外から見ていて、勇気ももらえた」(公式)。そう巻は仲間たちを称えました。きっと今も時間があると避難所まわりを続けているのでしょう、この暑さも加わって疲れているに違いない。出場停止の次節は、ミッドウィークの試合。チームとしては、巻に休養を取らせるちょうどいい機会と、これもまたポジティヴに捉えたい。

そんなことを考えながら、港方面で上がる花火を横目に、三ツ沢球技場をあとにしました。皆さん、お疲れさまでした。

【J2第22節】(アイスタ)
清水 4-0(前半2-0)熊本
<得点者>
[清]白崎凌兵(27分)、鄭大世(41分)、北川航也2(64分、81分)
<警告>
[熊]薗田淳(40分)
観衆:10,553人
主審:大坪博和


やはり、われわれの想像以上に選手たちは疲れていたんですねぇ。この試合を観て改めてそう感じました。

前節、前々節合計で9失点の熊本。「前半をゼロでいければ勝機もある」というのが、5連戦の最後の試合を迎える清川監督のコンセプトでした。前節は雨を言い訳にしていたような球際の攻防も、今節は厳しさが戻っていました。ゲームの入りはまずまず良かったように見えました。

20160710清水

京都戦から4試合続く3バックの布陣はしかし、DFラインのスペースを埋めるための実質的には5バック。サイドを起点にされることは避けられたにしても、そのDFラインの前の中盤には3人。そのスペースはあまりにも手薄で、清水に自由に使われてしまいました。

中盤の底のキム・テヨンの疲労度も激しい。熊本の”ダイナモ”上村の離脱が本当に痛い。

清水のポゼッションのなかで、均衡を破られるのは時間の問題と言えました。27分、バイタルに入った白崎にボールが入ると、植田がチェックに行きますが入れ替わられ前を向かれる。すかさずゴールに流し込まれます。

中盤の薄さに加えて、2トップとのスペースも空いていて、「清水のダブルボランチを見きれていない」という解説の安永氏の指摘もそのとおりでしたが、清水が幾度も好機を外してくれていて、熊本にもまだまだチャンスはあると思っていました。

しかし41分。清水の左サイドからのクロスにエリア内、薗田が鄭大世にプレッシングのファールでPKを献上。思わず「またか…」とつぶやいてしまいます。

これを本人に決められて2-0で前半を折り返す。

ただ、次の1点次第で試合はわからない。2-0という点差がサッカーで一番”怖い”ということは皆知っています。

今日のアンデルソンのキープ力はひときわ目立っていました。実力を知る”古巣”の清水もなかなか飛び込めない。好機となれば一気に攻撃に人数をかけるのが、今日の熊本の戦術。1点取ればきっと流れは変わると…思ったんですが。

しかし、やはり徐々に徐々に、孤軍奮闘するアンデルソンへのフォローが少なくなってくる。64分、右サイドを清水が運んで鄭大世のアーリークロスに、途中交代で入った北川がファーに走る。園田がスライディングでクリアしますが、それを引っ掛けた北川が押し込む。これで3点目。

81分にも大きなサイドチェンジからアーリークロス。鄭大世に代わって入った村田に折り返されると、ファーで北川が合わせて押し込む。4点目とし、熊本は万事休しました。

徐々に、徐々に、時間とともに相手に着いていけなくなる。清水のボール運び、熊本のチェイシングを剥いでいくパス交換もみごとでしたが、それにしても熊本の守備に組織性はありませんでした。これほどまでに相手に着いていけないのは、震災後初の試合、千葉戦を思い起こさせました。それほど、選手たちの疲労は蓄積しているんだと。

唯一の光明は、この日途中出場でデビューを果たしたルーキーの八久保。カウンターからアンデルソンのアーリークロスをゴール前でピタリと右足でトラップするとシュート。残念ながら右サイドネットでしたが、見せ場を作った。スピードとセンス。もっと長い時間見てみたいと思わせました。

