5月10日(日) 2009 J2リーグ戦 第14節
熊本 0 - 1 甲府 (13:04/熊本/19,321人)
得点者:44' マラニョン(甲府)


2万近い観客が詰め掛けた今日のKK。真夏なみに気温も上がり、スタジアムグルメで賑わうコンコースはごった返していました。カキ氷の店には子供たちの長い行列が。それにしても今日はやけに親子連れが目立ちます。レプリカユニを浴衣に見立てると、まるで夏祭りかあるいは縁日の参道の景色のような。これもまた面白い楽しみ方と言えるのではないでしょうか。今季初の大動員に、こちらの気持ちも高揚し、年甲斐もなく(いつものように)屋根のない日なたで観戦していたら熱射病っぽくなって寝込んでしまい、更新が遅れました。5月というのに、30度を越える炎天下のピッチ。15日間で5試合という連戦の最後の試合にして、更に過酷な環境になりました。

甲府 (先発フォーメーション)
 14森田 
11マラニョン16松橋
10藤田9大西
 2秋本 
7石原32杉山
4山本19池端
 1萩 
しかし甲府は強かった。多くの評論が、熊本が目指すパスサッカーの“本家”甲府への挑戦と書き立てましたが、蓋を開けてみると甲府のパスサッカーは更に進化していました。熊本学園大付属高が初めて生んだJリーガー森田をトップに置き、松橋、マラニョンをサイドに配する3トップ。速さに優れるこの両ウイングに、早め早めにボールを入れてくる。それに影響されて、熊本もいつもの短いパス回しを忘れたかのように、前線への配球を急ぎすぎてしまっている感がありました。その両ウイングを警戒するあまり、原田、市村の熊本の両SBが最後列に押し下げられているようにも見えましたが、市村を含めわがDF陣は最大の要注意人物“マラニョン”の良さを消し、仕事をさせていませんでしたね。たった一度、あの失点の瞬間を除けば…。

前半20分、吉井が倒れたときの手のつきかたが悪く、ひじを負傷するというアクシデントが起こります。これで熊本のゲームプランは大きなリスクを抱え込むことに。交代としてあまりに早く宮崎を投入することになってしまいました。いえ、宮崎が悪かったということではありません。今のロアッソ、守備をベースに前線にも絡める吉井は、恐らく最後まで引っ張りたい選手だったはず、と思うのです。

37分、甲府は熊本のDFの裏に縦一本。松橋の強烈なシュートはGK稲田が弾く。そこに飛び込んだ森田のシュートは原田が身体で跳ね返します。前半も終了間際になった時間帯、少しずつ押し返し、形をつくりかけていた熊本に絶好のチャンスが。中央でのインターセプトから石井が小森田に預け右サイドに走り込む。小森田がターンして再び石井に。PA内に走り込んだ石井が右足で撃つ。しかし、ここは甲府GK萩がナイスセーブ。

この流れのなかで明らかに熊本は敵陣に前掛かりになっていました。自陣にはDFが二人。甲府はボールを奪うと、素早く前線のマラニョンに。その前には、広大なスペースが。ドリブルで突っかける。対応した矢野でしたが、追走してくる森田へのパスという選択も頭によぎり、マラニョンへのチェックを躊躇させました。エリア侵入前に撃つマラニョン。そのシュートは、稲田の手をかすめ、わずかな隙間を縫って、ゴールに突き刺さりました。少なくともスコアレスで終わりたかった前半の終了間際。痛恨の失点。それは、“止まった”マラニョンには完璧に対応していた熊本守備陣が、唯一犯した、“動き出す”マラニョンにボールもスペースも与えた失策(エラー)でした。

後半、熊本は修正を図ります。北野監督の指示は「もっとゆっくりビルドアップしよう。」というものでした。小森田から、藤田から、感じのいいパスが出始めます。しかし、甲府は松橋に代えてキム・シンヨン。“高さ”を増していく。さらに森田にはブルーノ。J1昇格を伺うチームにとっては、1点の優勢だけでは許されない。厳しい時間帯に、相手が嫌がる絶妙なカードを次々と切ってきました。

熊本は33分、小森田に替え満を持して宇留野を投入。福岡戦で負傷してから実に7試合ぶりの宇留野の勇姿。彼の復帰をファンはどれほど待ち望んでいたでしょう。やっぱりこの男にはHondaの頃から“赤”が一番似合っているのです。藤田も分かっている。いきなり右サイドにロングパス。そこに宇留野が必ず飛び込んでくることを。PA前で木島と絡む。仕掛ける。CKを取る。熊本に俄かに“点の匂い”が蘇ってきました。ショートコーナーから藤田のヘッドはバーをかすめる。攻撃のテンポが上がっている。得意のゴール前の回しから最後は石井のミドルシュート。惜しい。

攻守が激しく入れ替わる最後の時間帯。両者の猛攻。カウンターのリスクを覚悟で攻める熊本。ブルーノの決定機を稲田が神がかりのクリア。熊本もカウンターから山本がエリア内。切り返すがシュートではなくパスを選択。走り込んだ宮崎のシュートはバーを越える。遂に、後半45分間、両者ゴールを割ることはできず、終了のホイッスルが鳴り響きました。

わずか1点が勝敗を分ける結果になりました。高さや強さの差は決してチーム力の差ではありませんが、熊本と甲府の“力”の差は、点差以上のものがあったと言わざるを得ません。甲府は、パスサッカーをベースにしながらも、守備を強化し、さらに前線の“タレント達”の特徴を活かす戦術に磨きをかけていました。まだまだ届かない、点差以上の差が、立ちはだかっていたようにも感じました。

熊本にとっては、宇留野の復帰が何よりの吉報でした。いわゆる古巣との対戦。試合後の甲府メンバーとの握手でも、「頑張れよ」「頑張ってるな」と、互いにワンアクション多い。色々なことがあっての新天地・熊本。敗戦を詫びるように、ゴール裏に両手を合わせる宇留野。メインスタンドにも挨拶を終え、ロッカーに引き上げるチームメイトと別れて逆方向に歩き出します。そして、アウェイ側ベンチ横あたりから、それこそ向こうからは見えるかどうかわからないくらい遠くから、甲府サポに向けて一瞬、手を振りました。「オレは元気でやっているぞ」とだけ伝えたい。そんな感じがしました。出場時間はわずか15分。でも、どうしてもこの試合に出たかった。そんな気持ちが伝わりました。

メインスタンドには、青い甲府ユニを着た女性が二人。立ち上がると、なんと赤い熊本のタオルマフラーをしばし掲げました。これもまた宇留野本人に見えるかどうかというよりも、「宇留野、頑張れ」「宇留野をよろしく」というようなそんな気持ちだけを伝えるような。愛された選手。サポの思いや選手とのその距離感の清々しさを感じて、実に印象に残った光景。そして、この選手が熊本に来てくれて本当によかった。そう思った瞬間でもありました。

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