前エントリーを書いてみて、まだまだ書き足りない“財産”があるような気がします。まず、選手に関しては数人しか触れていないし、リーグ戦の時間軸を縦軸とするなら、選手をフォーメーション図的に俯瞰してみるとそれが横軸になるのではないかと思いました。

北米プロバスケットボールリーグ(NBA)におけるMIP(Most Improved Player Award)というのは、前年度の成績と今年度の成績を比較して最も成長した選手に贈られる個人賞のことだそうです。よく観るブログ「サッカーコラムJ3 Plus+」で、これに習って今期のJ2のMIPを選んでいました。
この視点でわがチーム選手をみたらどうなるか。いわば「財産は残ったのか~選手編」といったところです。

まずはなんと言っても高橋。J2得点ランキング2位の大活躍。JFL時代に「高橋のチーム」という表現を使ったことがありますが、もはやJ2でも認められることになりました。これまでのシーズンでは、固め撃ちや好不調の波が激しかったのですが、今期は安定してチームの勝利に貢献しました。ほとんどの時間帯で厳しいマンマークにあい、削られることも多かったのですが、一瞬のボールタッチでDFをかわす巧さ、空中戦での粘り強さ、ポジショニングの良さはもはやこのカテゴリーを越えていました。それでも彼に言わせれば「決めるべきところを決めきれない試合があった」という、向上心もみごとです。また、この長丁場、怪我に強く、全試合出場というのも評価は高い。来期、年俸を相当積まなければいけない選手でしょう。

中山は、エース高橋のコンビとして数多く出場機会を得ましたが、FWとしての得点数はややもの足りなかった印象が残ります。持ち前の“泥臭さ”もなかなか結果に結びつかず。しかし、4-1-4-1のサイドに位置した際、前線でのしつこい守備は光りましたし、彼の動きによって、高橋が活きた面もありました。恵まれた体躯だけに、体幹をきっちり鍛えなおしたらもっと出来ると思います。来期は完全移籍と報道されていますので更に活躍を期待します。

木島は今期練習生から土壇場で入団。マリノス、大分、ベルディと渡り歩き、更に怪我でどん底を見た男が起死回生ともいえる輝きを放ちました。体を無理やりねじ込んでも自ら局面を打開していくプレースタイルと “戦う”ハートは、ファンを大いに魅了しました。「入ったら2度チャンスを作る男」。特に大阪戦の同点弾、鳥栖戦の逆転弾は劇的。個性も強いが、監督としても使いみちが面白いFWなのではないでしょうか。古傷を抱え故障ぎみなのだけが心配。期待に違わぬ働きでした。

山内は大阪戦での途中出場、歓喜の逆転弾が忘れられないのですが、その後は出場機会を得られませんでした。例えば木島を師匠にしてみたりすれば、スピード、運動量と使い勝手のある貴重な選手になるのは間違いないはず。まだまだ発展途上の選手。がんばれ。

こうして書いてみると、FWって「巧さ」「高さ」「速さ」「強さ」そして「強引さ」のいずれかでも人より秀でた能力が必要なポジションであり、それぞれのポイントが平均点では許されないものなんだなあと思う次第です。また、現代サッカーの常識として、前線から求められる守備の基準が厳しくなり、生半可の“アリバイプレー”では許されなくなっています。それも今期、かなり各選手に浸透していたように感じます。

中盤というポジションは、シーズン当初は激戦区として予想されていましたが、結果的にはコンスタントに出場した選手は数人に絞られていきましたね。ちなみに開幕戦のスタメンは小森田、福王、西森、車の4枚でした。これはひとつには少ない交代枠のなか、臨機応変に4-1-4-1、4-3-3、4-4-2(それもボックス型だったりダイヤモンド型だったり)と相手やゲームの流れに応じて戦術的に変更されるシステムに対して、選手全体にポリバレント性が要求されたこと。また、チームの基本戦術としてもハードワークをベースにした厳しいプレッシング、高い守備能力、攻守の切り替えと判断のスピードが要求された。この二つの条件が必然的に中盤の選手を絞り込んでいったのだと思います。

