8月28日(日)
熊本 2-1 FC.TOSU [うまスタ]
[熊]平繁龍一(45分)、キム・テヨン(90分+1)
[F]丸山大介(52分)


いやはや。それにしても手こずりましたねぇ。これまで何度も見てきたような、格下相手の天皇杯初戦の難しさが表れた試合でした。

FC.TOSUは、2014年創設ながら昨年度は佐賀県リーグで優勝した新進気鋭のチーム。この天皇杯の県予選では、決勝で佐賀大学を下して初出場を果たしていました。

迎え撃つ熊本は、GK金井、左SBに上原、ボランチの一角に上村、右SHに公式戦初出場となる小牧、2トップ平繁の相方にはアンデルソンを配し、この過密日程のなかの連戦を戦います。

20160828FCTOSU

とにかく、5-4-1でゴール前を固めたTOSUに対して、開始から終始敵陣内で試合を進める熊本でした。しかし、ボックス内に敵が林立していてスペースがない。完全に引いて構えるTOSUに、熊本はサイドチェンジで揺さぶりますが、DF5人とMF4人がしっかりスライドして、広げられない。食いつかせたところの空いたスペースを使いたいのですが、うまくイメージが共有しない。強烈なミドルシュートも、熊本出身のGK松岡にナイスセーブで防がれます。

TOSUはと言えば、しっかり守ってカウンター狙いかというと、ここまで引いてしまっていては、ボールを持っても押し上げが効かない。ただただゴール前を守る戦術。佐賀県予選決勝のときのように、最後PK戦までもつれさせて、当たっている松岡で”勝つ”という戦術だったのでしょう。

35分頃。あれはアンデルソンだったのでしょうか、遠目でわかりませんでしたが、Pアークの左からのFK。右足から放たれた絶妙のキックは、しかしバーに嫌われてしまう。平繁のシュートはポスト。最後の最後、身体を投げ出して撥ね返しているTOSUでしたが、バーやポストも味方している。

このままで前半終了かと思わせた最後のプレーでした。45分、右サイド奥で得たFKのチャンス。中山がグラウンダーで速いボールを入れると、ニアに飛び込んだのは平繁。DF二人に詰め寄られながらも一瞬早く足を出し、浮かせるようにゴールに決め、何とか前半のうちに先制しました。

後半開始から熊本は、上原と高柳に代えて、清武とテヨンを入れる。連戦の疲労や調整を考慮しての交代だったでしょうが、格下相手の一方的な試合展開のなかでの先制、そしてこの2枚替えが、なんだか選手たちのなかに、トレーニングマッチの雰囲気を醸し出したのではないでしょうか。あとは時間とともに追加点も取れていくだろう、というような…。

そんな”緩さ”が漂う52分。TOSUがボールを持つと自由に回され、CBの裏にループパスを許す。競った丸山がこれを収めて、ゴールに流し込みます。同点。

割とアウェー寄りのメインスタンドに居たのですが、少ないながらも駆けつけたFC.TOSUのファン、サポーターが一気に沸き上がりましたね。もう天下を取ったかのよう。それはそうでしょう。Jリーグチーム相手に、流れから点を奪ったのですから…。

これでまた振り出しに戻ったゲーム。TOSUは益々ゴール前を固める。熊本は中央から、サイドから、あるいはCKからの流れのなかで、雨あられのようにシュートを浴びせるのですが、これを巨大なダムのように堰き止めているTOSU。それにGK松岡のスーパーなセーブ。

この日、試合開始から降っていた雨はどんどん激しいものとなり、芝も重くなると、TOSU選手の足も止まり始めますが、ゴール前で守り切り、延長戦のために体力を温存しているようでもありました。

熊本は園田を入れて3バックにすると、黒木と清武をそれぞれ1列上げて攻勢に出ますが、それでもゴールが割れない。前半と同じように、このまま終了かと思わせた時間帯でした。鈴木が左サイド奥からクロスを上げると、TOSUのゴール前3人のDFの頭を越えて、ファーに飛び込んだキム・テヨンが高い打点のヘディングでズドンと突き刺し、決勝点とします。瞬間、電光掲示板を見ると45分でした。

連戦が続くだけに、「延長だけは避けたい」(熊本蹴球通信)と言っていた清川監督。なんとか、本当にギリギリの時間で、勝ち越すことが出来ました。浴びせたシュートは実に35本。もちろん全てが枠内ではなかったにせよ、ことごとくTOSUに撥ね返され、苦戦を強いられました。

選手評。上村は、ギリギリまで相手を引き付けておいてという意図は終始見えたのですが、そのパスを貰った同僚に意図が通じなかったか、遅攻になりました。小牧は右SHのときは、よく突破できていましたが、期待した左SBになったら、「やるべきことができなくて悔しい」(熊日)と本人も反省するように、うまく連携できませんでしたね。アンデルソンは、うーむ、身体が重いのでしょうか、オフサイドの数はあいかわらずですが、シュートも精度を欠きました。

しかし、数々の”秘密兵器”を、公式戦の辛勝とはいえ実戦で試せたことは、今後間違いなくチームのためになりました。選手起用について問われた清川監督が「なかなかゲームに出ていない選手もいるので、総動員でこの連戦を乗り切っていかなきゃいけないということを加味して」(熊本蹴球通信)と言うように。

”トレーニングマッチの…”という悪い表現を使いましたが、そもそものトレーニングマッチに関しては、指揮官はこうも言っています。
「連戦ということもあってトレーニングマッチができなかったので、ゲーム体力やゲームでのパフォーマンスを見ることができませんでした。いざ公式戦に入って、いろんな緊張だとか、足を攣ってしまったりする選手が出てきたんですけど、そこはトレーニングマッチができていれば、もっといいパフォーマンスを出せたのかなと思っているんですが、そこができていなかったのは、申し訳ない」。そう選手たちに謝ります。

