11月20日(日)
【J2第42節】(金鳥スタ)
C大阪 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[C]杉本健勇(80分)
<警告>
[C]丸橋祐介(22分)、杉本健勇(45分+1)、酒本憲幸(85分)
[熊]キム・テヨン(3分)
観衆:11,452人
主審:塚田健太


いやホントに…。
まずは前節のエントリーに対しての過分の拍手をいただきお礼申し上げます。三桁の数字は、何年ぶりだろうかとも思いますが、これも多くの方々にSNS上でご紹介いただいたおかげなのかと。そんななかでも関東サポの”ときやん”さんの”伝播力”は恐るべしで、特に他チームサポーターからいただいた拍手が多かったことを本当に嬉しく思います。この場を借りてお礼申し上げます。

ただ、一方でわれわれの”言い分”にも、少なからずご批判あるいは反対意見があることも承知しています。それらのご意見にも耳を傾けながら、常に悩みながら、しかし最後はわれわれのホームチームのことを思う気持ちは同じと信じて書き綴っていきますので、どうぞこれからもお付き合いください。

さて、アウェー最終節。残留を確定させたわがチームの対戦相手は、これもまたプレーオフ4位を確定させているセレッソ大阪でした。6月の長崎戦で負った右足関節靭帯損傷の大手術を経て、エース柿谷が直前のゲームから復帰。そして今やW杯最終予選の日本代表の重要なピースになっている山口蛍を擁するC大阪。ただ、このリーグでの対戦もすっかり馴染んだ感じで。少なくとも、もう名前負けなんてことは頭にありませんでした。きっとC大阪にも、4位に甘んじている”理由”があるはずだと。

熊本は、ワントップに平繁を置き左に清武、右に齋藤。中盤はキムテヨンを逆三角形の頂点に置いた上村、村上の3ボランチ。4-3-3の布陣で挑みます。

20161120C大阪

リーグ残留を確定させた熊本。この試合のテーマは「次年度に繋がる試合」。そういう意味では、これまで背負っていたプレッシャーから解き放たれ、自分たちのサッカーを試す、あるいはそもそも”サッカーを楽しむ”、そんな雰囲気もあったかも知れません。序盤からC大阪に互角に挑みます。

13分、右サイド齋藤がそのスピードで裏を取ってエリア内侵入。角度のないところからシュートしましたがGKがクリア。この最終節、今シーズンの見納めとばかり大阪に駆けつけた多くのゴール裏の赤いサポーターを沸かせます。

見どころは21分。セレッソのFKを撥ね返すと熊本のカウンター。清武が平繁に預けると、ゴールに向かって爆走した清武に再び出る。おもわずセレッソDFは後ろから倒すしかない。ファール。イエロー。

Pアーク前からのFK。キッカーももちろん清武。直接狙ったキックに、GKも一歩も動けませんでしたが、ボールはバーかポストか。跳ね返り、ゴールなりません。「前半のうちに決められるシーンもあったし、思っていた程プレッシャーも早くなかったので、前半のうちに決めるべき所で決めきれていれば良かったなと思います」と齋藤が言うとおりの前半が終わります。

ハーフタイムに柿谷がチームメイトに、「もっとクロスを入れてくれんと、FWは攻撃できへん」(RKKラジオ:ビバROASSO RADIO)というようなことを要求していたのだといいます。

この要求どおり。後半俄然ギアをシフトアップしてきた大阪が、文字通りのアーリークロスで、熊本のCBを押し込んでくる。

間延びした陣形に、押し上げられなくなる熊本。セカンドも回収され防戦一方に。

「泣いても笑っても、あと45分だ」(スカパー)。清川監督のハーフタイムの言葉は、まるでこの一年を凝縮した言葉だとスカパーのアナウンサーも言います。

しかし、「後半は押し込まれて、奪ってから出て行く力がなくなってしまったように思います。そこで上げていって、相手陣内でボールを持てるような展開にしたかったんですけど。奪っても、パスをつけたところですぐに取られて押し込まれる悪循環で。粘り強くやっていたんですけど結局失点してしまった」(熊本蹴球通信)と、植田が試合後に言う。

「最低でも0−0で終われたゲームだった」と清武が言う。けれど持ちこたえられない。それは、後半も残り10分のところでした。熊本が得たFK。これをクリアしたセレッソのカウンター。右サイド途中から入った酒本が持ち上がるとアーリークロス。Pエリア、ファーで待っていた柿谷が胸トラップで落としてマイナス。杉本が意表を突く右足アウトでプッシュするようにシュートすると、GK佐藤も触ったもののゴールに突き刺さります。これが決勝点になりました。

