10月14日(土)
【J2第37節】(西京極)
京都 2-1(前半1-1)熊本
<得点者>
[京]石櫃洋祐(38分)、田中マルクス闘莉王(71分)
[熊]オウンゴール(22分)
観衆:7,483人
主審:廣瀬格


2試合連続で、一番警戒していた選手に決められてしまいました。前節は「あれを放さない、しっかり最後まで頭を入れる」と“一瞬の厳しさ”を求める飯尾和也氏の言葉を紹介しましたが、「決勝点の場面は防ぎようがなかった」(熊日)と池谷監督は言う。マンツーで付いていた植田は、「自分が跳んだ後に跳ばれた。もう少し自分が我慢できていれば」(同)と後悔する。

20171014京都

1勝3分9敗と、一方的に分が悪い京都とのアウェー戦でした。高さのある京都。「闘莉王とイ・ヨンジェに入ったあとのセカンド争いがキーになることは確か」(熊本蹴球通信)と、戦前井芹さんも指摘していましたが、序盤はまさにそこがうまくいかない。ロングボールを跳ね返したところ、落ちた中盤での京都のプレスが激しくて、押し込まれる。

8分頃、京都の波状攻撃のなか右45度からのミドル。これはPA中の黒木がヘッドで跳ね返す。12分頃には左サイドに回され、石櫃からのクロスにファーで闘莉王が高い打点で打ちつけた。間一髪GK畑がセーブしましたが、後から考えるといずれもこの日の京都の得点を予兆させるようなものだったのです。

しかし流れを変えたのは上里からの一本の長くて速い左サイド奥へのグラウンダーパスでした。これには惜しくも片山が追いつけませんでしたが、京都の重心を少し後ろにさせた。中盤で拾えるようになると18分には上村がDFの裏を取ってPAに侵入しますが、GKに阻まれます。

京都のディフェンシブゾーンを襲えるようになると22分、左サイドからのFKに上里が、ニアに意表を突く低く速いキック。このボールがDFの足に当たって抜けると、おもわず闘莉王が足を出してボールはゴールに吸い込まれる。自責点としてしまいます。

運よく転がり込んだ先制点でしたが、凌いで自分たちの時間帯にしたからこそでもありました。その後も熊本のペース。京都は我慢の時間帯が続きます。

熊本はこのまま前半リードで終わらせたい。しかし京都も反転攻勢。右サイドPA前で仕掛けた田村を倒して植田がFKを与えると、石櫃のキックから小松屋が拾い直してクロス。しかし、グスタボのクリアが小さいとみた石櫃、グスタボが寄せてくる前に足を振った。抑えてドライブのかかったシュートが、PA内のDFの間を縫ってゴール左に転がり込んでしまいました。

振り出しに戻った後半。ハーフタイムでの指揮官の指示は、「セカンドボールをもっと意識しよう」「マイボールになったら、慌てず動かしていこう」。そして「相手にしっかり身体を当てていこう。耐えるところは我慢強く!」(公式)というものでした。

後半開始早々、京都の前線からのハイプレスで危うくPA内に入られそうになりますが、三鬼が奪って素早く前線に長いパス。これをグスタボが胸で前進方向に落とすと、黒木が拾って右から低いアーリークロス。左から上がってきていた嶋田に届くと、流し込むようにシュート。しかしこれはGKがブロック。それを再び拾った上村が嶋田とワンツーして放ったシュートは惜しくも枠の右。何度もない、決定的なチャンスでした。

その後いっときは攻守切り替えの早い攻防戦となりましたが、熊本にリズムがあるとみるや京都の布部監督が先に動く。ヨンジェに代えて大黒。田村には伊藤と2枚代え。

「大黒か。やっかいな選手を入れてきた」というわれわれの思いは、ピッチ上の選手たちも同じだったのでしょうか。京都がリズムを得て巻き返し始める。

すると71分、京都に与えた右CK。縦に並んだ京都の選手たち。動き出しに中央スペースを空けさせられると、陰から飛び出すように闘莉王がジャンプ一番、高い打点でゴールネットに突き刺します。

その直前にはかなり疲れている様子を画面越しに見せていた闘莉王でしたが、ここぞという場面ではやはり仕事をする。怖い男でした。この得点は自身100得点目の記念ゴール。試合後のインタビューでそれを祝福されると、「オウンゴールのことですかね(笑)?」とうそぶきました。

熊本も上村に代えて中山、片山に代えて田中。グスタボを諦め、コンディションが不安だった安を投入。最後は植田を上げてパワープレイ。

しかし、アディッショナルタイムの三鬼からのクロスに跳んだ植田のヘディングも、途中から入ったケヴィン・オリスに身体を張られて枠の左。万事休しました。

先制したものの逆転負けでした。せめて同点引き分けで勝ち点1は持ち帰りたい試合だったのですが。指揮官はDAZNのインタビューに、「後半の決定機で取れなかったのが大きい」と悔やみました。

