3月19日(日)
【J2第4節】(レベスタ)
福岡 2-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[福]冨安健洋(54分)、ウェリントン(76分)
[熊]巻誠一郎(66分)
<退場>
[熊]黒木晃平(73分)
<警告>
[福]石津大介(83分)
[熊]上里一将(68分)、グスタボ(83分)
観衆:9,008人
主審:廣瀬格


「自分の名前を呼ばれた時に福岡の皆さんも拍手していただいたので、すごく嬉しかったです」(熊本蹴球通信)。福岡の下部組織で育ちトップ昇格した光永にとって、この”古巣”との対戦は待ち望んでいたものだったでしょうが、けれど、まさか自分がCBというポジションでレベスタに立つとは思ってもいなかったでしょうね。しかし、緊急避難的とはいえなかなかどうして。ニューイヤーカップからの実戦経験もあってのことか、あの福岡のFWウェリントン相手に一歩も引かない堂々とした戦いぶり。そして、この日の熊本の得点の起点まで作りました。

戦前、「厳しいゲームになることは予想できる。どこまで身体を張れるかが勝負になる」(DAZN)と言っていた清川監督。序盤からそれを体現する熊本の選手たちの姿がありました。前から猛烈なプレッシング。後ろも連動した組織的な守備。そもそもこれが熊本の持ち味でしたが、開幕から3試合はこれが”はまらず”、課題を残していました。

しかし今日の熊本は見違えるほど出足が早い。二人、三人でボールホルダーに詰め寄る、奪う。奪いきる。J1を1年で降格してきた福岡も、今季はよりポゼッションを目指していますが、切り替えの早い熊本に手を焼きます。

前節と同じ布陣となった巻と八久保の2トップもはまっていました。巻が収める。頭で反らしたところに八久保や嶋田、林が飛び込む。そんな巻の存在感を、福岡のDF陣が煙たがっていたのは間違いないでしょう。

20170319福岡

12分頃だったでしょうか。中盤でのボールへの競い合い。頭で競りに行った巻に対して、福岡・岩下のハイキックが完璧に顔面に入ります。もんどりうった巻が動かない。目も開けていない。急きょ安とグスタボにアップが命じられます。

結局、巻は血の滲んだユニフォームを着替えて、ピッチに戻りますが、しかしこの岩下の危険きわまりない(ひょっとしたら巻の選手生命まで奪いかねない)プレーに対して、何のカードも示されなかったのは何故なのか。にこやかに試合を再開する廣瀬主審。理解に苦しみます。

前半から左SB・片山からの攻撃がいい。右サイドで粘って繋いで左に大きく展開。片山からのアーリークロスにファーの巻のヘディング。これはGKがセーブしますが、非常にいい展開。押し込む熊本。

40分には片山が上がって、アーリークロス。福岡DFのクリアが右へ。林が拾って、巻くように撃ったシュートはGKの手が届かない軌道。しかし、ゴールマウス直前でDF富安のヘッドに阻まれます。

逆に福岡は前半終了間際、石津からの右CKにウェリントンのヘッドが炸裂。しかし、これはバーに当たり難を逃れました。

「やろうとしていることはできた。後半それをより一層強めていきたい」(DAZN)と前半を振り返った清川監督でした。後半は、開始早々から攻守の切り替えが更に早い、見応えのある試合展開になります。

そんな中、福岡に与えた右CK。ファーのウェリントンに飛んだボールには対処したものの、そのヘディングが中央にいた富安に繋がる。フリーでヘディングできた富安。ゴール左ポストに当てるとボールはゴールに転がり込みます。福岡が均衡を破る。

熊本は八久保に代えて安を入れました。開幕戦で2得点の安は、臀部の負傷でここ2試合を欠場していた。満を持しての投入でした。対する福岡は松田をポッピにスウィッチ。

すると66分、ボール保持から左で光永が持ち上がっていきスルーパスを送る。「ボールを受けた時にプレッシャーに来る選手がいなかったので、顔を上げながら運べて、パスコースが見えました」(熊本蹴球通信)という光永。その先にいたのは片山。追いついてサイドをえぐる。柔らかいクロス。ファーで巻が動きなおす。福岡DFのブラインドからマイナスぎみになったクロスを頭を振ってゴール右に押し込みます。同点!