0-1の敗戦で、最終戦を終えました。「来季に繋がる試合」。それをテーマにしていた熊本でしたが、この試合、今季を象徴するような、そして来季への課題を明らかにした試合でしたね。前半の試合の入り方はいい。そこで先制点が取れるかどうか。後半の入り方。後半の運動量の落ち方。先制されたらそこからの巻き返し方。あるいは先制したらそこからの凌ぎ方・・・。90分の試合の運び方。それはある意味、ベンチワーク。そしてベンチに控える選手の力も・・・。「自分たちがボールを持つメリットを、今日の試合で改めて感じることができました」(熊本蹴球通信)と、薗田選手が言うように。

C大阪にギアを上げられたときに、それまでできていたトラップにミスが出て、あるいは味方へのパスがずれる。そんな基本的なこと(ベース)を上げる必要もあるように感じました。

今日もスーパーセーブで幾度かもゴールを守った守護神・GK佐藤の言葉が一番チームを言い表しているように思います。「失点は残念でしたけど、おおよそ僕たちが1年間やってきたことはしっかりできたかなと思っています。1対1で守るのではなくてチームとして守ることを意識して、0点で抑えることができた時間も長かったので」。「あとはそのなかで少ないチャンスを生かすというのが足りなかった部分かなと思います。その質を上げることが来季に向けての課題だ」(熊本蹴球通信)と。

イレギュラーなことがあったとしても、それがPO圏内に入るかどうかの差ではないかと・・・。

熊本はこの敗戦で、今シーズン12勝10分20敗。リーグ16位に終わりました。この最終節までもつれたJ1昇格、J3降格は、結局札幌が金沢と引き分けて首位を確保。清水も松本も勝利したものの、清水が2位で自動昇格権利を確保。降格圏内は、岐阜が勝利して自力で脱出。北九州が敗戦して自動降格。金沢が入れ替え戦に回ります。

「目標でもあったプレーオフに届かなかったことは自分の責任ですし、今シーズンは熊本でいろんなことがあり、内容も含めてなんとかしのいでいかなきゃいけない時期もあったなかで、選手、フロントも含めて1年間、本当に戦ってくれたと思います。まだ全体を振り返る整理はついていないんですが、J1という目標を持って、来年またJ2のカテゴリーで選手達が躍動することを期待したいと思います」(熊本蹴球通信)。最終節を終えて、そう清川監督はコメントしました。

おそらく熊本にとって激動と言ってもいい今シーズンがこれで終わりました。今シーズン、リーグ残留という成果をかちえたことこそ、大きな成果だということは前節書いたとおりです。

昨日から熊日では恒例とも言える今シーズンを振り返る連載記事がスタートしました。どこまでチームの内情を明らかにしてくれるのか。いつにも増して興味深い。

われわれも今シーズンを振り返らなければいけないと思っています。わかってはいますが、しかし、ちょっと時間をいただきたいとも思います。ああ、また1シーズンが終わった…。寄る年波か。どっと疲れが出ました(笑)。


11月12日(土)
【J2第41節】(うまスタ)
熊本 1-0(前半1-0)岐阜
<得点者>
[熊]清武功暉(35分)
<退場>
[岐]田代雅也(90分+4)
<警告>
[熊]村上巧(74分)
[岐]田代雅也2(53分、90分+4)
観衆:6,306人
主審:上村篤史


勝ちました。勝って自力でのリーグ残留を決めました。ようやくホッとしましたね。

「ダッカイ?ですか?」。試合前のコンコースで、久しぶりにお会いした元AC熊本社長の前田さんの「ようやくここまで来た」という感慨の後に発せられた言葉に、すぐにはその意味する漢字が当てられませんでした。

「そうです。リーグ脱会。このうまスタが支援物資の補給基地になっていて、それがいつまで続くかわからなかった。開放されても損壊の状況もわからず、スタジアムとして使えるかどうかわからない。いくらなんでもホームゲームを全て県外で行うということは不可能。だからあのとき、一部では自主的なリーグ脱会という案も出ました」という。「改めて正規な審査を経てリーグに復帰できないかという案」・・・。