そういう意味では、もはやどちらかサイドの攻撃的MFだけという“専門職”では認められない時代になってきているのかなと。厳しい世界です。

前エントリーでも書いたし、多くが認めるように、中盤で今年一番の成長、変貌を遂げたのは山本、吉井、宮崎の3選手かと。今期“ロアッソ”のサッカーを象徴するハードワークをベースにしたアグレッシブなカウンター・サッカーを体現したのがこの3人でした。
山本は、たしか第8節C大阪戦からスタメンを得ると、その後はコンスタントに出場し中盤を支え続けました。小柄ながら中盤を駆けずり回るダイナモ。実は鍛えられた分厚い胸板を隠し持ち、敵の当たりにもめっぽう強い。CKとミドルシュートの精度をもっと高めてくれたら言うことなしなのですが…。

吉井もまた進境著しい若手MF。前期終盤に負った怪我で出遅れましたが、15節仙台戦から途中出場。試合を追うごとに出場時間が増え、今や中心選手。ボランチ、右サイド、トップ下と中盤ならどこでもこなす器用さと、恵まれた体躯、チーム一のスタミナ。山本に劣らない汗かき仕事人は、オシムいうところのいわゆる「水を運ぶ選手」なのではないでしょうか。吉井がいないとどこかに穴があきそうで不安を感じることもあります(実際にそんなゲームもありましたね)。膝にまだ故障を抱えているらしいのがちょっと心配なのですが…。

宮崎は、5月連休の横浜戦でJデビューするも結果が残せませんでした。しかし、27節愛媛戦で怪我の山口に代わり、自身始めて“中盤の底”を任され、このチャンスをみごとに掴み、その後スタメンに定着しました。CKも含めてプレースキックの能力はチーム一、二を争うと思います。プレッシャーのかかった場面での判断力に更に磨きをかけてほしいところです。

この3人の台頭によって、昨期JFLで昇格戦線を支えた喜名と小森田の2人のベテラン選手は、途中交代や途中出場の役回りが増えました。

喜名は、どちらかと言えばおとなし目に見える中盤を闘志むき出しのプレーで鼓舞してくれました。90分間走り切った試合もありましたが、JFL期と比べるとチーム戦術の変化で、中盤のコンダクター的役割は減りました。しかし、混乱したとき、押し込まれたときの落ち着かせ役、流れを変えるアクセント役としては貴重な戦力だったと思います。ただ中盤の底でプレーするときDFラインに吸収されたり、前を向かせてくれない相手にピンチを作る場面もありました。

小森田は、どうしても守備が苦手という印象があります。今期のチーム戦術では出場機会が減ってしまいましたが、途中出場からファーストタッチで得点に絡んだりと、FW木島と同じようにゲームの流れを変える“何か”を持っている選手でした。リスクマネジメントが中心の今期のベンチワークのなかで、唯一攻撃的な変化、局面を一気に変えられる選手といえたのではないでしょうか。

山口は、リーグ序盤、山本とのコンビでボランチを努め、その献身的な運動量で今期のチームコンセプトを構築するという大きな働きをしました。高校時代の華麗で攻撃的なゲームメーカーが、泥臭い中盤の汗かき役に変身し、Jでの足がかりを掴んだと思ったところで、またもや運悪くシーズン途中の怪我に泣きました。

サイドアタッカー陣で今年出色だったのは、やはりチーム初の外国人選手、チャ・ジホでしょう。シーズン終盤ではSB出場が多かったのですが、この男はやはり前目で使いたい。プロらしい魂のこもったアグレッシなプレー。ワクワクするような活気をチームに持ち込んでくれたと思います。キレのあるドリブルからサイドを深くえぐるシーンは、ゾクゾクしました。

