4月5日(日) 2009 J2リーグ戦 第6節
熊本 4 - 0 札幌 (13:03/熊本/4,653人)
得点者:13' 木島良輔(熊本)、27' 山本翔平(熊本)、35' オウンゴ-ル(熊本)、62' 中山悟志(熊本)


札幌 (先発フォーメーション)
 11宮澤 
 10クライトン 
22西7藤田
20上里14ダニルソン
6西嶋18芳賀
2吉弘15趙
 16荒谷 
前日の花の雨もあがり、キックオフの時間には日も差し始めたKKウィング。そのピッチの上には原田拓の姿がありました。金髪は黒くなり、左SBという見慣れないポジションに位置していましたが、まぎれもなくそれはあの原田拓でした。開始早々のFKのチャンス。左足で狙うのは原田、右足なら宮崎大志郎。忘れもしない2000年の高校選手権、大津高の3年生と2年生。当時、各学年にいた“ファンタジスタ”と呼ばれるプレーヤーでした。それがこうして、ホームのJリーグチームの一員として同時に見られる日がくるとは…。原田の左足から放たれたボールは、球足の長い、美しい弧を描いてゴール右角へ。わずかに枠をそれましたが、故郷・熊本への“挨拶がわり”のシュート。そして、1年生だった矢野とのDFラインに戻っていく…。こんなシーンだけで、往年の大津高ファンは酒が飲めますね。

一昨日に加入が発表されたばかりでの今日の先発出場でした。後半途中からはちょっと息があがっているようにも見え、コンディション的にはまだまだのような印象を受けましたが、その能力の高さは十分に見せてくれました。なにより上体を起こした美しい立ち姿が、視野の広さを裏付けています。サイドを駆け上がったり、敵陣奥深くまで切り裂くといったプレーではなく、左サイドからのアーリークロスや大きなサイドチェンジ、あるいは前線へのロングパス、流れに変化をつけるちょっとしたプレーぶりなどなど。それは、長くボランチをやっていたから。しかしこの特性、今期のロアッソの戦術面では、左SBに置いておいても面白い、攻守の新たな“起点”になる選手だと感じさせました。一昨年の小森田、昨年の木島。ロアッソは、練習生から這い上がってきた選手が、そのシーズン活躍するジンクスがあります。やってくれそうな予感、期待が高まります。

4-4-2の中盤ダイヤモンド。といっても、この日の藤田は高く張ることによって、見ようによっては4-3-3のようでした。「守備から入った」と北野監督は振り返りましたが、とにかくルーズボールを自身に納め、角度を付けて運んでいくことに今日の熊本は長けていた。前節でわれわれも課題としたアタッキングサードの攻撃においては、藤田を中心にワンタッチパスが冴え渡る。ポゼッションのなかでの緩急、スピードアップということですね。一発でラインを切り裂く。2トップを追い越して宮崎、山本がPA内に入ってくる。前半13分に、市村からのクロス。宇留野が引き付けた相手DFの裏でフリーになった木島が、落ち着いて右足に持ち替え、ゴール右角に押し込みました。

今季初の先制。続く27分にも、左サイドを突破した宇留野が中央木島に丁寧に繋ぎ、最後は長い距離を右に走りこんでいた山本に。嬉しいJ初ゴールとしました。その後も運動量、集散の速さで勝る熊本は、前線からの、あるいは集団での囲い込みで、相手選手を自由にさせない。プレスでコースを限定された相手のロングボールは落下地点で面白いように支配できていました。札幌の選手たちにイライラが広がっていくのがわかる。北野監督が事前のスカウティングで語っていたそのままのイメージのようでした。35分には、そのプレスが相手のオウンゴールを誘います。

札幌は、バイタルエリアで熊本の選手を捕まえきれない。そこには、藤田の運動量とアイデア溢れるプレーがありました。陣形がコンパクトだから、藤田が果敢に動き回ってもムダに疲れない。これが、開幕前のTMで観た新しい熊本のサッカーだったのです。そしてとうとう、相手選手にも自身のチームメイトにもナーバスになっていた司令塔・クライトンが藤田への危険なファウルで一発退場。ゲームメーカーを失った札幌は、ゲームプランを一から書き換える必要に迫られました。

さて、こういった数的優位の状況では、バランスよくゾーンを埋めてしまえばいい反面、不利な側が“シンプルな攻撃”に徹することに手を焼くということが往々にして起こります。初めて体験する3点先取、しかも数的優位での後半45分のマネジメント。15分までは、熊本にとって相手の猛攻を凌ぐ時間帯でした。しかし、藤田に代わって入った中山が、後半17分、宇留野からのクロスをヘッドで押し込む。中山の今季初ゴールは、まだまだ攻めていくぞというチーム全体の意思表示でもありました。

続いて宇留野と交代した西が、本来の攻撃的ポジションを得て、持ち味のドリブルで相手DFを混乱させ、スタジアム全体を沸かせました。次々にCKを獲得し、終盤、走り疲れたチームを大いに助けます。インタビューで「宇留野選手に学ぶことが多い」と語っていた西。その彼が、宇留野の抜けた右サイドで、自分の持ち味を十二分に発揮しました。最後は前線のプレスが甘くなり、同時にDFラインも綻ぶ場面もありましたが、三枚目のカードは原田に代えて山下でした。これも決して守備固めではなく、3バックにして中盤を厚くして、もう一度ポゼッションを確保しようという戦術だったのでしょう。それにしても終了間際、ショートコーナーからのボールに反応した山下のヘッドは本物の“強さ”を感じさせました。終盤での西と山下というオプションは、かなりの武器に違いありません。

終了のホイッスルに、安堵して膝をつくGK稲田の姿が印象的でした。初先発でチーム今季初完封を手にした。流れを相手に奪われない、要所での飛び出し、ファインセーブが光りました。古巣相手に期するものがあったであろう河端も、ポジショニングよくハイボールやくさびのパスを処理していました。果敢に上がった市村しかり。落ち着いてカバーに回った矢野しかり…。これまで守備に追われていた石井も押し上げてシュートを見せてくれました。

相手は開幕以来、なかなか波に乗れないでいるとはいえ、J1を戦ってきた札幌。その札幌相手に、完封しかも大量得点勝利を納めました。ひとことで言えば、相手より運動量が上回っていた。積極性というメンタル。玉際の強さ、しぶとさ。更に言えば、的確なスカウティングによる布陣の上に、選手たちの最高のパフォーマンス。それぞれのコンディションもかなり整ってきたような。そして90分という時間のマネジメント力がありました。

闘う気持ちと冷静なマネジメント。「成長している」。試合後のインタビューで北野監督は、その実感を素直に語りました。白星としてはまだ2つ目ではありますが、ホームのファンの前で見せた快勝。第1クール、これから続く上位陣との連戦を前にして、幸先のいい、自信の持てる勝利だったといえるのではないでしょうか。


TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/179-3ce92648