今となっては非現実的な案とも思えますが、そこまでの切羽詰った考えがでてくるほどだったのだと、当時の混乱状況を想像させます。それほど先が見えなかったし、スタジアムだけでなく選手たちも多くが被災していた。手倉森氏がいつか言ったとおり「熊本だけが・・・」という状況でした。改めて、”熊本に居る”ことを選択し、柏や神戸をホームとして借りることでリーグ戦に復帰し、変則とも言えるスタンド開放でうまスタを使いながら、そしてスキップした試合を過密日程でこなしてきた、このシーズンがどれだけきつく厳しいものだったかに思いを馳せ、同じように「ようやくここまで来た」のだと感慨に耽りました。

だからこそ、勝って自力で残留を決めたい。こんなシーズンだったからこそ、みんなで笑ってホーム最終戦を終えたい。

奇しくも対戦相手はリーグ入会同期の岐阜。2連勝で降格圏内順位は脱したものの、まだ勝ち点40。ここで勝ち点を上積みして残留を確実なものにしたいという思いは同じでした。

互いにシステムは4-4-2。守備ではしっかりブロックを敷く。先に失点を許したくない。試合の序盤は”堅く”入りました。

20161112岐阜

危なかったのは16分。この日右SBで怪我から復帰した園田の頭でのバックパスをレオミネイロが奪うと、植田を交わしてエリア侵入。前に出たGK佐藤までも交わすとシュート。しかし、植田が戻ってスライディング。身体に当てて間一髪で防ぎます。

その後も岐阜に攻勢を許しますが、早く先制点が欲しい焦りからか、拙攻で助かっている。

すると35分。GKからのキックを清武と競った磐瀬が痛んで倒れましたがインプレー。左から作ってテヨンが右サイドを上がってきた園田に通すと、園田がグラウンダーで折り返す。ニアに走り込んだ清武が、左足でゴール左隅に流し込む。アタッキングサードでの、流れるようなパス回しから、熊本らしいゴールが生まれます。

ただ、レオミネイロを擁する岐阜に1点差では心もとない。前線には熊本にとっては特に嫌な名前、あの難波もいる。51分、その難波が右サイド阿部からのクロスを頭で合わせるが、これは枠の上に外れてくれます。

熊本も左からのFK。平繁のヘディングはわずかに枠の上。続いてはカウンターからのロングボールに清武が追いつきシュートを放ちますが、GKに遮られます。追加点がなかなか取れない。

風間や高地を入れることで勢いを増す岐阜の攻撃。守勢一方になった熊本は、平繁に代えて巻を投入。前線からの守備で、陣形を押し上げようと試みます。更には上原を入れてシステムを4-1-4-1に。

それでもバイタルを使われる熊本。清武も下がってディフェンス。マイボールになると駆け上がる。相当疲れているはず。とにかく凌いでいる。

告げられたアディッショナルタイムは4分。岐阜が最後に切ったカードは長身の瀧谷。その瀧谷、田代が落としたボールにゴール前競りながら長い足を伸ばすとGK佐藤の頭を越えた。わずかにバーを超えてゴールネットに転がる。スタンド中でホッとしたため息がもれる。

手拍子で選手たちを鼓舞するスタジアム。最後に入った嶋田が右サイドからカットインして放ったシュートはGKがキープ。しかし大いに沸く。いつもより長く長く感じる4分。早く終われ、早く。

主審の両手がまっすぐ上に向かれ、長い笛が吹かれた瞬間、スタジアム中がはじけるように立ち上がり、歓喜の声を上げ、マフラーを回しました。

選手たちは笑顔でガッツポーズ。勝利を喜び合う。互いを称えあう。ここまで長かった。とうとうリーグ戦の残り2試合のこの日までかかってしまったが、”残留”という大仕事を自分たちの手で成し遂げてくれた。

開幕から好調にスタートした。一時は単独首位に立ったときも。ただ、あの日起こった震災が状況を一変させた。リーグ戦に復帰しても連敗が続いた。それも大量失点での敗戦。勝ちたい、勝って熊本のみんなに笑顔を届けたい。そんな気持ちと、コンディション不良から動かない体との葛藤のなかで、巻が涙を流しながらコメントした試合もある。

スキップした試合の消化分ではわずか勝ち点1しかとれなかった。甘くはなかった。それほど過密日程は体力を奪ったし、練習試合もままならない状況は選手の底上げを妨げ、チーム力をも奪った。

