5月20日(水) 2009 J2リーグ戦 第16節
熊本 0 - 3 C大阪 (19:03/熊本/3,297人)
得点者:75' マルチネス(C大阪)、77' 西澤明訓(C大阪)、83' オウンゴ-ル(C大阪)


セレッソ大阪 (先発フォーメーション)
 15小松 
8香川7乾
19石神13平島
10マルチネス25黒木
2羽田5前田
 3チアゴ 
 21キム 
「勝敗を分けたのは『ゴールに向かう目的意識と、決定機での集中力の差』だった」(熊日・21日付)試合後、勝利チームの監督はそう述べました。

そもそも戦前、われわれの周りでは「力の差は歴然だ」「何点取られるのか」と心配する意見が多かったのも事実。湘南と首位戦線を争うセレッソ大阪。日本の若き才能、香川と乾を擁する大阪。その破壊力への恐怖。昨シーズン、明らかな連携不足の状態で対戦、勝利したときとは違うチーム。北野監督はこの試合に対して、「守備的な戦いになると思う」と言いながらも、「第2クールに向けて、今この大阪にどれだけやれるのか試したい」という意気込みがありました。

しかし蓋を開けてみれば、守備的といっても決して引いて守るのではない、いつもの熊本の守備隊形そのものでした。C大阪の1トップ2シャドウに対して「コーチングとカバーリングに長けている(北野監督談)」(J’sゴール)という理由で福王を久しぶりに抜擢。河端とのコンビで、バイタルエリアに入ってくるボールを厳しくチェックしていく。あるいは香川、乾の飛び出しをオフサイドに仕留める。高さでは頭ひとつ差がある小松に対しても、河端がきっちり身体を寄せて自由にさせない。

今日の熊本は全員の集中力が高かった。守りでは相手に粘りつくように奪い取る。奪っては、玉離れ早く回していく。そしてこのゲームで誰もが一致して評価したのは小森田の活躍。ボールを収め、前を向く場面がたびたび。要所ではダイレクトパスでラインを切り裂く。小森田と藤田と石井の縦の関係、お互いの距離とポジションの入れ替わりがうまくハマッテいる。流れるように自然に。

予想通り大阪の前線の3人は、味方からのボールを引き出す動きに長けていました。しかし、それでも何度も熊本守備陣に突破を止められる。最後は身体を投げ出して…。首を傾げるのは乾。いつものようにはうまくいかない。そうなると焦りが生まれるのが普通の“若さ”というものですが、どうもこの2シャドウは違っていたようです。何度でもめげることなくチャレンジし続ける。それも淡々とまるで単調な仕事を繰り返すように。それはクルピ監督が「セレッソとやる相手は必ず前半にガツガツくる。それをしっかり凌げるかどうかだ。」という指示を確信し、真摯に守っているかのようでした。

初めから失点は覚悟のうえでの対戦でした。それがどの時間帯なのか、試合開始からあっという間なのか。どれほど凌げるのか。それほど恐れていた大阪の攻撃陣。しかし気がつけば前半もあっという間に30分。こうなったらファンの心理は現金なもので、先制点が欲しくなる。いや、そんな匂いもする互角の展開。ただ、熊本としてはそのためにはもう一歩リスクを犯した攻撃が必要だなと感じさせる展開でもありました。

そんな欲が災いしたのでしょうか。35分過ぎから大阪の時間帯。左サイドをえぐったマルチネスからマイナスパス。これを蹴りこんだ香川のシュートは激しくポストを叩きました。ふーっ、危ない。
しかし39分には逆に熊本が好機。右サイド奥、宇留野からのクロスに中央に走りこんだのは山本。これは黒木が追いついて阻止されます。それにしても評判どおりのマルチネスはともかく、石神とか黒木とか…。今年の大阪の好調を理解するには十分すぎる補強戦力だと思いました。

スコアレスのまま前半終了。ロッカーに引き上げる選手達に対してスタジアム全体から割れんばかりの拍手が起こりました。あの大阪相手に全く互角に戦っているわがチーム。おそらく来年は対戦しないであろうこのチームとの戦い。攻守の切り替えの早いワクワクするようなパスサッカー。昨年とは一段も二段も内容の濃い戦いをみんなが堪能していました。

両チーム選手交代なく後半開始。開始早々、熊本のビッグチャンスが訪れます。石井からのパスをエリア内で宇留野が落として走り込んできた藤田へ。決定的瞬間。思わずシートから飛び上がる。しかし藤田のシュートはゴール右にそれていきました。残念! 