連戦のせいでもあり、交通事情等のせいでもあるでしょう。こんなところにも震災の影響が…。

しかし、敗れたTOSUの選手たち、そしてそのファンやサポーターの人たちには笑顔がありました。創部3年目で天皇杯に出場して、Jのチームを苦しめた。得点シーンも見られた。あと一歩だった。またホームに帰って、自分たちのリーグを戦っていこう。

そんなFC.TOSUに対してエールを送るわが熊本のゴール裏。そしてホーム側の観客に整列してお辞儀するTOSUの選手たち。清清しいシーンが、まさにカテゴリーを越えて戦う天皇杯1回戦らしく。われわれを初心に帰らせるようでもありました。


【J2第12節】(札幌ド)
札幌 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[札]オウンゴール(67分)
<警告>
[札]マセード(23分)、宮澤裕樹(55分)、上里一将(63分)
[熊]上原拓郎(57分)
観衆:9,834人
主審:高山啓義


翌日の熊日の見出しは、「闘志前面 ロアッソ惜敗」「首位苦しめ収穫も」というものでしたが、記事の論調も含めて、われわれも全く異論のないところでした。確かに結果は敗戦。しかし、熊本は前節のふがいない戦い、球際、切り替え、闘志といったもの全てを払拭し、首位・札幌相手に互角以上に戦った。結果的に勝敗を分けたのは、ただただ”勝負強さ”というほんの紙一重の差だったのではないでしょうか。

ミッドウィーク(木曜日)の札幌戦は、本来5月7日に組まれていた第12節の再設定試合。これから熊本は、天皇杯を挟んで愛媛戦、横浜戦と、震災後スキップした試合を消化する連戦に臨む過密日程になります。

そのなかで清川監督はこの試合、先発を7人も入れ替えるという大英断。累積警告の植田の代わりに一か月前にC大阪から期限付き移籍してきた小谷を初起用。その相方のCBには札幌を古巣とする薗田。左SBは片山。ボランチには上原。左SHは、先日獲得が発表された菅沼。そして2トップは巻と若杉。「試合に出たくてギラギラしている選手を選んだ」(熊日)と、指揮官は言う。

20160825札幌

試合の入りは良かったですね。セカンドボールをうまく回収している熊本。上原が、ハーフウェイライン付近からロングシュートを狙う。岡本もパスを受けると反転、ミドルを撃つ。前節の反省以上に、この二人には古巣対戦というモチベーションが明らかに見えました。

薗田も含めて、古巣対戦の選手のモチベーションに期待する。あえてぶつける。古くは池谷監督、それから高木監督もよく使ったなーと思い出されます。清川監督もその意図なのか。

ただ、どうも札幌戦になると力むのか岡本。藏川からのクロス。若杉が競って左に流すと、ファーの岡本の足元へ。絶好のゴールチャンスでしたが、枠の右にそれます。

久しぶりに先発起用されたFW若杉にとっても、結果を残したい試合でした。33分、高い位置でDFからボールを奪うとループで狙うが、これはバーの上。42分にも、奪って左サイドからドリブルで入ると、そのまま撃つがこれはキーパー。前半アディッショナルタイムには、FK上原のキックをゴール前どフリーで頭で捕らえますが、ゴール左に反れる。これは札幌も肝を冷やしたはず。得点に絡むプレーで沸かせたのですが…。

「前回、長崎戦で出場したが何もできず、今日、出場してチャンスをもらって、手応えはあったと思う」(公式)と語った若杉。このなかの1点でも決まっていれば、という展開だったのです。

初先発、そして90分間走りきった菅沼も存在感を示しましたね。清武が体調不良のため不在のゲーム。清武に集まりがちな今の熊本のボールを、随所で受けてさばく、あるいは勝負する。左に菅沼、右に岡本というのは、ちょうどチェスでいうところのナイトの動きを両翼に配したようで、頼もしくてそして面白い。

「後半も全体で良い入りをすること」という清川監督のハーフタイムの指示。そして敵将・四方田監督は、「攻守の切り替え、球際の部分など、全体的に足りない。後半は気持ちを強くもってたたかおう」と言うところが、前半の内容を物語っていました。後半も60分過ぎまでは、熊本がうまく試合を運んでいたのですが。

67分。札幌のリスタートからでした。宮澤のキックに都倉が飛び込むが合わず。福森が折り返すと、中でオウンゴールを誘ってしまいます。苦しみながらも、苦しみながらも、なんとか札幌がゴールをこじ開ける。そこが首位・札幌の底力という感じでした。そして、その後の試合運びも。

熊本は、巻に代えて齋藤。左サイドから菅沼がエリアに突破。絶好の好機も、齋藤とお見合いして譲りあう。岡本に代えて八久保が入る。八久保がえぐってマイナスパス。けれど、ゴール前には誰も入っていない。

熊本は、四方田監督が「今季ホームで最悪の内容」(熊日)と言う札幌に、しかしキッチリ点を取られ、守りぬかれました。「失点のところだけ隙が生まれた。結果として0-1というところが、首位との差」(同)というのは、また古巣から勝ち点が取れなかった岡本のコメント。人気ものの彼は、今日も試合後、高柳、薗田、上原とともに札幌ゴール裏に挨拶に行き、札幌サポーターから温かい拍手をもらいましたが、本当はこの試合、誰よりも勝利したかった一人に違いない。