それでも選手たちは戦い続けた。

ホーム最終戦恒例のセレモニーで、池谷社長は、「選手たちは泣き言も言わず、歯をくいしばって走りぬいてくれた。(当初の目標には程遠いが)残留はすごく価値があることだと思う」と述べて、そして後ろを向いてスタッフ、選手たちに「ありがとう」と頭を下げました。”歯をくいしばって”。それは常套句のように使われがちですが、われわれの選手たちにとっては、実に本当の状況ではなかったかと・・・。

清川監督は試合後、「震災でシーズン序盤はサッカーができない状況に置かれた中で、再開してからは結果も含めて辛い時期を選手全員が乗り越えてくれた」(熊本蹴球通信)と選手たちを称えました。

巻は「皆で1つのボールを追いかけて、皆でゴールを守って、本当にチーム一丸になった勝利だったと思います」(同)と言う。

この日、バックスタンドにはこれまで寄せられた他のチームからの寄せ書きや横断幕がたくさん掲げられていました。サッカーファミリーは、それだけでなく、多くの支援物資や義捐金を贈ってくれた。けれど、勝負事では決して手を抜かず、真っ向勝負で向かってきてくれました。日程やコンディション不足など言い訳にはできなかった。

ひとり熊本だけが取り残された状況で、苛烈とも言えるスケジュール、辛い連敗の時期も乗り越えて、ようやくようやくこの”残留”という結果をもたらした選手たちが、誇らしい。

そして、この残留を勝ち取った今だから、ひとこと言わせてもらえるならば、この熊本の残留を見届けて、内心一番ホッとしているのはJリーグ自身ではないでしょうか。冒頭のような脱会でもなく、また熊本だけのこんな罰ゲームのような過酷な措置でもない、リーグ方針にもっと違った選択肢はなかったのか。決して選手層の厚くない地方の小クラブがどんな状態になるのか、サッカーを知るものであればおよそ想像できたはず。この災害列島で全国リーグを仕組んでいくJリーグであれば、今回のケースは大いに反省、研究の対象になるのではないでしょうか。ことはJリーグの理念にも関わるものと考えます。

暮れかかるうまスタ。最後に手を振りながらスタジアムを一周する選手たちに拍手を送りながら、聞こえてくるのは、試合前選手たちを鼓舞する歌の原曲でもある、水前寺清子さんが歌う「HIKARI」。

「ただがむしゃらに。負けても諦めずに」。最初聴いたときは”負けても”なんてなんて縁起の悪い”応援歌”なんだと思いました(笑)が、震災を経験していまだ復興の途中にあるからでしょうか、リーグ戦を振り返り、この”残留”という結果を受けてまさに心に沁みる。そんな歌詞だと思いました。


11月6日(日)
【J2第40節】(うまスタ)
熊本 1-2(前半0-2)京都
<得点者>
[熊]齋藤恵太(86分)
[京]イ・ヨンジェ(12分)、山瀬功治(14分)
<警告>
[京]石櫃洋祐(72分)、エスクデロ競飛王(77分)
観衆:5,686人
主審:塚田智宏


「試合の入り方が悪く、それが全てだった」「コンディションのもっていき方で自分にもミスがあった」(熊日)。そう反省するのは、試合後の指揮官・清川監督でした。一方、敵将・石丸監督は、「相手のプレッシャーももう少し前線からかかってくるのかなと予想していましたが、前半に先制点をうまく取れたところから、楽、ではないですけど、狙い通りの展開ができた」(熊本蹴球通信)と言う。

中二日の試合で選手たちのコンディションを気にしながらという状況は、6月の前回対戦時と全く同じでした。あのときは熊本が、岐阜から直接京都入りしましたが、今回は京都が、清水から帰らずに熊本入りしている。そして、その前節・清水戦で決めておきたかったPO出場権を1-4という大差の敗戦で逃した。そのあたりの京都の悔しさ、激しいモチベーションに対して、もっと熊本はしっかり準備しておく必要があったでしょう。

20161106京都

とにかく開始から一方的と言っていいほど押し込まれる。片山が累積警告で欠場のため、この日の4-3-3は、左SBに上原を持っていき、テヨンをアンカーとしたボランチは村上に加えて高柳が勤める。この逆三角形の底辺の2人がどれだけ前に行ってプレスを掛けられるか、あるいは中盤距離間よくボールを納められるかがこのシステムの身上。ただ、京都・堀米が「中盤が食いついてきてサイドバックの裏というのは狙っていました」と言うように、京都の早い球回しにプレスをうまく剥がされると、スペースをいいように使われます。
12分の失点の場面は、GK佐藤からのゴールキックを京都が撥ね返したところから。植田のクリアが高く上がってしまう。薗田が更にクリアしたが、それを拾った堀米がワンタッチで裏へ出すと、イ・ヨンジェが薗田と競ってマイボールにし、右足でコントロールシュート。ゴール右隅に決めます。

