8月10日(月) 2009 J2リーグ戦 第33節
熊本 0 - 3 徳島 (19:03/熊本/5,195人)
得点者:29' 徳重隆明(徳島)、50' 登尾顕徳(徳島)、52' 柿谷曜一朗(徳島)


第1クール、完敗時のエントリーでは徳島の激しいプレスとアグレッシブさ、そして美濃部監督のスカウティング力について言及しました。同じように0-3完封で破れた今回、さらにそれらに加えて徳島には狡猾さが加わっていた。姑息ではなく狡猾。今期の好調さ。勝ち方を覚えた徳島。もはや昨年見せたような試合中の自信のなさは微塵も感じられなくなりました。

美濃部監督の熊本に対する研究と対策は先発フォーメーションに表れていました。ここ最近使っていた3バックではなく4バックに。サイドのスペースを埋めるとともに、中盤に下がるときの藤田には、2ボランチが対応するゼロトップ対策。4人のFWのうち柿谷をトップ下に配置して全体では4-2-3-1のようなシステムに。しかし、これは臨機応変に4-2-4、4-4-2などに流動化していました。

徳島 (先発フォーメーション)
 18羽地 
 13柿谷 
14石田7徳重
8倉貫16青山
3藤田20ペ・スンジン
5登尾3三木
 21上野 

前半、「入り方は悪くなかった」と宇留野が言うように、ポゼッションでは熊本が圧倒。徳島はコンパクトに引いて、ショートカウンターを狙う。ただ、ポゼッションは上回るものの、一向にスピードアップすることができない熊本。しっかり作った徳島の守備ブロックを破れない。単純なクロスは跳ね返される。セカンドを拾って二波、三波の攻撃を仕掛けますが、最後のところで呼吸が合わない。外から長めのシュートも試みますが、シュート自体が流れに乗れないまま打っているのか、まったくヒットせず。結局、サイドへ誘導され、そこでしっかり対応されて好機につながりません。むしろ徳島側に何かこう「してやったり」といった余裕を持たせてしまうような序盤でした。

さて、1失点目の起因になったソンジンのファウル。バックスタンドのわれわれから見たら、確実にボールに行っていた綺麗なカットに見えたのですが、主審の観た位置からは違って見えたのでしょうね。リスタートは、主審が停止を指示していなければファウルを受けた側が「素早いリスタート」をしてもOK。しかし今回のようにカードを提示している場合は、笛を吹くまでのプレーを止めるというのが普通。あのコントロールは大いに疑問が残ります。

ただ色々と論議はあるとは思いますが、全ては主審の裁量の範疇ということも事実です。これはもう、審判の判断の世界。そもそも審判が間違いないジャッジをするとかいうこと自体が幻想ではないかと。考えようによっては審判も敵チームとはいかないまでも、“ゲーム”のプレーヤーのひとりとして、どう動くか、どう判断するか、大きな“変数”だと思わなければいけないのでしょう。審判への過度な期待がイライラやフラストレーションにつながってしまいます。レスペクトはしながらも、その役割や限界についても“クール”に認識すべきなのでしょう。いま一度、冷静なアタマに戻って、この試合の意味、反省が必要だと思います。何もかも審判やジャッジのせいにしてしまえば重要なことまでも見逃してしまうのではないでしょうか。

リスタートからの失点に騒然とするスタジアム。折りしも猛烈な雨が降り出しました。ただ、ここ最近の攻撃力からすれば、先制されても何のことはないと思えたし、この試合も、とにかく2点目をとられるなよ、とだけ思って見ていました。追加点か同点か。この展開で最も重要な時間帯は後半開始早々に違いありませんでした。前半の悪い流れを断ち切れとばかりに、アップテンポなチャントでゴール裏が後押しする。しかし、5分、度重なるCKから2失点目を喫すると、気落ちしたのか立て続けに3点目も献上。本当に熊本の悪癖となってしまったような崩れ方。再び素早いリスタートに警戒を怠っていました。

