8月10日(日) 2008 J2リーグ戦 第30節
熊本 1 - 1 横浜FC (18:03/熊本/5,274人)
得点者:3' 高橋泰(熊本)、70' 山田卓也(横浜FC)


前回対戦が大敗だったせいもありますが、今節熊本は明らかに“守備”をテーマに臨んでいたように思えます。早い時間に先制点を奪えたことで、今回のそのテーマを鮮明にしながら確認していくような試合運びができました。同点弾は残念でしたが、そのなかでも引いて守りを固めるではなく、奪いどころで奪い攻撃を組みたてる。90分間、逃げずに戦うという感じの実に面白い(そして結果的にはちょっと惜しい)サッカーを見せてくれました。

横浜の前線は、前回対戦でハットトリックを奪われたアンデルソン。それにここ3試合で5ゴールを決めている池元。この池元、九州リーグ時代に北九州の選手として対戦したこともありますが、その後、柏を経て横浜FC。“ひとり昇格”の代表格ですが、日本人ばなれした思い切りのいいダイレクトボレーなど、アンデルソン以上に警戒すべき選手でした。

横浜FC (先発フォーメーション)
20池元 9アンデルソン
17三浦淳32山田
23八角24根占
6太田8中田
7吉本5エルゼウ
 1小山 
さて、試合開始前の写真撮影が終わって選手がピッチに散った直後、場内からどよめきが。見れば、チャ・ジホがひとり、ユ二フォームの胸のエンブレムをこぶしで叩きながら、ゴール裏からバックスタンド前へとトラックを走っている。聞き取ることはできませんでしたが、きっと「あの屈辱を忘れるな」と叫びながらスタンドを鼓舞して回っているようで。この熱い想いにチームも、ファンも応えないわけにはいきません。カズ効果もあったのかも知れませんが、この日は久々5000人の入場者。このチャのパフォーマンス。否が応でも“赤い魂”をヒートアップさせました。この男には教えられることが多い。

開始早々、右サイド奥で中山が粘って繋いだボールを山本がセンタリング。ファーに構えた高橋は何と全くのフリー。狙いすましたヘッドは、GK小山の手をすり抜けゴールに転がります。わずか3分での先制。まだ横浜が目を覚ましていない時間帯でした。

横浜もすぐに押し込んできましたが、熊本はまさしく先制したチームの試合運び。無用なリスクを避けるようにバランスを保ち、しかも90分を考慮した運動量に徹していたように感じました。
アンデルソンは福王がしっかりとマークし、市村やチャは横浜のサイドアタックの芽を何度も潰す。そして今日のポイントは中山と木島。この突破力のある二人がかなり下がり目の両サイドに位置し「サイドは渡さない」そんな感じで、サイドバック、ボランチの一枚と一緒になって両サイドを支配し続けました。逆に彼等の前方には広大なスペースが。相手にとって木島、中山と対峙しながらの、この自らの後ろにあるスペースは大いに脅威だったに違いない。事実、隙あらば突破を図ります。
サイドに行き場をなくし、中を突いてくるしかない横浜のパスは、山本、吉井、宮崎のトライアングルが奪う。そして高橋にくさびを入れる。サイドを走らせる。
決してリトリートしているわけでなく、アタッキングゾーンが明確で、ファーストディフェンダーがきっちり当たっていくと、グループで奪い、すばやく攻撃に転じる。

池元がひとり気を吐きますが、単発的に撃ってくれるので助かります。
一度だけ危険な匂いがしたのは前半29分頃、あれよあれよと持ち込まれると池元が右サイドからアーリークロス。根占のヘッドは右に反れて事なきを得ましたが、一瞬の集中力が途切れた瞬間でした。

後半横浜は、三浦淳をボランチに、左に滝沢を入れて打開を図りますが、奏功しない。
後半17分、キング・カズが満を持して登場すると、熊本のファンからは盛大な拍手とブーイング。5000人のファンも、この試合を堪能しています。
さすがにカズが前線で張って起点になることによって、少し押され始めた熊本。
失点の場面は、ゴール前の混戦でセーブしようとして飛び出した太がファンブル。再度押さえようとしましたが、ボールはPAの外に。これが山田に渡りミドルを決められました。
責められないプレーでしょう。難を言えば太に任せた後、皆がゴール前で棒立ちでした。

しかし熊本もすぐに反撃。木島からのグランダーのクロスに高橋がシュート。GKがはじいたところを中山が押し込みますが、これはオフサイドの判定。総立ちになったスタンドのファンは、ため息とともに座りなおしました。

横浜は早めに交代のカードを切ってきます。これまでの熊本のベンチだったら、後半15分頃から動き始めるはずです。今日、久々にベンチ入りしている俊足の町田を、いつ投入するのかと思っていましたが、なかなかその機は訪れません。ミスから失点したものの、熊本の動きは決して悪くはなく、この“流れ”を切りたくない、このバランスを壊したくないと感じていたのでしょう。やや涼しい気候も手伝ってか、吉井、宮崎、山本は半端でない運動量。また、終始コンパクトに保たれた陣形は崩れず、縦に縦に、あるいはサイドに。相変わらずフィールドを大きく使ってサッカーをしているのはわれわれの方でした。

ようやく町田が入ったのは40分も過ぎた頃。もちろん、この時間帯での1点が勝負を決めるという熊本にとっての積極策でしたが、負けられない横浜が猛烈に押し込んでくる最後の時間帯で、“攻撃こそ一番の防御”とばかり押し返すカードとも言えました。ベンチワークの妙。

結果的にドローで終わりましたが、チームの成長を感じさせるいい内容の試合でした。
早々と先制したものの、その後の時間を“引いて守る”だけで勝ち切れるわけがないことは学習済みでした。90分間の時間の使い方、ハードワークをベースにしながらも、持たせるところと持つところ、緩急のある試合運び、呼吸が合ってきたボール回しと動き出し、止まらない“足”。まさしくこれまでの“経験値”が、監督の言う“質と量”を高めてきていると実感できる第2クール最終戦でした。

残念ながらサッカーの神様はそうそうたやすくこのリーグでの“連勝”を経験させてくれませんでしたが、あの横浜に「嫌な相手」という印象を与えることができたのは間違いないでしょう。それは前回三ツ沢(ニッパツ)球技場の入場者数4000人を上回る、KK5000人の後押しがあったからこそとも思います。
データを見ればこれまでの6勝中5つはホームで奪っています。ホームだけなら5勝7敗2分。もう少しで五分という戦いをしています。
「熊本はホームで強い」、「熊本のホームでは戦いづらい」。そう感じさせる力をもしホームのファンが与えられるのだとしたら、それこそサポーター冥利に尽きるというものです。

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