7月22日(水) 2009 J2リーグ戦 第29節
C大阪 4 - 1 熊本 (19:04/長居/5,971人)
得点者:10' 木島良輔(熊本)、38' 乾貴士(C大阪)、75' カイオ(C大阪)、88' 乾貴士(C大阪)、89' マルチネス(C大阪)


試合後、敵将・レヴィークルピ監督は、「本当に厳しいゲームになった。熊本がパスをしっかりつないで、クオリティの高い攻撃をしてくることは分かっていたが、その能力の高さを、しっかり表現していたと思う。」と熊本を評しました。いつものように勝者ゆえのリップサービスが多少はあるとはいえ、戦前からのマルチネスらのコメントも含め、しっかり熊本の攻撃力を警戒してきていたのは間違いないようです。中継のデータによると大阪・長居競技場の湿度は73%。コーナーフラッグも垂れて見るからに風もなく、今日も相当な消耗戦が予想されました。

西宮出身、C大阪ユース育ちの福王。トップチームに在籍していた2年間も出場機会は与えられず、この“地元”長居でのJ公式戦は初めて。この日のプレーに期するものがあったのは当然でしょう。今日は、同じような思いで先日の厚別のピッチに立った河端とCBのコンビを組みました。試合前に藤田からポーンと肩を叩かれる。それは「気合を入れていけ」という意味なのか、あるいは「気楽に行け」ということなのか。福王の苦笑いからは想像がつかないことでしたが…。

C大阪 (先発フォーメーション)
 9カイオ 
8香川7乾
19石神17酒本
10マルチネス25黒木
14江添5前田
 3チアゴ 
 21キム 

開始早々、飛ばしてくるのは大阪。オフサイドを恐れず乾やカイオが思い切り良く飛び出してくる。香川がオフサイドをかいくぐりシュート。これは戻った福王が足一本でクリア。意地が勝りました。10分、ボールを落ち着かせ、後ろから作り始める熊本。前節の2点目を思い出させるような福王からの長いフィード。中盤でワンタッチ、ワンタッチ。宇留野から藤田。藤田が出したスルーパスに木島がDFライン裏に飛び出し、中央を突いてGKと1対1。「なかなか倒れなかった」(木島:試合後のコメント)相手GKを逃げるように交わしながらエンドラインぎりぎりで流し込むようなシュート。ボールは慌てて帰ってきたDFもろともゴールに吸い込まれます。熊本が先制。なんとも見事な“カウンター的パスサッカー”からの攻撃。

その後も藤田からのスルーパスが冴え渡る。今度は市村を使う。市村が右サイド奥まで運ぶが、これはなんとかGKが拾う。大阪・乾の振りの早いミドルシュートには一瞬、肝を冷やす。前節富山戦のバイタルエリアでのチェックの甘さを思い出させる。酒本からのアーリークロス。カイオがヘッドでゴールネットに突き刺すもオフサイド。熊本も連続してCKのチャンス。しかし高さの劣る熊本はゴールを割れない。逆に大阪のカウンター攻撃にさらされる。攻守交替がめまぐるしく変わる展開。ビルドアップに時間は掛けられない。帰りが遅いと負ける。見ているこちらも一瞬も目が離せないゲーム。

最後のところで精度を欠いている大阪。何とない手詰まり状態。なんとかこのまま1点リードで前半を終わりたい。そう思った矢先の38分、乾のヒールパスにカイオ。カイオからもらった香川のところで少し溜めると、スピードに乗った乾に再びスルーパス。乾が中央を破ってシュート。同点としました。まるでさっきの熊本の先制点を鏡で映して逆にしたような美しい展開。これにはテレビの前で唸るほかありませんでした。

それにしてもこの高温多湿なコンディションのなかで、両者が「人もボールも動く」実に質の高いゲームを見せてくれている。そして熊本は今日も一歩も引かない。ある意味で戦力を超えたレベル、クオリティのゲームを演じ、全力を出し切っている。首位・大阪相手に失点を恐れるような素振りも見えない。当然、後半の展開は、自ら失速していった前回対戦に思いが巡り、残り45分のマネジメント力が注目されました。

