5月30日(土) 2009 J2リーグ戦 第18節
熊本 1 - 2 鳥栖 (13:03/水前寺/3,732人)
得点者:11' 島田裕介(鳥栖)、49' ハーフナーマイク(鳥栖)、64' 木島良輔(熊本)


こんなに一週間が長く、次の試合が待ち遠しく感じたのは、ミッドウィークの試合間隔に慣れてしまったからではなく、前節の結果にかなりへこんでいたせいかも知れません。ふがいない敗戦を清算して迎えたい第2クールの初戦。水前寺競技場に12位の鳥栖を迎えて九州ダービーの第3戦。鳥栖から駆けつけたサポーターはゴール裏以外にもはみ出し、一方のホームのファンもスタジアムを赤く染めました。日なたは焼け付くような陽射し。久しぶりの水前寺のゲームでした。

鳥栖 (先発フォーメーション)
35ハーフナー 34山瀬
10島田26武岡
14高橋6高地
3磯崎32山田
5飯尾20渡邊
 21室 
得点力不足に悩む鳥栖は、直前に横浜FMからレンタルした山瀬とハーフナーマイクの2トップを敷いてきました。対する熊本は、左SBに矢野をスライドさせ、初めて原田拓を中盤に上げてきました。藤田、原田、石井のトライアングルで「ボールを落ち着かせたかった」北野監督。しかし、試合後の岸野監督のコメントで明らかになったように、その策が“裏目”に出てしまったようです。「熊本は詰まったら石井選手のところを経由してボールを逃がす」とスカウティングしていた敵将は、徹底してそこを奪いどころと指示していました。確かに原田がゴールにより近く位置して、随所にいいパスを供給する場面もありましたが、もう少しボランチのエリアまで下がって石井をカバーするなりして、もうひとつの“落ち着きどころ”として機能すれば…と。石井はやはり今の熊本の“心臓”。全体の連携不足は“急増シフト”の印象が否めませんでした。なんだか中盤の人数不足と、互いの距離の遠さを感じた前半。11分には早くも左サイドをえぐられ、ゴール前にこぼれたボールを島田に押し込まれてしまいます。2列目、3列目からのフォローと飛び出し。全く熊本がやりたい形を見せつけられました。

もともと玉際に強く、厳しくくるのは鳥栖の持ち味でしたが、今日はそれに激しく身体をぶつける意欲と、ハーフナーという“ランドマーク・タワー”のような前線のポイントが加わって、なかなか前を向かせてくれない。こちらが中盤で保持しても、“中盤で潰す”という鳥栖の意図が徹底しているのか、アタッキングサードに運ぶどころか、GKまで戻してしまう場面が続きます。

20分すぎ、敵DF裏をうかがう原田の右サイドへのロングパスあたりから熊本もリズムを得て、チャンスを作ります。CKからの混戦。エリアにカットインした藤田のマイナスパスに誰も感じておらず、合わせられません。しかし、そういう藤田のプレーを他の誰かがやろうとしない。単にゴール前でボールを譲り合うシーンは、相変わらずの課題でした。

カウンターを含めてボールの出どころを潰す鳥栖に対して、熊本の守備は緩慢と言わざるを得ません。まるで何かコンディションに問題があるような“ゆるさ”さえも感じます。後半早々は同点に追いつくための大事な頑張りどころにもかかわらず、島田からエリアに侵入した高地に渡り、そのクロスをハーフナーに難なく押し込まれます。随所にチェックの遅さ、守備の偏りが連続した結果でしかありませんでした。

熊本は小森田に代えて井畑、宇留野に代えてチャ・ジホを投入。1点を返したのは19分、前線での井畑のプレス。ボールが木島の前にこぼれるとドリブルで持ち込み、対峙したGK室の意図したタイミングよりいち早くゴール左角にねじ込みました。

苦しい時間帯に入って、同点への恐怖や追加点への焦りが生まれるものと思いましたが、今日の鳥栖、失点後も「下がりすぎるな」と岸野監督が激しい指示を繰り返し、選手の距離も間延びせずコンパクトを維持していました。そして、見るからに疲れの見えるハーフナーを最後までピッチに残し、中盤の選手だけを次々にフレッシュしていきます。すでにこの試合は、鳥栖の低迷を救うためにレンタルされたこのニューフェースの「90分間戦えるか」という“メンタル面”を試すことに使われていました。

今日のゲームだけで原田の中盤に駄目出しをするつもりは毛頭ありません。監督としても、苦況を打破するためのひとつの“チャレンジ”でしょうから。ただ、その組み合わせと、使いどころと使う相手を今回は間違っていたのかも知れないなと…。もうひとつ、4-3-3で“いいとき”のロアッソは石井、藤田、小森田の縦の関係、距離がうまくいっているとき。そういう意味では、今日の小森田、状況を判断してもう少し下がってボールを貰いにきてもよかったのかなと思うのですが…。原田が前へ前への意識が高かっただけに。

シュート数4本という結果。ゴールへの意識の低さを表しているということですが、実はここ2試合は、ゴールへの意識以前にシュートに至るまでのところに問題が発生しているように思えてなりません。ボールを持てる、回せるという段階から一歩後退しているような。いつの間にか、できていたことができなくなっているような。自分たちが成長する以上に他のチームは成長している。われわれは“チャレンジャー”なんだという初心が忘れられているような。

試合後、バックスタンドへの挨拶を忘れかけたイレブン。いつものKKとは逆のホームサイドに何となくアウェー感覚に陥ったとすれば、それも笑えない笑い話です。しかし敗戦の結果に、「行かなくてもいいかな」という気持ちが浮かんでいるような足の重さも感じられました。もし、そんな気持ちが少しでもあったとしたら、問題は根が深い。それはファンの期待やチームへの思いを浅く見ているということだけでなく、そんな気持ちがプレーに反映していないかと。「行かなくてもいいかな」。そんな気持ちでラインを割るボールを見送っているとしたら…。

いずれにせよ今日久しぶりに見た熊本の得点が、組織的なものではなくて、井畑の果敢なチャレンジから生まれたことが象徴的だと思います。当たり前のプレーでは打破できない。気迫のこもったプレーが相手を脅かす。それはボールを回しているときでも通じることであり、つまりは“チャレンジする”“闘う”気概がほしいということ。極論を言えば、負けてもいい。まだ圧倒的な強さなど持っていないのだから。ただ、チャレンジする気持ちだけはファンに示してほしい。

90分間なんとか走り抜き、ヘロヘロになっているものの満足感に満ちたハーフナーマイクの横顔。鳥栖から駆けつけたファンに移籍挨拶よろしく手を振る姿を見ながら、そんなことを思っていました。

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