”試合巧者”。これが、延期もあってこの時期今季初めて対戦することになった札幌の印象でした。さすがにこの位置にいるチーム。あなどれない。

しかし敗戦とはいえ、今節熊本が得たものは少なくなかったと思います。

過密日程とはいえ、大胆ともいえるように先発を7人も入れ替えたこと。少し選手を固定しがちだと感じていた清川監督の采配からすれば、勝ち試合のあとでも選手を入れ替え、選手間の競争を煽っていた前小野監督を彷彿とさせました。チーム内での競争なくして、チームの進歩はないのだという信念。

そして、1点ビハインドの終盤。園田を前線に入れてのパワープレー。清川采配としては、初めて見るような気がします。奏功こそしませんでしたが、最後まで諦めない意思表示のベンチワークは、高木監督時代を思い起こさせ。

そう。前節のエントリーでは、スカウティングについて嘆いてみましたが、清川監督には、長年仕えていた歴代監督たちの采配の引き出しがあるはず。掘るべき”井戸”はいくらでもあるはずなのです。

そんなこんなで、チームとしての奥行や可能性が感じられた敗戦だったから、冒頭の言葉となりました。そういう意味では、今週末天皇杯に関しても、チーム内の伏兵を試すチャンスが大いにあるだろうし。それを踏まえて、これからのチームの総合力の向上が期待できるだろう、そう思わせる起点となった試合。敗戦でしたけど、得るものも大きい試合でした。

【J2第30節】(うまスタ)
熊本 1-6(前半0-4)北九州
<得点者>
[熊]清武功暉(47分)
[北]小松塁(9分)、小手川宏基(16分)、原一樹2(36分、39分)、風間宏希(49分)、井上翔太(90分+4)
<警告>
[熊]植田龍仁朗(76分)、藏川洋平(79分)
観衆:4,549人
主審:柿沼亨


20160821北九州

「もう、立ち上がりから前半にああいうゲームをさせてしまった自分の責任で、今日はそれに尽きます。たくさんの熊本のファンの皆さんが駆けつけてくれたなかで、ああいうゲームをさせてしまったことについて、自分の責任があるなと本当に感じています」(九州J-PARK)。試合後の記者会見で、清川監督はそう反省の弁を述べました。

清武からも高柳からも藏川からも。各選手たちから異口同音に「入りが良くなかった」(同)との言葉が発せられている。

前節・千葉戦のエントリーで、短い試合間隔のなかで、よくぞ指揮官は“戦う気持ち”を植え付け直したと称賛したばかりなのに、どうして一週間でこうなってしまうのか。

「やっぱりメンタル的なところ、前節、いい形で終わったというところでいくと、やれるんじゃないかという驕りみたいなものがあって、入りが全然、闘争心がないゲームで身構えてしまった」(同)と指揮官は言う。清武も「皆、前節の千葉戦のイメージがあって」(同)と。「勝って過信があったかも知れない」と言うのはキャプテンの岡本(熊日)。

しかし、ここでわれわれが首を傾げたくなるのは、対北九州のスカウティングだったり、対策としての戦術練習はどうだったのだろうということです。

前節の目を見張るような改善が“魔法の言葉”によるようなものではなく、「やっぱり前線に良い形でボールを入れて、そこから仕掛けようということを少し、全体で意識した」という、戦術練習で選手個々のメンタルに落とし込んだ成果だったように。対北九州を想定した戦術練習を、もししているならば、「前節のイメージがあって」などという言葉は出ないような気がするのですが。

もちろん球際の強さという基本ベースはわがチームの魂ですが、そのうえで北九州は北九州であり千葉とは違うチーム。相手があってのゲームという意味では、次の対戦相手を想定した練習は当然必要であろうし、それも相手をリスペクトすることだと思うのですが。

練習を見てもいないくせに勝手なことを書くなと怒られそうですが…。それとも、北九州のことを堅く守ってカウンターというスカウティングから、自分たちがボールを持てるだろう、その堅い守備をどう崩すかという一辺倒のなかで、思いがけず開始から押し込まれてびっくりしてしまったのでしょうか。

対する北九州は、熊本をよく研究していましたね。CKからの先制点の場面。ゾーンで守る熊本に対し、GKを挟み込むように人が立ち、佐藤の自由を奪います。そこにニアサイドで小松の高い打点のヘディング。なすすべもなくゴールを割られました。

この早い時間での失点で、一気に意気消沈してしまった感じのする熊本でした。全く立て直せなく前半だけで4失点。セカンドボールをことごとく拾われ、DFラインを切り裂かれ、崩されます。

後半から巻と中山が入って、この二人の繋ぎから最後は清武のシュートで、反撃の狼煙を上げたものの、すぐあとにまた失点して、勢いもそがれてしまいました。

終わってみれば1-6の惨敗と呼べる敗戦。終了のホイッスルを待たず席を立つ人々を、今日は責める気にはなれませんでした。

小野監督以来、熊本のサッカーは、誤解を恐れずに言えば”立会い”でガツンと勝負するサッカー。そこで身構えてしまっては(あるいは後手に回っては)、勝機は見いだせないでしょう。

ただ、何が起こるかわからないのもサッカー。われわれは長いシーズン、こんな試合もあるさとも思っています。“相性”というものも、まんざら否定できないでいる。惨敗も惜敗も失う勝ち点は3。前節に岡本が言ったように「一喜一憂しない」で次に向かっていくことが大事。