ハーフタイムで、後半により一層の「ハードワーク」を求めたレヴィークルピ。一方、北野監督は「選手の距離を縮めること」で陣形が間延びしないように指示しました。カイオが右から中央の香川に。香川がバイタルエリアから右足を振りぬく。これはバーの上。熊本は中央で得たFKを原田が直接狙う。これもゴール右角に反れる。惜しい・・・。西が自慢のドリブルで仕掛ける。ペナルティアーク付近まで持ち込んで放ったシュートはDFがクリア。大阪は大きなサイドチェンジを使い始める。熊本の体力が徐々に徐々に奪われていく・・・。

決定的になってきたのは濱田を入れて大阪が中盤を厚くしてからのことでした。熊本は大阪キラーと言われた木島を下げて、山内を入れる。前半から飛ばしていたので仕方なかったのかも知れません。均衡を保っていた秤(はかり)は、この瞬間にバランスを崩し、大きく傾き始めます。熊本の戻りが見るからに遅れ始める。最後に残ったパワーを、なんとか絞り出そうと試みるが、気力しかないような。組織で戦っていた熊本が徐々に個の力に頼るようになっていく。75分、バイタルエリアで回されるパスに足が出ない。遠めから撃たれた濱田の強いシュート。何とか木下がはじきますが、そのこぼれ玉を見逃さずカイオが詰めて押し込みます。木下にまかせてしまった両CB。次に予測すべき一歩が出ませんでした。

熊本は西に代えて井畑。藤田に代えて大迫を投入するも、盛り返すことはできない。逆にカイオに代わって入った小松にかき回される。終了間際になっても攻撃の手を休めない大阪。88分、再びバイタルエリアで回されると左から入った乾にパス。乾はトラップからシュートまでの間合いの早さでゴールに突き刺します。ダメ押しのダメ押しはアディショナルタイム。ゴール前FKからトリッキーなマルチネスのシュート。もはや誰一人として止めることはできませんでした。

終わってみれば再び3点の大差がついた対戦。大阪に25本ものシュートを浴びました。今回もまた地力の差を示された結果に・・・。ただ、前回は自ら切った早目のカードで、「急に排気量の小さい車に乗り替えたようなパフォーマンスの低下。あるいはシフトダウンをしていくような。」と表現しましたが、今回は我慢に我慢を重ねて、“いい時間帯”を引っ張ることに努めた。失点の時間帯はこれまた前回と同じような残り15分。しかし同じように見えても、それまでのベンチワークやピッチ上でのパフォーマンスには一定の進歩が感じられ、“自分たちのサッカー”をする“時間質量”ははるかに増えている。残念ながら、繰り出される交代要員を含めた“チームの総合力”で、現在の実力差を示されたのだと。いうなれば今回は、レッドゾーンぎりぎりまで踏み込んで爆走したが、残り3周ぐらいでその限界に達してしまった。チーム“ロアッソ”。そんな感じではないでしょうか。

そしてこの試合は、その現在の総合的実力を知るうえで格好の舞台であったとも言えるのでしょう。恐らくは今のこのJ2というカテゴリーで、最も速く美しいパスサッカーを展開する大阪、そのタレント達。これを向こうに回して同じレベルのサッカーで対峙しようとした今日の戦い。このチームでこれを越えなければ次の飛躍はない。言い訳しない、無いものねだりなどしない「潔さ」を感じたのはわれわれだけでしょうか。前回が45分までだったとしたら、今回は75分まで。次回対戦時はそれを90分にしたい。ただそれだけです。

試合後、その獅子奮迅の戦いぶりに古巣のサポーターからも温かいコールを受けた福王。「C大阪は今年J1に上がるだろうから、長居ではこの一度だけの試合となるだろう」とコメントしました。この試合の悔しさは、もちろん次の対戦で晴らしてほしい。しかし本当のところは、それほど遠くない将来、J1の舞台・長居でこのC大阪と対戦する日がかならずやって来る。それが福王の思いではなかったかと…。そしてわれわれはと言えば、そのときもまた、福王に熊本の“闘将”であってほしい。それは決して無いものねだりでなはい、一緒に描ける夢だと思うのです。

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