ただ、そんな先制点献上より”厳しかった”のは、すぐあと14分の失点。左サイドの裏を狙ったスルーパスに、黒木のスライディングをひらりと飛んで交わした堀米がエンドラインまでえぐるとマイナスクロス。これを山瀬が押し込みます。

これはマズイ。これほど思いのまま崩されるなら、大量失点もあるかも知れないと恐怖するほどでした。

黒木のスライディングをひらりと飛んで交わした堀米。以前熊本在籍中もそのプレースタイルを”牛若丸のように”と評したような気がするのですが、前期対戦時も書きかましたが、更に”線”が太くなった。また、前回対戦より存在感を増していて、左サイドを主戦場にはするものの変幻自在のポジショニングでゲームを作る。もはや京都は”堀米のチーム”と言ってもいいかも知れません。

ここで急遽布陣を4-4-2に変更したのは、清川監督の柔軟性とも言えるかも知れません。ひとつはトップが清武を加え二人になったことで前線からのプレスが効き始めた。もうひとつは堀米のサイドに守備的な村上が付くことで、かなり熊本の守備が機能し始めます。

清武が持つと左に流れた平繁に。平繁のクロスに入って来たのはテヨン。右足アウトで合わせますが枠の左。続いても清武から右サイドの裏のスペースにパス。黒木が追いついてワンタッチクロスに平繁のシュートは枠の右。チャンスが増える。しかし…。数少ない絶好機。きっちりものにしたい…。

後半からは、右サイドには齋藤を入れて、ボランチは高柳を一人外して村上を戻した正規の4-4-2の布陣ともとれるメンバーに。

早速、右サイド裏を齋藤に突かせる。PAに侵入するが切り返したところにDFが入ってゴールならず。

京都も攻め疲れていたが、長いこう着状態が続いたのを見た指揮官は、巻を入れてゲームプランを明確にします。

それでもゴールが割れない熊本は、岡本に代えて上村を入れると、再び4-3-3に。上村がセカンドボールを回収。パスを散らす。というより前線に素早く放り込む。京都をかなり押し込み始めます。

86分、DFラインからのロングボール。PA左で巻が落とすとゴール前の清武がDFを背負いながら反転してシュートを撃つ。これをGKが弾いたところに右から齋藤が詰めてゴールに押し込みます。1点返した!

行け行けの熊本。まだ時間はある。とにかく前線に放り込む。巻を目掛けて放り込む。もはや戦術は”巻”。

しかし悲しいかな、この勢いを持ってしてもあと1点が遠い。同点に追いつけず終了のホイッスルを聞きました。

熊本は勝ち点を上乗せできず43のまま。勝ち点3を得た京都はこの勝利で5位に躍り出て、最終節を待たずPO進出を確定させました。

気になる他会場はと言えば、群馬、山形が勝利して熊本を追い抜く。岐阜が横浜FCを下し勝ち点37を40に。夜の試合で金沢は千葉に先制するものの逆転負け。これで町田に敗れた北九州と、金沢が勝ち点37のままとなったものの、18位に落ちた熊本の下には勝ち点39の讃岐、40の岐阜を加えた4チームしかいない状況。

そして、この状況で次節いよいよ20位岐阜を迎えることになりました。相性がいいように思えて、調子に乗せたら怖いことを知っているJ2同期。しかも、ここ2試合連勝している。

それに勝ち点40とは言え、この土壇場に来ると最もマイナスの得失点差-25を背負う岐阜の心情はただならぬものがあるでしょう。最下位金沢の得失点差-24から、実質的に熊本は自動降格圏を脱したようですが。しかし、J3のほうはと言うと、1位栃木、2位大分。こんな入れ替え戦は想像するだけで吐き気がしそうです。

さあ、いよいよですね。ガチガチの緊張した堅い試合になることは仕方ないかもしれません。ただ、ホームだからこそ、われわれの応援で選手たちのその緊張を解いてあげたい。おそらくホーム最終戦ですから、試合後何らかのセレモニーも用意されているのでしょう。残留をきっちり決めて、カモン!ロッソで喜びあって。みんなで握手しあって。いろんなことがあって「ああ、キツイ年だったね」とみんなで笑いあって。そんなセレモニーで、今年のホーム最終戦を終えたいものです。