「疲労困ぱい ロアッソ3連敗」というのが翌日の熊日の見出しでした。大差の続いた3連敗でした。「熊本に戻り、しっかり休ませて、切り替えて次節に臨みたい」というのが指揮官のコメントでした。確かに、いつからでしょう。選手たちに一日のオフもなかったのではないでしょうか。

そうやって5連戦を戦いましたが、確認してみれば、震災後スキップした5試合のうち、ようやく消化できたのは2試合。まだ3試合が、今後の日程のなかで入ってきます。

指揮官の言葉ではありませんが、”戦士”たちには、今週ゆっくりと休養をとって貰いたい。身体も、そして心も。次節までのおよそ1週間。本当に久しぶりに長い間隔なのだと思います。そして主将・岡本が言うように「ゼロからやり直すしかない」(熊日)。われわれは今、そういう局面に立たされているんだと思います。

【J2第10節】(NDスタ)
山形 4-1(前半4-0)熊本
<得点者>
[山]栗山直樹(21分)、鈴木雄斗(29分)、ディエゴ・ローザ(30分)、ディエゴ(34分)
[熊]アンデルソン(63分)
<退場>
[山]ディエゴ・ローザ(40分)
<警告>
[山]ディエゴ・ローザ2(19分、40分)、山田拓巳(72分)、田代真一(78分)
[熊]鈴木翔登(32分)
観衆:3,303人
主審:荒木友輔


展開は違いますが、大量失点での連敗になりました。どうしてこうなってしまったんだろう。

5連戦の4試合目。前節から中二日、ミッドウィークに組まれた山形戦は、本来4月29日に組まれていた試合の延期分でした。疲労を考慮して熊本は先発を半分以上入れ替えてきた。温存していた平繁とアンデルソンの2トップ。2列目右には中山。WBに片山と藏川。3バックの一角には鈴木。

20160706山形

この日のNDスタジアムは、一日中降り続く雨で水分を掃ききれず、特に前半熊本のゴール前ではボールが止まる有り様。全体のピッチコンディションも頭に入れた山形は、ロングボール主体で、熊本の最終ラインに打ち込んでくる。いわゆるイレギュラーなことがおきても不思議ではない環境。対処が難しい熊本でした。

そんななかで21分、CKからファーサイドにいた栗原に高い打点のヘディングで先制点を押し込まれると、29分にはぬかるんだゴール前で鈴木に切り替えされて豪快なシュートで追加点。更には30分にもロングボールからディエゴローザに裏を取られてループシュートで決められると、ダメ押しのように園田がエリア内でディエゴを倒してPKを献上。あれよあれよと前半のうちに4点を失います。

熊本が攻撃に転じても、中山と嶋田の重心が後ろにかかっているのか、アバウトなアーリークロスに終始するばかりで、アンデルソンや平繁を活かせない。成すすべもないような状況のなか、40分、GK佐藤がディエゴローザの接触を誘い、2枚目のイエローで退場に追い込みますが、しかし、一人少なくなった山形が、この大量得点のなかで“守り”に意思統一するのに格好の理由にもなりました。

後半開始早々から熊本は清武を入れ、62分には巻も投入すると攻撃の組み立てもようやく活性化。63分、熊本CKの流れから清武が低いクロスを入れると、ファーサイドで園田がスライディングで折り返し、それをアンデルソンもスライディングで流し込む。

一矢報いたものの、その後は山形に守り切られ、あえなく敗戦となりました。

試合後の「球際の攻防や、こぼれ球への反応で気持ちが見えない選手がいた」(熊日)という清川監督の言葉が、妙に気になります。ハーフタイムの叱咤激励も「1人でもあきらめたら、もっと失点するぞ」と。

「先制を許し、気持ちが少し切れてしまった」(熊日)というのはキム・テヨン。園田も「CKから失点し、気持ちをすぐに切り替えられなかった」(熊日)と同じようなことを言う。

決して犯人探しをしたいわけではありませんし、監督が言っているのも、一人や二人のことではないような気もする。テレビを観ていたわれわれも、組み立てにならない攻撃にモヤモヤしていた矢先の失点に、かなりガッカリしたことは事実。全体的にチーム自体に覇気が感じられなかった。

