2009.08.18 水戸との差。
8月16日(日) 2009 J2リーグ戦 第34節
熊本 1 - 3 水戸 (19:03/熊本/4,485人)
得点者:9' 荒田智之(水戸)、45' 森村昂太(水戸)、55' 宇留野純(熊本)、62' 高崎寛之(水戸))


一時期、物議をかもした水戸・木山監督の「ポゼッションという言葉自体が、サッカーの世界で“死語”だと思う」(第12節のサガン鳥栖戦後)という言葉。なるほど今節の対戦を終えて、その言葉の真意がよくわかったような気がしました。

スポーツナビの佐藤拓也氏は自身のコラムで次のように解説してくれています。
「木山監督は中盤でボールを回すことを決して否定しているわけではない。ただ、日本のサッカーは、つなぐことに満足してボールを前に運べないことが多く、ゴールに対する意識が希薄になってしまう。だが言うまでもなく、サッカーはゴールを奪うスポーツ。そのためにも『もっとボールを前に進めるべき』というのが、監督の考えなのである。実際、水戸のサッカーには、木山監督の考えが色濃く反映されている。シンプルに前線にボールを入れてから攻撃を展開。単調になることも多いが、縦パスを重視し、執拗(しつよう)にゴールに迫る攻撃は、相手DFにとって厄介なことこの上ない。(後略)」

なにはともあれ、「ポゼッション」と「カウンター」の2極対立軸で語られがちな昨今のサッカーに関して、明らかに疑問を呈したかったのではないでしょうか。確かに水戸のサッカーは単純に語られがちなカウンターサッカーではない。ボールを奪ったら、とにかく縦に縦に、全員が一斉にゴールに向かって動く。その姿は、かつてのオシムが率いた千葉に近いものを感じると言ったら言い過ぎでしょうか。そして第1クールでC大阪に敗れたときクルピ監督に言われた「勝敗を分けたのは『ゴールに向かう目的意識と、決定機での集中力の差』だった」というコメントも同時に思い出してしまう。やはりサッカーはゴールを奪うスポーツなのだと痛感します。

水戸 (先発フォーメーション)
11高崎 9荒田
23遠藤8菊岡
19森村16下田
2小澤3保崎
32大和田20中村
 1本間 

熊本は今期初めて河端、石井、福王の3バックを敷いてきました。おそらく荒田、高崎の強力な水戸の2トップに対してマン・ツー・マンでひとりを余らせたかったのだと思います。しかし、いつもなら身長差をものともしない河端が、今日はハイボールに競り負ける場面が多い。開始9分に、GKからのロングキックを高崎がジャンプ一番、DFライン裏に反らすと、信じて飛び出していた荒田にぴったりと合う。トラップからダイレクトにシュート。見事なコンビネーションを見せ付けられました。

1失点には動じない。強豪・水戸相手に織り込み済み。と、内心うそぶいてみたものの、これまで4度の対戦で勝ち星がなかった相手。今日はスカウティングよろしくいつもの布陣をいじって臨んだだけに、幸先の悪さにがっくり気落ちしてしまったのもファンの確かな心理だったでしょう。いつもより一列前の原田と市村の攻撃参加に期待する。しかし、逆にボランチに下がった山本と吉井がなかなか前線に顔を出せず、自慢のパス回しが見られない。いつもなら相手守備ラインを混乱させられるポジションの流動性もなく、逆に相手に高くラインを上げられて、自陣に押し込まれる時間帯が長く続きます。胸踊ったのは前半終了まぎわのゴール前FK。原田の左足から放たれたボールはしかし、驚異的な跳躍力のGK本間の手をかすめてポストに当たり、枠外に弾き飛ばされてしまいます。まさしく水戸の守護神。その失点の少なさは、この男の活躍にも起因していました。

それにしても残念だったのは、後半開始早々1分も経たない時間帯での失点。全く最初のプレーではなかったかと。左サイドで森村に持たれると、中に切り込まれ撃たれる。意表を突かれたのか、完全に守備範囲だったにもかかわらず目の前のバウンド処理に躊躇したのか、目測を誤ったのか、木下は手を伸ばすもののボールはゴールに吸い込まれてしまいました。「もはや“お約束”と言える失点」(17日付・夕刊)と熊日の後藤記者にも酷評されるように、後半の反撃に期待するファンの気持ちを一気に萎えさせてしまうものでした。

