9月28日(日) 2008 J2リーグ戦 第38節
草津 0 - 0 熊本 (13:04/正田スタ/4,423人)


鳥栖、横浜と初の2連勝を飾り、いよいよ3連勝を目指す熊本が、アウェー正田醤油スタジアムで8位草津と戦いました。

ここ2連戦、ダイヤモンド型に配した中盤の運動量によって勝機を得たのは間違いないところなのですが、われわれはもうひとつ、リーグ序盤戦と違って、ここのところの戦い、守備に至るバランス意識が非常に良くなっているのもその成果ではないかと思っていました。「まず守備から入る」というのは、よく言われる言葉なのですが、要はどこがブロッキングゾーンで、どこがアタッキングゾーンなのかという、チーム全体の意思統一が成されているかというということ。

連勝の後を受け意気上がるこの一戦でしたが、相手・草津はミッドウィークの前節が休養、そしてこのゲームから“下位チームとの4連戦”ととらえ、昇格への可能性に向けて(というより昇格戦線に食らいつくため)“負けられない”と意気込む。この一戦のゲームプランは、誰がみても序盤から猛攻を仕掛けてくるであろう草津の勢いをどう熊本が凌ぎきり、自分たちのサッカーに持っていけるのか、にありました。

草津 (先発フォーメーション)
9高田 19後藤
19島田14熊林
17秋葉30松下
3尾本5崔
4田中15喜多
 1本田 
予想どおり開始早々から速く、前がかりな草津。この時間帯でFW後藤に先制点を叩き込まれ、後手に回ったのが前回対戦でした。しかし、今の熊本、同じ轍は踏まない。この最初の時間帯、うまくその課題を凌いでいるように見えました。

ところがちょっとその時間帯も長すぎましたね。中盤の底の喜名が、少し前目すぎるのではないか、DFラインの前のスペースを自由にさせすぎなのではないかと危惧しました。草津の両サイド、島田、熊林がある程度自由に動きまわるのは、まあしばらくは仕方ないとしても、ボランチの松下、秋葉のところで数的優位を作れない、その壁を破れないのが気になりました。

そして19分。この試合の残り70分間をある意味で決定づけてしまうプレーが起こります。猛攻に耐えていた熊本の最終ラインでしたが、一瞬の隙をついた草津FW高田を、福王が後ろから倒してレッドカード。厳しい判定でした。しかし、これもこの主審の“特徴”なのだろうと理解するほかありません。そしてこの後も、おそらくもっと不安定な笛があるのではないかと予想もできました。

当然ですが、この早い時間帯に一人少なくなったことで、この日のゲームプランは、修正を余儀なくされました。山本を下げて車を左SBに投入。また高橋をワントップ気味に。この日初めて先発出場を果たした小林陽介にとって、せっかくの舞台が意外な展開になってしまいます。

しかし試合後、池谷監督も選手たちの多くも言っているように、この状況が熊本の戦術をシンプルにし、チームを一丸にさせたのも間違いありません。これで、残り70分間どう戦うのか、迷うことなく守備の意識とブロックラインがハッキリし、少ないチャンスをカウンターに徹することになったのです。山本の交代は足の状態もあったのでしょうが、この時点でFW2枚は削らずそのままで、相手に対する脅威は残したまま(位置関係をやや変えることで)、“中盤”としての総運動量を期待し、引いて守りがちになる布陣を避け、“勝ち”に行く意識を失わなかったのではないかと。そしてさらに言えば、チームとして(小林陽介も後半投入の熊谷も)、本来のポジションより一列後ろでのプレーを日頃から練習していた、そのユーティリティがここで生きたのではと。
要するに、いわゆる緊急事態の“ドン引き”ではなく、守備意識の徹底にスムーズに移行できた。