大敗とはいえ、前節とは展開が違う。前節は先制したものの一人少なくなったという要因がある。しかし、今節は先制点を与えたあとに櫛の歯がこぼれるように失点を続けた。まるで心が折れたように。

あの感動的なホーム復帰戦から中二日をおいて、こうもメンタルが変わってしまうものなのか。疲れた身体を打つ大雨、さらにぬかるんだピッチが、そうさせてしまったのか。運動量で、球際で圧倒してはじめてゲームが成り立つ熊本。しかし、この日の重く、スリッピーなコンディションは疲れきった選手たちのボールへの集中を削ぎ、ミスを恐れる気持ちは一歩の出足を鈍らせているように見えました。簡単に連戦、過密日程と言ってしまうものの、これが手倉森氏の言う「彼ら(熊本)だけしか中断していない。彼らだけの試練」ということか。

連戦を戦うには総力戦しかなく、この日も熊本は先発を6人も入れ替えた。しかし、攻撃の組み立てには、結局清武の投入を待つしかなかった。この展開のなかで、山形がベンチの大黒を温存したのと対照的でした。熊本のサッカーを取り戻す前にゲームは終わっていました。

この日山形は前半戦を終えてこの勝利で7勝7敗。勝敗をイーブンにして順位も10位で後半戦に折り返しました。方や熊本は、前半戦をまだ終えていません。

「5点と4点と連続して失点が多いので、もう一度しっかりした守備から攻撃に移れるように熊本に帰って修正したい」(公式)と指揮官は言う。ただ、次の試合までに調整できるような時間もエネルギーも残っていないことも確かです。相手は強豪・清水。守備陣の奮闘もですが、こういうときこそ新しい力、フレッシュな戦力の台頭が必要な気がします。

【J2第21節】(うまスタ)
熊本 1-5(前半1-3)C大阪
<得点者>
[熊]薗田淳(8分)
[C]清原翔平(13分)、ブルーノ・メネゲウ(27分)、リカルド・サントス2(35分、90分+1)、杉本健勇(64分)
<退場>
[熊]薗田淳(25分)
<警告>
[熊]清武功暉(33分)、嶋田慎太郎(62分)、植田龍仁朗(68分)
観衆:9,322人
主審:窪田陽輔


大差がついてしまいました。残念な“ホーム復帰戦”となってしまいました。

戦前、清川監督が対戦相手のセレッソをして、「選手個人個人はJ1クラス」と言っていたのを捉えて、井芹さんが「九州J-PARK」のプレビューでも指摘されていたとおり、ならば“組織”で戦うしかない熊本でした。しかし、そこでの一人退場。数的不利はあまりにも大きい損失でした。

対山口戦以来、実に85日ぶりの「うまスタ」でした。開門前にスタジアムに到着すると、パークドームまで続く長蛇の列。キックオフまでまだ2時間以上。これは…。熊本がJリーグに“昇格”した年、初めて迎えたホームゲームを思い出させて。皆がみんな、この日を待ちわびていたのです。

熊本に来てくれたセレッソサポもそのことをよく分かってくれていました。スタンドに掲げられた横断幕には「熊本にJリーグが帰ってきたこの日をオレ達も忘れない」と。この記念すべき日の対戦相手となったセレッソ。サポーター代表も、そのことを光栄に思うと、試合前に拡声器でわれわれに呼びかけました。しかし、最後にはこう付け加えることを忘れませんでした。「試合には絶対勝たせてもらう」と。

その言葉どおり、5連勝中のC大阪。その重圧は容赦なくのしかかってきました。

20160703C大阪

熊本がこの日選んだ布陣は3-4-3。前節からは植田、薗田、高柳、岡本、清武と5人先発を入れ替えてきた。試合の入りは決して悪くはなかった。

8分、いきなり試合が動きます。熊本の左CKはショートコーナー。清武が入れ直すと、ファーサイドで園田が折り返す。中央3人の選手が詰めていましたが、真っ先にヘッドで押し込んだのは薗田。先制点!

