3月25日(水) 2009 J2リーグ戦 第4節
熊本 1 - 1 愛媛 (19:03/熊本/3,531人)
得点者:5' アライール(愛媛)、67' 木島良輔(熊本)


今シーズン初の平日ナイトゲーム。しかし、花冷えと言うにはあまりに寒い夜。凍えながらの観戦となりました。ホーム熊本は、前節までの反省からか、それとも連戦を考えてのことか、先発選手とフォーメーションをいじってきました。中盤ダイヤモンドの4-4-2。CBには河端に代えて高卒ルーキーのチョ・ソンジンがデビュー。サイドに西、2トップの一角には井畑。これまで途中出場で気を吐いてきた二人にとっても記念すべきJ初先発の試合です。試合開始前から多くのファンの心をワクワクさせてくれました。

ここまで首位の愛媛はチーム初の4連勝を飾りたい。その気持ちが堅さや焦りを生んだのか、あるいはこれまでの入り方の悪さを反省した熊本の勢いが勝ったのか、守りから入ってきた感じです。しかし今期の愛媛、確実に強くなっているのが実感されました。それはチームとしてのオートマティズム。そして、フィールドを大きく使った素早い展開力。ここまでそれぞれ3得点という田中、内村という2トップの速さや巧さという個人技に頼っているのではない。チーム全体の連動性、約束事がよく練習され、出来上がっている印象を受けました。対する熊本は、好調の2トップ対策に勇気をもって高いDFラインを敷いてきました。

愛媛 (先発フォーメーション)
11田中 8内村
22横谷17大山
19越智16赤井
14三上28高杉
3金守5アライール
 21山本 
しかし、前半5分にセットプレーから痛恨の失点。ゴール前、人数は足りているのに勿体無いミス。ここ3試合続く開始早々の失点に、思わず悪夢が蘇りそうになるのを振り払ってくれたのは、西の鋭いドリブルであり、井畑の果敢なファイトでした。それに宇留野と木島が絡む。ポゼッションは熊本にありました。戦前は、石井のワンボランチに負担が掛かるかと思っていましたが、プレスを嫌ってか少し下がりぎみの藤田がうまくカバー。中盤の自由度も高く、随所で持ち味の“反撃起点潰し役”を務めました。

失点の要因にはなったものの、徐々に潜在能力を示したのはチョ・ソンジン。ロングボールに対するポジショニングとハイボールへの好対応。後半開始早々には、ハーフウェイラインから前線にピンポイントのフィード。それを井畑がダイレクトのヘッド。わずかに枠を反れましたが、互いに “グッジョブ”と 親指を立ててサインを交わしたシーンでした。

まだ表情には幼さの残る18歳。言葉も通じない異国の地。チームには通訳もいない。欧州などのクラブでは選手のメンタルケアを重要視し、専門のカウンセラーを置くことすら珍しくない昨今、どれほどの心細さ、過酷な状況かとも思います。しかし、物怖じしない性格なのか、この落ち着きは何なのか。持ってきたものは母国で培ったサッカーのスキルだけ。身一つで人生を切り開こうとしているこの若者に、思わず気持ちが入ってしまったのはわれわれだけではないでしょう。井畑とともに、熊本が今シーズン初めて制空権を握った感じがしました。まだ日本語はジホに教えてもらっている最中なのでしょうが、言葉の壁を乗り越えてコンビネーションが高まれば、そのプレーに対するスタンドからの「ソンジン!オ・レ!」のコールに手を振って応える日も近いと思います。

5分には、西のドリブルから井畑がエリア内で強引にシュート。これは愛媛GKに弾かれます。ルーキー3人の随所の働きで押し込んでいく。井畑にもゴールという結果が欲しいところですが、その存在感(相手DFに対する危険感)は十分示してくれました。

井畑が中山と交代した直後、左サイドからのクロスに、ゴール前ファーサイドに飛び込んだ西を横谷が倒してPK。スタンドの多くの“擬似監督”たちから「藤田に蹴らせろ!」という声。両手を合わせ神にも願うファンの前で、チームJ昇格後50点目のメモリアルゴールを決めたのは10番を背負った木島でした。瞬間、スタンドは総立ち。雄たけびを上げ、ガッツポーズを繰り返し、赤いマフラーを振り回しました。

その後は攻守が頻繁に入れ替わる激しい時間帯。フィールドのコンダクター(指揮者)藤田は、“リズム”を気にしている。掴みかけているリズムを失うプレー、相手に“流れ”を与えるプレーに憤怒している。何だかんだ言いながら、今日も90分間フルに走り続けている。すごい精神力。最後は、足が止まりそうになるのを必死でこらえ、なんとか決勝点をもぎ取ろうという気迫が両チームともに見られました。

概して言えば、お互いが決定機を作りながらそれを決めきれない(どちらかというと愛媛にそれが多かった)、そんな試合。熊本は度々、自陣サイド深い位置から難なくクロスを上げさせる場面が多すぎました。それは、縦に速い愛媛のカウンター攻撃に対し、対応が遅れ気味になっていた結果でもありましたが。

“愛媛は強かった”。3連勝の実績も素直に頷けるサッカーでした。そんな相手に対して、なんとか引き分けに持ち込めたというのも正直な感想。試合前は新しい選手、フォーメーションにワクワクする一方で、開幕前から試してきた基本戦術を捨てて、早くも“ブレ”や“迷走”が始まるのか、との懸念もよぎりました。まだまだチームがうまくかみ合っているとは言えないリーグ序盤戦での選手の入れ替え、それもルーキー。北野監督にとっても勇気の要る“チャレンジ”ではなかったのでしょうか。しかしそれは、スカウティングをもとにした相手の良さを消すためのシステムであり、数々のオプションから現時点で最良のコンディションを人選し決めたシステムだということが、最終的には理解できた試合でした。ベンチから繰り出される中山、宮崎、山本というカードも、流れを引き込むのに有効でした。そして、どんな“形”であれ一貫してやろうとしていること、が見えてきている。

卒業生招待企画のこの日、時を同じくして高校、大学を卒業したばかりの3人のルーキーズ。少なくとも“次を見てみたい”と期待させるパフォーマンスを見せ、実戦に耐えられることを示しました。新入社員たちがデビューを始めるこの時期、どこよりも早く確実な“戦力”に加えたいのはいずれのJチームも同じです。帰り際すれ違った山下、大迫、そして吉川ウイリアムも、今日の試合内容や同期のプレーぶりに口角泡を飛ばしていました。言葉の端々に「早く試合に出たい」という強い気持ちが滲んでいて、熾烈なチーム内競争が窺えます。ルーキーたちの闘争心に火をつけた今日の試合。勝ち点1という結果以上の収穫があったような。そんな思いを巡らせながら、満開の夜桜の下を家路に着きました。

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