5月5日(火) 2009 J2リーグ戦 第13節
富山 1 - 0 熊本 (13:04/富山/5,113人)
得点者:82' 野嶋良(富山)


中二日の4戦目。熊本はとうとう藤田を休ませてきました。更に木島、中山も帯同せず、小森田、西森、西の3トップ。トップ下には宮崎を入れて、純県産の攻撃布陣を敷きました。
対する富山は岐阜に3-0、栃木に4-0と2連勝中、4試合負けなし。失点の少なさはここまでリーグ2位で、順位も熊本の上に着ける8位。何よりわれわれもまだ到達したことがない、勝率5割に達しています。このオフシーズン、目立った補強をしなかった富山に対する評論家たちの前評判は、揃って低いものでした。しかし、JFL時代堅守を誇ったアローズと、みごとなオートマティズムの攻撃で恐れられたYKK・APとの融合(ユナイテッド)チーム。長谷川や朝日、濱野に上園。あの頃、「旧サカくま」で試合データの記録を作っているとき、何度書き記した名前だったことか…。その連中を経験豊富な楚輪監督が、どのような組織に仕上げているのか。また唯一の“補強”ともいえる副島ヘッドコーチの存在も贅沢。戦前にわかに、遠い富山のアウェーの地にチームを送り出したあの当時の心細さが蘇ってきました。Jの1年先輩とはいっても、この一試合一試合の勝負の世界ではあまり意味がない。おそらくは予算規模も、環境も富山のほうが上回っているのは容易に推測できる。好調の上位チームとの対戦として、厳しい戦いを想像せざるを得ませんでした。

富山 (先発フォーメーション)
17木本 13長谷川
14川崎7朝日
8渡辺5長山
27舩津19西野
3堤6濱野
 1中川 
試合は、しっかり自陣でブロックを作って守りカウンターを狙う富山と、ポゼッションを保ってそれを崩そうと意図する熊本という図式になりました。右SBの市村はもちろん、今日は左の原田も積極的に仕掛けるシーンが見られます。西森もそれを引き出すためなのか、中に中に入っていく。あるいは逆に西森が、下がって守備をするシーンが多く見られ、なかなか自陣から出ることが出来ずにいる。持ち味のドリブル突破はなかなか見られませんでした。25分には、PA前のボール回しから左の原田にパスが通る。原田が切り返して放ったシュートは、惜しくもポストに嫌われます。残念。利き足とは逆足のシュートでした。富山は、熊本の上がったサイドバックのスペースに長谷川や木本、朝日などを走らせ、そこに素早く縦のパスを入れていくことに専念。しかし、熊本がうまくオフサイドに仕留めているという前半でした。

後半、富山は明らかに高めでチェックをするように戦術変更しました。熊本はなかなか前に運べなくなりました。山本が押し下げられて、宮崎との距離が間延びする。石井と重なってしまう場面もありました。いや、他の選手も然り。ポジショニングの判断が悪いのか、誰かが重なって“消えて”しまっている。11人が10人、あるいはそれ以下に成ってしまうシーンが目立ちました。数的優位どころではなく、不利な状況を自らが作ってしまっている。

試合後の色々な評論では、若手の選手のシュートへの消極性を憂う論調が多かったのですが、われわれはそれ以前に、選手の“判断力”の差がまだまだ大きいと思いました。ポジション取りの判断、受けてから展開する瞬間的判断、流れを呼び寄せる状況判断、等など。25分、最後列の市村がPA右に果敢に侵入しクロスを入れるが他には誰も入っていない。今日の“出来”を表す象徴的なシーンでした。うちの80歳になる年寄りも「シュートすっときに人数のおらんねえ」と嘆くことしきり。小森田から井畑に代わった前後の時間帯から、熊本はなかなか組み立てられなくなりました。個々のイメージがバラバラというのか。ここにも流れを変えるための判断力の差が歯車を狂わせているように感じました。

1点が遠い。俄然、前からの守備で勢いを増してくる富山。中盤で拾えない熊本。このまま同点でも止むなしかと思われた37分、途中投入のカン・ヒョンスが右サイドを破るとグラウンダー気味にクロスを入れる。逆を取られたソンジンのクリアを、入ったばかりの野嶋が拾うと、しっかりとゴール右サイドネットに突き刺しました。なんとか同点に追いすがりたい熊本は、アディッショナル・タイムに入っても駆け上がる市村からクロス。交代で入った山口がファーサイドで胸トラップ。シュートを放ちますが、ボールは無情にも枠の左に流れていきました。

これで富山に、われわれも経験のない3連勝という栄誉を献上。朝日や長谷川という古顔には仕事をさせなかったものの、若い伏兵達の活躍の前に屈しました。ボールは確かに保持していたものの崩せなかった連携の未熟さ。それは今日のシュート数7本という数字に全て言い表されているように感じます。
いわゆる“主力”を休ませた今日のゲーム。この敗戦。過酷なスケジュールのなかでは必ず訪れるだろう監督のこの判断。おそらくは好調の富山に対して、“実験的な”、あるいは“守備的な”シフトで臨んだのではないかと。新たなヒーローの誕生か、あるいはスコアレスドローも想定した戦いではなかったかと。しかし、惜しまれるのは、それが相手に透けて見えていたこと。そしてそれを覆すようなファイトが見られなかったこと。「熊本スリートップ」。ある意味でこんな“贅沢な”シフトはファン待望のものだったのに。結果がすべてではありますが、今日の戦いが仮に、スコアレスドローだったとしても、われわれはいつものように「悪くない」とは決して言えない気持ちです。しかし、今日のゲームはチームにとってある意味、かなりな課題を突きつけられたことだけは確かだなと思います。

“出来なかったこと”の多さにガックリと肩を落として下を向く“ロッソ”イレブンに、遠く富山まで駆けつけたサポーター達の精一杯の激励のコールが、テレビのスピーカーからいつまでも聞こえている。それが熊本から“念”を送ったわれわれにとっても唯一の救いでした。

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