その時、この日ようやく安全が確認され開放されたメインスタンドを、ぎゅうぎゅう詰めに埋め尽くした9千人あまりの赤のサポーターが一斉に立ち上がり、歓声を上げた。われわれも喉が枯れるほど吼え、ガッツポーズしました。

しかし喜びも束の間。13分にC大阪左CKから詰められ同点にされると、この試合の分岐点になった27分、左SBから上がったロングパスにリカルドサントスが薗田と競って入れ替わるとエリア侵入。思わず薗田が手を掛けてしまうと倒れるリカルド。主審がすぐに笛を吹くと、Pマークを指差し、そして薗田には赤いカードが示される。

厳しい判定ではないかと正直思いました。一発レッドなのかと。ピッチに一礼して薗田が去る。

熊本は4-4-1にシステム変更。しかし冒頭に書いたとおり、これでは前線から組織的に仕掛ける熊本の守備は機能しない。ボールを奪って清武がエリアに入ってもフォローが遅い。2列目の連動が難しい。

リカルドサントスに3点目を決められ、前半のうちに1-3になると、後半熊本もリスクを負って黒木を下げて鈴木を入れ、再び3バックにします。

しかし、中盤でカットされると杉本の4点目。終盤は連戦の疲れも隠せず、アディッショナルタイムに5点目を献上。思わぬ大差となってしまったのでした。

C大阪がDFラインの後ろに大きなスペースを空けていたのも係わらず、途中交代が巻でよかったのか疑問もあります。スピードスター齋藤が投入されたのは76分になってから。やはりまだ傷が癒えないせいなのか。見せ場はわずかでした。

この日、殊勲の先制点を上げながら、退場の対象となった薗田は「試合を壊してしまって残念です」と言いながら、次のように言っています。是非読んでいただきたいのでリンクを貼っておきます。

自身Jリーグ初ゴールでした。プロになって10年、才能がありながら怪我に悩まされ、不遇を極めた選手でした。一念発起して移籍した熊本で、身体と相談しながら日々練習を積み、そしてつかんだ先発の座。その”記念すべき試合”での初ゴール。はち切れんばかりの笑顔。サッカーの神様の贈り物だと思いましたが…。

「天国と地獄を味わった気分です」という薗田。「ゴール後の立ち上がり喜ぶ姿。赤く染まったスタンド。また違ったかたちでそんなシーンを残りの試合で見たいしお見せしたい」「早くサッカーがしたい」と繋げています。

「本来はもっと11人でやりたかったなあと。これだけの雰囲気だったので、それが正直なところです。でもなによりもホームに戻ってこられたというのが大きいことで、帰れる場所があるというのは本当にありがたいことです」(サッカーダイジェストweb)。巻はそう試合後述べました。嶋田は「この試合を絶対に忘れずに進むことが大事」と。

一人少なくなった時点で、守りながら終わらせることはできました。しかし、真っ赤に埋まった85日目の”ホーム”で、そんなことはできなかった。指揮官は、やはり”攻める”ことを選びました。この連戦のなかで、それがどんなにキツイことかわかっていても、です。

試合後、熊本の選手たちはC大阪のサポーターに挨拶に行き、C大阪の選手たちもまた熊本に挨拶に行く。スタンドはメインだけで、それはまるで高校生や社会人の試合の礼儀のようでもありましたが、違ったのは、満杯の座席と、そして”震災”を経た互いへのリスペクト、「支援をありがとう」「頑張れ」という気持ちの交換でした。

そんなシーンに、C大阪サポから「ロアッソ熊本!」のコール。お返しの「セレッソ大阪」のコールがかぶさる。

このスタジアムは、震災後、全国からのありとあらゆる支援物資が運び込まれた場所。全国からの”気持ち”が集まってきた場所。そんな場所で85日ぶりに開催された熊本の真の”ホーム戦”。

結果は残念でしたが、ここに僕たちのチームが帰ってきました。熊本はようやくここに帰ってきました。サッカーが戻ってきました。復興への確かな一歩を進めました。そしてもう切り替えるしかありません。次の試合は、中2日で迫っています。