「最下位に負けて」などとは決して言わない。このカテゴリーで、どれほどの実力差があるものか。慢心したら、いつ足元をすくわれるかわからない下剋上だと思っています。

北九州の勝利は何試合ぶりだったのでしょう。録画したスカパーの画面の先で、サポーターの女性が泣いている姿が映りました。この勝利で最下位を脱しました。

最下位のチームに負けることもあれば、首位に勝つことだってある。それがこのリーグ。それがサッカー。スカパー解説者の元ロアッソ選手・松岡氏が最後に言いました。「熊本のサポーターは本当に暖かいサポーターが多いので、”ここ”にまた駆けつけてくれると思います。またここから熊本一丸となって戦っていかなければなりません」と。

切り替えましょう。そしてミッドウィークの札幌戦に臨みましょう。

【J2第29節】(うまスタ)
熊本 3-0(前半1-0)千葉
<得点者>
[熊]平繁龍一(31分)、岡本賢明2(54分、74分)
<警告>
[千]近藤直也(69分)
観衆:4,538人
主審:野田祐樹


分が悪いというか、苦手というか…。ここまで相性の良くない相手はなかなかいない。この勝利の喜びを、どんな言葉で書き始めればいいのか。過去「勝ったぞー!千葉に」と喜びを爆発させたこともありましたが、この試合のMVPたる岡本の「一喜一憂してはいけない」(熊日)というコメントを受け、少し冷静に書き始めようかと思います(笑)。

今日も日中37度を越えた熊本は、まとわりつくような暑さ。しかし、先週と比べるとスタンドでは風を感じ、キックオフ後はその風もやや強くなり、熱気を吹き飛ばしてくれました。果たしてピッチ上はどうだったでしょうか、今日も試合中に飲水タイムが設けられました。

CBに植田、右SBは藏川、左が黒木。ボランチにキムテヨン、左SHに嶋田、2トップの一角に平繁と熊本は布陣を変えてきた。対する千葉は、前節北九州を下し、長谷部監督に代わって3試合目にして初勝利。その勢いを保つように九州に居残り、この試合連勝を狙います。

20160814千葉

試合の入りから、熊本は非常に良かった。ボールを貰ったら前を向くという意識。多少のリスクを犯しても前へパスを付けるという意識。判断の早さ。サッカー脳が冴えているという感じがします。前の試合とは全く違う。

パフォーマンスを嘆いたあの1週間前の長崎戦。あるいは凌いでドローにした前節・水戸戦から中2日。清川監督は、どんな”魔法の言葉”を使って、選手たちのメンタルをここまでにしたのかと思いました。しかし、それは魔法ではなかった。「今週はなか2日ですけど、やっぱり前線に良い形でボールを入れて、そこから仕掛けようということを少し、全体で意識した」(九州J-PARK)という指揮官。短い時間の中で修正してきました。

ボール回しのうまい千葉にプレスを剥がされるのを嫌ってのことでしょう、守備ではあまり無用に食いつかない。ブロックをしっかり敷いてスペースを消し、チャレンジ&カバーを徹底。ロングボールの対応でも、セカンドがうまく拾えていました。

ボールを大事にする千葉はもともと遅攻の傾向はあるものの、熊本のここぞというハイプレスを嫌がり後ろで回す。そうすると熊本DFは、ラインをきっちりと上げて行く。陣容は常にコンパクト。千葉に持たれてもチーム全体が落ち着いて対処しているのがわかります。そしてやはり清武。一瞬でも狙える隙があればシュートを打つ。相手ゴールに向かう、戦う姿勢が序盤で熊本のリズムを作っていましたね。

先制点は31分。キムテヨンからの長くて早い縦パスを、嶋田がセンス良くワンタッチで清武に付けると、清武はワンテンポためて(多分、相手DFは清武が自分で打つイメージが半分以上あったのでは)左から裏を取ろうとしていた平繁に絶妙のスルーパス。相手DFも入りますが、これを平繁がきっちりとゴール右隅に蹴り込みます。久しぶりの得点にジャンピング・ガッツポーズ。テヨンが入れた攻撃のスウィッチ。嶋田と清武、平繁が描いたゴールへのイメージは繋がっていました。

その後も熊本の攻勢。惜しい場面が幾度もありますが追加点が取れない。1点のリードでは、どうしても前節を思い出させて、われわれを不安にさせます。

最大の課題は、前節書いたとおり「後半の入り方」。ハーフタイムで指揮官も指示したように、開始から15~20分頃までの戦い方でした。千葉はボランチの佐藤に代えて町田を前線に入れてくる。前回対戦時に2点奪われた嫌な相手。

しかし今日はDF陣がきっちりと対応。千葉のCKから、作り直して町田が右から入れようとするがテヨンがカット。

とにかく15分まで凌ごう。われわれが、何度も電光掲示板の試合経過時間をチラチラ確認していたときでした。54分、千葉・船山の持ち上がりを園田がカット。高柳、嶋田、清武と素早くパスを繋ぐ。ゴールを背にして受けた清武は左から上がった岡本にヒールパス。一気に前が空いた岡本が、エリア内に侵入すると豪快にゴールに突き刺しました。

再び流れるようなコンビネーション。苦手な時間帯での追加点は、主将・岡本の初ゴールでした。

さすがにそこからは千葉も猛攻を仕掛けてくる。しかし、熊本は粘り強い守備で対応。アタッキングサードでのパス回しをカットする。身体を張る。最後はGK佐藤が素晴らしい反応で弾き出す。

千葉ともなれば、わずかな時間でも2点をひっくり返す力はある。しかし、この日の千葉の攻撃はどうも淡白な感じがしないでもない。連戦の疲れか、はたまた連携の粗さか。

すると74分、右サイドからパスを受けた清武が、今度はワンタッチで浮かせて岡本に裏を取らせる。岡本は胸トラップからゴール右に侵入。シュートモーションから一度切り返すとDFも振り切られる。落ち着いて3点目を流し込みます。

