8月1日(土) 2009 J2リーグ戦 第31節
仙台 3 - 2 熊本 (19:04/ユアスタ/13,785人)
得点者:3' 吉井孝輔(熊本)、20' サーレス(仙台)、27' エリゼウ(仙台)、45' 平瀬智行(仙台)、65' 市村篤司(熊本)


夜のアウェーゲームは、テレビの前でビールから白岳しろに進んで、ほろ酔い加減で観戦するのが恒なのですが、このゲーム、もしどちらにも加担しないサッカーファンだったとすれば、攻守の切り替えの早い、得点シーンもふんだんにあるとても面白い試合として堪能したことでしょう。サッカーの楽しみとしてこれは大きな要素だし、熊本は実に面白いゲームをするという評価はたしかなものになりつつあるようです。しかしながら、われわれにはホームチームがあり、われわれは敗れてしまった。残念なことに、その現実を受け止めなければなりませんでした。

仙台 (先発フォーメーション)
19サーレス 14平瀬
10リャン11関口
7千葉8永井
5一柳25菅井
3渡辺8エリゼウ
 16林 

3連敗中に10失点。14位に沈んでしまったロアッソ。対する仙台には、知らない間に去年甲府にいたサーレスが加入していて、平瀬との2トップを構えます。スカウティング不足の仙台には“奇策”に映ったのかも知れませんが、木島が出場できない熊本の前線は、右に西、左に宇留野、中央に藤田を置いて、久しぶりのゼロトップというべき布陣。これが奏功しました。2列目の山本、吉井を加えた5人が、仙台のバイタルエリアを流動的に動き回るために、マークが着ききれない。石井から前の4人のボックスと藤田の関係が融通無碍で躍動するシステム。エリゼウ、渡辺の両CBの前には本来対峙するはずのFWがいない。かといって藤田を追いかけて上がることも許されないため、結果的にこの二人が余ってしまうことになってしまいます。逆に中盤では熊本が局地的な数的優位を作り出し、2列目、3列目が次々に飛び出していきます。3分、そんな仙台の混乱状態を見逃さず、右サイドから山本がクロスを入れる。相手DFを引き出した藤田の背後からゴール前に入ってきた吉井がヘッドで突き刺し、熊本が早い時間で先制しました。

中盤での激しい攻防。今日は山本と吉井の運動量が半端でない。原田もライン際のボールを粘り強く拾って、相手にリズムを渡さない。単にポゼッションだけでなく、サイドを広く使った展開、緩急をつけたズバッと縦への展開は、仙台を大いに慌てさせました。

しかし20分、ロングボールの処理。福王がサーレスに詰められて大きくバックパスをするとボールはゴール方向へ。目の前でバウンドしたボールの対処に慌てた木下の視野には、平瀬、そしてサーレスも詰めよる姿が映る。中途半端なクリアはサーレスへの絶好のラストパスになってしまいます。ほんの一瞬のプレー選択のミスから失点。同点にされてしまいます。熊本も気落ちせず攻め立てますが、最後のコンビネーションが少しだけズレて、惜しい場面が続く。対する仙台はカウンター主体ですが、逆襲からの奪ったCKやFKのチャンスでリャンのキックは実に脅威。そう思っていると27分、右CKからのリャンの低く速いボールがピンポイントでエリゼウの頭を捕らえて逆転に成功。エリゼウにとっては、直線的に自分のところに向かって来る簡単なボールでした。

流動的な熊本の攻撃に苦しみながらも、仙台がジワリジワリと地力を発揮してくる。そんな印象の前半でした。しかし、今日の熊本の出来が後半も続くなら、時間次第で追いつくことも可能だろう、そうも思いました。ところが、その思いが後半開始早々打ち砕かれます。再びリャンのCKから。速い良質のボール。ちゅうちょした木下は触ることもできず。まさにそこを狙っていたファーサイドの平瀬が頭でどんぴしゃり突き刺しました。