「警戒していた“個”の力でやられた」とも言う。確かに闘莉王の高さはこのリーグでは“破格”に違いありません。しかし前述したようにあのセットプレーは、その“個”の力を活かすようにチームとしてデザインされてもいたように感じます。そして最後にケヴィン・オリスが、しっかり跳んだことも、チームとして徹底していると…。まあ、それを可能にするのもまた個なんですが。

ただ、熊本も4試合ぶりにアンカーに入った上里の展開力、三鬼の気の利いた縦パス。上村も嶋田もPAに顔を出せるようになって、京都を一時は追いつめた。どうしようもないような攻撃の手詰まり感は解消された試合でした。

まだまだ強豪チームとの厳しい対戦が続きますが、勝機は十分にあるように感じましたね。

10月7日(土)
【J2第36節】(松本)
松本 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[松]高崎寛之(55分)
<警告>
[松]パウリーニョ(58分)
観衆:11,026人
主審:大坪博和


「松本のやり方は分かっている中で、セットプレーから失点したことが悔しい」(熊日)。敗戦後、池谷監督はそう記者団に答えました。スピードのある石原を走らせ、高さのある高崎で仕留める。”松本のやり方”は分かっていた。しかし、まんまと術中にはまりました。

熊本は、前節故障退場した園田の代わりに植田を起用。北朝鮮代表に召集されて一時離脱している安の代わりにはグスタボ。しかし、ワントップではなく嶋田との2トップ。中盤は上村をアンカーに置いて、三鬼と中山を2列目に。われわれもグスタボはワントップより2トップが生きると考えていただけに、理にかなった布陣。

松本は5位。PO圏内にいるものの、まだ自動昇格圏内も視野に入れる。

20171007松本

序盤は互角。松本の石原、高崎を狙った長いボールを撥ね返し、セカンド争いも球際強く行って戦う熊本。

しかし、松本も徐々に熊本に慣れてくるとアタッキングゾーンを占領し始める。GK畑を中心にした守備陣でしっかり守る。ただ、奪ってからの松本の帰陣も早く、持たされている感もありました。

そんななか、前半のアディッショナルタイム。右サイドからのスローイン。エンドラインぎりぎりのグスタボが右足で反らすと、嶋田が飛び込んでダイレクトシュート。終了間際に意表を突かれた松本でしたが、これはバーの左に外れてしまいます。惜しかった。

ハーフタイムを終えて後半のベンチに戻る池谷監督を捕まえてのDAZNのインタビュー。「怖がらずにボールを動かせ」と指示したという指揮官の答えに、われわれもそうだろうと思います。少し攻撃に躊躇している。ただ、このまま守備をオーガナイズして0-0の時間が長くなれば、焦れた松本が前に出てくる。そうすれば熊本にはカウンターのチャンスが増える。そういう心理戦でもあったのですが。

熊本の攻勢から奪った松本のロングパスに石原が走ると、小谷がスライディングで外に出す。いい対応でしたが、これに続いたCK。熊本の守備はマンツーマン。パウリーニョのキックは、高崎の一番高い打点にピタリと合って叩き付ける。先制点を与えてしまいました。

これで前に行かなければならいのは熊本の方になってしまいました。が、引いてブロックを敷いた松本に、アタッキングゾーンまでは入れるものの、片山や三鬼からのクロスは、十分に相手が対応できるタイミングと角度。相手の嫌なゾーンに入っていける選手もいない。

カウンターを狙ったグスタボへのロングボールには、松本のDFが必ず前に入って収めさせない。疲れからか徐々に攻撃のスピード感も薄れる熊本。

そこでグスタボに代えて巻。中山に代えて八久保を入れる。かなり長い時間、松本を自陣内に押し込んで波状攻撃を仕掛けますが、松本にしっかりと守られて”ヒヤリ”ともさせられない。

最後は上原を下げて4バック。ジュニオールを前線に入れてパワープレイを試みましたが、実らず。松本に1点を守りきられ敗戦となりました。

勝者の指揮官・反町監督は、それでも「時間の使い方が、最後良くなかった」(DAZN)と手厳しい。やはり2-0で折り返しながら、最後の5分で逆転された前々節、山口戦を相当悔やんでいる。逆に熊本にとっては、その松本の試合のクロージングに付け入る隙ありという思いもあったのですが。

「パワーのある松本相手でも、ゲーム自体はどっちに転んでもいいというような試合が出来るようになった」(DAZN)と池谷監督は言う。「(課題は)どうやって点を取るかということに尽きる」(熊日)とも。確かにそう。

しかし、DAZNのこの日の解説者・飯尾和也氏が言う。「堅い守備は見れていた。しかし、あの一瞬、あのワンプレー。あれを外さなければ、0-0、もしくは1-0、結果は変わっていたかも知れない。あれを放さない、しっかり最後まで頭を入れる。そういう”厳しさ”があれば、また上がっていける」。

闘争心を表に出したプレーで、”鳥栖の魂”とまで言われたディフェンダーの言葉が、とても重く感じられ…。一瞬も放さない”厳しさ”。この1点の差が、あらためて大きなものに感じられたのでした。