草津にとっては、相手が一人少なくなる前まで、あれほど優位に進めていたのですから、もう“勝ったも同然”と思ったことでしょう。しかし“決まらない”“決められない”時間が続くことで、次第に“焦り”に変わっていく様子。それがさらに草津にとって“プレッシャー”に変化していく。ホームの大歓声のなか、一人少ない相手を打ち破れないまま時間だけが過ぎていく…。

後半途中、熊本は小林陽介に代えて木島を投入し、今度は高橋を2列目、木島をワントップにしてカウンター戦術をより明確にします。ここでもFW2枚は温存。その意図がさらに明確に皆に伝わる選手交代。ひとり少ないことも忘れそうな戦術的な采配。大いに期待されましたが、今日はもうひとつ木島にボールが納まりませんでした。それでも中盤の運動量が落ちなかったこともあり、前線の孤立感もなく、コンパクトな陣形を最後まで維持できたのはこの用兵も大きかったのではないかと。

対して草津は、FW後藤から都倉の一枚代え。この敵将・植木監督の采配はわれわれにとって幸いでしたね。もっと前線に人を増やしてこられると、さすがにこれ以上は耐えられなかったかも知れない、そんな微妙なバランスの時間帯でした。
これも熊本が2列目とはいえFWタイプの選手を残し、常に隙を狙っていることによる躊躇もあったのかと。「寺田をもっと早く入れていたらよかったかも」という同監督の反省の弁と、「2列目が飛び出したり、追い越しが出てきたりすれば、やっかいだと思った」という池谷監督のコメント(いずれもJ‘sゴールから)が実に呼応しています。

ただ、さすがにこの川崎からレンタルされた高さのある都倉。熊本のDFは捕まえ切れませんが、最後の精度に助けられます。何度も潰すチャンスに、向こうのイライラだけが募っていくのが伝わってきます。

ロスタイムの草津。“幻のゴール”は、何度見てもまぎれもなくオフサイド。熊本も疲れた喜名に代えて入った熊谷の安定した、クレバーな守備もあり、また、最後の最後までチャンスも作り、勝ってもおかしくない“内容”でした。

全ては前半19分の主審の判定が、戦前のゲームプランを崩し、その後の両者の戦い方を決めました。熊本は数的不利を凌ぎきるという経験をして、“何があっても不思議でない”Jの戦いのなかで、また経験値を上げたといえるでしょう。これまでの熊本ならば、どこかで力尽きてしまったようなゲーム展開に、チーム全体の集中力が途切れることなく“戦い抜いた”。まさに財産に残る試合といえるのではないでしょうか。また、当初のゲームプランが崩れたあとの今日の戦いを見ていると、もしかして10人で戦うシミュレーションも準備されていたのではないかと。監督に聞いてみたいところです。

ただ、この日の草津を見るにつけ、逆にわれわれが突然あのような状況、あのようにポゼッションを“与えられた”とき、どうするのか。引いた相手をこじ開ける術を持っているのか。そういったことも、このリーグを戦ううえでこれから体得すべきことなのだと思わせました。

J2リーグ戦も終盤に入ったここ3試合。昇格争いに残りたい相手チームにとって、熊本から勝ち点3を得ることは当然の“計算”であり、それを3戦ことごとく覆していることは、Jリーグ1年目とはいえわれわれ自身の成長であり、存在感を示しているのだと思います。この日の引き分けを含めて“リーグ終盤3戦負け無し”という記録は誇っていいものだと思います。とにかく色々な経験値、財産を与えてくれたこの一戦。多くの人が、「勝ちに等しい引き分け」と評していることに異論はありません。

次節はホームKKに徳島を迎えます。前回対戦では勝ち、また現在は順位、勝点でも上回っており、われわれファンも勝点3を密かに計算しはじめています。しかし、今節、四国ダービーでは愛媛に5-0の大勝。この試合も“J”1年目のチャレンジャー精神を忘れたとたんに、足をすくわれ、勝機も失うのだと心得るべきでしょう。
ただただ、ホームスタジアムで声援あるのみです。

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