ようやく反撃の狼煙が上がったのは10分、宇留野がバイタルエリアでボールを持つと、DFを引き連れながらひとりで粘って中央まで切れ込む。放ったシュートはゴール左角へ。名手・本間を大の字にさせた痛快な瞬間でした。1点差。まだ分からない。しかし、その狼煙もわずか7分後には踏み消されてしまいます。熊本の好機をうまく潰すと、すぐさま反転攻勢の水戸。熊本の左サイドを崩し、狙いすまして上げたクロスに、今度は2トップの一角・高崎が真ん中からしっかりとヘッドで叩きつけました。マーカーがあっさりとかわされ、まったく着いていけず体を当てることすらできていない…。

これまでも“オートマティズム”に優れたチームを数々見てきました。JFL時代のYKKしかり、佐川しかり。草津もある意味そうであり、最近は岐阜にも感じます。水戸もまたそういった印象のひとつのチームだったのですが、今節の戦いで少し考えが変わりました。これは単に“オートマティズム”という表現では済まされないのだなと。言うなればゴールまでの逆算。極端に言えばGKも可能ならゴールを狙う。それが無理なら一番ゴールに近いFWを狙う。それが駄目ならその一列下…。若い世代が基本として教え込まれるプレー選択の優先順位そのものを実践しているわけです。それは決してカウンターではない。チーム全員がただひたすらゴールを目指しているから、どう動き出せばいいのかわかっているのでしょう。木山監督、信念に基づくなかなか面白いサッカーを目指し、2年目で開花させようとしている。願わくばわがチームの対戦相手としては見たくなかったなと…。

3失点は前節と同じ数字なのですが、今日のこの3失点は全く今の水戸との実力どおりの“差”だなと思いました。熊本としてはシステムを変えて、相手の良さを消そうと試みましたが、その思い通りにはなりませんでした。逆に「いつもと違うことをしては勝てない」と試合後、石井に言われる結果に。木山監督と筑波で同級生だった藤田も、S級ライセンス講習で同期だった北野監督も、この完敗は忸怩たる思いが募るものとなったことでしょう。ビデオで試合を見直してみると、やはり決定的な場面での“ミス”と言わざるを得ないところからの失点。そしていつもと違うシステムでも、それでも作り出せている決定機。石井に指摘されるまでもなく、今の熊本にオプションとして多様な戦術を求めることが得策とは思えない。いや、今やろうとしていること自体が、多様性の集大成のような戦い方なんだし。これを続けて、磨いていくしかないのではと…。

折りしもこれが第2クール最終戦。振り返ってみれば第1クール4勝9敗4分に対し、第2クールは5勝9敗3分とほとんど変わらないと言っていい戦績でした。得点こそ1Cが16点に対し2Cは28点と驚異的な伸びを見せましたが、反面失点も24から36に増加。奇しくも得失点差は-8と変わらない結果となりました。得点力を手にいれた分だけ、守備力が失われたのか。データだけで単純に言うことではありませんが、ここ何試合も続く“3失点”を見る限りは、「点を入れても勝てない」と嘆かざるを得ないでしょう。第3クールに向けて「もう一度応援してください」(熊日・夕刊)と言う北野監督。そのためには、守備をもう一度見直す必要があるのは誰の目から見ても明らかでしょう。先ずはこの水戸の分析から。おそらくは今日の水戸の戦いが通用するのもこの試合限り。他チームは当然、徹底した分析をかけてくるでしょう。

われわれの計り知れない色々な事情があるのかも知れません。しかし、「ないものねだりはしない」と誓った今、とにかくホームスタジアムに足を運ぶだけです。水戸の背中には10年の重みがあるわけですから。藤田も自身のブログで述べています。「クラブとしての規模は熊本とそんなに変わらないか、もしかしたらそれよりも少し小さい。(中略)今後の具体的でわかりやすい目標として行こうと思います!」

スタジアムを後にしながら、脳裏では「HIKARI」のサビのメロディーがリピートしている。「ただ、がむしゃらに。負けても諦めずに。僕らは歩いていく。」ちょっと、今の心境にぴったり過ぎるその歌詞に胸が締め付けられます。

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