11月8日(土) 2008 J2リーグ戦 第42節
愛媛 0 - 1 熊本 (13:04/ニンスタ/2,485人)
得点者:6' 高橋泰(熊本)


今日の試合を観ていて、ちょうど1年くらい前に書いた「他人事の報道姿勢」というエントリーで、ニッカン記者ブログの「この時期、降格のないJ2の下位チームの試合は、もはや消化試合でしかない。」という表現に対して、激しく毒づいたことが脳裏によぎりました。

スカパーのアナウンサーも再三言っていたように、この試合、両者にとっては消化試合という意味合いは全くなくて、むしろチームの最終順位とそして選手たちにとってはまさに生き残りを賭けた真剣勝負。所詮ニッカンなど第三者にはわかるわけがない。応援するチームを持たなければわからない…。1年前に書いたことが間違いではなかったと実感しました。

寒風吹きすさぶニンジニア・スタジアム。天皇杯からの連戦の疲れを配慮したのか、愛媛はスタメンを何人かいじってきました。2トップには若林と横山。対する熊本は、中2週間で休養十分。4-3-3の3トップは高橋、木島、中山と攻撃的な布陣。

愛媛 (先発フォーメーション)
24横山 30若林
7千島16赤井
27青野10宮原
14三上13関根
28高杉3金守
 1川北 
この日の勝敗を分けたたったひとつの得点は、開始早々の6分。長い故障から復帰したばかりという愛媛の左サイド千島からの鋭いシュート性のクロスを、この日久々に熊本のゴールマウスを守る小林が、がっちりセーブすると、自陣まで帰ってきていた木島にフィード。これを敵陣までひとりで持って上がると、右サイドに上がってきた市村にパス。このセンタリングにニアで吉井がDF2人を連れて潰れ役になると、中央に走りこんだのは高橋。愛媛DF関根の前に飛び込む。プレイバックでは、関根が左手でハンドし、自分の右足に当てて入ったオウンゴールのように見えますが、公式記録はまぎれもなく高橋。得点王争いで広島・佐藤に追いすがる貴重な1点となりました。

開始早々の得点に意気上がる熊本のゴール裏。美しいロアッソ・レッドの群れ。

その後も、熊本は中盤と最終ラインとの2ブロックのシステムで愛媛の攻撃を組織的に囲い込み、奪うやシンプルに前線に運ぶ。逆に愛媛の最終ライン前では、前目のチェックで反転の芽を潰す。戦前、「セカンドボールを拾いたい」と言っていた愛媛・望月監督でしたが、これも熊本の手中にありました。宮崎、吉井が愛媛のボランチ宮原、青野を押し込んで上げさせない。愛媛は前線との間が間延びし、ロングボールで若林の頭を狙うのみの単調な攻撃。

22分、愛媛の宮原が抜け出してバイタルエリアに侵入。ここは危ない場面でしたが、右の赤井へのパスをチャがクリア。再び宮原に納まり、上がってきた千島がシュート。これはゴール左に反れました。しかし、このプレーあたりから徐々に愛媛が息を吹き返し、宮原が前線に顔を出すようになる。42分には混戦のなかで千島の決定的なシュート。完全な愛媛の時間帯が続きましたが、ここはGK小林が、勇気ある飛び出し、パンチングなど素晴らしい集中を見せ凌ぎ切りました。

1点のリードで迎える後半。このリーグで戦い始めた今年、幾度となく、ハーフタイムでの“修正力”を訴えてきましたが、この試合での興味もそこに集まりました。

まず、愛媛は左サイド千島を江後に代えてきました。幾度かチャンスに絡んでいた千島でしたが、怪我上がりという事情もあったのでしょうか。あるいは、若林へのロングボール頼みではなく、もっとサイドを起点にしたいのか。何にせよ、江後こそ愛媛では最も警戒すべき選手ではありました。

一方、熊本は選手交代なし。しかし、後半が始まってみると、中盤に指示があったのは明らかでした。もう一度コンパクトに修正したいのだと見てとれました。また、ロングボールを多用する相手に対して、思わずロングボールで対抗してしまう悪いくせに対し、池谷監督は「繋ぐところは繋げ」と指示しました。

51分、左サイド深くから上げられたセンタリングにフリーで撃たれますが、これをゴール前の市村が逆足でクリア。この日の一番の決定的な場面でした。しかし、相手の修正を見切り、その猛攻をきっちり“15分間”凌ぎきると、熊本はチャに代えて福王を入れます。福王がCBに入り、矢野が左SBにスライド。これぞ熊本の磐石の最終ライン。さらに木島が傷んで斉藤が入ってからはチームの守備ブロックを堪能する時間帯となりました。もはや愛媛に付け入る隙はありませんでした。

思えば、古傷を抱える木島を含めた3トップという攻撃的な先発布陣。ベンチにはFWの控えは存在しない。先制逃げ切りで、先発選手がいけるところまで。前線、中盤の誰かがいっぱいになったら、斉藤か松岡で4-4-2。最終ラインに何かアクシデントが起こったら、ユーティリティのある福王。もし、同点や逆転を狙うシチュエーションだったら小森田というシナリオだったのではないでしょうか。とにかく今日の愛媛には“勝ちたい”“結果が欲しい”という池谷監督の気持ちが強く感じられるベンチワークではなかったでしょうか。

ここで改めて認識させられるのが、福王が控えにいることの安心感。福王が入ることの安定感。しかし、その機能性ゆえにベンチスタートとなってしまう役回り…。

もちろん矢野のSBも、守備的どころか後半、超攻撃的で追加点の匂いをプンプンさせました。そして本領を発揮している市村の活躍。この4バックこそ現時点で、というか、今シーズン、熊本がたどり着いたベストのベースラインなのかも知れない。しかし、今この4バックで先発したときの控えの層の不安感。チャという攻撃的カードの使い道…。

監督にとっては悩ましい。非常に微妙な判断によって今の先発システムは成り立っているのではないかと思わせます。

加えて、何より今節の勝因は、そんなベンチワークの期待に応えるように、中盤の3人が最後まで走りきれたこと。前半の戦いを見ていて、中盤が最後まで行けるかどうか。その一点を集中して見ていたぐらいです。これは選手本人にとっても“ギリギリ”、ベンチワークにとっても“ドキドキ”のギャンブルだったのかも知れません。そして決して忘れてならないのは小林の奮闘。

今期10勝目という記念すべき勝利。そして7試合負けなしといううれしい記録。池谷監督が「全体的には凡戦」と卑下しているように、第三者から見れば、これと言って話題もない消化試合に過ぎないのかも知れません。しかし、ちょうど8ヶ月前のこの日、この同じスタジアムでのJ開幕戦で厳しい現実を思い知らされたわれわれにすれば、チームの成長を実感し、その成果を示せた“最高の”試合内容だったと思います。同一カードで始めての勝ち越し。今年のキャッチフレーズ「国獲り宣言」から言えば、“松山城陥落”です。

さて、この7連戦で培ったチームの組織的な守備・攻撃の連携。これを持って、最後に山形、広島と連続して戦えることは、めぐり合わせとは言え、今シーズン最後の“ご褒美”と感じています。1シーズンを費やして手にいれた今の“システム”が、来期のJ1チーム(あるいは昇格するのではなかろうかという上位チーム)に対して、どこまで通用するのか試してみるまたとないチャンスを与えられたのだと。さあ、本当の強敵に思い切ってぶつかっていくわがチーム。考えるだけでワクワクします。

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