4月12日(日) 2009 J2リーグ戦 第7節
福岡 1 - 1 熊本 (13:03/レベスタ/11,603人)
得点者:33' 城後寿(福岡)、67' 中山悟志(熊本)


快勝した札幌戦から1週間。自分でも不思議なくらいの沸々とした気持ち。もちろん不安感でもなければワクワク感でもない、あまり経験したことのない高揚感とでも言うのでしょうか。今日のこの一戦、どうしてもスタジアムで観なければいけない。現地で観なければいけない。気持ちは行動を起こさせていました。相手は”ダービー”としての意識が薄いかもしれない。しかし、我々の側にはダービー以上にどうしようもない”因縁”が生まれてしまっていた。「九州のチームには絶対負けたくない」という北野監督の言葉も、戦前の木島や河端のコメントも、やはり”彼”を意識している。意識せざるを得ない。そう、今や福岡の”エース”となった高橋のことを・・・。

昨年の5月の連休中の試合。横浜に打ちのめされた試合の3日後、今度は高橋のハットトリックで福岡を唖然とさせた。紛れもない熊本のエース。JFLの熊本にやってきて、我々をJに連れてきてくれた貢献者。その彼が今、ネイビーブルーのユニフォームに袖を通し博多の森に立っている。それは彼が自ら選んだ道…。選手紹介のアナウンスに反応して熊本ゴール裏からは盛大なブーイング。しかし、それは決して憎しみや敵意からではない。彼にもそう伝わったと思います。

熊本は前節と同じ中盤ダイヤモンドの4-4-2。前節までのバランスの良さを継続させようという狙いが見えます。宮崎と山本がサイドに張るこの陣形。内に位置しながら外にプレスをかけるより、外にから内にしぼるほうがプレスは効く。逆にサイドに張っているから相手からのプレスは受け難い。タッチラインを背にしているから180度を考慮すればいい。中に位置していると360度。だから中よりも疲労は軽減される。だから攻守の切り替えがスムーズに行く。もちろんそれは守備の鉄人としての石井の存在と、中盤のバランサー藤田の運動量があってこそのことですが…。

この季節にしてはうだるような暑さのなかで試合開始のホイッスル。圧倒的な運動量とポゼッションを志向する今季の熊本。今シーズン初めてのコンディションのもと「ひょっとしたら後半、相手より先に足が止まるかも知れない。」ゴール裏を赤く染めた熊本ファンの多くがそんな不安を感じたのではないでしょうか。

福岡 (先発フォーメーション)
19大久保 18高橋
26岡本10城後
8鈴木6ウェリントン
17中島3山形
13柳楽4田中
 22吉田 
立ち上がり15分までは高いDFラインから熊本が激しく押し込む。しかしその後は福岡ペース。大きなサイドチェンジを多用し、ピッチの横幅一杯を使い2列目、3列目が上がってくる。大久保に制空権を奪われ、サイドに侵入を許してしまう。縦パス一発でDFラインを破られる。福岡お得意のシンプルな攻撃パターン。このあたり、何か約束ごと(監督からの指示)でもあったのか、明らかに受身に回る熊本。33分、中央で大久保が反らしたところに右サイドから城後が走り込んでダイレクト。ドライブが掛かったような豪快なシュートが熊本ゴールに突き刺さりました。

しかし、熊本も40分以降はセットプレーで波状攻撃。原田の左足から怒涛の攻撃で同点を狙いますが、福岡のGK吉田の好セーブに阻まれてしまいます。前半終了前に宇留野が痛んでしまったのは、予想外の展開だったでしょう。熊本は早々と中山のカードを切らざるを得ない状況に。

後半2分、右からのアーリークロスにやや遠目から高橋がフリーでヘッド。しかしこれはゴール右に反れます。この試合で高橋がシュートを放ったのは、この1本ではなかったでしょうか。それほど今日は完璧に“敵のエース”を押さえ込みました。

後半、疲れを見せたのは明らかに福岡でした。あれほど起点を作っていた鈴木、城後、岡本がボールに触れなくなる。ポゼッションは次第に熊本に。徐々に前線に絡む枚数が増えてくる。エリアに入った宮崎が倒されるがPKの判定なし。中山から右の木島に入るが、なんとか福岡のDFが入る。CKから中山のシュートはわずかに右に反れる。藤田の厳しいパスがCBの柳楽を翻弄する。セットプレーでは原田が左足から良質なボールを供給する。跳ね返されても次のボールを拾って組み立てる。サイドを崩し、エリアに進入し、シュートを撃つのは一方的に熊本。わがチーム。しかし、ゴールが割れない。敵のGK吉田。今日は神懸っている。

嫌な動きをしていた岡本がベンチに引っ込んでくれ、交代で入ったベテランの久永がサイドから起点を作りだそうとしていたときでした。熊本が反撃。左サイドから崩して木島がクロスを入れる。それに飛び込んだ中山を捕まえ切れなかった柳楽が後ろから倒してPK奪取。キッカーは中山。GKの動きを冷静に判断した中山が自分で決める。熊本ゴール裏は総立ち。青空のなかに大旗が舞い、赤いタオルが打ち振られました。

その後も押せ押せの熊本。31分に入った西が、ファーストタッチで中央付近からゴール前までに及ぶ鮮やかなドリブル突破からシュート。熊本の惜しい場面が何度も続く。辛うじてゴールライン上でクリアする福岡DF。藤田の冷静なうえに大声での指示。相手の苦しい時間帯で更に軽快にボールを繋ぎ、回す熊本。運動量はまったく落ちない。もはや福岡はプレスに行く余力もない。この時間帯、まさに“絵に描いたような”逆転の流れを確信して飛び跳ね、声を枯らしたゴール裏でしたが、残念ながら終了のホイッスルが鳴り響きました。もう少し時間があれば、以前のJのように延長、Vゴール方式などというものであれば勝てていたなどと、タラレバにもならないような空想をしてしまう、悔しい勝ち点1でした。

今季初の九州ダービー。互いの意地、因縁が激しくぶつかったスリリングな好ゲーム。結果はドロー、福岡はこの試合を勝利しJ1昇格戦線に割って入りたかったが、そうはならなかった。熊本としては、前節のリズムをそのままに、今季目指している攻撃的なパスサッカーで3連勝の福岡に対して結果を出したかったが、今一歩及ばなかった。もちろん、その強さ、巧さを人一倍理解している相手のエース高橋を封じるというミッションは果たせたものの…。

試合後の監督、選手コメントからは、福岡の足が止まることや相手の攻撃のスカウティングなど、非常に冷静なゲーム運びだったことが伺えます。われわれが考える以上に急速にチームは成長しているなと。それだけに出すべき結果はしっかりと出さないといけないなとも思います。まあ、選手たちのコメントからもそのあたりの意識もはっきり感じられますが。

高橋との因縁を強く意識して始まった今日のダービーマッチでしたが、途中からその高橋対応も戦術の一要素に過ぎないような気持ちに変化していました。因縁をいい方向のエネルギーに変えて福岡に立ち向かった熊本。戦術的には完全に勝ちに行っていた。今日の試合で、結果的には彼にも「熊本のサッカーは変わった」と印象づけたのではないでしょうか。自分がいたときのサッカーとは違っていると…。それと同時に福岡に、「今年の熊本は手強いぞ」と強烈に印象づけたに違いありません。高橋がいない熊本に…。
いよいよ因縁が増した福岡との次の戦いが、また待ち遠しくなってきました。

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