顔に入った岩下のキックによって、唇も顎も腫れていました。おそらく口の中も切っているに違いない。それでもこのチャンスに懸命に首を振った。ゴールのあとに片山としっかりと抱き合う。しかし痛みもあって、言葉を発せられなかったに違い有りません。

69分には逆転のチャンス。嶋田が右サイドの黒木に通すと、低くて早いシュート性のグラウンダーのクロス。誰かが触ればというところでしたが、抜けていきます。

同点にされた福岡は、ボランチ・ダニルソンに代えてFW坂田を入れる。熊本は殊勲の巻に代えてグスタボ。

しかしそのすぐ後、前がかりになっていた熊本。福岡の大きなキックに園田がかぶって、それを拾ってポッピが運ぼうとするところ。抜ければGKと1対1。横から黒木がスライディング。しかしこれが決定機会阻止として一発レッドカードが示されます。

一人少なくなった熊本。右SBには村上が下がり、中盤は上里を底辺にした3枚に。その直後、連続した福岡のリスタート。左CKのクリアを拾った福岡・石津がクロスを入れる。大外に構えていたのはウェリントン。高い打点のヘディングで押し込む。落ち着かないところを突いてきた、福岡の”勝負強さ”が感じられました。

熊本は嶋田に代えて齋藤を入れ、4-3-2に。アディッショナルタイムのFKのチャンスには、前節と同じようにGK佐藤も上がりましたが得点できず。敗戦の笛を聞きました。

いつも以上に悔しさがにじむ敗戦でした。それはバトルオブ九州だからということもありますが、手応えを感じる内容だったのにもかかわらず勝負には負けたこと。あるいは、あれほどの傷を負いながら同点弾を決めた巻の意地が報われなかったことか・・・。

しかし、敗戦のなかでは忘れ去られがちになる自チームの得点のなかで、今日の巻の得点だけは、きっとずっと忘れられないものになるだろうとも思いました。

3月12日(日)
【J2第3節】(えがおS)
熊本 1-1(前半0-1)山形
<得点者>
[熊]佐藤昭大(90分+2)
[山]瀬沼優司(30分)
<警告>
[熊]片山奨典(17分)、林祥太(57分)、グスタボ(86分)、上里一将(87分)
観衆:6,628人
主審:荒木友輔


いやはや。2試合連続で終了間際のドラマチックな同点劇です。しかも、今回も「決めたのは誰?」となって。大きなガッツポーズをしている緑色のユニフォームと大柄な体を見て、やっとGK佐藤だったんだと。われわれとしたことが、このCKの場面で上がっていたのさえ気づかなかった。

それにしても前節はCB。今節はなんとGKが上がってのリーグ的にも”実に珍しい”得点。今回もまた清川監督の指示があったわけではないという。

3月。晴天のえがお健康スタジアムに迎えるのは山形でした。互いに開幕から1勝1敗で5位に並ぶ。寒地・山形は、開幕からアウェー3連戦の最後の試合。朝方は雪だったという山形から駆けつけました。

熊本は先発を入れ替えてきました。前線には巻と八久保。右SHにはルーキーの林がJリーグデビュー。

20170312山形

その八久保が開始早々ドリブルで持ち上がり、思い切りのいいシュートはGKがセーブ。持ち前のスピードを披露すると、対する山形はシャドーに入っている 汰木が右45度からシュート。これもGK佐藤がセーブします。

アクシデントは20分でした。山形の左CK。ファーに飛んだボールに下がりながらジャンプした小谷。その後ろから山形・菅沼が覆いかぶさる。もんどりうつ小谷。後ろから腰に膝が入っていました。担架が入る。苦痛に顔をゆがめる小谷。一旦ピッチに戻ったものの、結局は光永との交代となります。

ニューイヤーカップでもCBを務めた光永。リーグ開幕からは、SHも務めた。若くして器用で安定感のある選手なのでしょう。この大事なときにポリバレント性が活かされます。

しかし30分でした。山形の右CK。ニアの瀬沼の高いヘディングはマークについていた巻の前。ゴール左隅に転がり込み先制点を奪います。

山形の素早いプレスに押し戻され、後列からの長いボールはセカンドが拾えないという悪循環。奪っても時間がかかると山形のプレスに合い、前につなげない。体力は奪われ、ストレスばかりが溜まる。

しかし諦めない。しぶとく粘り強く戦う熊本は徐々にテンポを得る。バイタルで回して上里のシュートはGKでしたが、前半の終盤は熊本の時間帯。この日も、追加点を許さず粘り強く戦った。試合前のインタビュー。「耐えて、我慢しながらやっていく」と宣言した清川監督の言葉どおり。そのことが、その後に繋がったといえましょう。