まさか(と言うと失礼ですが)、あの千葉相手に、流れのなかから崩して3点先取。あと欲しいのは完封でした。中山、八久保と交代カードを切っていた熊本が、最後3枚目に切ったカードはFW齋藤。しかし、これはカウンターからの駄目押し追加点の狙いもありますが、セットプレーのピンチでの高さの補充もあったのではないでしょうか。攻撃も、守備も。

そして手にしたクリーンシート。シュート数は熊本19に対して千葉も14。壮絶な打ち合いともいえる数字。これを零封したのですから見事です。

課題だった後半の入りを粘りで克服。そしてカウンターで追加点を奪うという理想的な試合展開になりました。3得点とも清武のアシスト。平繁も岡本もここから乗っていきたい。清武はここのところマークが厳しくなってきているので、この二人の得点はチームにとってもいい方向。競い合って得点してほしい。

そして、古傷のある岡本も、とうとう90分間最後まで走り続けた。「厳しい戦いが続いて、自信を失う時もありましたが、今は自信をもって、コンディションも問題ないので、結果を求めていきたい」(公式)と言う。そして「ニュースで熊本地震から4ヶ月とやっていて、すごく早いのか、遅いのか、分からないが、自分達はサッカーで盛り上げることができるので、熊本で盛り上げていきたい」とも。

そう、ちょうど震災から4カ月の日。そして奇しくも相手は3カ月前に、リーグ復帰戦を戦った千葉でした。

前回対戦時から、何が熊本は違ったか?と記者に問われた敵将・長谷部監督は、「コンディションがだいぶ違うのかなと感じました」と応えた(九州J-PARK)。「前回対戦の時は、トレーニングもきちんと積めていないなかでの試合だったと思います。今日は生き生きと、連戦のなかでも全員がボールに対して、ゴールに対して、アグレッシブにプレーしていた」と。

清武も、「あれから僕らも試合を重ねてきたので、今日は同じコンディションで戦えて」と言う(九州J-PARK)。しかし、「前回の千葉戦が僕らのスタートだったし、あの時負けていたので今日は借りを返そうという気持ちで入って」とも言うように。同時に、清川監督がどこのインタビューかは忘れましたが、「次々に試合がやってきて」と、この復帰後3カ月の戦いの日々を表現したように・・・。

当然、あの時と今ではコンディションが違う。しかし今日、選手たちの足を最後まで動かしたのは、対戦相手が、あの”リスタート”の相手、千葉だったせいも大いにあるかも知れないなと。

あの日は、どんなにもがいても身体が思い通りに動いてくれなかった歯がゆさ。足が攣ってしまって走れなかった悔しさ。調整不足という戦う以前に見えない敵がいた。もちろん千葉は圧倒的に強く、容赦しなかった。それもありがたかった。復帰戦は嬉しかったが、現実を突きつけられた。それでもそんな言い訳は誰も口にしなかった・・・。

次々にやってくる試合のなかで、あの日の悔しさを忘れていたとは言いませんが、それどころではない連戦の日々でもありました。しかし今日、3カ月たって千葉との再戦を迎えて…。思えば、あのゲームは、熊本にとってまさしくリスタートであり”原点”ともいえる、メモリアルな試合だったんだなと。だからこそ、この勝利は熊本にとって、単なるリベンジとか快勝といった言葉では説明できないものがあります。

「あの日からの絆は永遠に…」。今日はそんな横断幕を掲げてくれた千葉サポーター。岡本の「すごく早いのか、遅いのか、分からないが」という言葉のように、われわれにもあの震災の日から4カ月、リーグ復帰から3カ月の怒涛の日々が思い起こされました。そして今日も、久々の勝利に浮きたつ感情もやがて収まってしまうと…。やはりあの試合のエントリーのタイトルと同じですが、そんなサポーターへの思いも含めて改めて言いたい気持ちです。「ありがとう千葉」

【J2第28節】(Ksスタ)
水戸 1-1(前半0-1)熊本
<得点者>
[水]ロメロ・フランク(53分)
[熊]黒木晃平(30分)
<警告>
[熊]黒木晃平(58分)
観衆:4,952人
主審:小屋幸栄


この試合は評価が分かれるところでしょう。追いつかれての引き分けは悔しいところですが、われわれは最低限でも勝ち点1を手土産にして帰ってきたチームに対して、拍手を送りたいと思います。

中三日の連戦は、アウェー水戸戦。あの感動的な柏台での”復帰後初ホーム戦”で破れてから、もう3ヶ月近く経とうとしているんですね。

その間、水戸では、あの試合決勝点を決めたチームのトップスコアラーFW三島が、シーズン途中でなんと同カテゴリーの松本山雅に電撃移籍。その穴埋めに、これも同カテゴリーの岡山から久保をレンタルしたばかり。控えに名を連ねます。ここ5戦は2勝2分1敗と、14位につけている。

2連敗中の熊本は、本来の球際の強さを取り戻したい。腰の違和感を訴えて休んでいた巻が、前線に復帰して”戦う姿勢”をチームメイトに示したい。DFラインでは植田を休ませその代わりに薗田。そして右SBが黒木。

20160811水戸

互いに探りあうような試合の入り方のなか、徐々にホームの水戸がペースを掴み始める。再三のCK。拾っては入れてくる水戸のボールを、最終ラインで撥ね返している熊本。

そんな展開のなかで熊本にもCKのチャンス。清武のキックをニアで園田が反らすと、中央で上原が飛び込みますが、ヘッドは枠の上。惜しい。

その後も水戸が押し込む。熊本はボールを持っても攻撃にスピードが出ない。その間にミス。次第にDFラインが大きくクリアするのみになり、前線の巻にも繋がらない。

しかし試合はわからない。先制したのは熊本。30分、左SB片山からのアーリークロスは、ゴール前で競る巻を横切って抜けていく。それを右から猛ダッシュで上がってきた黒木が拾うと、クロスではなく切り返してボックスに入ってくるなり左足を振り切った。微妙にバウンドしながらのグランダーのシュートが、GKの手をかすめてニアに決まります。