11月3日(木)
【J2第39節】(松本)
松本 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[松]高崎寛之(67分)
<警告>
[松]田中隼磨(17分)、宮阪政樹(90分+3)
[熊]片山奨典(90分)
観衆:13,241人
主審:榎本一慶


「首位喰いはうまかーですね。二位ぐい、三位喰いしましょう。まだまだ腹一杯にはなりません」。いつも拍手コメントを送っていただく”ゆうらん”さんの、前節のエントリーに対してのコメントは、われわれはもちろん、熊本に係わる全ての人の気持ちだったでしょうね。首位・札幌の次に対戦する今節の相手は2位・松本。前節の快勝の勢いを持って、アウェーとはいえど連勝を飾り、一刻も早く降格可能性域から完全に脱したい。

しかし、3位清水との勝ち点3差の松本も、自動昇格圏内2位以内の確保という高いモチベーションで、1万3千人以上のアルウィンのサポーターを後ろ盾にして、熊本に立ちはだかりました。

20161103松本

序盤から勢いを持って攻め立てる松本。植田のクリアの小さいところを松本DF後藤の抑えの効いたダイレクトボレーシュートは、GK佐藤がキャッチできずに左に撥ね返す。それを拾って田中が素早くクロスを入れるがなんとかクリアします。その松本の右CK。中央での後藤のヘディングは、片山が掻き出す。危ない。

熊本は、松本の素早くそして強い球際の寄せ、インターセプトを嫌って、ロングボールで交わして攻める。見るからに痛みの激しいアルウィンのピッチを考慮したのもあるかも知れません。

スローイン。片山から貰いなおした清武がカットインしてアタッキングサード。柔らかなクロスを入れますが、これはクリアされる。いつもならこの距離から強引にでもシュートを打っていくはずの清武。前半終了間際にも似たようなシーンがありましたが、撃たない清武。敵GKがその能力をよく知っているシュミット・ダニエルとあって、完全に崩しきらないと、アバウトなシュートではゴールは割れない。そういう思い(プレッシャー)もあったのではないでしょうか。

一方的に攻められている熊本。主導権は松本にある。しかし、スカパーの解説者は、熊本の守備組織を評価してか、「どちらかというとゲームは熊本のペースで進んでいる」と言う。確かに無用に飛び込まない今日の熊本は、松本にボールを”持たせている”ようにも見える。

ただ、31分でした。松本・那須川の左からのクロス。PA内で石原への対応で上から覆いかぶさった植田がファール。PKが告げられます。キッカーは高崎。

でも何ででしょう。長年サッカーを観ていると、”予知能力”が身につくのでしょうか。何故だかこのシーン、PKは決まらないような気がなんとなくしていました。案の定、高崎のキックに左に飛んだ佐藤がばっちりセーブします。

清川監督が試合後、「PKを防ぎ流れが来ると思った」とコメントするように、こういった後は勢いが逆転するものです。しかし、PA内での松本の猛攻に対して熊本が人数をかけて防御しているなか村上が痛む。結局はピッチに戻ってきましたが、一旦担架で運ばれ、ベンチもざわつく間に、掴みかけた”流れ”を相手にまた渡してしまった。そんな感じがしました。試合は”生もの”。常々そう思っているわれわれにとって、この数分間の空白はなんとも悔やまれます。

しかし、スコアレスドローで前半を終えたのは、結果として熊本にとってはゲームプランどおりだったと言えるでしょう。シュート数は松本12に対して、熊本の1。

「多くのチャンスはないかもしれないが、ピンチを防いだのだから、チャンスは絶対来る。最後まで常に全体でサッカーをしよう」。それがハーフタイムでの清川監督の檄でした。松本のワントップ高崎は、植田と薗田が代わる代わるマークして、完全に抑えていました。

しかし。たった一瞬でした…。

67分、左サイドで攻防していた松本。石原が大きく右サイドに振った。ここで大きく広げられた熊本。植田もニアサイドに走った松本の選手に釣り出される。ここで迷わず右サイドで貰った工藤は素早くクロスを選ぶ。距離の空いたゴール前の黒木と薗田の間へ。そこに高崎が飛び込むことを信じて。