後半、またアクシデントが起こる。54分、ペナルティエリアに侵入した瀬沼を村上が倒すがファールはなし。しかしこのプレーで村上が痛む。一旦ピッチに戻ったものの、大事をとったのか、上村との交代になります。戦術的な交代ではないところで早くも2枚の交代カードを切ってしまった熊本。

ようやく戦術的なカードを切れたのは72分の八久保からグスタボへの交代でした。グスタボに前線でのキープと、裏への突破を託します。

しかし山形も対処していましたね。グスタボに入ると二人が囲んで前を向かせない。初めて観るグスタボのプレーは、確かに強くしなやかでしたが、山形の執拗なカバーに神経を尖らせ、いら立つグスタボ。激しいタックルでイエローを貰う。続いても、山形の果敢な仕掛けに耐え切れず上里が後ろから引っ掛けてイエローを貰うというなんだか悪循環の嫌なムード。まさに敗色濃厚。そこからのアディショナルタイムでした。

山形は時間を使い始める。この1点を守ろうという戦術。熊本は左サイドを崩すと、片山がえぐってクロス。ファーで林の前に入った山田がクリア。右CK。

その瞬間、上がってきたのはGK佐藤。キッカーの上里は「(上がってきた)佐藤君と目が合い。ここに蹴ってくれと伝わってきた」(熊日)のだという。その佐藤は「ドンピシャで来た。飛んだら頭に当たっただけ」。値千金の同点弾をものにします。

そこに蹴りこんだ上里の技量もすばらしければ、そこに上がってきた佐藤の判断も素晴らしい。

山形は勝利の直前で手から滑り落ちた勝ち点2を取りもどそうと終了間際まで攻めたてましたが、熊本も凌いで痛み分け。勝ち点1を分け合うことになりました。

山形の素早い圧力に大苦戦した試合でした。アクシデントで交代枠のうちの2枚を使ってしまって、戦術的交代はグスタボのみ。デビュー戦になった林などは、おかげで90分間走り続けなければならなかった選手の一人なのかと。ただ、それもまた貴重な経験になったのではないでしょうか。

2試合連続で、劇的な同点引き分けになりました。劇的ではあるが、もちろん勝ってはいない。けれど、前節もそうでしたが、失点したあとの粘り強さ、2点目を与えなかったことが、この結果を生んでいることは確か。指揮官の言う粘り強さ、うまくいかない流れをひたすら我慢。そして「最後まで諦めずに点を取りに行く」(DAZN)と言うとおりの結果。そして勝ち得た勝ち点1。順位は8位に落ちましたが、首位との勝ち点差はわずか2でしかありません。

ただ、怪我人の様子がちょっと心配です。どう工面して次節を迎えるのか。

なかなかのスタートであり、そして早くも正念場を迎えているとも思えます。次節はアウェーで福岡戦です。

3月5日(日)
【J2第2節】(Cスタ)
岡山 1-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[岡]豊川雄太(47分)
[熊]小谷祐喜(90分+2)
<警告>
[熊]村上巧(66分)
観衆:10,286人
主審:上村篤史


劇的な引き分けでした。と書こうと思っていたら、熊日も同じような見出しでしたね(笑)。

第2節はアウェー岡山戦。「何とか勝ち点を、欲を言えば3を取って帰りたい」と言う、わが清川監督(DAZN)。確かに難敵・岡山相手とはいえ、ちょっと消極的かなと。だが、前節のデビュー戦でわれわれにも、他チームにも強烈な印象を残したFW安の姿が、スタメンにもサブにもない。怪我なのでしょうか。代わりに前線に入ったのは俊足ドリブラーの田中。高めの岡山のDFラインの裏のスペースを突く戦術でしょうか。

一方「我々のベストを引き出せるかが(この試合の)ポイント」(同)と敵将・長澤監督は冷静に語ります。しかし、開幕戦で名古屋に敗れ、黒星スタートとなった岡山。ホーム開幕戦となったこの試合に掛ける思いの強さは言うまでもない。開始早々から厳しい球際と寄せ、数的優位のボール奪取で迫ってくる。

20170305岡山

岡山のプレスをなかなか剥がすことができない。奪って運ぼうとしても縦パスがカットされる。徐々に出し手と受け手の意図もずれ、ミスも増えます。

長澤監督のスカウティングだったのでしょう。ボールサイドに寄ってコンパクトに守備をする熊本の大外へ、大きなサイドチェンジのパスを通す。21分、スローインからのアーリークロスを豊川がダイレクトシュート。これはGK佐藤がセーブします。