10月1日(日)
【J2第35節】(えがおS)
熊本 2-1(前半2-0)愛媛
<得点者>
[熊]嶋田慎太郎(17分)、小谷祐喜(22分)
[愛]三原向平(68分)
<警告>
[熊]嶋田慎太郎(86分)
観衆:4,005人
主審:西山貴生


連勝は、今季ようやく2度目だというのですから、どれほど厳しくつらいシーズンかがわかるというものです。愛媛との前回対戦は4月。今シーズン初めての4連敗を喫した試合でもありました。

今節は、村上の負傷以来、3バックの真ん中を担っていた植田が累積警告で出場停止。池谷監督は、直前まで木村、上原を代わる代わる試して悩んでいたようですが、結局先発には上原を起用しました。

上原にとっても初めてのポジションだったようですが、なかなかどうして、器用に、そしてしっかりとこなしました。これは単なる“代役”に止まらない、新しい組み合わせの発見かもしれません。まぁ、久しぶりの90分だったこともあって、最後に足を攣ってしまったのはご愛嬌というところでしょうか。

20171001愛媛

試合前のDAZNのインタビューで、対戦相手のことを問われて「オーガナイズが似ているチーム」と池谷監督が答え、愛媛・間瀬監督も「攻守のコンセプトが似ている」と述べていて興味深い。

熊本は開始早々から飛ばします。スローインを回り込んで奪った中山が、右サイドをえぐってクロス。安のヘディングは直前にDFがブロック。8分にも安が落として嶋田が持ち上がり、中山がエリア侵入。左足を振りましたがGKにクリアされる。中山の執拗なプレスは身上ですが、それに嶋田、三鬼、上村も加わって愛媛を前に向かせない。高い位置で奪うと次々にショートカウンターを浴びせ、スタジアムを沸かせます。

相手ボールホルダーへの素早い出足。それは“後ろを信じてプレスに行く”という感じ。交わされてもいい、後ろを信じていると…。

すると17分。三鬼の得意のノールックパスが縦に入ると、中山がすかさずDFライン間に走り込んだ嶋田にスルーパス。少し浮きぎみでしたが、これを嶋田が絶妙にトラップしてDFの裏を取ると、両手を広げたGKパク・ソンスをあざ笑うかのようにニアサイドを抜いて流し込みました。先制点!

その後も“受け”に回らなかった熊本。22分には安のボレーシュートで得たCKのチャンスに、三鬼がインスイングのボールを送ると、ニアサイドのDFの間から小谷が頭を出して突き刺す。追加点を奪います。

ほとんど危ない場面を作らせない完璧な守備、そこからくる攻撃での2点先取で前半を終えます。

しかし、後半は逆に愛媛の一方的な攻勢。プレス、球際とも愛媛が上回ってきた。愛媛が前半の熊本と同じことをしてきたと言っていいでしょう。前を向かせない。

さらに59分にアクセントとしての安田、66分には前線に有田を加えると、熊本も我慢の限界でした。河原が1度シュートモーションを掛けて左にはたくと、白井がダイレクトでクロスを入れる。大外のブラインドから三原がダイビングヘッドで入り込んだ。1点差に迫ります。「オーガナイズのところで混乱した」(DAZN)と指揮官も悔やむ。

選手交代で流れを変えたい熊本でしたが、上原が足を攣って光永と交代の用意。しかし小谷も痛んで一旦ストップ。結果的には園田に代えて光永。このあたりは、難しいベンチワークを迫られました。

終盤のきつい時間帯。踏ん張れた方に勝利の女神がほほ笑む。巻が入るとひときわ大きな拍手。最後は頼れる男の登場。

アディッショナルタイムの4分も愛媛が拾い続けて波状攻撃。最後の最後に来たチャンス。途中出場の田中のカウンター。右サイドをドリブルで運んで一人交わしてのシュートは枠の左。そして終了の笛が吹かれると、多くの選手たちが崩れるように膝を着きました。

互いのことを「似ている」と分析していた両監督。敗戦の将・間瀬監督は、「ゲームの入りに熊本の選手たちが本当に素晴らしい攻撃と守備、守備ではプレス、球際、セカンドボール、攻撃ではつなぎ、飛び出しというものを本当に思い切ってやった」「あの時間帯に上回られたことがこのゲームのほとんどすべてを決めた」(熊本蹴球通信)と言う。

しかし一方で、まるで野球の表と裏のように後半は愛媛がそれを上回る。“似ている”だけに、“上回った”わずかな差が、勝敗を分けた。そんな試合ではなかったでしょうか。

熊本は逃げ切って勝ち点を36に積み上げ、足踏みした降格圏・山口との差を8に広げました。順位も金沢、讃岐を抜いて18位に浮上。「ふーぅ」と息を吐きたいところですが・・・。

しかし、池谷監督が「この状況は最後まで続く」と言っていたように、一喜一憂せず、目の前の1戦1戦を戦い続けなければいけない。それが今シーズンでしょう。