9月23日(火) 2008 J2リーグ戦 第37節
熊本 1 - 0 横浜FC (16:03/熊本/15,588人)
得点者:89' 吉井孝輔(熊本)


こんな劇的な幕切れを前にしては、われわれの拙い筆力では表現が及ばないのを予めお断りしておきます。それほどのドラマを観てしまいました。「だからサッカーは面白い!」。それがホームチームなら、なおさらのことです。チームとしての初連勝。吉井の初ゴール。吉田の初完封。小林陽介の初出場。そしてなにより15000人という、チーム初めての入場者数…。

この試合を前に、これまで連勝のチャンスをこの横浜FCに2度とも阻まれていることに気づかされました。それも初回対戦は、忘れもしない5月連休中の過酷な連戦のなかで、昇格後初めての大敗を喫しています。

われわれ熊本は、前節のアウェー鳥栖戦での勝利でようやくトンネルを抜け出し、そして通算7度目の連勝チャンスを、このある意味、苦手意識のある強豪・横浜と迎えることになりました。

「第2回くまもとサッカーフェスタ」と題して、1万人の動員が目されたこの大事な試合。KKまで向かう車中で初めて体験する“渋滞”に、イライラではなく、「これってロアッソの試合の渋滞だよね??」と嬉しい期待をしてしまいました。
ゲートをくぐると、目の前には信じられない光景が。いつもなら透けて見えるバックスタンドに印字された“KUMAMOTO”の文字が、多くのお客さんで埋まって、今日は全く認識できません。初めて見る光景。もちろんメインスタンドもぎっしり。そして、ホーム・ゴール裏も、中心こそ応援をリードするアルデラスが密集していますが、それなりに赤いサポーターで埋められています。

対する横浜FCのファンは、ゴール裏とメインにまばら状態。ここまで埋めなければ、敵サポーターをゴール裏に追い詰めることができないのも、KKの真実なのかも知れません。
そして、前節のアウェー鳥栖戦での勝利の余韻も覚めやらぬゴール裏のサポーターが、今日は一層結束感が増していたように感じます。

戦前、池谷監督は「大観衆のなかで楽しみながら、連勝のチャンスを掴め」と選手を鼓舞していました。対する都並監督は、連戦のなか、若い選手にチャンスを与えることを選んだようです。それは前節、鳥栖の岸野監督の心構え(コメント)にも通じるところですが、少々熊本を“舐めている”ところがあったのではないかと…。

横浜FC (先発フォーメーション)
20池元 19難波
13滝澤25須藤
24根占18小野
6大田22吉田
5エリゼウ3八田
 21岩丸 
試合は開始早々から熊本がペースを作ります。6分、高橋のシュートがポスト直撃。12分、吉井の大きなフィードから左サイド高橋がセンタリング。宮崎が落として山本がシュート。28分、吉井から市村。切り替えしてのセンタリングに高橋のヘッド。42分には左からのサイドチェンジに、市村がボレーでクロス。これを吉井が果敢なバイシクル・シュート。一方的に横浜のゴールを脅かします。

熊本の攻撃には厚みがあり、一方横浜は奪いどころがはっきりせず、自陣の低いところでボールを奪取しても、ゴールまで遠いために、難なく熊本の守備の網にかかってしまいます。累積でアンデルソンを欠く前線は、“因縁深い”難波と池元でしたが、いずれも孤立して、難波ならではの強引なプレーも、ファールやイエローを招く結果となりました。

スコアレスのまま前半を終了。そして問題の後半。横浜がどう修正してくるのか。試合はまさにここから始まる。と姿勢を正すように座りなおしました。

ここで熊本は先手を打ちます。後半開始から中山に代えて小林陽介を投入。これまで期待されながら、なかなか出番のなかった若きFWに、スタンドの拍手が湧き上がります。
この日のベンチは、GK小林の他は、MF河野、小森田、FW木島、そしてこの小林陽介という布陣。DFラインはスタメンにセンターもサイドも兼用できる選手が揃っているため、いざとなったら河野をSBで、というイメージなのか。そして、陽介をここで入れて、途中木島も入れてくるであろう。ベンチは、この大事なホームゲームを自ら早めに仕掛けて“勝ち”に行こうとしている意図がハッキリと読み取れました。