33分には前線の3人で運んで大竹がシュートモーションからパスを選択。PA内の藤本に通ればというところでしたが、園田が潰して難を逃れます。

一方的に攻め込まれる展開。しかし凌いでいる。試合前、「前節(開幕戦で)勝利しているというアドバンテージを、いいメンタリティに利用したい」と言ったのはGK佐藤(DAZN)。たしかにその“気持ちの差”が猛攻にも冷静に対処させたのか、スコアレスで前半を終えます。

前半を終えたあと、それと後半の笛の前、両チームの監督にベンチ前でインタビューする。まるでNHK中継のようでもあるのが、DAZNになってからの特徴でしたが、前半を終えた長澤監督は、この展開を当初の予定どおりだと言いながら、「後半の頭のところと、最後のところに勝負どころが来ると思うので、しっかりとマネジメントしたい」と言っています。全くのところ、この後の試合展開を”読んで”いました。

後半開始早々。まず最初の岡山の右サイドからの攻撃。伊藤のクロスは不発に終わりましたが、右奥へ再び運ぶ。今度は加地が追い越してえぐると、右足でフワリと上げた。ニアでジャンプした藤本。後ろで飛んだ小谷もかぶって、更にその後ろにいた豊川の頭に。ゴールマウスに突き刺します。文字通り”シャドー”の働き。後半開始早々から圧をかけて、岡山が均衡を破ります。

その後も岡山の攻勢。左サイドからのクロスに中には豊川が構えていましたが、その前で佐藤が止める。間一髪。ただ、この勢いを止めない岡山の攻勢に対して、気落ちせず、追加点を許さなかったことが、この試合展開のなかで、非常に大きかったと思います。

平繁に代えて巻を入れると、熊本の”重心”が少し前に移動したように感じました。更に岡本に代えて八久保が入ると、巻との2トップ。田中が2列目に。八久保の運動量とスピードで岡山を次第に押し込む。岡山も、豊川を下げて三村を入れ、対抗する。

予兆は80分のシーンにあったかも知れません。CBの小谷が右サイド高いところにいてDFからボールを奪うとエリアに侵入。GK櫛引との1対1でしたが、シュートは阻まれる。

しかし…。なんでそこに小谷がいたのか?

熊本が持つ時間が長くなると、長澤監督のイレブンへの「落ち着け、落ち着け」という指示のポーズ。けれどDAZNの解説者も、「この熊本の”やり方”なら、残り何秒かで得点もある」と言う。

まさしくその言葉を信じたいアディッショナルタイム3分も終わりに近づくころでした。片山からの、かなりアーリーなクロス。山なりのボールを放り込みます。ゴール前に”誰か”が飛び込めば…。ゴールマウスから飛び出した櫛引より先に頭に当てた。ボールがゴールに転がり込みます。同点!そして終了の笛が鳴る。やった!

その瞬間、勝利を確信してチャントを歌っていた1万人の岡山サポーターが静まり返る。

殊勲の同点弾を押し込んだのはなんとCBの小谷でした。それも、パワープレーを命じられて上がっていたわけではない。DAZNで見返してみると、その瞬間、流れのなかで右サイドを猛烈なスピードで上がって行っている。「残り時間も少ない。自分の判断で攻めあがった」(熊日)のだという。その”ステルス”な動きがあって、巻に集中していた岡山のDFの裏をかいて、完全にフリーになれた小谷が櫛引と競い合ったのでした。

「失点は悔しかった。最後に取り返せて良かった」と小谷が言う(熊日)。自責の念が、彼にあの終盤、右サイドを駆け上げさせたのでしょう。劇的とも言える同点弾を押し込み、それによって、岡山は目前にあった勝ち点3がするりと手の中からすべり落ち、勝ち点1に留まると同時に、手にしたのは大きな心理的ダメージでした。指揮官が「(後半の)最後のところに勝負どころが来る」と、言ったとおりになりました。

熊本は勝ち点1を加え、4位に位置しました。が、それよりなにより、劣勢のなかで勝ち点1を得られたことが大きい。いや、開幕戦も完勝とはいえないなかでの勝ち点3。そしてこの圧倒的に劣勢な試合での勝ち点1。課題が多いなかで、しぶとく積み上げたこの4点は、かなり価値のあるものだと思います。

開幕前の状況を思えば、シーズンのスタートとしては、なかなかです。次節は同順位の山形戦。ホームえがおスタに集結して、絶対勝たせましょう。