5月17日(日) 2009 J2リーグ戦 第15節
栃木 1 - 1 熊本 (13:03/栃木グ/2,349人)
得点者:63' 河原和寿(栃木)、89' 原田拓(熊本)


何でもないところで、不用意なプレーで自らを苦しい状況に追い込んでしまうのが今季の熊本の悪いパターンになっています。今日の木島の退場がまさにそれでした。全体のゲームプランを壊してしまう軽率な行為。しかしピッチに残った10人がよく頑張った。諦めずによく追いついた。同点弾を決めた原田がインタビューで「キジさんにいつも助けられていたから、キジさんのためにもと思った」と語ったのには心動かされましたが、このコメントに一番反応したのは恐らく木島本人だったのではないでしょうか。

松田新監督を迎え、多くのJ経験者を加えた新生・栃木。しかしながら、なかなか結果が伴わず下位に低迷。ただ前節からの初連勝をホームで目論む。一方、連敗中のわが熊本は、3連敗だけは何としても免れたい。そしてそれ以上に、JFL時代からの因縁めいた戦績、また昨年のあの天皇杯の忌まわしい敗戦の雪辱を図りたい。そんな思いの詰まった試合でした。

栃木 (先発フォーメーション)
36若林 14稲葉
7佐藤20河原
5落合15鴨志田
4井上2岡田
23米山3大久保
 29小針 
立ち上がりの栃木の時間帯をうまく凌ぐと、10分過ぎ頃からは、熊本のワンタッチのパス回しが機能し始めます。大きなサイドチェンジを多用したパス回しから最後は右PAに走りこんだ小森田へ。しかし、わずかに届かず。16分には小森田からのパスに宇留野。GK小針より一瞬先に奪うと、角度のないところから強引にシュート。これはゴールライン上で相手DFがギリギリのクリア。栃木は、プレスこそ前線から厳しくくるものの、最終ラインが低く、バイタルエリアに隙があるように見えます。そのなかでひと際印象的だったのが熊本スピリッツの落合。日頃は中盤を落ち着かせる守備的な選手ですが、今日は実にアグレッシブ。まさかこんなにまとめて大津高の後輩たちと対戦するとは思ってもいなかったでしょう。「オチさん(落合)は相変わらず激しいプレーをしていたので、さすがだなと思った」(J’sゴール)と原田も川崎時代は同じポジションでしのぎを削ったこの先輩の活躍を称えました。

互いの意地がぶつかり合うような展開。栃木は鋭くカウンター。先制点はどちらに転ぶのか、このまま前半はスコアレスなのか。1点の重みが大きく圧し掛かりそうなドキドキする心理戦。そういえばいつも栃木との試合はこんな気持ちだったような気がします。しかしその心地良い緊張の糸を一瞬にして切ってしまったのが、木島の退場でした。いつもなら休息と修正のために使われるであろうハーフタイムの時間が、プランの“再構築”に費やされることになりました。後半45分の両チームの戦略。実況のアナウンサーは「熊本はアウェーで勝ち点1をとれればいいと考えるのか…」とコメントしましたが、それは数的不利の状況下でのしごく当然の読みだったのでしょう。しかし、これまでの北野監督の采配ぶりからわれわれは確信していました。おそらく勝つことしか頭にないだろう。熊本は勝ち点3をとろうと思っているはずだと。

「3トップだったので2トップになった時に、サイドバックがどうやってくるのかを最初は見ようというふうに言いました。そこで栃木さんのサイドバックが出てこなかった。最初は出てきませんでしたが途中から出てきたので、ちょっと混乱しました。」(J’sゴール)後半18分に河原にゴールを破られるまでの時間帯を、北野監督はそう言って悔やみました。やはり10人では厳しいか…。いつもなら十分なはずの残り時間30分も、妙に短く感じられました。

とにかく早く追いつきたい熊本は、勇気を持ってDFラインを高く保ち、両SBを上げ、ほぼ2バックで守り続けます。一人少ない代償として中盤の負担は増し、押さえきれなくなってきてはいましたが、そこは山本に代えて宮崎を投入。そして、徹底して市村を走らせます。将棋の香車のように、敵陣へ縦に、あくまで縦に鋭く切込む。本当に彼の運動量は無尽蔵。まるでサイドに市村だけの渡り廊下があるように、スルスルと渡っていく。追いつけない厳しいパスにも、まったくめげるそぶりも見せず、何度も何度も繰り返し走り続ける。

41分、藤田のスルーパスに市村が飛び出しGKと1対1。この決定的な場面も小針がクリア。悔しがる市村。さすがに疲労は隠せない。栃木は佐藤に代えて栗原を入れて逃げ切りを図る。時間は遂にアディショナル・タイム。右サイドから石井がクロスを入れる。宮崎がエリア内でつぶれ、ボールはファーサイドに抜けるか、と思った先には何と原田が飛び込んでいました。ここは左SBの仕事場だといわんばかりに。自身も待ち望んでいた移籍後初ゴール。沸きあがるサポーター席。チームメイトも促し、ゴール裏に駆け寄る原田。前線の欠員を両サイドバックが埋め、まさに全員でもぎとった同点弾でした。

ロスタイムあともわずか。しかし勝ち点3を諦めない熊本。DFの不用意なバックパスのミスを見逃さなかった西森。GKより早く追いつくも、一瞬のためらいでシュートチャンスを逸します。そのまま終了のホイッスル。まるで負けたかのように肩を落とす栃木イレブン。栃木は数的優位でボールを保持できる状況をうまく活かせなかった。そして「勝って当然だ」という自身に向けられた見えないプレッシャーと戦った。まさに昨シーズン、今日と同じような小雨の水前寺で熊本が岐阜に喰らった同点劇を思い起こさせるような結末になりました。

「執念が実った」と称えるのは解説の水沼氏とアナウンサー。しかし藤田は試合後「諦めないということは特別なことではない」(J’sゴール)と言い放ちました。そのコメント全体に、勝ちたかったという強い気持ちがにじみ出ていました。そして同時に「大切な選手。やんちゃ坊主のままじゃいけない」(18日付・熊日)と、熊本の10番を背負う男に反省と自覚を促す言葉を忘れませんでした。

終了間際、ロスタイムの同点弾という劇的な幕切れではありましたが、気づいてみればそれは辛うじて3連敗を止めたという結果。なんとなく吹っ切れないモヤモヤしたものも残ります。しかし、この引き分けをなんとか浮上のきっかけとしたい。次は中二日で上位を走る大阪との戦い。木島が外れる前線の構成はどうなるのかが一番の関心です。出場停止は決して喜ぶべきことではありませんが、新しい選手にとっては大きなチャンスでもあります。第一クールも残り2試合。このあたりでシーズンを見通した、思い切った選手起用など・・・と。北野監督とっても新たなチャレンジ。期待したいと思います。

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