5月21日(水) 2008 J2リーグ戦 第15節
熊本 2 - 2 仙台 (19:03/熊本/3,691人)
得点者:33' 高橋泰(熊本)、44' 菅井直樹(仙台)、59' 高橋泰(熊本)、61' 中原貴之(仙台)


ホームチームの公式戦としては、おそらく初めて平日夜のゲーム。出足は心配されたものの、いつもの週末とは違う客層も見られて、最終的には3700人のファンが、“J”のホーム・ナイトゲームに酔いしれました。

ロペスや萬代を失った仙台。攻撃力が下がり苦戦するだろうというシーズン前の下馬評を覆し、ここまで7勝2敗4引分で堂々の2位。しかも前節まで4連勝中の勢いでKKに乗り込んできました。この好調さは何だろうと思っていましたが、そのわけは試合開始早々わかりました。

MFリャンが縦横無尽に動きパスを回す。次の列、次の列と上がってくる全員攻撃。それは一言で言えば“流動性”。そして高い技術の裏づけによるなかなか崩せないポゼッション。

これは強い。試合は全く初めての展開になりました。ロングボールの多用から、セカンドもほとんど支配されていましたが、33分、市村のクロスを中山と競ったDFがエンドにクリア。これがバーに当たって跳ね返ったところに高橋。うまく抑えたボレーシュートは、バウンドしてゴールに突き刺さりました。

ワンチャンスをものにされ、”意外”な展開の仙台。しかし慌てる様子もなく、一気にギアをシフトアップ、あるいはアクセルを踏み込んだ。激しいポジションチェンジ。後ろから次々に上がってくる選手。熊本は防戦一方になりますが、この日久々にスタメンに入ったGK吉田、福王、河端の両CB、喜名、山口の両ボランチの必死果敢なプレーで難を逃れ続けます。

このまま1点のアドバンテージを保って前半を終えたいところでしたが、ロスタイム、ゴール前の壁パスから、上がってきたDF菅井に最終ラインを破られると、同点弾を決められてしまいました。

次の追加点がどちらに転ぶかによって、展開は大きく変わる。前半のうちに追いつき、そのまま突き放したい仙台。その攻撃力をいなして、逆に勝ち越したい熊本。後半の入り方はいつもより少し“落ち着いた”、あるいは“大人の”感じがしました。厳しくチェックにいくところはもちろんありましたが、そんなに前線で無理はしない、みたいな。

相変わらず仙台のペースのなかにあって、熊本が少ないチャンスをまた実らせます。右寄り30メートル程度の地点から西森が入れたFKは低くバウンド。それを河端が競ってつないで右サイドに。これを押し込んだのはまたも高橋。これで日本人ゴールランキング単独1位に躍り出ました。

しかし、スタンドのファンが勝ち越しゴールの余韻を楽しむ間もないわずか2分後、スローインから一人経由してすばやいクロスをゴール前に入れられると、仙台のFW中原にバイシクルシュートで決められる。なんともみごとなゴール。一瞬の隙も与えられない。単純に振り向かせないだけでは止められないようなプレーが出るのが、このカテゴリーの怖さ。アンラッキーな失点と片付けることは簡単ですが、寄せの甘さを痛感させられましたね。

1点を争うシーソーゲーム。先制されては追いつかれ、勝ち越しては追いつかれる。「いつでも点はとれる」とでも言うかのように次々押し込んでくる仙台。久しぶりに感じる攻撃の“恐怖感”。おもわず顔を覆うような危ない場面。全員守備。悲鳴とため息。

しかし、この日、チームもスタンドのファンも引き分けなど望んでいませんでした。勝ちたい!このJ1経験もある強豪チームに。この強い相手に・・・。ゴール裏のサポーターのチャントにあわせた手拍子で、自然に会場全体が一体となっていきました。

ベンチが動きます。木島を投入してFW3枚に。右サイドに入った木島は、2年半ぶりの公式戦出場とあって、ボールともチームメイトともまだまだフィットしていませんでしたが、得意のドリブル突破、鋭いクロス、気迫あふれるプレーで戦況を変えようとします。しかし、仙台も意地でも新参熊本に負けるわけにはいかない。

さすがに43分、中山に代えて吉井を投入したところで、ベンチの意思は「引き分け狙い」に変更されたことがはっきりしました。怪我で長期戦列を離れていた吉井でしたが、短い時間ながらも持ち前の堅守、そして自ら持ち上がる姿を見ることができました。

最後の最後、CKのチャンスに「勝ち」への執念を覗かせましたが実らず。終了のホイッスルが鳴ったとたん倒れこむ選手が3人、4人。見ている以上に厳しい90分だったのでしょう。

このゲーム、先制点を守れなかったというのも課題ですが、とはいえ、前2戦と比べれば得るものの多かった戦いだったと思います。連戦のなかで上村を休ませ、初めて福王がCBで闘将ぶりを発揮。喜名の執拗な守備も健在でしたし、チャジホのアクシデントから入った西森も走れました。

何より、怪我から復帰し、今季初出場となった木島と吉井。このあたりが計算できることは、なによりチーム力に厚みと変化を持たせる。特に木島。これまでのリザーブ、交代選手が、どちらかというとスタメンのリフレッシュ要員、アクシデント要員といった使われ方だったのですが、木島の場合は“流れを、戦況を変えられる”選手として投入されていますね。ビハインドを跳ね返す状況のとき、どのチームにも一人ないし二人はベンチに座らせておきたい性格の選手。熊本でいえばそれが木島なのではないでしょうか。これははじめての戦略的“用兵”のように見えました。

さて、この試合で第1クールを終了。決して結果だけにこだわってきたわけではなく、いわばひととおりの“ご挨拶”が済んだという感じです。しかし、この第一クールのなかでも、日程を消化するにしたがってチームとしての成長を見せ、(監督の基本方針は変わらないままでも)、その戦いは一様ではなかったなと思います。その意味ではこの仙台戦でみせた時間帯によって、相手の出方によって戦い方を変化させてきたというところは、すでに第二クールへの意欲が感じられるものではなかったでしょうか。

まあ、ひとまずファンとしてはこういうせっかちな期待感、ひいき目は仕方のないことですが、J's GOALでの池谷監督のこのコメントは印象的ですので忘れないように記録しておこうと思います。「個のスキルやフィジカルでは、このリーグのトップクラスからは当然落ちると思います。それをいかに埋めて行くかという事で、組織やグループでいろんなことを考えて、でもまずは個のベースをあげない限りチームも上がって行かないと思うので、タフに、粘り強く、継続して行く以外にないと思いますので、今後も志を持って続けて行きたいと思います」。
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