ここのところやや出場機会が減っていた黒木。意地の一発。彼の持ち味であるモビリティからくる、鮮やかな活躍でした。

自分たちが試合を支配していたという感じだった水戸は、首を傾げる。前半のうちに同点にしておきたい。熊本のDFの裏へスルーパス。船谷が抜け出しますが、この1対1をGK佐藤がナイスセーブ。アディッショナルタイムにも、スローインをボックス内で落とすとマイナスパス。これを水戸の佐藤がシュートも枠の右。熊本は全員の足が止まっていた。前節の1失点目の瞬間のようでしたが難を逃れます。前半のシュート数は水戸の6本に対して、熊本は2。

後半から水戸は、この日は前線の一角を務めていた船谷を下げて、久保を入れてきました。曲者の船谷がいなくなって喜んだものの、「立ち上がり、相手は出てくるぞ!」というハーフタイムでの清川監督の叱咤どおり、一方的に水戸が押し込んでくる。「シンプルにやっていこう!」という指示でしたが、耐え切れない。

53分、水戸の右からの侵入。平松、久保と渡る。熊本も2人、3人で挟み込みますが奪えない。ちょうどスクリーンプレーのようになって、左に出すとロメロフランクの前には誰もいない。ロメロフランクが迷いなくゴールに撃つばかり。同点にします。

そこからまだ多くの時間が残されていました。勝ち越すことも、あるいは勝ち越されることも出来る時間が。

熊本は中山に代えて嶋田が入ると、そこを起点にしてアタッキングサードを突く。カウンターから清武が右サイド上がっていく黒木にパス。黒木がエリア内に入ってすぐに撃てば、というシーン。DFが入ってクリアされる。

残り15分。試合を決定付けるのは、ここからの戦い方という感じでした。

水戸が右からアーリークロス。中央久保のヘッドはポストの左。続いても右からグラウンダークロス。間一髪久保に合わず。

熊本は巻に代えて若杉を入れ、岡本に代えてテヨンを入れるとアンカーの位置に。中を締めます。

前節はちょっぴり苦いホームデビューとなった若杉でしたが、87分、左サイドから上原入れると高柳が反らしたボールを若杉がシュート。これはなんとかGKがクリアします。

終了間際、水戸のFK。繋いでからの縦パスを受けたロメロフランク。フェイントで持ち替えての素早いトーキック。あわやというところでバーが救ってくれました。

“フーッ”。守り切った、凌いだ、という印象の試合でした。個人的なMVPは、この試合もナイスセーブを連発したGK佐藤でしょうか。先制したからこそ、勝ちたかったのはやまやまでしたが、水戸の圧力は厳しかった。

勝ち点1しか積み上げられなかった熊本は、これで順位をひとつ下げて18位。下には4チームしかない状況になりましたが…。いやいや、最後にこの日のこの勝ち点1が貴重な積み上げだったと言えるといいなと思います。

「ここ数試合、後半の15〜20分で失点してしまっている。前半の得点に関わらず、あの時間帯で失点してしまうと、どうしても最後、押し込まれてしのぐ時間帯が長くなるので、修正していきたい」。それが指揮官の試合後のコメントでした。確かに後半早々の失点が多い。後半の入り方。90分の試合運びのなかでの重要な課題です。

闘将・巻は82分に退くまで、期待どおりにピッチの同僚たちに”戦う姿勢”を伝えてくれたと思います。まだ得点もなく、この日もシュートに絡むシーンもありませんでしたが、この人が前線に居る居ない、ファーストディフェンダーになるならないは大きい。やはりチームとって大きな存在です。

ただ、どうしても巻が前線で構えていると、さほど苦しい展開でもないのに中盤を省略して前線に預けたがる傾向がチームのなかにあるようで。単調なロングボールは相手に対応され、自らのリズムを手放す結果になっているような。せっかく巻が復帰したチーム。組み立ての攻めあがりと、まだまだうまくバランスしていないなあと思いました。

【J2第27節】(うまスタ)
熊本 1-2(前半0-0)長崎
<得点者>
[熊]植田龍仁朗(90分+3)
[長]岸田翔平(62分)、永井龍(90分)
<警告>
[熊]園田拓也(56分)
[長]永井龍(90分+4)
観衆:6,572人
主審:山本雄大


ホームでやってはいけない試合でしたね。結果はともかく、内容、パフォーマンスという全ての意味において残念でした。

うまスタに復帰して3度目のホーム戦。日が沈んだ19時キックオフの試合といえども、日中35度以上を越えた気温を下げきれないスタジアムに風もなく、67%という湿度の数値以上に蒸し暑さを感じさせていました。

熊本の先発には前節出場停止だった清武と上原が戻り、平繁との2トップの一角には前節Jリーグデビューを果たしたばかりの若杉。そして右SHには八久保という若い攻撃陣には、大いに期待しました。

対する長崎は、第2クールに入って4勝1敗。FW永井が13ゴールでリーグ得点トップタイを走る。この戦いの前まで、勝ち点33で10位に位置している。

「前回対戦した長崎とは違うチームと思わなければならない」(スカパー)という清川監督のスカウティングのコメントも、もはや聞き飽きた感のある当然の言葉で、リーグ戦のなかでどのチームも成長し、戦術を深化してさせているのは当たり前。(もちろんわが熊本もそうあらねばならないわけで。)