はた目からはどこにも不具合はないように見えました。相手の乾と香川の互いのリズムもいまひとつ合っていない様にも見えましたし。得点とか勝敗とか関係なく、このまま90分間、目の前のエキサイティングなサッカーを楽しみたい。そう思っていました。

しかし見えない燃料タンクは、空っぽになりかけていたのでしょう。大阪の圧力は選手のスタミナを確実に奪っていただろうことも想像できました。あれだけプレスをかわされて追いかけ続けるのは容易なことではありません。いつになく早い時間帯で熊本ベンチが先に動きます。小森田を引っ込めて西を投入。宇留野をワントップに置き換えます。好調の小森田からの展開をもっと見てみたいと誰もが思いましたが、西森と西を、ちょうど香川と乾のように見立てて使ってみたいのかなとも思いました。さらに続いて藤田、最後には宇留野もピッチから去ります。
それはまるで、急に排気量の小さい車に乗り替えたようなパフォーマンスの低下でした。あるいはシフトダウンをしていくような…。誰の出来が悪いということではなく、チーム全体の排気量の低下。

30分にマルチネスのみごとな個人技で失点すると、そこからチームの歯車は完全に狂ってしまいます。あっという間の西澤の追加点。これも完全に集中を欠いたような崩されかた。最後は香川をうまく仕留めた福王でしたが、バックパスをオウンゴール。一瞬の3失点…。

好調に見えたなかで、こちらが先に動かざるを得なかったのかどうか。もう少し引っ張ることはできなかったのか。そのベンチワークにはわれわれの中でも意見が分かれるところでした。中二日のスケジュール。今日も藤田は、敵のキーマン・マルチネス相手に厳しい攻防を繰り広げ、その存在感を示してくれました。しかしだからこそ監督は、このゲームでの藤田よりも、“これからのシーズン”で藤田を失うことを恐れたのかも知れない。この試合での活躍と引き換えの見えない金属疲労を憂慮したのかも知れない。今季目指すパスサッカーへの大転換、まだその手ごたえを試しているような第1クール。そしていよいよ結果を見せたい第2クールを前にして、その存在はあまりにも大きすぎる。
勝負の現場で指揮官がそんな長期的な発想をするのかどうか、しょせん結果論であり、まったく勝手な想像でしかありませんが、今の熊本の決して厚いとは言えない選手層のなかで藤田の役割(もちろん小森田も宇留野もそういったケアが必要なベテランです)はそれほどに決定的であるということでしょうし、このシーズンを戦っていく陣容をはっきりと見定めているからではないでしょうか。

ないものねだりを許してもらえるなら、お互いベストの日程、ベストのメンバーで、この大阪ともう一度戦いたい。でもそんなタラ、レバの「条件」など、どこの国にもない、だからこそサッカーなのだということぐらい百も承知ですが、それほど面白くて、可能性を感じた(結果だけを見れば完敗でしたけど…)そんな一戦でした。

オウンゴール直後に足早にスタジアムを去るファンもいた反面、最後まで試合を見届け、大きな拍手を送るファンも少なからず見られました。試合翌日、われわれの職場でも、様々な評価がありましたが、チームのスペクタクルな戦いぶりに大きな拍手を送る、結果は憂いながらも内容はきちんと評価するという者も少なからずいたことは(ちょっと意外でもあり)とても嬉しく思いました。

冒頭のクルピ監督のコメント。「ゴールに向かう目的意識」という言葉は、「ボールを持って、回してはいるものの…」という今季始まってからのわがチームの課題を端的に指摘してくれているのでしょう。ポゼッションが勝利に結びつくのかどうか…。それを考えるのは、もう一試合観てから。次節、第1クールの最終戦・岐阜戦に声を枯らしてからでもけして遅くはないような気がします。

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