チームメイトもわかっていて、次々に陽介にボールを配給します。アグレッシブな陽介の動き。初めて七城で間近で見たときのように、その動きはゴムボールが弾むようにしなやかそのもの。59分、高橋のシュートに詰めますが、これはDFがクリア。さらにあと一歩というチャンスにも絡みましたが、やはり後半の入り方として、この陽介の運動量、前線からのチェック&チェイスが流れを作った意味は大きいのではないかと思います。

横浜も満を持して三浦淳を投入。それから前線には北京五輪韓国代表のチョ・ヨンチョル、高さのある御給と次々に“嫌な”選手を投入して、状況を打開しようと図ります。この試合もいよいよ正念場。

しかし今日の熊本は、この時間帯も凌ぎきる。運動量が全く落ちませんでした。確かにまだまだサイドからクロスを易々と上げさせることは否めない。しかし、ひとつはダイヤモンド型の中盤の流動性とバランスが機能して、アンカーの喜名も常に前を向いてプレーできた。また、河端と福王のセンターバックの連携がよくなって、最後のところで安心して任せられた。そしてスカパーの解説の池之上さんも「彼の真価が問われる日」と表現したこの試合で、まるで何か吹っ切れたような吉田の“思い切り”のいい“落ち着き”のあるプレーぶり。

後半、横浜が熊本の、あるいは吉田の弱点と見て取ったのか、右左から執拗に上げてきたクロスに対して、判断よく処理するばかりか、逆に、素早い正確なロング・フィードで敵を脅かした。それはまるで「ここで舐められてたまるか」というプロとしての意地のようなものを感じさせられました。鳥栖戦での涙のあとに一皮向けたのでしょうか、何かたくましさまでを感じてしまいます。GKに必要なのは、こういう経験なのでしょう。

強豪・横浜相手にゴールは割れないものの主導権を握り、何度も好機を演出した展開。残り時間も少なくなって、このままドローで終わるかと思わせた時間帯。ちょうど贔屓の料理屋に初めて友達を連れていったときのように、「どうかな?まあまあイケてるでしょ?」と、今日初めて観戦する熊本ファンにも遠慮ぎみには問えるかな。という感じがしていた終了間際。いえ、丁度ロスタイム3分の表示が第4の審判からなされたときでした。

最後のカードで入った木島。この“入ったら2度チャンスを作る”男が、まさに2度目のチャンスで右サイドに出たボールに追いついてクロスをあげる。これを、これまた途中交代の小森田がダイビングヘッドでファーサイドから折り返し、これを中央に詰めてきた吉井が体ごと押し込んだ。

そのときKKウイングに、熊本のホームゲームとしては初めて体験するものすごい歓声が。
15000人が一様に発する“歓喜の雄たけび”。もはやゴール裏でなくても、声が枯れている。うっすらと涙さえ浮かべている…。

終了のホイッスルの瞬間、抱き合う選手たち。いつまでも、その喜びを分かち合っている。
拍手は、いつまでも鳴り止まない…。

多くの先輩チームが数年かかったというJリーグでの“連勝”。実はまさか、わがチームがこんなに早く達成できるとは思っていなかったというのが正直なところです。

試合後の池谷監督のコメント。
「ひとつは、先週も含めて、いい緊張感というか、何かが吹っ切れたような感じで、原点に返って楽しもうということを言ってきました。この舞台に立つためにみんながやってきて、実際にJリーグの舞台に立って、ここまでは現実にぶつかる苦しさが大きかったと思うんですが、ピッチに立てる喜びと言うか、いい意味でゲームを楽しむ気持ちを持とうということを言ってきて、そういうメンタル的なことが作用しているかなと思います。あとゲームは、チーム、選手、スタッフ全てがひとつになって、連敗した中で危機感を持って、この2戦は臨んだ。それがいい方向に行っていると思います。チームも勝つことによってまた1つになり始めていると思うし、より強く結束してきたことが、いい結果を呼んでいると思います」

わがホームチームには、スタープレーヤーは誰一人としていない。それはエース高橋が、今日もつなぎ役や、つぶれ役に徹したことからも明らかで…。チームとして戦い、チームとして成熟しているのだと感じた一戦。

“走り勝った”と表現した前節、鳥栖戦から中二日の連戦。相手も同じ条件とは言え、疲労がないはずはありませんが、きっとホームの15000人が選手たちを後押ししたんだと。あの大声援のスタジアム、一瞬たりとも足を止めるなんてできるわけがない。きっとそう思わせたのだと思うと、またうれしくなりました。

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