ガンバからレンタル中の松岡は、怪我がちですが、貴重な戦力でした。線の細さが払拭され、試合勘さえ備われば、卓越したテクニックの持ち主。完全移籍も噂され、なんとか熊本で“開花”してほしい逸材です。

西森も切れ味鋭いドリブルと、優れたプレースキッカーなのですが、激戦のこのポジション、なかなかスタメンの座は奪えませんでした。しかし全く紙一重の戦い。元々の能力を考えれば、いつかきっとチャンスは訪れると思います。
ソックンは、彼の特徴を発揮するには出場時間が少なすぎました。

今期、DF陣のシーズンを通した成長も見逃すことができません。開幕戦、右SB市村、CB上村、矢野、左SB有村でスタートした最終ラインも、上村の不調、有村の怪我などがあり、シーズン終盤ではCBが河端、矢野、左がチャ・ジホの先発になることが多くなりました。特にマンマークが身上の河端。シーズン当初はポジションミスからのポカもありましたが、終盤ではラインを鼓舞する、頼もしいポスト上村に成長しました。また、当初あちこちで異論を耳にしましたが、矢野や福王がSBにスライドするユーティリティ性をチームとして手に入れました。層が薄いポジションとはいえ、これが大事な場面で大いに奏功したし、来期への財産に結びついたと思います。福王についてはシーズン中、何度も書いたように、特にそのユーティリティ性ゆえのベンチスタートになりましたが、来期はチームの中心になってくることは間違いないでしょう。

GKは開幕からルーキー吉田を果敢に使ってきましたね。ちょっと驚いたと同時に、この若い才能に対する監督の大きな期待が感じられました。まだあどけなさが残る顔つきが、リーグ終盤ではすっかり逞しく変容しました。転機になったのは、鳥栖との第3クールでの勝利だったでしょう。それまで自責的な失点で試合を失い、かなり辛い精神状態だったのではないでしょうか。ベアスタで見た吉田の試合後の涙が胸を打ちました。今年、相当の経験値を得たひとりと思います。年代別代表では現在4番手のようですが、類まれなるキックの精度を持った逸材。まだまだこれからチャンスがあると思います。
通産100試合出場を達成した小林。大事な場面で好セーブを連発して、数々の勝利に貢献しました。吉田ほどまでは求めませんが、もう少し足技が安定してくれたらと思うのは贅沢でしょうか。
太は27節にチャンスを貰い、完封勝利を演出してくれました。この試合がまた終盤の好調の序章でもあったのですが、自身は怪我に泣き残念でした。

以上。「前年度の成績と今年度の成績を比較」して、と前置きしましたが、今期からの新顔選手については、今シーズンを通した評価をしてみました。また、今シーズンの戦績に貢献してくれたことは間違いないのですが、退団した選手、契約満了の選手については、このエントリーの趣旨からあえて触れませんでした。

それにしても、選手というのは、個々の能力、そのときのコンディションもさることながら、チームの戦術、システム、あるいは組み合わせの妙、ゲームの流れのなかでの起用法という多岐に渡る選択眼にさらされている厳しい“仕事”だなと思います。

監督の要求も、目指すサッカーにおいて、日に日にレベルが高くなるのではないかと…。ポジションを確保するには、攻撃的守備をベースとするチーム戦術への理解度、対人的な守備能力、献身的な意識と運動量などが備わって、その上でさらにベンチ入り5人というルールも含めて、独自の特徴が求められる。選手と同様に、チームも監督も生き残るために必死に戦っています。

だからこそ、そんな努力と競争の果てに“熊本”の名を背負ってくれているホームチームの選手たちの一人ひとりに特別な敬意を抱かざるを得ません。特にこの季節、選手の入れ替わりに“慣れて”しまい、「あの選手はいらない」とか「もう役にたたない」などとまるでモノでも扱うような風潮に、悲しい気持ちになります。Jリーグ2年目になっても、いや何年経とうが、この思いを変わらず持ち続けたいと思います。

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