4月15日(水) 2009 J2リーグ戦 第8節
熊本 0 - 2 湘南 (19:03/熊本/3,382人)
得点者:29' 坂本紘司(湘南)、89' 原竜太(湘南)


他のスポーツに例えることを許してもらえるなら、新進気鋭の若いボクサーがベテラン相手に果敢に挑み、序盤で一度はダウンを奪われたものの、その後はスピード溢れるフットワーク良く、手数も上回り、何度もコーナーに追い込みつつも、ベテランボクサーのガードはなかなか堅く、有効打を奪えないまま終了のゴングを聞いた。そんな感じでしょうか。

湘南は、ここまで7戦6勝で2位につけている。FW石原の抜けた後釜には田原がいて、名手・加藤のあとには反町サッカーの申し子・寺川がいる。いずれも前任者とはタイプは異なれ、才能溢れるあなどれない選手。相変わらずジャーンの守備は堅そうだし、アジエルは危険人物。昨年の対戦経験からしても、相当の覚悟を持って戦わなければいけない相手に間違いありませんでした。ただ、一方で札幌、福岡と続いたこの2戦で、繋いで崩すポゼッション・サッカーを貫き、目指す形が見えてきた熊本にとって、今の到達点を試すには恰好の相手でもありました。

湘南 (先発フォーメーション)
 34田原 
11阿部10アジエル
8坂本7寺川
 2田村 
4山口5臼井
19村松3ジャーン
 32野澤 
怪我でリタイアした宇留野に代えて西を先発に起用。中山、木島との3トップを構成。4-3-3の中盤には藤田、石井がいる。この厳しい日程のなかでも、両者がっぷり四つ、楽しみなメンバー構成になりました。

しかしやはり連戦を考慮してか、明らかに湘南は「省エネ」サッカーに徹してきた感じがしました。あるいは、木島、西のドリブル突破、市村、原田の上がりをスカウティングしていたのかも知れません。強引ともいえた縦への推進力は昨年ほどなく、中盤も比較的自由にさせてくれました。ただ、アジエルや田原にボールが出ると一気にスピードアップ。やはり怖い。

熊本にしても、ボールは回せてはいるものの、リスクを犯してまでは行かない。両者、攻守の切り替えがスピーディでしたが、なんかいつもとは違うな、という印象も持ちました。そんななかでの前半での失点でしたが、チャンスも作れていたので、熊本にも慌てる素振りは見られませんでした。

先制点を奪った湘南は後半、「省エネ」をより徹底してきましたね。しっかりリトリートしてブロックを作り、あわよくば奪って追加点。カウンターが失敗に終わっても自陣への戻りが早いこと早いこと。すばやく守備陣形を整えるため、熊本が綺麗なパス回しでビルドアップしてもそれは中盤まで。残り4分の1に至って急にブレーキをかけさせられるシーンが何度も繰り返されます。それでも、幾度も訪れたCK、FKのチャンス。原田というキッカーを得て果敢にゴールを狙う、こぼれ球からのセカンドアタック。ミドルレンジからのシュート、ドリブルで突っかける、必死に揺さぶりを掛け続けます。

刻々と過ぎていく時計の針。ホームのファンの「まずは同点」という思いが、「せめて同点に」という願いに変わっていきます。その想いをも打ち砕いたのは、交代出場で入った原の終了間際の追加点。ここまで何本もの決定的シュートを防いでいたGK吉田の手をすりぬけると、ポストに当たり無情にもゴールにこぼれ込む。湘南イレブンと少数のアウェーサポの、再びの歓喜を見せつけられることになってしまいました。

「ウチみたいなスタイルでやっていたら、ああなるパターンのゲームでした。」(北野監督・試合後のインタビュー)

「パスサッカーにありがちな負け方」(石井選手・試合後のインタビュー)

二人が同じような表現をする一方で、敵将・反町監督は、異様なまでに熊本の力を褒め称えていました。それは勝者の余裕か、あるいは敗者に対するリップサービスか・・・。

確かに言えるのは、湘南はやはり今年も強いということ。いや昨年より強いかも知れない。それは、そんな反町新監督のコメントに隠された“したたかさ”と、更にその裏に隠されている“戦術眼”も含めて。視点の先には当然J1がありながら、当面の51試合の“個別のケース”に合わせた戦い方に徹している。昨季は昇格の最終戦線直前に土をつけたわが熊本でしたが、今季、残りの2試合、この強豪チームになんとかひと泡吹かせたい。ファンにとっても、そういう“新たな決意”を抱かせた戦いでした。

そしてもうひとつ、湘南の「省エネ」サッカーを見るにつけ、51試合を戦うということの意味がまた重く感じられました。福岡戦から中二日での今日の試合。そして宇留野の突発的ともいえるケガ。スピードと運動量を求められる今季の戦術。ベテラン選手でなくても消耗は激しいはずです。まだまだシーズン序盤のこの時期ですが、勝ち負けとは別に、われわれが感じていたのは“51試合を通して結果を出すため”の総合的な選手起用の重要性でした。藤田はもちろんですが、今の熊本の戦術を支えているキープレーヤーのひとりは石井。そのワンボランチ。とにかく彼らのコンディションを心配していましたが、まずそのうちのひとりの宇留野が傷んでしまいました。いずれも昨シーズンまで、これほどフルに出場機会はなかったはず。それも遠からずの要因だと思います。

「このサッカーを続けていく事が大切で、どんな相手にもこういうサッカーをして立ち向かうっていうスタイルを見せる事が大事だと思います。慌てちゃいけないってことです。」チームにとってもファンにとっても藤田のこの言葉は何よりの指針だし、エネルギーになるのも事実です。掴みかけているようで確信までには至っていない今期の熊本の新しいサッカーの“強さ”。見ていても一試合ごとに成長している手応えが実感できます。だからこそ現場指揮官・藤田も休むことなく出場を続けている。それを支えているのは高いモチベーションに違いありません。熊本に自分が呼ばれた意味、という…。

しかしながら51試合の日程です。

ターン・オーバーシステム。そんな、ないものねだりを言うつもりは毛頭ありませんし、また、メンバーを落として戦うという意味で誤解されても困ります。しかし例えば、後半16分、1点ビハインドの状況で藤田に代わって小森田が投入された。われわれは、ここから以降の試合運びに特に注目しましたが、チームとしての戦術面でも、あるいはパフォーマンスも全く落ちることなく、いやむしろ、終盤、以前ならここは放り込むだろうという場面でも頑ななまでに後方から繋ぎ、回し、崩そうとチャレンジを続けた。原田が“後方の司令塔”とも言うべき役割を果たしていたことも見落とせませんが、いつ熊本にゴールが生まれてもおかしくない状況でした。続けてきていることが、チームに、選手それぞれに浸透してきているなと確信しました。

思うにベストメンバーとは、51試合のリーグ戦を睨んで、51試合を通じて選手のコンディション、パフォーマンスを最大にするチョイスではないかと。福岡戦はダービーマッチ、湘南戦は良い流れのなかでのホームゲーム。メンバーをいじることに躊躇するのもわかります。しかし、51試合のリーグ戦の真の厳しさは、試合数が多いということよりも実は試合間隔が短いということだと。この試合間隔は初めて経験するもの。自らのチームの選手層、そのなかでのベストパフォーマンスの選択眼とスケジュールとの見極め。厳しい、苦しい“判断”だと思いますが、それが北野監督に課せられた大きな仕事であり、もうひとつのチームとしての戦いなのだと思います。

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