20160807長崎

前節、大いに嘆いた球際の攻防。この試合、序盤を見るだけでは、厳しさが戻っているように感じたのですが。しかしセカンドボール奪取に優れる長崎に次第に支配される。7分、長崎は中盤から右へ大きくサイドチェンジ。奥から岸田がワンタッチでニアにいた養父に渡すと、養父のグラウンダーシュートは枠の左をかすめる。ファーに詰めていた選手が合わせれば1点のシーン。

続いても長崎。クリアを拾ってDFの高杉がエリア侵入。左からのシュートは右に反れて事なきを得ます。

一方の熊本は、攻撃に転じてもサイドで蓋をされ、中盤で挟み込まれ奪われる。戻りの早い長崎の敷くブロックの前に、後ろでボールを”回させられる”ばかりで、前線に有効なボールが入らない。引き出す動きも、裏を取ろうという動きも少ない。とうとう前半はシュートゼロに終わってしまいました。ワクワクさせたシーンも皆無で、控え室に帰る選手たちにブーイングの声も飛んだのではないでしょうか。

翌日の熊日の報道によれば、清川監督のプランは「前半しのいで後半勝負」だったのだという。ちょっとわれわれは首をかしげました。前節、前々節と、球際の厳しさを嘆いた指揮官。相手を上回るその勢いを持って、試合開始から猛攻するのがわがチームの信条ではなかったか。せめて「前半しのいで」というのは、ボールの保持率ではどうしても劣る、清水や千葉相手のときのプランではなかったか。ちょっと長崎をリスペクトしすぎではないのか。と。

そんなゲームプランが、前半の”攻勢への消極性”に、もしも繋がっているのであれば、それは、”熊本らしさ”ではなく…。

一番の違いは中盤でしたね。もちろん互いにシステムは違うものの。長崎の3バックは、その前のアンカーの田中に変に負担をかけることなく。その前の梶川と養父の運動量で、熊本の攻撃の芽を潰す。高木監督時代や、小野監督時代にアグレッシブさを培われた養父の”泥臭い”までのプレー。そして今、高木監督の信頼を集めているのがよくわかる梶川の”気の利いた”プレーとその運動量。

その長崎の前に、完全に後手に回る熊本。常々思うのですが、小野サッカーから通じる今の清川サッカーも、ボランチの”出来”が勝敗を左右する大きな要因です。(それは3バックのときが一番顕著だと思うのですが)

62分、長崎のスローインからPエリアで落としたボールを拾って撃たれる。GK佐藤がクリアするものの、右から岸田が詰めていてシュート。先制点を奪います。

熊本も、八久保から代えて岡本を投入してからは、惜しい場面を演出しはじめる。しかし、後半アディショナルタイムが告げられるころの90分、長崎・永井がオフサイドをかいくぐり左からエリアイン。45度のシュートがゴール右すみに突き刺さり2点差となりました。

静まり返るスタンド。家路を急ぐ人たちも増える。

そんなアディショナルタイムの残り1分ころでした。岡本の強烈ミドルシュートを敵GKが弾く。詰めた清武。こぼれ球に反応して倒れながらも”足で”押し込んだのは、なんとDFの植田。「このままでは終われない」(熊日)と、このシーン、Pエリアまで上がっていました。

熊本としては”意地の1点”というしかありませんでしたが、とにかく火がつくのが遅すぎました。いつもなら得点の際に飛び上がってタオルマフラーを回すわれわれも、このときは座ったままでした。

「最後に1点を取られたが、ゲームの内容には非常に満足している」(熊日)。策士、長崎の高木監督は、そう試合後コメントしました。熊本のSBの上がりに蓋をして、エース清武は徹底的に潰し、帰陣早くブロックを敷いて隙を与えず、中盤の運動量で上回って奪い、カウンターで仕留める。フィニッシュの精度で、幾度もチャンスを潰したのは予定外でしょうが、戦術ははまり、結果的に先制点、追加点となりました。

熊本はその戦術にハメられましたね。高木サッカーに先制点を与えれば、追加点ならずとも、逃げ切りを図られるのはわかっているはずなのに。なのにどうして、「前半しのいで後半勝負」なのかが、どうしても解せないのです。3年間、ヘッドコーチを務め、高木サッカーの真髄を心得ているはずの清川監督なのに。

ただ、選手たちのパフォーマンスの”見劣り”は、指揮官の戦術うんぬんとは別の要因だったかもしれません。この日の気候に関しては、両者ともの環境条件なので言い訳はできないはずですが。コンディション調整の不良なのでしょうか。あるいは、フレッシュなメンバーの組み合わせによる連携不足が問題でしょうか。

これからまた続く連戦に不安だけが残る試合内容でした。

【J2第26節】(味スタ)
東京V 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[東]高木善朗(78分)
<警告>
[東]杉本竜士(83分)
[熊]キム・テヨン(67分)
観衆:5,723人
主審:上村篤史


五分五分の戦いだと思いました。勝敗を分けたのは、”時の運”のようなものだと思ったのですが、指揮官・清川監督は想像以上に嘆き、怒っていました。

「若手に戦う姿勢が見えなかった」「今日の戦い方は満足できない」(熊日)と、この人が見せる温厚な表情とは違い、一刀両断なコメント。それは「前節のような(押し込まれる)立ち上がり方をして、前半途中までは何もできなかった」ことを、激しく嘆いているということだったのでしょう。