高崎がヘディングで反らすように流し込む。さすがの佐藤も触れませんでした。

この時点で、同サイドに固執せずに、逆サイドに振ってピッチを大きく使うことを選択できた松本の判断の勝利でした。負けられない熊本が、巻、平繁、岡本を次々に投入して、ここから前掛かりに仕掛けましたが、先制した試合の勝率の高い松本。自陣ゴールに寄せ付けず、1点を守り抜き、同点に追いすがろうとする熊本を退けました。

したたかな松本の戦い方に熊本は連勝ならず。勝ち点は43のまま。この日、金沢は愛媛に敗戦。北九州が長崎に引き分け勝ち点1を得て金沢を越え20位になり降格圏脱出。岐阜は22位ながらも群馬に勝利し、これまた勝ち点を37にしました。つまり、20位から22位までの3チームが、同じ勝ち点37で並ぶ事態に。わが熊本は、その3チームとの勝ち点差6で、16位に位置しています。残りは3試合…。

まったく予断の許されない状況。京都、岐阜、大阪。しかし対戦相手を見越した勝ち点計算はもちろん、他チームの対戦相手を考慮した勝ち点予想などしない。それが無駄だとわかっているから。ただただ、目の前の敵に向かっていくだけです。

ただ、今節を終えてひとつ思ったこと。対戦相手の松本山雅。下のカテゴリーでは一度も対戦せぬまま、J2昇格後に一気に抜き去られたうえに、J1に先に昇格されたクラブ。田中隼磨を始めとしてパウリーニョ、高崎、工藤…。各ポジションに、それぞれ能力のある選手を集める獲得力。なにより、J1昇格以前から、この地方都市にして1万人以上を毎試合集める観客動員力。

このままいけば、再びJ1昇格の権利を得る。この”力”は、なんなのか。どこからくるのか。長野県における松本市の位置関係、スポンサー企業の存在…。どこに力があるのでしょうか。

甲府や鳥栖といった先輩格の”プロビンチャ”だけでなく、今や岡山にも後塵を拝しているような気がして。熊本に何故できないのか。目下の残留争いが落ち着いたら、もう一度考えを深める必要がある課題だという気がしています。

さて、一足早くJ1は最終節。福岡、湘南に続き、最後に降格が決定したのは名古屋でした。まさかこの別格と思っていたビッグクラブが…。結果的には15位新潟との得失点差4が命運を分けました。勝ち点1が、1点がという思いと、年間予算にして40億、50億という別次元のチームでも、ひとつボタンを掛け違えると取り返しがつかなくなる怖さ。そんなリーグなんですね。

10月30日(日)
【J2第38節】(うまスタ)
熊本 2-0(前半1-0)札幌
<得点者>
[熊]清武功暉(11分)、平繁龍一(65分)
<警告>
[熊]齋藤恵太(90分+7)
[札]永坂勇人(10分)、前貴之(45分+2)
観衆:7,880人
主審:池内明彦


今節の前日の熊日では(先週の「勝ち点3を取らないといけない」という発言と違い)、残り5試合に向けて清川監督はこう語っていました。「勝ち点を最低でも『1』ずつ積み重ねる必要がある」(29日付・朝刊)。やはりはっきりと「勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び」に舵を切った、とわれわれは思いました。首位・札幌を迎えて、より手堅く試合に入ってくるだろう。そう思わせました。

しかし、それも笛が鳴ってしまえば、なんのなんの序盤から積極的に前に行くのは熊本。非常にいい入り方でした。左サイドで得たFKの連続で、清武が札幌ゴールを脅かすと、続く右CKのこぼれ玉を、村上がミドルで狙う。枠内にストレートに向かっていたと思いましたが、これはバーに嫌われる。前節に続いて実に惜しいシュート。

続くゴールキックを村上がヘッドで跳ね返すと、それを齊藤がやはり頭ですかさず平繁につなぐ。平繁はワンタッチで裏のスペースに出すと、そこに再び齊藤がスピードを活かして飛び出した。エリア内、キーパーとの1対1直前、追走する札幌DFに倒されて笛が鳴る。主審が示す先はPマーク。よし!

