4月29日(火) 2008 J2リーグ戦 第10節
熊本 2 - 1 甲府 (14:04/熊本/4,464人)
得点者:26' 小森田友明(熊本)、48' 藤田健(甲府)、52' 矢野大輔(熊本)


プロセスが結果に結びつかないここ数試合。正直、勝利という”結果”がすぐにでもほしいという気持ちと、2勝目まではもう少し時間がかかるかなという不安(覚悟)が、ない交ぜになったようなゲーム前の心境でした。しかし、ホームに迎えた甲府を相手に勝利。あの広島にも土をつけたJ1降格組。一般的に世間では、この勝利を”金星”と呼ぶのでしょう。

バックスタンドでは子供達が掲げる「小森田先輩。頑張れ」の横断幕。おそらくブレイズ・ジュニアの面々か。
その小森田も右サイドに入って、ロアッソは、前節、前々節と変わらぬ先発フォーメーション。強豪甲府相手にも、いつもどおり、真正面から自分たちの目指すサッカーで挑もうという監督の気構えが、無言のメッセージとしてわれわれにもしっかりと伝わってきます。
「チーム内にヘタッているやつは一人もいない」(上村健一4月27日熊日朝刊)。結果が出ていなくてもチームが浮き足立つ様子は全く見えません。

しかし、中二日の試合日程の疲れか、あるいは夏日となったこの日の暑さのせいか、それともペース配分を考えてのことか、試合の入り方としてはややスローな重たい感じがしました。セカンドボールはことごとく甲府に拾われ、ボールを支配されます。ただ、結果論かも知れませんが、ある程度、甲府にボールを持たせる戦略だったのかもしれません。甲府は自分たちが“意外に”ボールを持てるため、例の”狭い局面でのクローズ”といった特異な陣形を90分間、一度も見せず、いわば”普通”のサッカーをやってくれました。

逆に熊本は徐々に、ボランチ“山山コンビ”を中心として、甲府のパス回しを要所要所でカットしていく。自陣ゴール前でのドリブルや、ショートパスに対しても、きっちり準備できている。

両者押し合って、主導権を奪い合おうとする互角の展開。試合が動いたのは26分、エリアやや右手前、得意の位置からのFKを小森田が直接突き刺す。ロアッソにとって、実に開幕以来9試合目にして初めての先制点となった鮮やかなゴール。小森田にとっても今季初得点でした。

その後も、甲府の高いDFラインの裏をつきチャンスを作る”ロッソ”。加えて今日は、早いサイドチェンジから2列目、3列目が追い越してくるシーンが随所に見られる。決定的なチャンスも二度、三度。何より熊本も甲府もお互いに見事にコンパクト。そのためか攻守の切り替えは非常に早く、攻守の動きがつながっている「シームレス」な感じさえ受けました。

さて、リードして前半を終えるのは、水戸戦以来です。

ハーフタイムの喫煙コーナーで同僚たちと後半予測。「後半2点入るよ。どちらに入るかはわからないが・・・。」「1点ずつ取って2-1ならベストかな。」などとうそぶいていたのは、皆の心に「今日は勝ちたい」という思いと、これまで何度と目にした後半のパフォーマンス低下への不安とが入り混じっていたせいでしょう。ドラマはまだ前半を終わっただけ。当然このままで終わるとは誰ひとり思っていなかった。

そして後半。まず悪いほうの予感が早々に的中。開始2分、やや不運とも見えたPK判定で同点に追いつかれてしまいます。
しかし、早い時間帯だったし、防戦一方というわけではなかったので、スタンドは比較的落ち着いて見守っていました。同点にされたわずか5分後、セットプレーから矢野のヘッドで再び勝ち越し。この瞬間、スタンドは総立ち。騒然としたスタジアムの雰囲気そのままに、さらに撃ち合いになるのか。押せ押せの熊本が追加点を上げるのか。観る側にとってもこれ以上はないシビれる展開。

しかしこのドラマ、さらに意外な展開を見せます。図らずもそれを“演出”したのは、同点PKを“演出”した田辺主審その人でした。
後半30分、チャジホは左サイドで、自らのコントロール下にあったタッチライン沿いの浮きダマを敵陣方向にクリアしようと果敢なオーバーヘッドキックを試みますが、これが相手の顔に入り、2枚目のイエローで退場。
一人少なくなった熊本。後はこの1点を守り抜くことに完全に集中していきます。中山を下げ、福王を最終ラインに入れ、上村をボランチの位置に。残り時間は15分。

しかしここにきて、もはや人数など問題ではありませんでした。
どちらの“勝ちたい”という気持ちが勝るかどうか。

前線に高橋ひとりを残した熊本は、甲府の攻撃を必死に跳ね返す。低いクロスボールに危険を顧みず頭から体を投げ出す河端。疲労困ぱいのはずなのに縦横無尽に走り回る山本、山口。退場劇直前に投入された宮崎大志郎は守備に追われながらもJデビューのチャンスを果敢に相手陣深く駆け上がる。削られ、倒されながらも孤軍奮闘する高橋。審判の視界外で行われる、甲府選手の狡猾なプレー。ひとりのミスも許されない。ノーファウル。オールクリア。懸命のタックルに大声援が応え、スタジアム中から沸きあがる手拍子が疲れ切った選手たちの背中を押す。長い長い3分のロスタイム。ドラマの終わりを告げる主審の笛。

実に一ヶ月半ぶりの勝利。待ち遠しかった勝ち点3。だからこそこの勝利の喜びはひとしお。なにより甲府の持ち味のハラハラ・ドキドキサッカーのお株を奪うようなスリリングな展開。
サッカースタイルも、クラブ経営もいわばお手本としたい先輩格の甲府にがっぷり四つ、勝ち点を奪えたことはまさしく“大金星”と言っていいでしょう。

もちろん、まだまだ課題は目に付きました。しかし、駐車場までの道すがら、家族連れや友達同士、大勢の人たちが、皆、一様に笑顔で、今日の勝利を喜び、選手の活躍を称え、ゴールシーンを思い出しながら、賑やかに語り合う姿を見ていると、そんな心配もどこかに吹き飛んでしまいました。

このハラハラ・ドキドキをスタジアムで体感した人たちは、次のホームゲームにはきっとまた足を運んでくれるでしょう。テレビや新聞で結果を知った人にも、その興奮とわれらがチームの逞しい戦いぶりを伝えてくれるに違いありません。
こうして一試合、一試合、みんなの胸に刻まれてゆく小さな歴史。このサッカーを続けていく先には、きっときっと真っ赤に埋まったKKウィングがあることを確信させる、そんなゲームでした。
TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/101-6c896c80