9月20日(土) 2008 J2リーグ戦 第36節
鳥栖 1 - 2 熊本 (15:04/ベアスタ/21,029人)
得点者:30' 廣瀬浩二(鳥栖)、43' 中山悟志(熊本)、68' 木島良輔(熊本)


鳥栖から帰り、焼酎を片手に勝利の余韻に浸っています。ロアッソ久々の会心の勝利は、一方で鳥栖を絶望の淵に落とし込む結果になりました。

スポンサー・ブリヂストンの協力もあって、この試合の動員目標は2万人。そのあおりでわれわれ熊本サポーターは、ゴール裏の半分とメインの右隅というスペースしか与えられず…。いやいや、これでいいんです。これこそ完全アウェーの洗礼。サッカーの試合らしい。

シーズン前から敵将・岸野監督は「今年は鳥栖史上最高のチーム」と称し、昇格を標榜していました。そしてこの終盤の一戦にあたり「勝ち点1は負けに等しい」とまで言い表した。それはいい意味で選手たちを“追い込み”このゲームに向けての“戦意”を高揚させようという意図だったのでしょうが、しかし、結果、その言葉は選手たちに重くのしかかることにもなったのではないでしょうか。2万人動員達成はすばらしいプロジェクトであることに間違いないし、史上最高の観客の前での昇格争いをかけたゲームとなり、盛り上がることは確かなんですが。しかし、見ていて、その“2万人”が前面に出すぎて、キックオフまでの多種多様な“演出”は、選手たちの集中力をちょっと邪魔したのではないかと。よそ者のたわごとかも知れませんが、少し気になりました。

熊本は前節までの4-1-4-1から、中盤をダイヤモンド型にした4-4-2に変更しました。「高橋との距離、中盤の距離、そのあたりの問題で、バランスを少し変えた」(池谷監督:J‘sゴール)ということらしい。
一方の鳥栖は、キム・シンヨンが体調不良らしく、廣瀬と藤田の2トップ。サイドバックの長谷川、ボランチの鐡戸は共に“熊本スピリッツ”の選手。

スタジアムは9月も下旬だというのに非常に蒸し暑く、ピッチに差し込む西日もまだまだ厳しいものがありました。

鳥栖 (先発フォーメーション)
25藤田 7廣瀬
10高橋24清水
14船谷15鐡戸
13日高26長谷川
5飯尾20内間
 21室 
前半、全く互角の展開のなかで、ペナルティエリア内でうまく入れ替わられ、マークをはずされて廣瀬に先制点を奪われます。チャンスにはサイド、ボランチと次から次に選手が上がってくるし、シュートのあとにはこぼれ玉にきちんと詰める選手がいるし、全く鳥栖らしい“走る”サッカーを見せられました。

しかし今節の熊本、この失点のあとが“良かった”。
前節を大敗で終えて、池谷監督はこう述べていました。「点をとりかえすことに意識が向いて、守備が手薄になったところをカウンターでやられた。勝つときも分けるときも、いい試合をするときは2点目を失っていないことが多い。我慢強く守って、少ないチャンスを確実にものにしていくしかない。」(くまにち携帯サイト:がんばれロアッソ熊本)。まだ早い時間帯でもあり、慌てずにもう一度守備から入りなおす。この意識が全員に共有されていました。
相手の攻撃をしのぎつつ、徐々にペースを取り戻すと、43分という絶妙の時間帯に中山のゴールで同点。河端のフィードを高橋が落としたところに飛び込んだ中山。これも今節のフォーメーションから中山が“いい場所”に居た成果でした。

後半の入り方も悪くありませんでした。同点に追いついた方が、追加点を奪いにいくという勢いがありました。この日のコンディションを考慮して、前半ひょっとしたらボールを持たされているのかも知れない、という懸念も頭をよぎったのですが、徐々に足が止まり始めたのは明らかに鳥栖の方でした。熊本のアグレッシブなプレスに押されているのか、パスが繋がらない。
たまらず岸野監督が交代のカードを切ってきます。右サイドの清水に代えてレオナルドを投入。これに呼応するように池谷監督は、同点弾の中山を降ろして木島。この交代がまた功を奏します。
すばやいリスタートを木島が宮崎に送る。宮崎のクロスにPA内の敵DFのトラップが大きくなったところに走り込んできた木島。敵選手と交錯しながらも押し込む。みごとな逆転ゴール。そのとき、2万人のホームサポーターが陣取る鳥栖スタジアムの“ほんの一角”を占領した千人にも満たない“赤い”集団たちだけが狂喜乱舞。立ち上がり、マフラーを振り回し、拳を振り上げ、抱き合い、ハイタッチし…。

その後はまさに死闘。負けられない鳥栖の猛攻を全員ディフェンスで守る。GK吉田は絶対絶命のピンチを死守する。ゴール前、右から左からのクロスを、河端がヘッドで跳ね返す。PA内の選手が足でかき出す。中盤の選手が諦めずにスライディングで奪う。前線の選手がディフェンスする。
鳥栖も諦めずに走りますが、後半に入ってからは、連動した後ろからの追い越しが減ってしまいました。そしてミスが多くなる。何かが変わってしまっていました。

試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、膝を着き、ピッチに倒れこむ鳥栖のイレブン。中には涙を浮かべる選手も。それは実質的に昇格戦線から脱落してしまったという落胆の大きさなのか…。まだまだ、われわれにはうかがい知ることのできない悔しさなのか。
一方、ゴール裏に挨拶にきたロアッソイレブン。GK吉田の目にも光るものがありました。前節の失点の自責の念。それと同時に、“期待されている”ことへの自覚が、この19歳でゴールマウスを背負う選手にとって、逆に相当のプレッシャーになっていたのは間違いないでしょう。この日の達成感が、自然と涙腺を緩めたに違いない。これもまた経験。

そして何より、この日の、鳥栖にとっては長いシーズンのなかでも相当に重い意味を持つこの試合に、九州ダービーという名のもとにわが熊本がめぐり合わせ、果敢なチャレンジによって勝利を納めた。長い、幾多の苦難を乗り越えようやく掴んだ昇格のチャンスを引き寄せようと意気込む身近な先輩・鳥栖に対して、大敗、連敗というトンネルから脱出したいわがチームのモチベーションが勝り、まさに“走り勝つ”ことができた。
いつか、われわれにもきっと訪れるであろうと願う、そういった昇格の“好機”のことを思い、これもまたわがチームの大変な財産になった試合、そして鳥栖との新たな“因縁”になるであろう試合。そんな試合を目の当たりにし、立ち会えたんだと。ファンとしてちょっと気持ちが昂ぶっています。

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