6月14日(日) 2009 J2リーグ戦 第21節
甲府 4 - 1 熊本 (16:03/小瀬/11,595人)
得点者:5' 金信泳(甲府)、31' 金信泳(甲府)、53' 木島良輔(熊本)、83' 山本英臣(甲府)、89' 國吉貴博(甲府)


湘南戦のあと、「いいときのイメージが常に“目標値”になり、その戦える時間量を増やしていくことが、今年積み上げるべき財産」だと書きました。これまでJ1昇格戦線を争うチームに対して善戦しているといえる熊本。そして迎えた甲府との第2戦。前回対戦時も書いたとおり「熊本が目指すパスサッカーの“本家”甲府への挑戦」。しかし、今日はその目標値に近づいた時間帯は目に見えないほど非常に短く、本家を脅かすまでには到底至りませんでした。まさに完敗。その差は歴然でした。

熊本は左SBの原田を累積警告で欠くばかりか、市村が練習中の怪我で離脱。さすがに開幕からの連続出場で疲労が貯まっていたのでしょうか。その代わりに福王、矢野をそれぞれのサイドに入れ、中央はソンジン、河端で埋めてきました。その代わりベンチには控えのDFはなし。前線はここ2試合続く、藤田を最前線に上げたいわゆるゼロトップ。

試合は、開始早々から甲府の圧倒的な攻勢。熊本はファーストディフェンスが甘く、いきなり最終ラインでの防戦に終始する状態に追い込まれます。前回対戦時、あれほど押さえ込んでいたマラニョンですが、今日のチェックは甘く、次々に裏をとられ、1対1のスピード勝負に持ち込まれます。一方、甲府はファーストディフェンダーがしっかりとボールをチェックして、アタッキング・サードまで入り込ませない。熊本は中盤で奪われる。足元へのパスを確実に狙われていました。狙われているのにその対処ができなかった。そこが今の実力なのかも知れませんが…。

前半5分、右サイドから迫るマラニョンに難なく振り切られる河端。エリア奥まで入り込まれグランダーのセンタリング。ボールは下がる福王の目の前を通って、ファーサイドから入りこんできたキム・シンヨンにぴったりと合わされます。期待していた対戦にして、早々の緩慢なディフェンス。なんともファンをがっかりさせる失点シーンでした。2失点目もキム。河端と矢野が二人ついても振り切られる。目を覆うばかりの惨状でした。

確かに熊本は、この強豪・甲府に対しても試合を通してDFラインを高くあげ、オフサイドも数多く奪った。しかし、明らかにゼロトップの攻撃を意識した中盤の配置に対して、甲府の二層になった守備網ががっちりと熊本の中盤の飛び出しを許さず、逆にワンボランチ石井の負担だけが目立ちました。甲府のパスサッカーのうまさに目を奪われがちですが、実はその本当の強さは堅い守備に裏打ちされているということがはっきりとわかった試合でした。

このままでは試合は終わってしまう…。流れを変えるべく、前半のうちに木島を投入(河端アウト)する意味は理解できました。福王をCBにスライドさせ西を右SBに下げる。それにより攻勢を引き寄せた熊本。後半早々に山本がエリア内で倒されPKを得ると、木島がきっちりとゴールに押し込みます。以前にも書いたとおり2-1という点差は、サッカーにとって非常に微妙な“心理的点差”。しかも熊本が徐々にリズムを掴み始めていました。しかし、この重要な時間帯に、わざわざ熊本はこちらからカードを先に切ってしまいます。宮崎に代えて井畑を前線に投入。確かに井畑の前線の運動量に期待したのかも知れませんが、良かったリズムは一気に萎んでしまったように感じました。さらに立て続けに3枚目のカード。右SBを西に代えて松岡。遠征直前に急遽帯同が決定されたらしい松岡。確かに練習試合でも徹底して右SBが試されていて、市村不在のこのときのプランとして準備されていた変更だったのでしょう。しかし、これもまた絶妙の交代とは言い難いものでした。

熊本がカードを使い果たした後、甲府はマラニョンを下げ吉田を入れると早いリスタートからPKを奪取。キッカーには熊本にPKを与えたDF山本を指名する“演出”までして、心理的にも突き放しを図ります。終了間際にはキムに代えて國吉。なんとこの伏兵にもロスタイムに駄目押し点を決められる結果となりました。文字通り、全て後出しじゃんけんに負けてしまったような展開。

何故、いい時間帯を持読させるための“我慢”ができなかったのか。まるで戦前に予め描いていた交代プランを、戦況を省みずに先手先手で打っていったような、あるいはそれがベンチワークの混乱にも感じられて、どうも腑に落ちないのです。また、先発フォーメーションを見ても、いいときの布陣を何故続けないのか。確かに層の薄さや、相手に対するスカウティングの結果があるのだとしても…。何が評価されるのか、何を求められているのか。選手の側も分からなくなってしまうのでは。何か采配にも迷いが生じているのではないだろうか。試合後のコメントを見ていてもそれが心配されます。

勝てない。結果がなかなかついてこないこの連戦に、ひょっとしたら眠れない日が続いているかも知れない新人監督。しかし、ここは頑張るしかない。踏ん張るしかない。もう一度、原点に立ち返り、落ち着いて現状を整理する作業を行うべきだと思うのです。今、熊本が目指している戦術は、他チーム関係者や多くのJ2観戦者からも高い評価を得ているのだから…。

「サッカーが一人で全て解決するなんて考える方がどうかしている」。今節の出来は本人自身も悪かったはずだけれど、今日もまた藤田は名言を吐いてくれている。一言で言ってしまえばそれが経験というものなのでしょうが、かつて甲府が作った25連敗という記録を思えば、今のこの歴然とした力の差も、経験の道の途中なのだと納得するのは難しいことではありません。この結果を受け入れて、切り替えて次に向かう。われわれの選択肢はそれしか残されていない。満員のスタンドでホームゲームを演出する甲府のサポーターたちを画面で見ながら、そう思いました。

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