ここで気になったのは相手CK時の守備。ゾーンディフェンスとマンツーマンの併用なのかも知れませんが、ソンジンがぽっかりと空いたニアのスペースにひとりぽつんと立っている。わがチームに高さがないための戦術変更なのか。早くて低いボールに対しても、足元にも技術のあるソンジンだったらということなのでしょうか。とにかく初めて見る光景でした。ただ、相対する選手同士の高さがミスマッチを犯しやすいのもゾーンディフェンスの欠点。“チーム一の高さ”を相手(ひと)に着けずにゾーンを任せるのか。このところ続いているCKからの失点に対するひとつの実験なのかも知れませんが、徳島のCKは飛び上がるソンジンの遥か頭上を越えていくばかりだっただけに、なんだかもったいない思いだけが募りました。

3失点後は、ますますパスが回らなくなりました。縦に通らない。こんなときはドリブラーが突っかけるのがアクセントになるんですが。例えば西、今日もみごとにバイタルエリアをかき乱して相手を混乱させる場面を数度演出しましたが、突っかけてこぼれたところに誰かが後ろからフォローしてはじめてそのドリブルの意味がある。あれだけスペースのないところに、単騎で仕掛けて行って止められてではこちらのリズムにはなりにくい。西もおそらくそのあたりが気になって、行くべきところが行けていないということもあったのかもしれません。そこがC大阪や昨年の広島のような連動性のあるドリブル攻撃とは違う点で、その意味でも木島の穴は大きい。その欠場の自己責任は重いと感じました。ただ、これも選手層。熊本の今のチームの総合力なのです。

前節と同様、松岡、井畑、宮崎を投入。前節2点を守りきった同じ時間、今日は3点のビハインドを追いかける。しかし圧倒的に有利な状況になった徳島の守備の意識はますます高まり、狡猾に時間を使うと、ピッチ上の熊本の選手のイライラだけがスタンドにいるわれわれにも伝播しました。

第三者からも「面白い」と言われている熊本の攻撃的なパスサッカー。しかし、ここ数試合のなかで初めて機能しなかったと言えるでしょう。この反省と、分析はとても重要だと思われます。イライラで言えば、その伏線は機能しなかった前半の攻撃にあったわけで、ここでの対応力・応用力がこの試合結果の最も重要なポイントなのではないでしょうか。徳島は前半、意識的にそういった熊本をイラつかせるような戦いを仕掛けてきたのではないかとも言えます。

またもや「崩された失点ではない」という表現も成り立つのかも知れません。しかし、それは「面白いサッカー」を目指すためにどこかで曖昧にしてきた組織守備へのつけのような気もします。徳島に今日、対策されたことは、今後ほかのチームにも同様にされる可能性があることを意味しています。「熊本の守備はもろい」(柿谷:試合後のコメント)ということも共通認識されている。今日は徳島が皮肉にも攻守両面に渡って「守備」を教えてくれたのだと思います。今期の徳島。実に厄介なチームです。われわれ熊本に対しても、綿密なスカウティングで戦術変更までして対応してくる。ただ、これを破っていかなければ上は見えてこない。今更ながら本当に厳しいリーグです。

最後にソンジン。3失点いずれにも絡んでしまった感がありますが、今再びそのコンディションとメンタル面が心配で仕方ありません。試合前「DFではソンジンが一番疲れている。フレッシュな選手の起用はあり得る」と名前を挙げていたにもかかわらず、結果的には先発、フル出場させた北野監督。単なる情報戦だったとも思えず。終了間際には足を引きずり、ボールさえ蹴れないような状態にも見えた。このコンディションでも試合展開から引っ張らざるを得なかったのか。ピッチでは「ソンジン!ソンジン!」とチームメイトの怒鳴り声だけが響く。困惑したようなソンジンの表情。この高校を出たばかりの日本語もままならぬ若者が、熊本のセンターバックという重責を背負っているのです。
厳しいけれど、頑張れ。ソンジン。われわれにはそれしか言えません。でもそのスタンドから聞こえる「ソンジン!」コールは、彼の闘志を掻き立てるのに少しは役立つのかも知れません。

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