清武と上原を累積警告の出場停止で欠く熊本は、平繁との2トップのパートナーに、齋藤を初めて先発起用。2列目は右に八久保、左に嶋田という若い前線を組んできました。ボランチの一角にはキム・テヨン。

18位のヴェルディは、勝ったり負けたりとムラのある戦い。しかし、ガンバからべテラン・二川を獲得していて侮れない。

20160731東京V

常々われわれは、相手を圧倒するくらいの球際の強さがなければわがチームに勝機はないと書き続けています。その点において、試合の開始早々からヴェルディに、セカンドボールを拾われ続けた。この、前節の金沢戦同様の立ち上がりに、指揮官が大いに不満だったのは間違いありません。「意識していてもボールが自分の予測と違う方向に行って、違うことが起きた時に身体が反応していけなかった」(公式)と、八久保は釈明する。「スタメンで使ってくれることはなかったので、久しぶりだし、緊張で身体も硬くなっていた」と言う齋藤は、動きがいかにもぎこちなく、ファーストディフェンスがはまりませんでした。

27分のピンチ。ヴェルディがカウンターで持ち込むと、澤井がエリア中央に侵入して右足アウトでシュート。これを佐藤がなんとかクリアすると、今度はそれを左のゴールラインぎりぎりで拾った北脇の強烈シュート。それも佐藤が全身でブロック。守護神が立ちはだかり、先制点を与えません。

ただ、基本的には両者のチームコンセプトは違う。ボールポゼッションを重要視するヴェルディに対して、持たせて奪ってカウンターという狙いが熊本。そう見ていれば、徐々に前半も終わりごろになると、熊本にも好機がやってきます。流れを引き戻し始めた。

36分、嶋田がハーフウェイライン左サイドで奪って、ひとりで運んでエリアに入る寸前撃ったシュートは、ファーのポストに嫌われる。続いても、高柳が右へはたくと、藏川が縦に。八久保がえぐってグラウンダーでのクロス。ファーサイド平繁が詰めますが、DF田村へのプッシングのファールを取られる。うーむ、それは違うだろうと。

前半アディッショナルタイムには、守から攻への切り替え。齋藤がハーフウェイライン付近でもらうと反転。一騎鋭いスピードでドリブル。DFを抜き去りましたが、最後は敵GKに飛び込まれキープされました。

後半、足に違和感を覚えた二川を下げて、アランピニェイロを入れるヴェルディ。熊本は齋藤から岡本にスウィッチ。右サイドに入れると、八久保を2トップの一角に。

攻守の切り替えの早さが増した試合展開。カウンターから熊本が右サイドを八久保に破らせ、そのクロスにニアに上がっていた植田の頭が合わず。ファーの嶋田のスライディングも届かない。
逆にヴェルディの安在のクロスにファーの澤井のダイレクトシュートは、佐藤ががっちりブロック。

熊本は嶋田を下げて、ユーティリティプレーヤーの黒木をそのまま2列目に入れる。ヴェルディがFW北脇を諦め、杉本を投入したのは、試合時間も残り15分を切るころでした。

熊本の攻勢のあとでした。反転してヴェルディがカウンター。中盤を省略してアランピニェイロに渡ると、強烈なミドルシュート。一旦はゴール左ポストに跳ね返るも、それを押し込もうとするヴェルディ。GK佐藤が右手で撥ね返したボールがゴール前にこぼれる。それを見逃さず拾った高木が、3試合連続ゴールを押し込むことになります。ヴェルディに先制点を与える。

後半39分、7月19日に加入発表があったばかりのFW若杉が登場。「緊張はなかった。プロ選手相手でも思った以上にやり合えた」と、前線で身体を張ったプレーを見せます。

そして迎えた後半アディッショナルタイムは残り4分。そのラストワンプレーだろうというシーン。DFライン園田からの縦のボールに抜け出した岡本がラインぎりぎりからクロスを上げる。中央の八久保のヘッドはしかし、バーに嫌われる。拾った選手のシュートも、GKの手中に収まり終了のホイッスルが吹かれました。

「決まった感触はあった」。八久保はそう熊日には語っています。

しかし、ゲキサカで、このときを振り返るコメントでは、「さっき、やっさん(岡本)と話したんですけど。やっさんも中の状況を見ていなかったそうで、僕もボールが来るとは思っていなかったんです。それでもあそこに走り込むことで、他のスペースが空くかなと思って走り込みました。ボールが来たときはしっかり当てようと思ったけれど、全然上にいってしまいました」と、ちょっと予測していたプレーではなかったことを吐露しています。

「運が悪いと言われるかも知れないけど、決めきれないわずかの差がある。それが実力の差」(熊日・八久保コメント)。そう総括した八久保。この日は、ラッキーボーイにはなれませんでしたが、恐らく一戦一戦のこの”実戦”での、プレーの細かいところの成功や失敗体験が、ルーキーにとってのなにものにも代え難い経験になっていること違いない。

公式サイトには書かれなかったけれど、熊日の記者は聞き逃さなかった若手に対する指揮官の”苦言”。それは期待の表れであり、そのベースの部分をキープしなければ、わがチームでの出場機会を逃すのだという”要求”でもあり。そのための叱咤。

結局、終わってみれば清武の不在がそのままチームの勝敗に結びついてしまう現状。八久保に斉藤はもちろん。そして今日の若杉。プレー時間はほんとうにわずかでしたが、このチームがもうひとつ上に行くにはこの新しい”若い力”が台頭してくる他にはないわけで…。選手にとってもチームにとっても、そのめったに巡ってこないチャンスだったゲーム。清川監督はこれを何としてでもモノにしたいと臨んだんでしょうが、それが選手の側からいまひとつ伝わってこなかったのかもしれませんね。