長文と格闘してホッとしている間に、太選手のガンバ移籍やら、韓国籍3選手の退団やらあって…。この時期、報道や公式発表に目が離せません。気になる高橋選手の去就も、福岡、湘南と複数のオファーがあっているようで。その一方で新卒以外の獲得選手はなかなか発表されず。これこそ昨年までと違って、まさしくJクラブの一員としてのストーブリーグの有様なのだと実感する次第。クラブの強化部門の正念場でしょう。

表題のシリーズ第3弾は、チームを少し俯瞰して観て、クラブ全体のこと。そしてわれわれファンも含めた、チームの周辺についても感じたことに触れてみたいと思います。

今シーズン、クラブにとって真っ先に訪れたJの関門は試合運営だったと思います。JFL時代から有料試合の運営をこなしてきたとはいえ、“J基準”での試合運営のハードルの高さはスタッフを当惑させていたでしょう。その意味では、開幕前に行った東京V、札幌とのPSMは重要なテストケースだったようです。

草津とのホーム開幕戦。ホーム側と、アウェー側に分けた入場口。カテゴリー別にロープで仕切られたスタンド。そこに配置されたチケット確認のためのスタッフ。コンコースの賑やかな売店の数々。フィールドを囲むたくさんのスポンサー看板。大型ビジョンに映し出される動画、選手紹介。何もかもJ仕様でした。駈けずりまわり、あるいはハンドマイクを持って叫んでいるスタッフ…。この日を待ちわびたファンの笑顔が、影で支えたスタッフのそれまでの多くの労苦を吹き飛ばしたのではないでしょうか。

「日本一のグルメスタジアム」構想も、「アウェーに優しいスタジアム」というコンセプトも良かったですね。特に「アウェーに優しい」に関しては、リーグに殺伐とした事件が続いたなかで、出色の存在感を示し、J2の先輩サポーターに認められるまでになりました。

営業努力も並々ならぬものがあったと思います。高橋酒造に代わる胸スポンサーには香梅さんが英断を下してくれました。背中に新しく入った藤田さんは、そのスポンサー料以外でも有形無形の支援をしてくださっているとも聞いています。まだ正式な決算が出ていないので推測ですが、今期の予算はリーグ配分金も含めて5億弱だったかと。まだまだリーグのなかでは下から数えた方が早い脆弱な財政ではありますが、小口で幅広くスポンサーを集めるというコンセプトは間違っていないし、そしてそのうえでの身の丈経営の努力も…。チームの戦術面からクラブの経営まで一貫した方針で、なんとか、おそらくギリギリで乗り切った今シーズンではなかったかと想像されます。

そして、それもこれも以前に書いた「県民運動」という最初の枠組みがあったればこそではないか…。その意味でも今期、額の大小は別にして熊本県、熊本市、益城町、県市長会、県町村会など公的な出資を取り付けたということは、非常に大きい意義、価値があります。

ただ、クラブスタッフの慢性的なマンパワー不足は否めない事実のようです。昼夜を惜しまぬ努力があるとはいえ、そこは生身の人間の身体。心配されます。外野の人間は勝手に色んな課題を叫んだりしますが、営業ひとつとっても、実際に積み重ねていくのは現場のスタッフ。恐らく激務のなか、十分に睡眠もとっていないのではないかと心配したりしますが、そんな疲れきった彼等がそれでも動いていけるエネルギーは、やはり「県民運動」という大義、幅広い支持、そんな地域の盛り上がりではないかと。そしてまさにそういった労力を補っていたいただいたボランティアの人たちにも、全く頭が下がる思いです。この無償の貢献があったからこそ、われわれはホームゲームを楽しめたのだと心すべきです。

そして、そんなクラブスタッフ、スポンサーなど多くの人の汗が結集した初の1万人越え。チームはそれに応えるかのように初連勝。更に最終節では遂に2万人の記録まで達成しました。確かに多くは招待券による動員ではありましたが、満員のスタンドを経験した人たちは、たとえ負け試合だったあの最終節でさえ、「面白かった。得点シーンでスタジアム全体が揺れて、鳥肌がたった。」という感想を漏らしていました。きっとこの1年目の動員実績が、ファンの裾野を広げたことに違いありません。

また、この1年は、古参を自負するわれわれファンにも、非常に多くのことを教えてくれたシーズンでした。ゴール裏もとても力強く、そして辛抱強く、応援をリードしてくれました。アウェーに駆けつけた関東を中心にしたサポーターもしかり…。どの試合でも“ロアッソ”レッドの集団が頼もしく、美しく映りました。そして、天皇杯1回戦でのあの事件の際は、わがサポーターの節度ある振る舞いが誇らしくさえありました。これは常にわれわれにも突きつけられている課題であり、一歩間違えば、同じことが起こりうることを教えてくれていると思いました。

ところで、このブログを長く読んでいただいている人は、われわれが「サポーター」という呼称より「ファン」という単語を多用することに気づかれているかも知れません。それは実は、われわれの好きなライター後藤勝氏の「トーキョー ワッショイ!! ~FC東京'99'-04 REPLAY~」という本の考え方に共感しているからです。サポーターというカタカナ言葉の語感に対する抵抗もあって、彼は、スタジアムを訪れる客層を次のように分類しています。
①コールリーダー=ゴール裏でコールを指揮する数人。
②コアサポーター、サポーター=応援の中心地帯にいる人々。特定のグループを指すわけではない。
③ファン=応援の中心地帯以外で応援する人々。立ったり、コールをしなくとも、特定のチームを応援する意思のある人々。または①~③の総称。
④ギャラリー=どちらのチームにも与せず、客観的にゲームを楽しむ観客。または練習の見学者。
そして、さらにこう続けています「いま熱心にJクラブを応援しているファンがその容姿と生き方そのままに歳をとり、色とりどりのマフラーを首に巻き、毎年、新監督の戦術を批判し、選手の売り買いに文句をつける。そのようなJリーグの未来像が実現したとき、スタジアムを埋め尽くしたさまざまな熱狂的愛好者をくくるのには“ファン”という言葉がふさわしいのではないかと、ぼくは思っている」と。

そんなに古くない昔、われわれもゴール裏で、飛び跳ねていました。太鼓や旗竿を抱え、遠くアウェーの地に赴いたこともあります。少し歳をとり、その場所には若い人たちが陣取り、今はスタジアムの思い思いの場所で観戦しています。ただ、熱い想いはあの頃のままに…。そうやって、年々ゴール裏からメインやバックのそこかしこに拡大再生産されていくファンの数が、きっとクラブの歴史を表すのだろうと思います。

熊本のJ元年。財産は残ったのか…。きっとその答えは拙速に出すものではなく、後藤氏のいう“熱狂的愛好者たるファン”でKKのスタンド全体が真っ赤に埋まるときに、「あのとき、そういえば…」と思い出されるものなのかも知れません。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/159-6ad30368