ややもすると多くの戦評は(これまでのわれわれも含めて)、「流れのなかでの失点ではない」「崩されての失点ではない」といった表現で、そのセットプレーからの失点を“結果”から差し引こうとします。しかし、この大事な時間帯での失点こそ試合全体の“流れ”のなかでの失点であり、セットプレーとはいえ“崩された”ことに何ら違いはないと思うのです。CKという必ず一定の回数で起こりうる場面への対処。それも3回の場面で2回決められてしまった。重い重い1点であり、その重い1点を奪い合うのがサッカーというゲームなわけですから…。特に今回、仙台は最後まで自分達の時間帯を作れなかったなかで、コストパフォーマンスよろしく2点のビハインドを作られたことは非常に痛かった。逆にわれわれはセットプレーを活かせなかった。

低い気温も手伝って、熊本の運動量も今日はなかなか落ちませんでした。65分には、熊本の前線5人の流動的な攻撃に、両SBが加わります。左から原田のクロス。中には3人。“きちんと”こぼれたところを、エリアの外から市村がミドルシュート。グラウンダーの球筋は、ゴール左サイドネットを揺らします。なんとも美しい全員攻撃。美しい市村のシュートで1点差に迫る。残り時間は25分。行ける。十分に追いつける感じが漂います。しかし、このあたりでさすがに熊本も足が止まり始める。仙台は平瀬を斉藤に代え、中盤を厚くしてくる。宇留野に代えて山内。原田に代えて矢野。山本に代えて宮崎。全ての手を打つ熊本ベンチ。精一杯の前懸かりで攻め続ける熊本。当然、仙台のカウンターに晒されます。代わって入った中原に何度もチャンスが訪れますが、全くフィニッシュの精度に欠け、助けられました。

アディッショナル・タイム3分の間も、両者互いにピンチとチャンス。ホイッスルが鳴った瞬間、熊本選手のみならず仙台の選手もうなだれていたことが、この試合の“内容”を物語っていました。
「いい気になることはできない。今日の内容では喜ばない方がいい。本当に、今日の苦しさは、もう一度進むためにはいい厳しさのあるゲームをさせてもらったと感じた」。試合後の敵将・手倉森監督のコメントにも、仙台側の“気持ち”が現れていました。しかし同時に、この試合で「必要なのは勝点3だった」とも言い放った。「どんなにいいサッカーをしても、僕らはプロなので勝たないといけないし、その辺で本当に申し訳ないと思っている。」敗者の北野監督のコメントは、全くの“対称形”を描いています。

Jで2シーズン目を迎えた今年、これまでわれわれは「たら」「れば」という言葉を出来るだけ使わないように努めてきました。それは、現実のサッカーの世界を生き抜いていくためには意味のない言葉だし、敗戦の言い訳にして現実を受け止めることを妨げるだけのものでしかないと思ったからです。われわれは(われわれのチームは)、本気で日本のトップリーグ(J1)を目指していることが少しですが実感できるようになってきたからでもあります。そして、更に、今日は“あの××”という表現もなるべく使うまいと心しました。確かに今日は“あの仙台に”主導権を渡さなかったし、先日は“あのC大阪相手に”75分まで互角に戦った。しかし、チームもそう表現されることから、そろそろ卒業してもよくないか…と。それが、「内容はよかったのだが…」ということとイコールになっているようで。そこから次に進まなければいけないような気がして。

8月に入ったとは思えないような涼しい気候の影響もあったのかも知れませんが、今日は“自分達のサッカー”を90分近く行えたことは確かです。これが徐々に徐々に増えていき、そして結果が伴ってくれればいいのですが。「今日は最後まで狙いに行って、守備も最後まで体を張ったので。これを忘れないことだね、それだけだと思う」。今日も顔色ひとつ変えずに鉄人ぶりを発揮した石井。歴戦のつわもののその言葉は、とても重く、ずっしりと響いてきます。

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