PKのキッカーに志願したのは清武でした。札幌の大型GKソンユンが両手を広げて立ちはだかると、さらにひときわ大きく見える。かたずをのんで見守るスタジアム。緊張の瞬間。清武の蹴ったシュートは、ソンユンの逆を突いてゴール右隅に突き刺さります。

決めれば一気に勢いづく。決めなければ意気消沈。このゲームの行方を左右するような、そんな重い仕事を清武がきっちりと決めてくれました。秋晴れのうまスタに8千人近くを集めた熊本サッカーフェスタのこの日、益城町や嘉島町といった被災地からもバスを貸し切って無料招待が行われました。スタンドでは赤いタオルマフラーがぐるぐる振られます。

札幌は内村、上原をシャドーに従えた都倉の3トップのように見えました。繋いだあとに、都倉に当てて内村、上原が突破していくという狙いだったのでしょう。前線に厚みを見せる布陣でした。

20161030札幌

しかし今日の熊本は、前節中盤が空いて機能しなかった4-4-2を捨てて、4-3-3に。この村上、上原、テヨンの中盤3枚が非常に効いていましたね。セカンドの回収にしても、相手へのプレスにしても、距離間がよくて。だから都倉に当てに来る札幌のボールにも、最後列の植田と薗田が余裕を持って対応できた。テヨンの存在感と、村上と上原の二人があれだけ前に行けるなら4-1-4-1とも言えるシフトでした。もちろんそこには、久しぶりにトップを張った平繁からスウィッチが入る組織的プレスの成果もありました。戸惑うように成すすべもない札幌は、前半シュート1本に終わりました。

ただ、さすがに札幌もこのままではない。後半、俄然テンポを上げてきます。アバウトなクリア一辺倒になってきた熊本でしたが、徐々に齋藤のスピードを活かしたカウンター攻撃で、ゲームをオープンにさせていきます。

攻守切り替えが速く選手たちの疲労も激しい展開。しかし、熊本にとって先制点1点ではまったくセーフティではありませんでした。追加点が欲しい。追加点がないと危ない。

それは左サイドのスローインからでした。片山から清武。清武が溜めて片山に戻すと丁寧に置くようなクロスをニアに入れる。平繁がうまくDFのマークを外して入りこむと頭で反らした。GKソンユンの反応も追いつかず、ファーサイドのネットに当たってゴールにこぼれこみました。

後がない札幌は前寛之から神田。永坂からジュリーニョに2枚替え。対する熊本も清武、平繁を岡本、巻に代え、最後は倒れこんだ薗田にバツが出て鈴木を投入。残されたピッチ上の選手も含めて、多くの選手が足を攣っていたことが、この試合の攻守切り替え、運動量を物語っていました。

絶体絶命のピンチは84分頃。内村に代わって入った菅が都倉からボールを受けてPA内右から強烈なシュート。これをGK佐藤が右手一本でクリア!

「前節、札幌のヴェルディ戦での最後のパワープレイにワクワクした」(スカパー)と言っていた佐藤。そのキーパーらしい”アドレナリン”が、この終盤で熊本のゴールを死守します。

アディッショナルタイムはなんと6分。何度も何度も札幌の攻撃に晒されます。それを身を挺して掃きだす熊本。そうやって、ようやく手にしたクリーンシート。首位・札幌を完封。快勝でした。

思えば昨年の終盤にも、首位を突き進む大宮相手に、ホーム水前寺で3-0の完封勝利を演じたことがありました。他にもこの時期、昇格目前の相手に土をつかせたことが何度もあった。終盤の熊本の”存在感”が、今年も発揮できたでしょうか。

中盤から前の6人。清川監督が練習のかなかでコンディションを見極めた人選でしたが、この組み合わせはいいですね。齋藤のスピード、清武の技も活かせる。また、見てみたい布陣でした。

熊本は勝ち点3を加え43となり、順位を15位まで上げました。多くのマスコミの論調は、残留に確信を得たようですが。北九州が岐阜と潰しあい、讃岐は町田に勝利して、勝ち点がジリジリと上がってきました。今季の降格ラインは高い。

AC熊本の池谷社長は、このサッカーフェスタ前の熊日の特集内(29日付)で、「首位札幌をたたく」と予言しつつ、「残留に必要な勝ち点は45」と読みました。勝ち点にしてあと2つ。勝利ならあと1試合。引き分けならあと2試合。残り4試合。いやいや、そんな抽象的な話ではありません。松本、京都、岐阜、大阪。です。まだまだ楽観はできません。

暮れなずむスタジアム。被災地からの都合バス10台の招待客の前で、勝利で沸く試合後の「カモン!ロッソ」。ゴール裏で踊るのは、震災後初めてのことでした。今日のところはひとまずホッとしたい。そして、本当に心底ホッとするときは、色々な苦労を思い起こし、少しわれわれも涙腺を緩めてしまっていいですか?早くその日がくればいいのですが…。